大判フィルムの選び方


低感度であればある程強い!
 基本的に三脚を用いる大判カメラにおいて感度が低いことはあまりデメリットとはなりません。むしろ、そのフォーマットサイズを生かして精緻な画を求めるならば積極的に感度の低いフィルムを使うのも一つの手でありましょう。逆にプリントを前提で考えるなら、大きく引き伸ばさない限りは多少粒子が荒れようとも大判フィルムの大面積がカバーしてくれると考える事もできますから、積極的に増感前提で動いてみるのも楽しいでしょう。この懐の深さが大判カメラの強みです。

カラーかモノクロか

モノクロフィルムの選択肢

 135フィルムや120フィルムよりも選択肢は狭いと言わざるを得ませんが、それでも複数のフィルムメーカーが大判フィルムを販売し続けています。米コダック、英イルフォード、チェコのFoma、仏のBergger。それぞれが特色あるフィルムラインナップを揃えています。




Kodak

 米Kodakの名前を知らない人はいないでしょう。一度は破産しながらも不死鳥のように蘇り、全盛期より縮小したとはいえフィルムのラインナップを一通り揃えています。2018年頃より少しずつ絶版となったフィルムを復活させはじめて来ており、今後の動向が期待されます。

  • Kodak TRI-X320
 旧型乳剤の中庸感度フィルム。トライXは写真用モノクロフィルムの伝説のブランドです。

 大判用は他フォーマット用が公称感度400の所320。実感度としては200かそれ以下でしょう。旧型乳剤らしい粒子の立ち方と、滑らかなトーン。そしてどんな現像液にも対応する汎用性が魅力です。

  • Kodak T-MAX100
 T粒子の低感度フィルム。T-MAX100の微粒子は135mmでもかなりのもの。これを大面積のシノゴで使うのですからその結果は押して知るべし。

 富士フイルムがNeopan Across100の大判製造を中止してしまってからは、一般的な流通に乗る大判フィルムとしては恐らく最も微粒子の物でしょう。上記TRI-Xと比べて相反則不軌の影響が少ない為、長時間露光の際ある段階で必要な露光時間がTRI-Xよりも短くなります。注意事項として、Kodakはこの大判用に限ってT-MAX現像液での現像を推奨していない事があります。専用現像液としてT-MAX RS デベロッパー・アンド・リプレニッシャーがありますが、入手性が低いためXtolやHC-110を使用しましょう。

  • Kodak T-MAX400
 T粒子の中庸感度フィルム。T-MAX400はISO400/27°級のフィルムとしてはかなりの微粒子フィルムです。絞って使う為にSSが長くなりがちな大判カメラにおいて、ISO400でかつ微粒子のT-MAX400は非常に使い出があります。

 T-MAX100と同じようにTRI-Xと比べて相反則不軌の影響が少ない為、長時間露光には使い易いでしょう。注意事項も同じく、KodakはT-MAX現像液での現像を推奨していません。XtolやHC-110を使用しましょう。




Ilford

 イギリスが誇るフィルムブランドがIlfordです。Kodakや富士フイルムと異なり、カラーフイルムをラインナップしていない潔さが光ります。旧型乳剤とT粒子フィルムをバランス良く取り揃えています。さまざまなフォーマットに対応しているのも魅力であり、FP4 PlusとHP5 Plusは20 x 24までがラインナップされています。

  • FP4 Plus
 公称感度ISO125/22°で旧型乳剤の中庸感度フィルムがFP4 Plusです。125と見慣れない感度ですが、100として扱って問題ありません。階調豊かでシャープネスに優れています。比較的廉価で扱いやすいフィルムなので最初に選ぶのに適していると思います。

  • HP5 Plus
 公称感度ISO400/27°で旧型乳剤の高感度フィルムがHP5 Plusです。特性、感度からKodak Tri-Xに匹敵するフィルムです。普通に現像しても良い物ですが、Spur SpeedMajorなどの増感現像液で増感しても面白いフィルムです。

  • Delta 100
 公称感度ISO100/21°でT粒子の中庸感度フィルムがDelta 100です。KodakのT-MAX100のカウンターと考えるとわかりやすいかもしれません。T-MAXと比べると粒子感はやや増しますが、そのお陰で猛烈にシャープなフィルムです。Ilfordのフィルムらしく、Kodakよりも階調性に優れます。

  • Delta 400
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Foma / Arista

 Foma(フォマ)は1921年創業、チェコの由緒ある感材メーカです。今まで紹介してきたメーカの製品とは違ってかなり個性的な製品をラインナップしています。また、Aristaはアメリカの写真店FreestyleがFomaのOEM製品を独自ブランドで販売しているものです。

Fomaのフィルムは乳剤が弱く、現像が終了した後に傷が付きやすい傾向があります。水洗効率は落ちますが、自家現像するならば定着時に硬膜化した方が良いでしょう。

※2019年5月現在、Fomaのシートフィルムには生産時にダストが載っているロットがあることが確認されています。ネガに白くスポットが出てしまうので事前にテスト現像をして確認するなど注意が必要です。

  • Fomapan100 / Arista EDU Ultra 100
 公称感度ISO100/21°のモノクロネガフィルムです。シートフィルムでは他に比べて特に安い(一枚100円前後)ため、多くの大判カメラ者がお世話になっているフィルムです。シャドウが抜けやすく、ハイライトが潰れやすい気分屋なフィルムです(うまくハマればハイコントラストな画は大変カッコいいのですが……)。尚、現像液や現像方法を変える事でローコントラストに仕上げる事も可能です。

  • Fomapan200 / Arista EDU Ultra 200
 公称感度ISO200/24°のモノクロネガフィルムです。Fomapanシリーズの中では唯一のT粒子フィルムでFomapan 100よりも大人しい優等生。微粒子かつほぼ公称感度に近い特性を持ちます。

  • Fomapan400 / Arista EDU Ultra 400

  • Retropan320
 かなりぶっ飛んでいます。まずハイライト部での滲みを防ぐアンチハレーション層が存在しません。よって光源を画に入れるとぼやっと滲んだようになります。ハイライト濃度自体も一定で頭打ちです。全然すっきりしません。感度はおそらくASA100以下でしょう。このフィルムの実力を発揮させるにはかなり限定されたシチュエーションで撮影し、現像液・現像方法も吟味する必要があります。普通にISO320/26°のフィルムとして扱い普通に現像してもまるでダメです。しかしうまく使いこなすことができれば印象主義絵画というか、ピクトリアリスム風というか、独特な画を得ることができます。変なフィルムを使ってみたい人にオススメです。



Bergger

  • Pancro 400
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その他の怪しげなメーカー

  • 上海

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カラーフィルムの選択肢


 かつては各社から数多くのカラーフィルムがラインナップされていましたが、残念ながらほとんどの製品は廃版になってしまいました。現在ではフジがカラーリバーサルを、Kodakがカラーネガをいくつか販売しているのみです。


Kodak

  • Ektar 100
Kodakが誇るハイエンド中庸感度カラーネガフィルムがEktar 100です。超微粒子、ビビッドな発色とまるでポジフィルムのような特性を持ちます。全体がほんの少しだけ緑に転びつつ、特に赤が飽和ギリギリになる描写は唯一無二の物です。
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  • Portra 160
Ektar100と並ぶKodakのハイエンド中庸感度カラーネガフィルムがPortra 160です。Ektarのビビッドな色調と異なり、より爽やかで淡い発色をします。とはいえ色が薄い、という事ではなく、充分に印象的な画を作ります。

Portraという名称はかつてのKodakが自社のソフトフィルターに与えたものでした。その名を引き継いでいるだけあって、勿論カラーネガとして万能に使用する事も可能ですが、何より人を撮った時の肌の描写にたけます。まるで陶器のように肌を写すのがPortraの真髄。大判カメラでポートレートを撮るのならば第一の選択肢でしょう。

特筆すべきはそのプラス方向へ露出許容度の大きさ。+3から5段程度までの露出のブレを許容し、基準感度とほぼ変わらない絵を作り出します。露出に困ったら困ったらプラス補正。Portraを使う上での鉄則です。

  • Portra 400
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Fujifilm



  • Velvia50(RVP 50)
 富士フイルムの低感度カラーリバーサルフィルムです。公称感度ISO50/18°ですが、実効感度は25~32ほど。後述のVelvia100ほどではありませんが高彩度・高コントラストが特徴です。感度が低い上、4秒以上の露光でカラーバランスが狂ってくるのでフィルタによる補正が必要です。やや扱いが難しいフィルムではありますが、風景などを撮影すると他の追随を許さない素晴らしい画が得られるでしょう。大判を扱うのであれば一度は使ってもらいたいフィルムです。

  • Velvia100(RVP 100)
 ギンギラ! これほど高彩度のフィルムは他にありません。コントラストの高いレンズと組み合わせると目が痛いくらいです。公称・実効感度ともにISO100/21°と中庸で扱いやすいです。Velvia50とは違い長秒露光に強く1分までの露光であれば補正が必要ありません。また現像後の保存性にも優れます。

  • Provia100(RDP III)
 ProviaはVelviaと異なり比較的落ち着いた色調が特徴です(とは言え十分高彩度ですが)。こちらも公称・実効感度ともにISO100/21°で、ネイチャー向きのVelviaに比べオールマイティなフィルムであり商品撮影などにも向いています。Velvia100と同じく長秒露光に強く保存性が高いフィルムです。



最終更新:2019年05月24日 03:10