シートフィルム以外での撮影
大判カメラの撮影の基本は4x5、5x7、8x10……各サイズに用意されたシートフィルムを用いる方法である。
而るにごく単純な構造を持つ大判カメラはフィルムに限らず様々な感材を利用することができる。本項ではシートフィルム以外を用いた撮影法を紹介する。
コロジオン湿板法(Wet Collodion Process)
湿板写真法は西暦1851年、英国の彫刻家 フレデリック・スコット・アーチャー (1813~57) 所生の写真技法である。
感材はハロゲン化合物を分散させたコロジオンをガラス板に塗布し、乾燥後硝酸銀溶液に浸漬してハロゲン化銀の感光膜を作ったものである。未だ表面の乾かざる間に撮影、現像せねばならず制約は少なくないものの、銀板写真法に比して極めて低コストであること、またネガティブ像を得られ感光紙にプリントが可能なこと、アーチャーが特許を取得しなかったことなどから瞬く間に全欧州を席捲した。
ガラス板上に露光し陽画を得るものこれを称してアンブロタイプと為し、金属板上に撮影し陽画を得るものこれを号してティンタイプと作す。ハイライト部が金属銀で構成さるるのがコロジオン陽画の特徴である。
下に撮影法の慷慨を述べる。
1、撮影に用いるガラス板表面を炭酸カルシウムエタノール液を用いて研磨する。
2、ガラス板上にコロジオンを流し、乾燥させる。
3、ガラス板を硝酸銀溶液に浸漬し、感光性を付与する(暗室)
4、ガラス板をホルダに入れ、カメラにセットして撮影する。
5、ホルダからガラス板を撮り出し、現像する(暗室)
6、ガラス板に定着浴を施す。
7、精製水でガラス板を洗い、ランプ等で乾燥させる。
8、ラベンダーニスによるヴァニッシングを行い表面の保護とする。
コロジオン湿板法で撮影された大判カメラ
印画紙撮影法
印画紙はプリントに用いるのが尋常の用途であるが、これを撮影に供することもできる。得られる像は陰画であるため、重ねて印画紙に焼くことで陽画をえることができる。もしくはやや入手が難しいが、ダイレクトポジティブペーパを用いれば撮影時点で陽画を得られる。この場合は左右が反転している。
ラティチュードが非常に狭く、超ハイコントラストな画になる事に注意。露光感度はISO3~6程度。あたりまえながらペーパー用現像液を用いて現像する事。
オリエンタルのRC印画紙で撮影された銀座の和光。感度が極端に低い為長秒シャッターとなり、露光中に動いた人や車が霞のように描写されている。スキャン後階調と左右を反転。
最終更新:2019年05月25日 15:17