ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

とある舞台の人間失格

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とある舞台の人間失格 ◆RC.0aa1ivU



 ―――気がつくと辺りは真っ暗だった。自分が目覚めたところも、いつもの寮のベッドの上ではなく、砂利混じりの草の上。きょろきょろと周りを見渡した御坂美琴が目覚めて最初にやったこと、それは自分の頬をつねってみることだった。
 うにーと、伸びたほっぺたからはピリッとした痛みがかえってくる。

「……夢じゃない……みたいね」
 はあ、と彼女は溜息をつく。なんだかひどい厄介事に巻き込まれたらしいということだけは、まだ目覚めきっていない、多少寝ぼけた彼女の頭でもなんとか理解できた。そのままのろのろとデイパックの中身を探り―――そして、そこで完全に彼女の目は覚めることとなる。

 超能力開発機関『学園都市』でも五本の指に入る名門・常盤台中学のエースにして、学園都市でもたった七人しかいない『超能力者(レベル5)』、
百万を超える学生たちの中において三番目の能力の持ち主、『超電磁砲(レールガン)』こと御坂美琴。
 この殺し合いの舞台における彼女の物語はここから始まる。


「ちょっと! どういうことよ、これ」
 デイパックの中から、最初に彼女が取り出した物。それは参加者名簿だった。……まあ、それ自体には何の問題もない。問題はそこに書かれていた
彼女の知り合い達の名前である。

 美琴と同じ常盤台中学の後輩にして、空間移動の能力をもつ、大能力者(レベル4)―――白井黒子
 ほんの数回、「アイツ」と一緒にいるところで出会ったことがあるシスター―――インデックス
 ……そして、彼女や妹達(シスターズ)の命を助けてくれた少年。無能力者(レベル0)にも関わらず、彼女の一撃を平然と防ぎきるツンツン頭の少年。
そして彼女にとって最も大事な存在である少年―――上条当麻

「何でこんなに……?」
 そもそも彼女達が暮らす学園都市は、世界の最先端技術の集まる場所だ。外の世界と比べると、その技術力は数世代は先を行っている。そのため、
学内の技術を流出させないために何重にも防御策はたてられている。
まして、彼女達能力者は学園の技術の最上位に位置する。生徒達が自主的に学園外に出ることさえ難しいというのに、生徒の学園外への誘拐、それも
複数ともなれば一体どんな組織が関与すれば実行可能となるのか、想像さえつかない。

 ―――だが、それがどうした?
 想像もつかないほどの組織が関与している。だからおとなしく彼らの言うことに従って、たった一人の生き残り、この場所に集められた名簿に名前が
載っている彼女以外の49名と。名簿外の10名。彼ら彼女らを殺して生き残る? 

 ……そんなのはごめんだ。

 目指すは脱出。倒すべきはあの狐面の男とそのバックにいる黒幕。
 まずやるべきことは、脱出を目指す仲間の保護と、殺し合いに乗ることを決めた者達へのちょっときつめのお仕置き。

(……その前に少し試しておかないとね)
 現在彼女がいる場所は、まず間違いなくBの1もしくは2。そのわかりやすい目印である天文台、学園都市にあるものに比べると、
時代遅れな巨大な望遠鏡の見える方向へと彼女は歩き出した。


 ◇ ◇ ◇

 歩くことしばし、美琴は目的地―――天文台のやや先、この舞台の果てへとたどり着いていた。
 彼女の前には漆黒の闇が広がっている。上を見ても、右を向いても、左を見てもそこから先には「黒」以外に何もないのだ。

「さーてと」
 軽く呟くと美琴は普段のように彼女の「能力」を使う。

 ―――学園都市第3位、『超電磁砲(レールガン)』 彼女の能力は学園最強の電撃使いである。10億ボルトにも達するその
膨大な電撃は―――漆黒の壁に音もなく吸い込まれ、消えた。

「あちゃあー、やっぱりダメか」
 自身の一撃がそれほど効果を上げなかったにも関わらず、彼女の声に落胆の色はない。彼女としても自身の力が普通に使用できた時点で
単純な物理攻撃でこの「壁」が突破できないことは予想できていた。仮にも、自分をさらえるような組織だ。それがこの力で破れるような障壁で自分を閉じ込めるはずがない。

 ―――だとすると。

 ぶんぶんと、頭を振って美琴は思いついた考えを吹き飛ばす。

(……そんなことあるわけないじゃない! もう樹形図の設計者(ツリーダイアグラム) もないのに、あんなバカげた実験おこせるわけない!)

 彼女が思い起こしたのは少し前まで学園都市内で秘密裏に行われていたある実験だ。
 絶対能力進化(レベル6シフト) 計画。……たった一人の能力者のレベルを上げる、ただそのためだけに二万もの命を犠牲にした悪夢のような計画。
―――そのためだけに彼女のクローンが一万人以上殺された計画。
 その実験自体は、とあるツンツン頭の少年と彼女のクローン「妹達(シスターズ)」によって阻止され、実験をはじめるために必要不可欠だった機械もすでにない。
 だから今のこの事態とは何の関係もない、はずだけど。 

「ああー! もうやめやめ! ここを調べるのは黒子達と合流してからでも遅くないわね」
 そう言うと美琴は「壁」に背を向ける。
 きっとこんな黒い物を見続けているから暗い考えばかりが浮かんでくるのだ。自分の力ではどうにもならないここも
空間移動の能力を持つ黒子や、自分の雷撃、いや学園最強の能力者さえ打ち倒したアイツの力があればきっと打開策も見えてくる。
 それに時計回りに世界が消滅する、ということは、なるべく参加者を内側に閉じ込めておきたい、ということではないだろうか?
 だとしたらあの「壁」は案外薄いのかもしれない。まあ、それらは彼らと合流してからの話。今は―――。

「……それまでは私にできることをしなくちゃね」
 そうして彼女は天文台へと向かって歩き出す。
 今の彼女が優先するべきなのは戦う力を持たないもの―――例えばあの銀髪ちびっこシスターのような―――を守ること。
そのためには人が集まりそうな施設を見ていくのが手っ取り早い。
 まずは手近な場所から回って、それから街の方へ……そんなことを考えながら彼女は歩き出す。


 ◇ ◇ ◇

 一度は通り過ぎた天文台へと、戻ってくるのにはそれほど時間はかからなかった。

「……さてと」
 ドアの前に立って軽く一息。美琴はドアを大きく開ける。

「誰かいますか? 私は御坂美琴といいます。殺し合いにはのってまっ―――!」

 しゅっ、と言葉の途中に紛れ込んだ風斬り音。
 美琴の胴体めがけて飛んできたそれは彼女に当たる直前、何かに弾かれるように大きくその軌道を変えて地面に当たり、
からからと金属音を奏でる。
 地面に転がるそれは銛。返しが付いた一度刺さると抜けなくなる凶器。それを撃ってきた相手は暗がりから月明かりの下へ出て来ると、にたにたとした笑顔で美琴に向かって声をかける。

「いやあ、すまなかったねぇ、お嬢ちゃん。怪我がないようで何よりだ、っとまずは自己紹介のほうを先にするべきかな?
 俺の名前はガウルンという。くっくっく、いやあ今のは完全にこっちが悪い。俺はこう見えても気が弱くてねえ、誰か来た! と思ったらついついこいつをぶっ放しちまった」
 そう言うと男は美琴にもよく見えるように、つい今しがた銛を放った武器、アンカーガンを動かす。
 男は年はおそらく40歳前後だろうか。まず目に付くのが、額のあたりに刻まれた傷と首周りに残る火傷の跡。だが、そんな物より男を特徴付けているのが―――。

「―――嘘よね?」
 まだ、何か喋ろうとする男に向かって、美琴は固い声で告げる。

「……ほう? どうしてそう思うのかな? み・こ・と・ちゃーん」
「理由は色々あるわ。まず、あなたは私がドアを開ける前からその銃を構えていた」
 美琴の言葉を聞いて、男が浮かべる笑みはいっそう深いものとなる。

「それから? それから?」
「事故で撃ったって言うなら、その銃にもう次の銛が装着されているのもおかしいわよね?」
「うんうん、そうだねえ」
「そして―――」
「ほう! まだ何かあるのかい?」
「人を撃っといて、そんなにたにた笑っていられるような奴が、事故とか言っても信じられるわけないでしょう!」
「ぎゃははははっ! そりゃあもっともだ! 大正解だぜ! 美琴ちゃん! オレは! 実は! 殺し合い乗っている! いや、楽しんでいるんだぜえぇぇぇぇっ!」
 彼の最大の特徴。見るものを不快にさせるような笑みを満面に浮かべ、ガウルンは目の前の少女に向かってアンカーガンを放つ―――その直前。

「―――遅いわよ」 
 ハイテンションなガウルンとは対照的に冷めた美琴の声が響いた。

「っ!?」
 しょせん相手の武器は銛。その程度の武器なんかじゃあ学園都市第3位の能力の前では、素手と大して変わりはしない。
 嫌な予感を感じたのか、ガウルンは慌てて大きく跳び、先ほどまで彼がいた巨大な望遠鏡の影へと戻ろうとする。

 ―――だが、雷の前ではその動きは遅すぎる。
 それでもさすがというべきか、ガウルンの胴体めがけて放たれた美琴の一撃。
 雷撃の矢は大きく跳んだガウルンの胴体からは逸れ、しかしさすがにかわしきる事はできずに、彼の足に直撃する。

「~~~~っ!?」
 そしてその一撃で十分だった。
 人の筋肉は電気刺激によって動かされる。従って強力な電気ショックを受けた人間は、そのショックが消えるまで自分が思うように体を動かすことができなくなる。
 相手を一瞬で無力化する一撃。
 それさえも彼女、御坂美琴にとってはその力の一部分でしかない。

「残念だったわね」
 吹き飛ばされ、びくびくと動くガウルンに近付きながら余裕の表情で美琴は言う。
 そもそもこの勝負、始めからガウルンに勝ち目はなかったのだ。
 仮に美琴の一撃よりも早くガウルンが銛を放っていたところで、彼女に傷をつけることは敵わなかった。あの武器では先の不意打ちの時でさえ、彼女の能力で張られていた電磁波によるバリアーを突破することは敵わなかったのだ。

 始めから明確に勝者と敗者が分けられていた、争いと言うのもはばかられる勝負が終わる。

「さてと、少し痛い目にあってもらうわよ」
 ガウルンに近付く美琴の手で電撃が弾ける。
 ……最も彼女にガウルンを殺すつもりはない。
 もう一度至近距離から電撃を叩き込み、完全に相手の戦闘能力を奪ってから、ロープか何か、とりあえず天文台なら最低でもあるであろう消化ホース等で身柄を拘束する。
 それが彼女のプランだった。

 ―――3歩。

  ―――2歩。

   ―――1?

 ばしゃ。

「……え?」 
 全身に広がる冷たい刺激。
 ガウルンまで後一歩というところだった。美琴がその地点まで近付いたその途端、電撃のショックで動けないはずだったガウルンが素早く身を起こすと懐から何かを投げつけてきたのだ。

(……え? な、何? ……水!?)
 予想外の反撃に慌てながらも、美琴は間合いを離し電撃を放とうとし、自分にぶつかった何かの正体に思い至り―――攻撃を思いとどまる。
 ……確かに彼女は電気を操ることが可能だ。だが、それはあくまでも操れるのであって、彼女が電気を浴びても平気というわけではない。
今の彼女は全身ずぶ濡れ。今投げつけられた液体がただの水ではなく、何らかの通電性の高い液体の可能性もある。そのままいつものように電気を放てば、最悪彼女自身も感電する。―――彼女が普通の能力者なら。

(甘いわよ!)
 超能力(レベル5)は伊達ではない。
 彼女は電気を「操れる」能力者であって「放てる」だけの能力者ではないのだ。
 そして彼女は狙いをかえて、やや上空から、まさしく稲妻のように雷撃をガウルンのいる地点へと落とす!

「……え?」
 その直前、まるで一切電気なんて浴びてはいないかのような素早い動きで、ガウルンは美琴の目前まで迫っていた。

「あ、ま~いぜ。み・こ・とちゃん!」
「がふっ!」
 ガウルンの嘲りの言葉が聞こえたそのときにはすでに、美琴の胴体にはガウルンの拳が叩き込まれた後だった。
 叩き込まれた衝撃に美琴は数メートルは吹っ飛ばされる。
 ―――皮肉にも、まさしく稲妻に打たれたかのような衝撃に、美琴は指一本動かせなくなっていた。
 ただ、攻撃を受けた胸だけが燃えるように痛む。

「……な、ん」
「あ? ああ、なるほど! なるほど! 何で? って聞きたいんだね、美琴ちゃんはぁ! 不思議なわけだ。
電気ショックで指一本まともに動かせないはずのこの俺が! どうして美琴ちゃんにこーんな簡単に反撃できたのかぁ!」
 ぎゃはは、と笑いながらガウルンが近付いてくる。
 間近に死を感じながらも、ガウルンの言葉は、まさしく今一番美琴が知りたかったことでもあった。

「いいぜぇ、やさしいやさしいこのガウルン様が教えてやるよ」

 そして、美琴の前まで近付いてきたガウルンは美琴のそばまで近寄ると

「じゃーん」
 と、ふざけた口調で自分の足を外してみせ、再び付け直す。

 ―――それが答え。

 もちろん、受けた場所が義足だったからといって、美琴が全力で雷撃を放っていれば、その衝撃でガウルンを行動不能に陥らせることは十分に可能だった。
 だが、美琴にガウルンを殺す気はなく普通に肉体に当たっていれば、十分に人を行動不能にするレベルの、完全に手加減されていた電撃は、その力をガウルンへと完全に届かせることは敵わなかった。

「だめだぜ~。誰が見てるかわからないんだから、うかつに自分の武器や情報を見せちゃあ」
 そして美琴が犯していた最大の2つの失策。

 一つは、実験のつもりで「壁」に向かって放っていた電撃。その一撃はすぐ近くにあったここ、天文台からも見えていた。ガウルンにとっては戦う前から相手の手の内が見えていた。
相手の主武装が電気攻撃とわかれば、その裏をかく方法なんか幾つだって思いつく。美琴の一撃を一瞬遅らせた水の一投などは、まさに相手の攻撃がわかっていればこそのものだ。

 そしてさらに、自身の目的。殺し合いに乗る気がないということをあっさりばらしたのも、彼女のミス。ただでさえ、殺気がない攻撃に殺す気はないという甘すぎる発言。
ガウルンは自身の安全を完全に確認した上で、この戦いに挑んだのだ。

「わかったかい? それじゃあ……」
 にたにたとした笑みはそのまま、ガウルンの目、いや彼の放つ空気が変わる。そして―――

「死ね」
(う……そ)
 決して外れることがない至近距離からの銛の一撃が、美琴へと打ち込まれる―――ことはなかった。

「誰だ?」
 ガウルンは銛を数メートル先の開け放たれたままの出入り口へとむける。
 一体いつの間にそこにいたのかにやにやと笑い顔を浮かべて、彼はいた。
 人間失格、零崎人識。殺人鬼がそこにいた。

「おいおい、おっさんお前何よ? 俺みたいなんに訊かれたくないかもしれないけどさ。これって犯罪だぜ? 暴行傷害殺人未遂。
理解してるか? やっていいこと悪いこと」
 笑みを浮かべつつ、呆れた声で人識は言う。
 それを聞き、ガウルンは狙いは逸らさずに、空いていた手でぴしゃ、と自分の顔をたたいて言う。

「あー、そうだなあ。うん、そりゃもっともだ。けど、お前も言われたことはないか?」
「ん? 何を?」
「人の嫌な事をしちゃいけないって、な」
「うんうん、確かに」
「つまり……人が楽しんでる最中に水を差すんじゃねえ!」
 言うなり、ガウルンは素早く人識に向かって銛を撃つ。
 だが、そんな見え見えの一撃が殺人鬼に当たるはずもなく、人識はあっさり身をかわすとそのままガウルンのところへ襲い掛かろうとして―――彼は見た。
いつのまにか、ガウルンがまるで手品のように、もう片方の手に銛撃ち銃ではない、本物の拳銃を持っているところを。

「死ねよ、ばーか」
 気付いた時にはもう遅い。銃弾が人識へと放たれる。

(え? じゃ、じゃあ……)
 それを見ていた美琴は知る。自分はあの男に遊ばれていたことを。
 あるいは最初からガウルンがここまで腕のたつ危険な相手だとわかっていたら、彼女も不用意に倒れた彼へと近付かなかったかも知れない。
平然と殺気や敵意を撒き散らす殺人狂と思えばこそ、油断したのだ。
 そして、彼が誘導したそのままに美琴は引っかかり、助けに来てくれたらしいもう一人も今、この男のせいで命を落とす。
 絶望に落ちる美琴の視界に、銃で撃たれた人識の姿が……。

ひょい。

「「え?」」
「おいおい、どいつもこいつもあぶねえなあ。ここにゃあ俺以外危険人物しかいないのかね?」
 あっさりと銃をかわした人識はそのままぶつぶつと文句を呟く。

 ―――殺人鬼集団零崎一賊。
 誰よりも殺意の塊である彼らは、当たり前のように殺気を「視る」
 故に、撃たれる前から殺気によって軌道がわかる銃撃は、それがどんなに優れた不意打ちであっても彼らには通じない。

「てめえ……」
「で? どうするよおっさん。逃げるんだったら今の内だぜ? そんな武器で俺に勝とうなんざ十年遅い。こっから先は容赦しねーぞ」
「ちっ」
 確かに悔しいが、このまま真っ向勝負でこの餓鬼とやりあうのは分が悪い。ガウルンは冷静に判断する。
ただでさえ手ごわそうな相手であることに加え、時間がたてばもう一人電撃使いが復活するのだ。
 ……ここで自分をあっさり逃がすような甘い相手だ、後々殺す機会はいくらでも回ってくる。

「くっ! 覚えていやがれ!」
「ちょ、ちょっと……っ!」 
 あっさりと相手を逃がす人識に、文句を言おうとして胸の痛みに美琴はうめく。

 ―――それがガウルンの命を救った。

「おいおい、大丈夫か? しっかりしろよ」
「!?」
 すぐそばで聞こえた人識の声にびくりとガウルンは身を震わせる。
 逃走に意識を向けたその一瞬。言い換えればガウルンの注意が人識から外れたそのわずかな時間の間に、いつのまにか人識はガウルンのすぐそばにまで近寄ってきていたのだ。

「てめえ!」
「おいおい、おっさん。あますぎだっつーの。逃がしてやるなんざ戯言に決まってんだろ。この俺に銃を向けた相手を許してやるほど、このおれはあまくねーぞ」
「おもしれえ……やってや……」
「と言いたいとこだけど、なんかアイツが」
 と人識はガウルンの言葉をさえぎって、倒れてうめく美琴を指す。

「アイツがやばそうだから、戯言抜きに逃がしてやんよ。運が良いじゃん」
 ぎり、と完全になめられた口調にガウルンは歯軋りした。

「貴様は……殺す!」
「ほいほい」
 殺意を込めた視線で今度こそ、人識をその視界におさめながら、ガウルンは天文台からその姿を消す。
 ガウルンの気配がいなくなったことを確認し、人識はきょろきょろと天文台のあちこち、とりわけ高所へと視線を向ける。

「んー。どう見ても蒼はここにいそうにねえなあ」
 さすがにここから先は手がかりがない。
 次はどこをあたろうか?
 っとその前に。
 倒れたままの美琴へと人識は歩く。

「ま、まずはあの子犬みてえな雰囲気の姉ちゃんの治療かね」

【B-1 天文台 一日目 深夜】


【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】肋骨数本骨折 
【装備】なし
【所持品】支給品一式  確認済支給品1~3
【思考】
基本:この世界からの脱出、弱者の保護
1:知り合い(白井黒子、インデックス、上条当麻)との合流
2:当面は基本方針優先。B-1消滅の半日前ぐらいには黒子、当麻との合流を優先する。
3:助けてくれた相手(人識)と行動する?


【備考】
マップ端の境界線は単純な物理攻撃では破れないと考えています。
この殺し合いが勝者の能力を上げる為の絶対能力進化計画と似たような物であるかも知れないと考えていますが、当面のところ誰かに言う気はありません。


【零崎人識@戯言シリーズ】
[状態]:健康 
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、礼園のナイフ9本@空の境界、七閃用鋼糸6/7@とある魔術の禁書目録、少女趣味@戯言シリーズ
[思考・状況]
1:《死線の蒼》はいそうにねえなあ
2:ぶらつきながら《死線の蒼》といーちゃんを探す。
3:子犬っぽい姉ちゃん(美琴)を治療する。頼まれたら一緒に行動しても良い?
4:両儀式に興味。
[備考]
とある約束のために自分から誰かを殺そうというつもりはありません。ただし相手から襲ってきた場合にまで約束を守るつもりはないようです。
ナイフが一本使い物にならなくなっています。


「くくっ、ははははっ! カシム以外にもあんな面白い奴がいるとはなあ! 楽しくなってきたぜ!」
 月明かりの下、男は笑う。
 男の喉、その左からはべっとりと血が流れ出している。
 ―――先の一瞬。人識が刃を止めていなければ間違いなくガウルンの頚動脈は断ち切られていた。

「主食がカシム! デザートにあのガキ! まだまだほかに面白い奴がいるかもなあ!」
 どうせ自分は長くない。
 地獄への道連れはなるべく多く、派手なほうが良い。
 悪意の塊のような男は闇へと消える。
 闇の中でもなお薫る血と死の匂いを漂わせ。


【B-1とC-1の境界 一日目 深夜】


【ガウルン@フルメタル・パニック!】 】
[状態]:膵臓癌 首から浅い出血
[装備]:銛撃ち銃(残り銛数3/5) IMI デザートイーグル44Magnumモデル(残弾8/8+1)
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
1:どいつもこいつも皆殺し
2:カシム(宗介)とガキ(人識)は絶対に自分が殺す
3:かなめは半殺しにしてカシムの目の前で殺す

[備考]
癌の痛みは行動に影響を及ぼすことはありません。
2巻から3巻の間ぐらいからの出典です。



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前:人間考察 次:CHALLENGER

御坂美琴 次:みことマーダラー
前:たいがーころしあむ 零崎人識 次:みことマーダラー
ガウルン 次:丑三つ時(――苦死満つ刻――)
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