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ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ
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ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

loss

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disappear/loss ◆UcWYhusQhw



「さてと……あれが目的地……かな?」

陽が傾き始めた頃、僕はようやく目的地に辿り着いた。
今日何度目かもよく憶えてないが、息抜きに煙草に火をつける。
煙草から上がる煙の先に見えるのは、紅い神社の象徴とも言えるもの。
それを見つめながら、僕――ステイル=マグヌスは少しほっとした。
あの場所には彼女がいるのだ。
コンビニで会ったあのちっこい少女が言った事が正しいならだけど。
護りたい、護りたかった彼女がいる。
そう思うと、正直心が躍った。
自分がもうその立場にいるべきではないというのに。
それでも、安堵し喜ぶくらいなら罰は当たらないだろう。
本来居るべき立場の相手は知らない女に現を抜かしてるようだしね。

「鳥居……鳥居ね」

煙草を吸いながら、目の前のランドマークを見つめる。
日本の神社に必ずといっていいほどあるこの鳥居。
生憎僕はこの鳥居に関してはよく判らない。
死んだ土御門なら詳しそうだけど。

……まぁ、死んだならそれまでさ。

死んだ人間が『此処』になんて存在しないのだから。
土御門なら、煉獄か地獄に行ってるだろうし。
天国だけはありえないと思うけど。
……まあ、それは僕も一緒なんだけどね。
別に僕は構わないけど。
あいつも妹の為なら、喜んで地獄に落ちたんじゃないかな。
まあ、知る由もないか。

「……ふむ、一体どうしたんだろうね」

何だろうか。
頭がコンビニに居た時より、大分すっきりとしている。
理由はよくわからないけど。
ぼけっとしてるよりは、よっぽどいい。

「さて……」

鳥居の講釈はその先にいる彼女に聞くとして。
今は、その鳥居の前にに現れた人。
メイドの格好をした女が此方を睨んでいるのだけど。
その対処をどうしようか?

邪魔するなら、排除するだけどね。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇








「……うん……むふぅ……?」

どたどたと何かが忙しなく駆けて行く音が響く。
その音のせいか、また何処か忙しないのを感じ取ったか。
痛みの余り、気を失っていた逢坂大河はパチリと目を開けた。
欠伸をしながら、目をぱしぱしとする。
まだ、寝ぼけているせいか、いまいち状況が把握できない。
気を失って、その後、どうなったのだろうか。
忙しそうな足音は今は聞こえなかった。
とりあえず起きようと大河は思うが、欠伸が止まらない。
大河は眠たそうに、目をこすろうとして

「…………ひっ!?」

その自分の身体の『異常』に気付く。
眠気があっという間に弾け飛んだ。
大河はきょろきょろしながら自分の右腕を見つめている。
大河の右腕には人体に本来存在しない無骨な鋼が括りつけられていた。
何故、そんなものが自分の身体につけられてるのかと一瞬考えて、すぐ答えが思いつく。

「ああ、そうか……そうだよね」

これが、先程の苦痛の結果。
酷い痛みを耐え切って得た、大河の新しい『手』だった。
人の肌の温もりなど、感じられない、存在しないただの鉄。
でも、不思議と自由に動かす事ができる。
まるで、本物の手のような。
そんな、錯覚がした。

「……………………おなか減った」

血を沢山流したせいだろうか。沢山体力を使ったせいだろうか。
おなかがぐーと音を鳴らす。
誰も、聞いてないかなと大河を辺りを見渡すが、誰も居る訳がない。
大河はその事を確認し、もぞもぞと布団から這い出す。

「あれ……?」

そこで、更にもう一つ身体の異変に気付いた。
着ていたはずの服が、無い。
下着すら、無い。
つまり全裸で寝ていた事になる。
誰も、見ていないのに、少し大河は恥ずかしくなってしまう。
大河は頬を紅く染めながらも、ハンガーにかかっていた制服と畳まれた下着を見つけた。
兎も角、外に出るにも服を着ないと話にならない。
そそくさとパンツを穿いて、そこで大河は右手に違和感を感じる。

「感覚が無い……」

右手の指をいくつか動かしながら、その事実に大河はただ驚く。
義手なのだからある意味当然なのだが、それでも今まで慣れ親しんだものが無くなると言うのは、切なくなってしまう。
大河はその事に、少し不機嫌になりながらも、ブラをつけようとして

「…………あれ、くそっ……あー…………うがーーー!」

上手く、出来ない。
後ろのホックが上手く嵌らないのだ。
理由は単純で、右手の感覚が無いから上手くできないのだ。
重みが感じられないから持ってる事すら忘れそうになるぐらい。
ちまちました作業を好まない大河は苛々して、堪らない。

「あーもういいっ!」

そして、諦める。
元々ブラが必要かどうか怪しいぐらいの胸のボリュームだ。
哀れといわれるぐらいに、哀しいほどに無い。
だから、ブラが無くても、まあ問題ない。
問題ないけど、イラつく。

大河は苛々が更に募りながらも、制服のブラウスを着ようとする。
だが、ボタンをはめるのにも、やはり苦戦してしまう。
今度はホックより小さいものだから、尚更苛々してしまう。
何度か試行錯誤をくりかえし、悪戦苦闘の結果

「だぁーーーー! ふざけんなぁああああ!」

びたんとブラウスを畳みに叩きつける。
つまり、大河の敗北だった。
そして、苛々が無くなって、現れるのは哀しみ。

「こ、こんな事も出来ないのかっ……私は!」

哀れで、悔しかった。
小学生でも出来る当たり前の行為が、自分は出来ない。
右手が変わっただけなのに、普通の生活すらままならないのか。
悔しくて、哀しくて。

「くそっくそっ……」

悪態を吐きながら、大河は思う。
本当、こんな所につれて来られたせいで喪失ばっかり味わっている。
竜児も北村も、実乃梨も、そして自分の手も。
失ってばっかだ。
だけど、

「失ってばっかで………………いられるかっ!」

失ってばっかでいられない。
逢坂大河が、失ったままで苦しんでいられるか。
強くなければ、強くなければいけない。
ならば、右手の喪失ぐらいなんだ。
こんなので泣いていられるか。

もう、高須竜児は居ないんだから。
一人で生きていかなければならないのだから。

「見てろ……」

見つめるのは鋼鉄の右腕。
新たな自分の身体の分身。
そいつに向かって大河は吼える。

「絶対に扱いこなしてみせるからな、このっ!」

これから、生きていく中で共に過ごす分身を。
扱いこなしてみせると、大河は誓う。


だから、今は――――




「……あ、大河さん。起きた?」
「おう、ばか晶穂。服を着たいから手伝え」
「えっ……ええっ!?」



素直に、助けを乞おう。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







「さてはて……神社にメイドさんとか違和感しか沸かないけど……君は誰だい?」
「そちらこそ、貴方は何者……いや、『何モノ』でありましょうか?」

ステイルと、メイド――ヴィルヘルミナのファーストコンタクトは極めて緊張したものになった。
ステイル側としては、シャナの言葉があるとはいえ、この者がヴィルヘルミナであるという確証はとれない。
それに、シャナが神社から離れた後、激変があったかもしれない。
態度に余裕を保っても、予断は許さない状況なのは確かだ。

ヴィルヘルミナ側としては、この男が何者かは推測できる。
インデックスが語っていた存在、ステイル=マグヌスの容姿とほぼ一致している。
彼女が語る言葉を信じるならば、まあ信頼に足る人物である事は確かなのだ。
だが、一つ、警戒するに値するものがある。
それは、ステイルがトーチになっている事だ。
この男は既に、死んでいる。それも十中八九フリアグネの仕業によって。
あの男が遊びで作った存在ともいえるかもしれないが、何か細工をしているかもしれない。
その事が、ヴィルヘルミナを緊張させているのだ。

「まあ、僕から名乗ろうか。ステイル=マグヌス。必要悪の教会のものだよ……シャナって子の伝言も預かっているのだけど」
「……!」

口火を切ったのはステイル。
ここで、彼女に余計な警戒をさせるのも、よくない。
安心させて、早いうちに、インデックスに会わせて貰った方がいい。
だからこそ、持っているカードは早めに切る。
案の定、シャナの名前を出したら目の前のメイドさんは強く反応した。
つまり、

「君が……ヴィルヘルミナで、いいのかな?」
「ええ、そうであります……何時、彼女と?」
「ほんの少し前だよ。インデックスがこっちに居ると、聞いたのだけど……会わせてもらえるかな?」
「彼女は何といってたのでありましょう?」
「そうだね、そのまま君に会ったら、保護してもらえって。それで出来る事なら、君に従えって言ってたよ」

ステイルの目的は、インデックスとの再会だ。
当座の目的は、それしかないのだ。
だからこそ、早いうちに目的を伝えて、ヴィルヘルミナの警戒をとくしかない。
ならば、隠し事する必要など、意味はない。

(…………さて、どうでましょうか?)

ヴィルヘルミナは心中で考える。
最初に神社にやってきた少年同様、今回もヴィルヘルミナの判断に一任されてる。
その上で、この男、ステイル=マグヌスの処置を考えなければならない。
手段の一つとしては、ここで、この男を消すのは手だ。
トーチという不確かな存在、フリアグネが仕掛けをしている危険性を考えると悪い手ではない。
しかしながら、この男はインデックスの知り合いだ。
彼女からの情報によると、有用な人物であるのは確かであった。

それに、シャナが、この男を消さなかったという事実もある。
ステイルが、シャナの名前を信用を得る為に、会っていないのに使ったとも考えられるが、それは極めて低いだろう。
此方がシャナとの連絡手段を持っているのなら、ばれたらお終いなのだから。
それ故に、シャナの伝言は確かなものだといえる。

となるとシャナ、ひいてはアラストールが細工してないか、確認しているはずだ。
そして、彼女達はこの男を消さなかった。
シャナ達もこの男を程度はしらないが、信用したのだろう。
ならば、自分が此処で彼を消す事は不味い。
故に、消すという選択肢をヴィルヘルミナの頭の中から無くした。
ならば、この男をどう扱うのか。

「貴方は、インデックスにあってどうするつもりなのでありますか?」
「別に、護るだけだよ。彼女は大切なのだからね」
「それは、他者を害してでもありますか?」

まずは、重要な点。
彼がインデックスを守る為なら、他の人間ですら殺す……そういう人種であるならば、受け入れる事は出来ない。
現状、自分しか戦力になる人間はいないのだから、警戒するのは当然だった。

「彼女を傷つける者が居るなら躊躇しないよ。僕自身は……そうだね、彼女を護れればそれでいい」
「他者を害さない証拠がありますか?」
「……そう言われると困るんだけどな。どうやって示せばいいかな?」

ステイルは眉を潜め、ヴィルヘルミナを見つめている。
少し、困った様子のステイルにヴィルヘルミナはある提案した。

「そうでありますな……ならば、インデックスを護るついでに、我々の仲間を護ってくれればいい。それだけでいいのであります」
「な……!?」

これこそ、現状、ヴィルヘルミナが彼を扱う上でベターとも言える選択肢。
そして、最低限、これだけは許容しては貰わないと困る最低限のラインだった。
まず、この男を此方に引き入れるというのは、シャナが許容した時点で決まっていた。
ステイルはフリアグネに敗北したものの、インデックスの話を聞くならば、実力者である事は確かなのだから。
インデックスとシャナのお墨付きがあるならば、あの少年よりは信用できる。

だが、困った所は彼が一人の人間しか固執しないという点だ。
恐らくインデックスだけでも生き延びれば、それでいいと考える人間だろう。
今の所、他の人間を襲わないにしろ、恐らく彼女だけしか護らない。

それでは、困るのだ。
正直な所、ステイル自体にヴィルヘルミナが今思うところなどない。
此方の仲間になっても、言う事は余り聞かないのは承知だ。
インデックスと離して行動させるというのは無理だろう。
しかし、それでもいい。
今、必要なのは、単純な戦闘要員だ。
仲間の身を護る戦えるものがほしい。
だからこそ、ステイルには、インデックス以外の者を護ってもらいたい。
それだけが、許容させなければならない事なのだから。

「……そうだね、正直に言っちゃうと、僕はインデックスを護るだけで精一杯かもよ? 実際の戦闘で護れるかなんて、その場にならなければわからない」

そのヴィルヘルミナの提案に対してステイルが返す言葉は曖昧な事で。
ヴィルヘルミナは憮然としてステイルを見つめる。
だが、ステイルは表情を崩して

「……まあ、でもインデックスを護るついでに、あくまでついでに。護るかもしれないけどね」

肩をすくめながら、答えた。
その提示された許容ラインに、一先ずステイルは乗った。
実際、戦闘になったらどうなるかわからないが。
とりあえず、それで信頼を得られるのなら、それを飲むしかなかった。

「……………………そうでありますか」

ヴィルヘルミナは無表情のまま、くるりと踵を返す。
交渉が成立した事に、安堵も、歓喜もしないまま。
あくまで、事が成った事実を受け入れながら

「着いてくるであります」

ステイルに対して、そう言った。
あくまで、事務的な返事にステイルは肩をすくめながら、ヴィルヘルミナの背を追った。
インデックスに、会えるという期待に少なからずも、心を躍らせながら。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇






「…………うん、美味しい」

パクリと白いお握りを口にしながら、笑顔を浮かべる大河。
何はともあれ、酷くおなかが減った。
体力の消耗を回復するにも、エネルギーの摂取は大切だった。
小さい身体に、似合わずバクバクとお握りを食べていく。

「大河さん、その手大丈夫なんですか?」
「んー? まあ持つぐらいなら余裕よ」

その喰いっぷりを脇で眺めながら、晶穂は呟いた。
ヴィルヘルミナから、人が着たから此処で待機を指示されたが、やっぱりどうにも手持ち沙汰だった。
だから、大河を眺めるしかないのだが、やっぱり気になってしまう。
大河の右腕がロボットのようなモノになっているのが。
其処に存在するものに、ひたすら違和感しか感じない。

逢坂大河は小さいけど、それはそれでとても整った美少女だった。
長くウェーブのかかった茶色の髪。
美しく可愛い、けど、少し獰猛そうな顔。
小さな体から溢れ出そうなパワー。
正しく、手乗りタイガーと称させるに相応しい存在だった。

けど、今はその無機質な金属の塊が完璧ともいえる身体を侵食している。
その腕は正しく、欠損を感じさせるもので。
非日常の塊ともいえる、逢坂大河に似合わない姿だった。

物憂げに晶穂はそんな大河の身体を見ている。
傍から見ても、可哀想だと思うのに本人は何処か元気だ。
空元気かもしれないけど、それでも気丈に振舞っている。
そんな事ができる大河が、羨ましいと思って、また自分と違うんだなと思い知らされてしまう。
きっと自分が、そんな義手をつける羽目になったら、泣き喚くだろう。
手術だって怖くて、痛みに耐えられないと思う。
そして、機械の手がついたことに、絶望するだろう。

そんな事を思ったら怖くて怖くて仕方がない。

元気な大河が、何処か凄くて、羨ましくて。

自分がとても、ちっぽけに思えてくる。

そう思ったら、哀しくて。
俯くように、膝に顔を埋めてしまう。
涙は、出なかった。

(……どうして、わたしは……こんななんだろう)

こんな、自分が哀しくて。

深く、深く、沈んでいく。


ずぶずぶと音を立てて、



――――沈んでいく。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



くそっ…………あの無表情女め。
思いっきり、引っ掛かった。
あたかも、此処にインデックスが居るような口ぶりだったから居ると思ったら離れてるだと。
もうすぐ、放送で連絡が来るからそれまで待機してろだと。

……ちっ。

苛々しながら、僕は気分を変える為に、外で一服をしていた。
渋々とだが結局、待機することにした。
彼女が行った場所わからない現状、連絡を待ってそれから向かう方がいいだろう。
素直に言う事を聞くのが妙に癪だけどね。


「……うん?」

煙草を吸いながら、少し気を抜いてると社務室から一人の少女が出て行く。
何か元気無さそうだけど、別に僕はそれに気を止めなかった。関係ないし。
むしろ、社務室から、何かいい臭いがして、そっちの方が気になる。
……そういえば、まだ何も口にしてないか。
どうせ、暫く居るのだし、それくらい貰ってもいいだろう。
そう思って、僕は煙草を捨て、社務室に入っていく。


「…………あん? あんた、誰?」

そこにいたのは小柄で茶髪の少女。
奇異といえば、機械の様な右腕がとても特徴的な少女が凶暴な視線を浮かべていく。
恐らくヴィルヘルミナの仲間と呼べる存在だろう。
そして、護れとかのたまい、これが護る存在なんだろう。気乗りしないけど。

「……一応名乗っておこうか。ステイル。ステイル=マグヌス……まあとりあえず此処のチームに参加する事になったよ」
「あっそう……私は逢坂大河。よろしく」
「よろしく……そのお握り一つ貰うよ」
「勝手にしないさいよ」

大河と名乗った少女はぶっきらぼうに言いながら、こちらにお握りを一つを投げてくる。
僕はそれを受け取り、自然と彼女の隣の座布団に腰を下ろした。
そして、そのまま、お握りを食べた。
中の具は鮭で、程よい塩気だ、うん、美味しいね。
そのまま、黙って食べていく。

特に喋る事も無く、こちらも話すことが無いからただ黙って、食していく。
それにしてもこの少女、何個食うんだ。
もう五つぐらい食べてるんじゃないか?
見かけによらず……食べるね。

「太るよ」
「うっさい」

大河はガッと軽く足蹴りをしてくる。
あんま、言われたくない所みたいだね。
黙っておこう。


「……………………ねえ、あんた」
「……うん?」

暫く、黙々と食べていると今度はあっちから話しかけてくる。
僕は暇だったし、彼女の方を向く。

「なんで、あんた此処に?」
「別に、護りたい人がいたからだよ」
「そう…………インデックス?」
「……………………何でわかるんだい?」

彼女にいい当てられたのに戸惑いを隠せない。
ヴィルヘルミナから聞いたわけじゃ無さそうだし。

「別に……此処に居た人達のこと考えたら、あの子しか思いつかなかっただけよ」
「なるほどね……」
「すきなの?」

思わず、食べていたお握りが喉につまりそうになってしまう。
この女…………何故、分かる。

「わかりやすいのよ、思いっきり表情に出てる」
「…………」
「あははっ……その表情……思いっきり馬鹿みたい……くくっ」

自分の顔をぺたぺたと触ってるとこの女は僕を指差して笑い始める。
僕はムッとしながら、腹立たしくなりながら文句を言う。


「別に……君には関係ないだろう」
「ええ……そうね……けど」


そう言った彼女は、何処か寂しそうな表情をして。


「叶うといいね……私はもう、無理だから。もう遅いから」


そう、呟いた。

けど、それは僕を見つめていない。
何処か遠くを見ているようだった。
そんな、彼女に何か声をかける事なんてしない。
僕は、関係ないし。

それに、僕の想いは叶わないものだ。


好きな彼女が見ているのは僕じゃない。


きっと――――。





「まあ、応援ぐらいはしてやる。あんた不器用そうだし」
「ガキに言われたくないよ」

大河の意地の悪そうな笑みに僕は文句を言う。
少なくとも、こんな小さな子に言われる筋合いはない。

「うっさいわね。これでも高校生よ」



……年上だった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





ふらふらと歩く。
よくわからなかった。
境内をぐるぐると回る。
どうして、こうなったのだろう。
わたしはどうして、こうなったのだろう。

わたしが何かしたのかな。
何かしたからこうなったのかな。
わからないな、よくわからない。


ハジマリは何時だったのだろう。
浅羽と出逢ったときから。

でも、それ自体はとても平凡な出逢いのはず。
そして、平凡な物語のはずなのに。

何処から狂い始めたのだろう。

一体何処から……






……………………………………あれ?


わたしと浅羽が拗れたのって何だっけ。

何があったから、拗れたんだっけ。






…………………………あれ?


ああ、そうだ、あの少女だ。
非日常な少女のせいだ。

名前は、


いり……いり



……あれれ?



そうだ、かなだ。
あの子が現れて。
何を……したんだっけ。

あの子はそもそも


……どんな子だっけ?


何……なんだろう?
よくわからない。
これは、なんだろう?


この消失感は何だろう……?
この喪失感は何だろう……?


嫌だ、怖い。
嫌だ、怖い。


失いたくない。
何も、何も。




わたしは………………失いたくない。


何かがよくわからないけど

怖い。

ただ、怖い。


全てが無くなってしまう消失が。
全てが終わってしまう喪失が。




本当に――――怖い。







【C-2/神社 境内/一日目・夕方】

【須藤晶穂@イリヤの空、UFOの夏】
[状態]:意気消沈、『喪失』への恐怖
[装備]:園山中指定のヘルメット@イリヤの空、UFOの夏
[道具]:デイパック、支給品一式
[思考・状況]
 基本;生き残る為にみんなに協力する。
 1:…………………………怖い。
 2:部長が浅羽を連れて帰ってくるのを待つ。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





皮肉かもしれない。

主人公になれなかった人間が。

主人公を、ヒーローを、他人に譲った人間が。


一度、命を落として。


また、主人公になろうとしている。



そんな、皮肉に満ちた物語が。


静かに始まろうとしている。




【C-2/神社/一日目・夕方】

ヴィルヘルミナ・カルメル@灼眼のシャナ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、カップラーメン一箱(7/20)、缶切り@現地調達、調達物資@現地調達
[思考・状況]
 基本:この事態を解決する。しばらくは神社を拠点として活動。
 1:神社を防衛しつつ、御坂美琴とキョン。炎髪灼眼の討ち手と島田美波の帰りを待つ。
 2:状況に応じて、警察署や南の方にいるであろう上条当麻への捜索隊を編成して送り出す。
 3:ステイルは、警戒しながらも様子を見守る。

【逢坂大河@とらドラ!】
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)、右腕義手装着!
[装備]:無桐伊織の義手(右)@戯言シリーズ、逢坂大河の木刀@とらドラ!
[道具]:デイパック、支給品一式
     大河のデジタルカメラ@とらドラ!、フラッシュグレネード@現実、無桐伊織の義手(左)@戯言シリーズ
[思考・状況]
 基本:馬鹿なことを考えるやつらをぶっとばす!
 0:まだ、食べる。
 1:ステイルはちょっと応援


【ステイル=マグヌス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:“トーチ”状態。ある程度は力が残されており、それなりに考えて動くことはできる。
[装備]:筆記具少々、煙草
[道具]:紙袋、大量のルーン、大量の煙草
[思考・状況]
 基本:インデックスを生き残らせるよう動く。
 0:食事をとる。
 1:今は連絡待ち。
 2:とりあえずある程度はヴィルヘルミナの意見も聞く。
[備考]
 既に「本来のステイル=マグヌス」はフリアグネに喰われて消滅しており、ここにいるのはその残り滓のトーチです。
 紅世に関わる者が見れば、それがフリアグネの手によるトーチであることは推測可能です。
 フリアグネたちと戦った前後の記憶(自分がトーチになった前後の記憶)が曖昧です。
 いくらかの力を注がれしばらくは存在が持つようになりました


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前:とおきひ――(forgot me not) ステイル=マグヌス 次:intermezzo――(間奏)



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