ラノロワ・オルタレイション @ ウィキ

忘却のイグジスタンス

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忘却のイグジスタンス ◆LxH6hCs9JU



 夕闇に満たされつつある飛行場。
 長らく使われていないように思える滑走路の端から、音が響いてくる。
 飛行機の離陸と着地を補助するためのライトアップは必要最小限で、明滅する灯りからはどこか寂れた雰囲気が感じられた。
 寂寞とした僻地には違いない。だがそこに満ちる音は活気の表れであるともいえ、事実確かに、飛行場の隅には一組の男女が騒がしく活動していた。

「なんだそのへっぴり腰はっ。そんなことでは鴨にも逃げられぞ!」

 響く音は二種類。
 一つは女と銃が鳴らす発砲音。一つは男が発する罵声だった。

「いいか! 貴様は最低のウジ虫だっ! ダニだ! この宇宙で最も劣った生き物だ!
 俺の楽しみを教えてやろうか? それは貴様の苦しむ顔を見ることだ!
 腐った●●のようなツラをしおって、みっともないと思わんのか、この●●の●め!?
 ●●が●●たいなら、この場で●●●を●ってみろ! ●●持ちの●どもっ!」

 日常会話で用いるべきではない、それも女性に向けるには論外と言える下品な単語を多用しながら、男は銃声を鳴らす女を罵倒する。
 女の名前は黒桐鮮花。前方に置いたドラム缶、その上に置かれたさらに小さな塗料入りの缶を狙い引き金を絞っている。
 男の名前は相良宗介。鮮花の後方で姿勢正しく屹立し、鋭い眼光と激しい声でもって彼女の射撃を監督している。

「どうした! 命中精度がさらに下がっているぞ!? やはり貴様は●●の●か!
 悔しければ反論ではなく成果で見返してみろ! それができなければ貴様は●●以下の●●だ!
 ノルマがこなせるまでメシにありつけると思うなよ! ここは●●でもなければ俺は貴様の●でもない!」

 鮮花が引き金を絞り狙いが外れるごとに、宗介は罵声を放った。ドラム缶奥の壁には虚しくなる数、弾痕が刻まれている。
 相良宗介、彼の階級は『軍曹(サージェント)』だ。鮮花に浴びせる罵倒の数々は、訓練場では大して珍しいものでもない。

「もういい、いくらやっても弾の無駄だ! 貴様は無為に資源を浪費するだけの●●だ!
 ●●●でももう少し生産性があるぞ、悔しいとは思わんのか!? ●●を生むだけしか脳のないクズが!
 なんだその反抗的な目つきは、瞼よりも足を動かせ! 貴様の●はなんのためにある? ●●●を●●だけの役たたずか!?」

 塗料入りの缶がいつまで経っても弾け飛ばないので、教官は業を煮やし、教え子に飛行場での走りこみを命じた。
 しぶしぶといった様子で指示に従う鮮花。彼女は教えを請う側の人間だが、別に階級章つきの軍人というわけではない。
 ただの女子高生である。それも、世間ではお嬢様学校として知れ渡っているところの学生だ。淑女と言ってしまってもいい。

 そんな自分がなぜ、意味はよくわからないがおげれつであることだけはわかる罵声を浴びせられているのだろう……。
 根が素直な鮮花は、懊悩しながらも律儀に走りこみを続けていた。

「そのたるんだ走り方はなんだ!? 貴様は目の前に●●●がなければやる気にもなれないのか!
 甘ったれるなよこの●●●●がっ! どうやら貴様の●に●をつけてやる必要があるようだなっ。
 まったく手をわずらわせやがって、貴様は俺の●●●か!? ●●の●●にでもなったつもりか!?
 戦場に立つ気がないのなら●●●●●●●●で●●でもやっていろ、このあばずれがっ!」

 しかしいい加減、堪忍袋の緒も切れそうになってきた、そのときである。


 スパン!


 快音が、宗介の後頭部から響いた。リリアがハリセンで思い切りぶっ叩いた音だった。

「痛いじゃないかリリア」
「うっさい! さっきからなに下品なこと口走ってるのよ!」
「なに、以前、所属する学校のラグビー部を指導したことがあってな。そのときの経験を活かしたまでだ」
「らぐびー……?」
「知らないか? 日本を初めとした国々で普及しているスポーツなのだが」
「ど、どこにそんなお下劣なスポーツをする奴らがいるっていうのよ!」
「お下劣などと言っては郷田部長が悲しむ。彼らは花を愛で、お茶の味を語り合う清い青年たちだった。もっとも、それも過去の話だが」
「過去の話ってどういうことなのよ……嫌な予感がするけど一応、訊いておく」
「うむ。弱小チームだった彼らを強豪校との試合で勝たせろとの指令を受けてな。同僚のマオの勧めにより、海兵隊式の新兵訓練メニューを取り入れてみたのだが……」


 スパン!


 再び快音が響いた。

「痛いじゃないかリリア」
「うっさい!」
「それより、なんだそのハリセンは。どこか懐かしい……いや、俺はそんなものは知らないが」
「あ、これ? クルツがくれたのよ。ソースケに『ツッコミ』するんなら、これを使えって」
「そうか」

 宗介は微妙な顔をした。いつも仏頂面な宗介の微妙な顔は、いつもと絶妙に違っていた。
 そんな宗介とリリアのやり取りを眉間にしわを寄せた目で見やりつつ、鮮花は一生懸命走り続ける。
 リリアも鮮花に目をやりながら言った。

「……彼女、本気なのね」
「向上心は見られるな」
「ソースケも、本気なの?」

 どこか物憂げな視線を向けてくるリリアに、宗介はいつもの調子で返した。

「本気になれと言うのなら、メニューを一から組み直す必要がある。なにしろ期間が限られているからな。
 目的の達成が困難になる可能性を考慮すれば、時間はかけていられない。一日、いや、半日が妥当といったところか」
「あの……なんの話?」
「もちろん、彼女を一流の兵士にするための特訓の話だ。設備もろくに整わぬ環境ではいろいろと不便だが、それも本人しだいだろう。
 食事と就寝、それに排泄の時間を削ればなにも問題はない。あとは体力との闘いだ。正直、あの歳の女性にはキツイ訓練になる。
 しかし曲がりなりにもクルツが見込んだ人物だ。衛生兵(メディック)の不在は痛いが、それでも一割の数字は保てると俺は見る」
「……わたしにはあんたがなに言ってんのかわかんないわ」

 頭をかかえるリリア。
 宗介は飛行場を走りまわる鮮花を目で追いつつ言った。

「俺が見るに、彼女には技術よりもまず心構えが必要だ。現状の訓練に疑問点はまったく見いだせない」
「……前のほうには同意。後ろのほうは激しく否定しとく」

 目的のために自身を鍛え直す鮮花。
 彼女の教官役を務める宗介。
 その構図にため息をつくリリア。

 この奇妙な構図ができあがったのは、つい先ほどのことだった。


 ◇ ◇ ◇


 夕の帳が夜の帳に差し替わり、雲の流れも速くなっていく。
 北方に位置する飛行場では銃声もすっかりやみ、広大な敷地からは人の気配も消えていた。
 唯一、そこが飛行場であることを知らしめる格納庫の中だけは、足を踏み入れてみなければわからない未知の領域だった。


 男と女が一組、近づく。


 格納庫ははたしてもぬけの殻なのか、来訪者が足音を鳴らしても警告の鐘が響いてきたりはしない。
 これが車の走行音であればどうだろうか。中に人がいればあるいは、大慌てで外に飛び出すのかもしれない。


 男の女が一組、立ち止まった。


 ここから先をどう踏み込むべきか議論しているようで、小さな声を交わし合っている。
 男のほうは地べたに顔を寄せ、蟻塚でも探すような仕草で飛行場の敷地を眺め回したりもしている。
 そんな男を見ながら、女は盛大なため息をついたりもしている。


 男と女が一組、また歩を進めていった。


 どうやらまっすぐ格納庫の入り口を目指すようで、男のほうは銃を両手で握っていた。
 女のほうも負けじと、ナギナタと呼ばれる長柄の刃物で武装した。
 かえって邪魔になる、と男は女にナギナタをしまうよう指示した。女は反発した。


 また、ささやかな議論が始まる。そうやって、二人の姿は格納庫に近づいていった。


 ◇ ◇ ◇


「――ひょっとしたら連中、帰ってこないかもしれねえな」

 「え?」と黒桐鮮花が振り向いた。
 古ぼけた照明に照らされた、飛行場内の格納庫。その床に、六人分のマットレスと毛布が並べられている。
 クルツ・ウェーバーはマットレスの上に寝そべりながら、白井黒子が調達した物資の確認をする鮮花に話しかけた。

「ん。いや、ここを出てった連中。戦場のド真ん中でグループが散り散りって、映画とかでもよくあるフラグだろ?」
「戦場って……いやまあ、否定するつもりはないけど、彼女がついっていったんだから大丈夫でしょう?」
「黒子ちゃんのことかい? 不思議な力を持ってるし、あの年頃の女の子にしちゃやるほうだけど」

 だらだら、ごろごろと、とても戦場を口にする者とは思えないリラックスした態度のクルツ。
 射撃の先生――いや、『殺しの師匠』とも言える男の緩みきった姿に、弟子の立場にある鮮花は少しだけムッとした。

「ま、しがない傭兵の予感ってところさ。あんま気にする必要はねーぜ」

 クルツも決して冗談で言っているわけではあるまい。実際にありえる可能性として、最悪の事態を口にしている。
 それでもまるで悪びれず、脳天気でいられるのは、それが彼にとっての最悪ではないからなのだろう。
 いや、『彼にとって』ではない。鮮花にとっても、このまま誰も帰ってこないという事態は最悪たりえない。
 黒桐鮮花は復讐者。復讐者の目的は復讐対象の抹殺。ただそれのみなのだから。

「一蓮托生ってわけでもないんだ。いい加減、そのへん切って捨てようぜ鮮花ちゃん」
「べ、別に心配とかしてるわけじゃ」
「ならそんな顔は見せねえこった。こっちも遊びでやってるわけじゃないんでね」
「……っ」

 ふと、物資の中に手鏡がなかったかどうか探してしまう。
 切って捨てた気ではあった。とっくに割り切ったつもりだった。
 なら自分は、どうして六人分の寝床を用意したりしているのだろうか……と、鮮花は自問し歯噛みする。

「あの、クルツさん」
「どーしたよ、急にかしこまっちゃって」
「もし、六時までに誰も戻ってこなかったら……どうするの?」
「そうだなあ。探しに行く義理はねーし、先に飯食って寝てていいんじゃないかね」

 そんなものか、と鮮花は思う。
 いつの間にか大所帯になってしまったが、今はまた、クルツとの二人きり。
 時間を訓練と休息に当てるのはもちろんだが、今は再認のときでもあるのかもしれない。

 憎悪の再認。復讐心の再認。悪意の再認。殺意の再認。死んでもいい、という思いの再認。

 ありったけを済ませるのに、少女である鮮花はどれだけの時間を費やすだろう。
 蒼崎橙子から魔術を習ったときは、ある意味簡単だった。学習し、理解すればそれでよかった。
 銃は……殺しは、違う。なにより覚悟を保つことが大切だった。鮮度のごとく大切だった。こればかりは記憶力の問題ではない。

「とはいえ、だ」

 緩慢な動作で身を起こし、クルツは頭を掻きながら言う。

「今ここで黒子ちゃんたちと縁が切れる、ってのは好ましい話でもねーな。やっぱ、好き勝手動きまわるんならグループにいたほうがやりやすい」
「逆でしょ? チームを組む際のデメリットって、個人の自由に制約がつくことじゃない」
「チームじゃなくてグループ。組織じゃなく単なる集団なんだよ、俺たちは」

 首を傾げる鮮花に、クルツは低い声で説明を加えた。

「ただ目的地が一緒だっただけ、利害が一致しただけ、特に争う理由がない。だからなんとなく一緒にいる。リーダー不在命令無視しほうだいの自由の集団さ」
「……確かに、それは言えてるかもしれないけど」
「な? 仮にだ、鮮花ちゃんが復讐したい相手――あの男が、黒子ちゃんたちの知り合いとかだったらどうする?」
「殺すわよ。わたしの意思はそれくらいじゃ揺るがない」
「即答はご立派だがね。そしたら今度は鮮花ちゃんが黒子ちゃんに恨まれる番だ。復讐ってのはそういうこと。そのあたりも理解してる?」

 鮮花は即答できず、唇を噛んだ。
 復讐からはなにも生まれない。復讐はまた復讐を生むだけ――映画などでもよくあるテーマだ。
 自分が映画の登場人物であると考えれば、復讐などやめて、ここで話を終わらせることこそが美談の条件なのだろう。

 しかし鮮花はこう考える。
 復讐とは所詮、自己満足だ。

 復讐はまた復讐を生む。復讐を遂げることによってまた別の誰かに恨まれる。それがどうした。
 この身は既に、生きることを放棄している。いや、死んだも同然なのだ。この世界につれてこられた時点で。
 ただ、それでも、たった一つの目的、たった一つの生きる意味――復讐を果たすときまでは、生きていたい。
 もし、誰かが鮮花に復讐をしにくるというのであれば――そのときは甘んじて復讐されてやろうじゃないか。

「ま、覚悟があるのかないのかってのも今更か。話を戻すけど、俺たちみたいなのがグループに紛れるメリットはなんだと思う?」
「……囮と、盾よね」
「すげーな。正解だよ。鮮花ちゃんみたいに、他人の信頼を売ってでも成し遂げたい目的がある場合。仲間なんてのはデコイでしかねーのさ」

 なんともドライな発言だと、鮮花は思った。
 と同時に、クルツの言にかすかな引っかかりを覚える。

「クルツさんは?」
「うん?」
「わたしは目的さえ果たせればそれでいいけど、あなたは違うんじゃないの? 生きて帰る、それが最終目標でしょうに」

 これこそ今更だが――クルツが鮮花につきあう道理など、本来はないのだ。
 何時間か行動を共にしてわかったことだが、彼は面倒見がいいようで、その実かなりのプロフェッショナル思考だ。
 ここぞという場面では情よりも利を優先する、そういうタイプの人間。
 ある意味では、幹也の真逆とも言える――そういう、人間。

「ああ、そうさ」

 鮮花が予想したとおりの言葉が返ってくる。

「だからまー……俺だってずっと君の先生ってわけじゃない。いつかは絶対に、どっちかが切り捨てられる」

 どっちか――そう、それがクルツだとは限らない。鮮花がクルツを切り捨てる場合だって、ありえるのだ。
 両儀式に似たあの獣のような男には、クルツとて憎しみを抱いている。されとて、殺したいほどのものではない。
 利害は一致すれど、その温度差は実のところ大きい。いついかなる場面で、二人が対立する構図になるかはわからなかった。

(いつか……この銃を向ける相手が、彼になることもあるかもしれないってことか)

 鮮花は手元の銃に目をやった。
 コルトパイソン。いざ握るまでは、名前すら知らなかった.357口径リボルバー。
 引き金を絞れば弾はまっすぐ飛ぶと思っていたし、的に当てるのは縁日の射的くらいの難しさだろうと楽観していた。
 現実は、そんなに甘くなかった。そんな風に甘く見ていた自分を、銃に視線を落とすことで見つめ直す。
 わたしは橙子さんに習った魔術でなく、これを復讐の道具に選んだんだな、と。
 改めて、再認する。

「今はまだ足踏みの段階だし、そう怖い顔するもんじゃねーさ。ところでアレ、覚えてるか?」
「アレ?」

 クルツが立ち上がって伸びをする。覚えのない話題を出されて、鮮花はきょとんとした。
 その、一瞬の隙。
 クルツが右足を大きく蹴り上げ、鮮花の握っていた銃を掠め取るように弾き飛ばした。

 コルトパイソンはカランカランと音を立て、格納庫の床を滑る。
 突然のことに驚いた鮮花は、思わず声を荒らげた。

「い、いきなりなにをっ!」
「あー、ごめんごめん。そう怖い顔しなさんな。言っとくけど、こりゃ鮮花ちゃんのためなんだぜ?」

 似合わないウインクをして、クルツは一笑。
 顔は二枚目だが、こういう仕草が似合うタイプの男ではない。
 鮮花はしかめっ面で答えた。クルツは構わず、蹴り飛ばした銃を拾いにいく。

「なんせ、俺の同僚は『用心で』学校の昇降口に地雷埋めるような野郎だからな。
 思いつめた顔で銃なんて睨みつけてりゃ、死角から撃たれたって文句は言えねーさ」

 なにを言っているのかわからない。
 なにを言っているのかはわからないが――銃を拾いにいったクルツのほうに視線をやってみると、

「なー、ソースケ?」

 その奥側、格納庫の入り口付近に、見慣れぬ男女が一組立っていることに気づいた。
 その内の一人、男のほうが、こちらに銃を向けていることにも気づく。
 鮮花はすぐさま警戒に努めようとするが、

「……肯定だ」

 男は、クルツの呼びかけに答えるとすぐに銃を下ろした。


 ◇ ◇ ◇


「こちらの接近に気づいたことはさすがと言っておこう。しかし今の行動には感心できん。
 素人の手から、それもセイフティもついていないコルトパイソンを蹴り飛ばすなど、暴発の危険性を考慮しなかったのか。
 それに飛行機の格納庫を拠点にしているのはいいが、対人トラップの一つも設置していないのはどういうことだ?」

 身体に傷と火傷の痕が見られるその少年――相良宗介との邂逅は、そんな風に始まった。

 格納庫に敷いたマットレスを会議のテーブルとし、まずは自己紹介、そして行動経緯についての説明と情報提供をお互いに。
 宗介はクルツと同じ〈ミスリル〉という組織に所属する少年で、いわば同僚だった。
 宗介と共にやってきた栗色の髪の少女はリリアという名で、出会って以来彼と行動を共にしているらしい。
 二人は飛行機目当てに飛行場を目指し、さらには近隣で浅羽直之や白井黒子と遭遇し、ここにクルツがいることを知ったそうだ。
 つらつらと、お互いの辿ってきたルートを無駄なく齟齬なく伝え合っていく。

「……なんだか手馴れてるのね、二人共」
「作戦行動中の情報交換は迅速かつ的確に、要点のみを抽出して提供しあうのが基本だ。俺もクルツもアマチュアではない」
「こういうのは、ホントは仕切り役がいてくれたほうが楽なんだがね。ま、文句の言えるような状況でもねーけどよ」

 宗介とクルツは単なる同僚というだけではなく、チームを同じくする相棒とも呼べる仲らしい。
 その情報交換は自身らがスペシャリストを自称するのも頷ける手際で、まったくと言っていいほど無駄がなかった。
 相手がどこでどういった事件に遭遇し、どのような成果を得たのか。ほとんど同席しているだけの鮮花とリリアにも、それを事細かに理解することができた。

「しかし、蜘蛛の糸ねえ」

 クルツが興味を持ったのは、宗介たちが飛行場を進路とした動機――飛行機を飛ばしてみる、という部分だった。

「空の上……ってのは、確かに盲点だったな。だがよ、実行するにはちとリスクが高すぎねえか?」
「四の五の言っていられる状況でもないだろう。現状の手札は極めて少ない。切れるカードはとにかく切っておくべきだ」
「言えてらあな。となると、必要になってくんのは航空機の燃料か。あいにく、俺たちの中に持ってる奴はいねえぞ」
「そうか。ならば、自動車用の燃料で代用するという案を本格的に視野に入れなければならないな」
「骨董品みてーなプロペラ機でお空の調査はいいんだけどよ。俺としちゃ、爆発するマネキン使いってのが懸念だね」
トラヴァス少佐のことか。彼の目論見は不明瞭だが、未だこの近辺に潜伏している可能性は高いと見る」
「一度飛んじまえば、そこはもう逃げ場のない籠の中だ。ただでさえここには、RPGぶっ放す女の子がいるくらいだしな」
「被弾すれば最後、撃墜は免れないだろう。しかし空域が徐々に狭まっている現状、障害を取り除く暇も惜しい」
「せめてもうちょい、マシな機体が置いてあればなあ。ホヴィーみたいなのもあるんだし、誰か〈ペイブ・メア〉でも持ってねーかね」

 飛行機を飛ばす、それ自体はもはや不可能なことではないだろう。
 しかし設備も物資も限られるこの状況下、伴なうリスクもそれなりのものであると判断できた。
 宗介とリリアを襲ったトラヴァス少佐、その裏に潜む者、鮮花やクルツを襲った獣のような男に、
 炎を使う魔術師、それにティーの知己であるシズを殺害した人物と、敵も多い。

 加えて、外堀から埋められていくこの世界のルール。
 時間の制約を設けた背後の思考を辿れば、焦るのは得策ではないようにも思える。

 せめてこの場にもう一人、宗介とクルツの姉貴分であるメリッサ・マオがいてくれれば、判断は彼女に任されたのだろう。
 もしくは、二人の直属の上司にしてこういった作戦プランを検討することに長けたテレサ・テスタロッサ大佐。
 宗介もクルツも未だその所在を掴めずにいる、彼女との合流さえ果たせれば――より本格的な『プロの仕事』が行えたに違いない。

「ところで」

 議論も行き詰まり、宗介は話題を変えることにした。

「一つ訊くが、彼女に射撃の指導をしていたのはなんのためだ?」

 視線で示す彼女とは、響いていた銃声の正体にして発砲を繰り返していた張本人、黒桐鮮花。
 宗介は格納庫に入るよりも先に、外に即席の試射場が設けられていたことを確認している。
 発砲音から推測した銃の型も、先ほど鮮花が握っていたコルトパイソンと一致するため、宗介はそのように当たりをつけたのだ。
 紛れもない、戦場を生き抜いてきた兵士の鋭い視線に射竦められることもなく、鮮花は宗介の目を見て答える。

「復讐のためです」

 それは先んじて説明しようとしたクルツを制する結果となった。心なしか、渋い顔を浮かべている。

「話にもあったでしょ。わたしたちを襲った、式に似た男……わたしはあいつに、兄を殺されました。
 だからわたしは、あいつを殺す。兄さんの仇を討つ。銃は、そのために選んだ殺害手段。
 この目的を果たすためなら、他のものはなんにもいらない――格好悪く生き足掻いてみせるわよ、いくらでも」

 鮮花は、宗介やリリアからの心象など考慮に置いていない。
 この気持ちは正直に、たとえ他者に否定されようとも偽りなく、貫き通さなければならないのだ。
 そうでなくては、覚悟は保てないから。

「ちょっと待って」

 まず反応を返したのは、宗介ではなくリリアのほうだった。
 リリア・シュルツ。印象的だったのでよく覚えている。名簿に載っていたフルネームは確か、もっと長かったはずだ。
 そしてシュルツの名を持つ人間はこの地にもう一人、鮮花に対する幹也のように存在していたはず――

「復讐って……なに? どういうこと?」
「仇討ちっていう意味ですよ。この恨みはらさでおくべきか、ってやつ。外人さんみたいだけど、わかる?」
「わかるわよ、そんなの。わかるけど、なんで、そんな……あなたが殺すとか、他はいらないとか……」

 言いづらそうにするリリアに、鮮花はふんと鼻を鳴らした。

「わかればそれでよし。邪魔さえしなければ。別に、理解や同情を求めているわけじゃないしね」

 外行き用の上品な態度を一変して、鮮花は陰険な素振りを見せつける。
 綺麗事を聞くつもりはなかった。好かれようとも思わない。この手の手合いは、鬱陶しいだけ。
 自分は結局のところ、堕ちた人間なんだと――ここにきて、また一つ再認する。

「あなただって、肉親の一人くらいは殺されたんじゃないの? アリソンっていう人は、ご姉妹かしら?」
「……ッ!」
アリソン・ウィッティングトン・シュルツ空軍大尉はリリアの母だ。惜しい人材を亡くしたと言える」

 わざとらしい悪態をつく鮮花。
 そのフォローに宗介が回ろうとするが、どうやらそれは逆効果のようだった。

「人材って、なによ……ソースケ、ママのことをそんな風に見てたの」
「む……すまん。少し言葉が悪かった。気に障ったのであれば謝罪する」

 頭を下げる宗介に、リリアはきつく唇を噛む仕草をした。
 その姿に鮮花は親近感を持つと同時、言いようのない苛立を覚える。
 彼女は――自分とは違うな。
 そばにいた人間の差なのかもしれないが――とにかく、自分とは違う。

「しかしクルツ。非効率的にもほどがあるぞ。このような状況下で新兵訓練など、つけ焼刃にもならん」
「別に鮮花ちゃんを戦場に立たせよーなんて気はさらさらないさ。こりゃちょっとした『気まぐれ』」
「気まぐれで時間を浪費するなどナンセンスだ。そもそも、おまえが黒桐を指導する動機はなんだ?」
「だから、それこそ気まぐれだっつーの。なあおい、ソースケよ」

 クルツは頬杖をつきながら言った。

「おまえがカナメちゃんじゃなく、リリアちゃんを守ってんのだって、そういう『気まぐれ』なんじゃないのか?」

 抑揚もない、語気が強いわけでもない、そのなんてことはない問いに――宗介は、口ごもった。
 鮮花は直感で、この相良宗介という男の人間関係もなかなか複雑っぽいな、と思った。
 肯定も否定もしない代わりに、宗介はある提案を口にする。

「事情は把握した。リリア。俺たちもクルツたちのグループに加入し、しばらくはこの飛行場をベースにしたいと思うのだが、どうだ?」
「……異議はなし。ソースケに任せる」
「そうか。では、ひとまずは休憩ということにしよう」
「飛行機飛ばすっていうのは結局どーすんだ?」
「保留だ。他の者たちの意見も聞いてみたいしな。アマチュアに意見を求めるのは褒められた行為ではないが、こちらの専門外の知識が役に立つとも限らん」
「ま、魔術や超能力なんてーのは俺たちのほうがアマチュアだしな」
「さしあたって、俺も黒桐の射撃訓練につきあいたいのだが、腕前のほどを見せてもらってもいいだろうか?」

 思わぬ申し出に、鮮花は顔を顰めた。
 欺瞞に満ちた眼差しで宗介を睨む。

「……あなた、他人に指導とかできるタイプの人なんですか?」
「問題ない。新兵訓練ならばそれなりに経験がある」
「クルツ先生。こう言ってますけどどうなんですか?」
「信頼していいと思うぜ? 狙撃屋の俺よりもかえって上手いかもな」

 ほわぁ~っとあくびをするクルツ。
 どうにも心配だったが……プロはプロ。クルツの同僚ともなれば、鮮花よりも銃に秀でているだろうことは否定できない。

 結局、鮮花は宗介の申し出を受け入れ、日が完全に落ちきる前にもう少しだけ練習をしておくことに決めた。
 そして、冒頭のような『やりすぎのウォー・クライ』が始まった、というわけだった。


 ◇ ◇ ◇


「はぁ~……」

 憂鬱なため息をついて、リリアは格納庫の中に戻っていった。
 マットレスの上ではクルツが寝そべり、ニヤニヤした視線をリリアに送っている。

「いやあ、いい音だったぜ。なんだ、ソースケもいい相方(ツッコミ役)を見つけたみたいじゃないか」

 ブロンドの長髪、タレ目でおどけていて、いかにも軽薄そうなお調子者。
 第一印象から覗えば、あの仏頂面の宗介の友人とはとても思えない。
 しかし、先の情報交換の場面を鑑みれば、紛れもないスペシャリストであることがわかる。
 飛行機の操縦ができるとはいえ、リリアはアマチュアもアマチュア。彼に意見するようなことはなにもなかった。
 ただ――アマチュアはアマチュアなりに、おせっかいをやきたくなることだってあるのだ。

「あなた、クルツさんだっけ?」
「クルツでいいぜ。俺も君のことはリリアちゃんって呼ばせてもらう」
「訊きたいんだけど」
「質問? なんでもどーぞ」

 リリアは膝をたたんでマットレスの上に座る。

「さっきは気まぐれって言ってたけど……クルツはどうして、アザカに銃を教えようとしたの?」
「せがまれたからさ。俺って、女の子の頼みごとは断れない奴なんだよねえ」
「……そんな理由で、仇討ちに加担なんてっ」

 目を伏せながら言うリリアに、クルツはおどけた態度を崩さない。
 ごろごろとマットレスの上を転がりながら、仰向けになて天井を仰ぐ。

「復讐はお嫌いかい? 人殺しはいけないことだって、リリアちゃんはそういうこと考えるような女の子なんだ?」
「そりゃ、状況が状況だし、すべてを否定するわけじゃないわよ。けど、アザカみたいなのが躍起になって銃を撃つのは……なんか、違う」

 リリアはまだ自分の中で意見がまとまっていないようで、言葉を濁す。視線も宙を泳いでいた。
 そんな彼女に、クルツは薄く笑う。

「ま、俺たちは人間だからな。ゲームの駒みたいに、規則正しくは動けないさ」
「どういうこと?」
「俺たちはみんな、それぞれ共通の目的を持ってるんだ。こっから家に帰る、っていうな」
「……アザカは違うみたいだけどね」

 哀しそうに言うリリアを見ても、クルツの声が重くなることはなかった。

「どうすりゃいいのかなんて簡単だ。家族や同僚ととっとと合流して、脱出ルートを確保して、障害は排除して、三日以内に全部済ませればそれでいい。
 ただ俺たちは人間だから、こうやって休むことも必要になってくるし、別の目的を持った奴と人間ドラマしちまうことだってあるのさ。
 誰もがみんな博愛主義者ってわけじゃないし、守るより殺すほうが得意な奴がここにいたことだって俺は知ってる。そういう奴らはまだごまんといるな。
 いろんな奴がいるからこそ、諍いは避けられない……リリアちゃんにだって、知り合いはいるんだろう? 俺やソースケにだっているし、鮮花ちゃんにだっている。
 そいつらまとめてここに呼び寄せて、家に帰るための作戦片っ端から実行して、ってな具合に進められりゃ、話はそんなに長くはならないんだよ」

 上手くいかないな、とクルツは失笑気味に漏らした。
 本当に、上手くいかない。リリアもこればかりは同感だった。
 ママは死んじゃうし、トレイズはどっかほっつき歩いてるし、トラヴァス少佐は意味がわからない。
 ……本当に、上手くいかないことばかりだ。
 どうしてこんなに上手くいかないんだろう、とリリアもクルツに釣られるように天井を仰いだ。

「……って、なんかうまい具合にはぐらかされた気がするんだけど」
「うん? そうか?」
「結局のところ、クルツはアザカにどうしてもらいたいのよ? 復讐、遂げてほしいの?」
「そりゃ本人がお望みっていうんなら」
「それでアザカ、死んじゃうかもしれないのよ?」
「かわいい女の子が死ぬのはいただけないなあ」
「……ソースケも大概だけど、クルツもよくわかんないわ。わたしには」
「ふふん。男の子ってのは不思議がいっぱいなのさ」

 とことんまで嘲るクルツだった。
 まったく……と呟きながら、リリアは今日の寝所となるマットレスの周りを整え始めた。

 用意されているマットレスは《五つ》。
 現在別行動中の人間は《三人》だから、そこに宗介とリリアが加わるとマットレスは《二つ》足りなくなってしまう。
 クルツに尋ねると、一応予備も用意してあるとのことで、リリアは自分と宗介の分、合わせて二つのマットレスを準備した。

 これでマットレスの数は《七つ》。
 リリア、宗介、クルツ、鮮花、それに今はここを離れている《白井黒子、ティー、浅羽直之の三人》を加えれば、ちょうど数が合う。
 白井黒子と再会したらきちんと挨拶しなくちゃな、とか、浅羽直之に会ったらなにを話せばいいのだろう、とか、リリアはそんなことを考えながら毛布も引っ張り出していた。

「そういや、ぼちぼち放送か……そっちの準備も進めとかないとな」
「放送……」

 クルツがおもむろに起き上がり、鞄から筆記用具を取り出している。
 六時の定時放送ももう間もなくだ。そこでは何人か、新たに脱落者として名前が挙がる者もいるのだろう。
 リリアは息をのみ、手元の時計に目をやった。
 時間は残酷だから懇願しても止まってなんてくれないが、時計は覚悟を決めるくらいの猶予は与えてくれる。

「最初は《59人》もいたのにね。この世界どんどん狭くなってくるし、中にいる人はだんだん少なくなっていくんだ……」

 辛辣そうなリリアの言葉に、クルツは適当な相槌を打った。
 それくらいなもので、別段、違和感を覚えたりはしなかった。


 世界は既に、書き換えられた後だったから――彼も彼女も、この世の本当のことには気づけないでいた。



【B-5/飛行場・格納庫内/1日目・夕方(放送直前)】

リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ@リリアとトレイズ】
[状態]:健康
[装備]:ハリセン@現地調達、早蕨薙真の大薙刀@戯言シリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
 基本:がんばって生きる。憎しみや復讐に囚われるような生き方をしてる人を止める。
 1:飛行場にてしばらく休憩。白井黒子らとの合流、意見交換を済ませる。
 2:飛行機を飛ばしてみる。
 3:トラヴァスを信じる。信じつつ、トラヴァスの狙いを考える。
 4:トレイズが心配。トレイズと合流する。

【クルツ・ウェーバー@フルメタル・パニック!】
[状態]:復讐心、左腕に若干のダメージ
[装備]:ウィンチェスター M94(7/7+予備弾x28)
[道具]:デイパック、支給品一式、ホヴィー@キノの旅、ママチャリ
     缶ジュース×17(学園都市製)@とある魔術の禁書目録、エアガン(12/12+BB弾3袋)、メッセージ受信機
     デイパック、支給品一式、黒子の調達した物資
     姫路瑞希の手作り弁当@バカとテストと召喚獣、地虫十兵衛の槍@甲賀忍法帖
[思考・状況]
 基本:生き残りを優先。
 1:寝床と食事の用意をしながら黒子たちの帰りを待つ。
 2:その後は状況に応じて休息をとり、また今後の動きについて相談しあう。
 3:テッサ、かなめとの合流を目指す。
 4:鮮花の復讐を手助けする。
 5:メリッサ・マオの仇を取る。
 6:摩天楼で拾った3人。特に浅羽とティーの動向には注意を払う。
 7:次のメッセージを待ち、メッセージの意味を考える。
[備考]
 ※土御門から“とある魔術の禁書目録”の世界観、上条当麻、禁書目録、ステイル=マグヌスとその能力に関する情報を得ました。
 ※最初に送られてきたメッセージは『摩天楼へ行け』です。次のメッセージがいつくるかは不明です。



【B-5/飛行場・格納庫内/1日目・夕方(放送直前)】

【相良宗介@フルメタル・パニック!】
[状態]:全身各所に火傷及び擦り傷・打撲(応急処置済み)
[装備]:IMI ジェリコ941(16/16+1、予備マガジンx4)、サバイバルナイフ
[道具]:デイパック、支給品一式(水を相当に消耗、食料1食分消耗)、確認済み支給品x0-1
[思考・状況]
 基本:この状況の解決。できるだけ被害が少ない方法を模索する。
 1:鮮花の射撃訓練を監督。まずは体力作りだ●●●●! そんな●●のような走りでメシにありつけると思うなよ!
 2:飛行場にてしばらく休憩。白井黒子らとの合流、意見交換を済ませる。
 3:飛行機を飛ばしてみる。空港へ行って航空機を先に確保する? 航空機用の燃料を探す? 自動車の燃料で代用を試してみる?
 4:まずはリリアを守る。もうその点で思い悩んだりはしない。
 5:リリアと共に、かなめやテッサ、トレイズらを捜索。合流する。

【黒桐鮮花@空の境界】
[状態]:復讐心、疲労(中)
[装備]:火蜥蜴の革手袋@空の境界、コルトパイソン(5/6+予備弾x7)
[道具]:デイパック、支給品一式、包丁×3、ナイフ×3
[思考・状況]
 基本:黒桐幹也の仇を取る。そのためならば、自分自身の生命すら厭わない。
 0:な、なんで、わたしはっ、走ってるんだ、ろう……。
 1:寝床と食事の用意をしながら黒子たちの帰りを待つ。
 2:暇な時間は”黒い空白”や”人類最悪の居場所”などの考察に費やしたい。
[備考]
 ※「忘却録音」終了後からの参戦。
 ※白純里緒(名前は知らない)を黒桐幹也の仇だと認識しました。


【ハリセン@現地調達】
白井黒子が調達した物資の中に『なぜか』紛れていた紙製のハリセン。
安全快音を保証すると共に、宴会の席で使えば大ウケ必至な信頼のパーティーグッズです。


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