※ ※ ※ ※ ※
工場入り口付近でのアリサの苦労は、まだ終わっていなかった。
こんなに手間がかかるとは、完全に計算違いである。
こんなに手間がかかるとは、完全に計算違いである。
「絶対見ないでよ。見たら殺すからね」
『アリサさん、ここじゃその言葉、シャレになりませんよ~』
『アリサさん、ここじゃその言葉、シャレになりませんよ~』
それもそうだと思い、言い直す。
「殺さないけど、見たら半殺しにするからね」
『自分は見たくせに?』
「やかましい!」
『自分は見たくせに?』
「やかましい!」
悪態を吐きながら手早く制服を脱ぎ、畳む手間も惜しんでインデックスに手渡す。
「はい。着かたはわかるわよね」
「うん。白くて長いから、ちょっと修道服に似てるかも」
「着る時は、その恥ずかしい服の上から着ちゃいなさい。
でもちょっと待って、まずは包帯を巻かないといけないから」
「うん。白くて長いから、ちょっと修道服に似てるかも」
「着る時は、その恥ずかしい服の上から着ちゃいなさい。
でもちょっと待って、まずは包帯を巻かないといけないから」
少し考えて、おもむろにスリップも脱ぐ。
上半身は完全に裸になり、あとはショーツ一枚きりである。
上半身は完全に裸になり、あとはショーツ一枚きりである。
「ねえ、まだ? いつまで目を瞑ってればいいの?」
「まだ! 絶対見ないでよ! ルビー、もう一度ナースモードお願い」
『ええー? もう着ちゃうんですか?
せっかくですから、もうちょっとリンクさんを悩殺してからにしましょうよ』
「しない、してない、するかっ!」
「まだ! 絶対見ないでよ! ルビー、もう一度ナースモードお願い」
『ええー? もう着ちゃうんですか?
せっかくですから、もうちょっとリンクさんを悩殺してからにしましょうよ』
「しない、してない、するかっ!」
お見事な三段活用です~、と言いながら、ルビーは七色の光を撒き散らした。
完全にからかわれているのだが、もうあまり腹もたたない。慣れとは怖いものである。
それにしても、何度多元転身を繰り返したかわからない。
これって身体に悪かったりしないでしょうね、とか心配になったりもする。
完全にからかわれているのだが、もうあまり腹もたたない。慣れとは怖いものである。
それにしても、何度多元転身を繰り返したかわからない。
これって身体に悪かったりしないでしょうね、とか心配になったりもする。
贄殿遮那を裁断機代わりにして、スリップを繊維に沿って裂く。
これって、お気に入りだったのよね。まあ、そんな場合じゃないんだけど。
シルク100パーセントの無駄に高級な即席包帯を作りながら、アリサは思わず呟いた。
これって、お気に入りだったのよね。まあ、そんな場合じゃないんだけど。
シルク100パーセントの無駄に高級な即席包帯を作りながら、アリサは思わず呟いた。
「……なのは、あたしが行くまで早まった真似しないでよ」
途端に反応するインデックス。
「なのはがここにいるの !? なのは! 捜してたんだよ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! まだあんた服着てないでしょ!
それとあんた、いろいろ捜しすぎ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! まだあんた服着てないでしょ!
それとあんた、いろいろ捜しすぎ!」
暴れるインデックスを取り押さえている後ろでは、リンクがじっと顔を両手で覆いながら放置されていた。
「ねえ、まだ? いつまで目を瞑ってればいいの?」
※ ※ ※ ※ ※
「聞いたぞ。あちこちではしゃぎ回っていたそうだな」
軽口を叩きながら、エヴァはなのはを観察する。
目が澱んでる……いや、腐ってるな。
以前とまるで違うなのはの有様に、エヴァは密かに奥歯を噛み締めた。
目が澱んでる……いや、腐ってるな。
以前とまるで違うなのはの有様に、エヴァは密かに奥歯を噛み締めた。
「……その子はどうしたの、エヴァちゃん」
天井近くで凍りつくパタリロを見上げながら、なのはが問う。
「ああ、コイツは最初の時に、ジェダにご褒美を請求したヤツだよ。気にすることはない」
「……そうなんだ。でも、おかげで、助からないはずだった子を一人助けられたから、
それについてはお礼をいうべき……なのかな?」
「……そうなんだ。でも、おかげで、助からないはずだった子を一人助けられたから、
それについてはお礼をいうべき……なのかな?」
なのはの視線が泳ぐ。
まるで、心ここにあらずといった様子だ。
よくないな、とエヴァが思った途端、一転してなのはは毅然とエヴァを見据えた。
まるで、心ここにあらずといった様子だ。
よくないな、とエヴァが思った途端、一転してなのはは毅然とエヴァを見据えた。
「それで、エヴァちゃんも殺し合いに乗っちゃったの?」
「だとしたら、どうする?」
「殺すよ。私はもう、引き返せないから」
「即答とは恐れ入ったな」
「だとしたら、どうする?」
「殺すよ。私はもう、引き返せないから」
「即答とは恐れ入ったな」
エヴァは冷ややかに目を細める。情緒不安定になっているのが明らかだった。
ならば――さらに揺らして底を見極めてやろう。
ならば――さらに揺らして底を見極めてやろう。
「それにしても、殺すときたか。
貴様は人を救うために覚悟を決めたんじゃなかったのか?
あの鉄槌の騎士を生かしておいた意味がないな」
「……そんな甘いことじゃ、結局誰も救えないんだよ。
目の前で誰かを殺しそうになってる人を、殺さずに捕まえるなんて現実的じゃない。
たとえ捕まえたとしても、その後どうするの? ずっと見張るの? 逃げられたらどうするの?」
「……」
「説得だって、通じる相手ばっかりじゃないんだよ。
殺せる時に殺しておかないと、後で悔やんでも遅いから」
貴様は人を救うために覚悟を決めたんじゃなかったのか?
あの鉄槌の騎士を生かしておいた意味がないな」
「……そんな甘いことじゃ、結局誰も救えないんだよ。
目の前で誰かを殺しそうになってる人を、殺さずに捕まえるなんて現実的じゃない。
たとえ捕まえたとしても、その後どうするの? ずっと見張るの? 逃げられたらどうするの?」
「……」
「説得だって、通じる相手ばっかりじゃないんだよ。
殺せる時に殺しておかないと、後で悔やんでも遅いから」
言葉を交わしつつ、微妙に距離を取りながら、二人は徐々に部屋の中心へと移動していた。
緊迫した空気が漂う。
緊迫した空気が漂う。
「なるほど、見事な理屈だ。
つまり、貴様が弱いからというわけだな」
「……そう。そうかも知れないけど、私は私にできることをするだけ。
私が悪い人を殺せば、それだけみんなの生存率があがるから」
「悪い人――というのはどうやって見分ける?」
「人殺しは悪い人だよ。……うん、私も含めてね」
「質問の答えになってないな。人殺しは悪人で、悪人は人殺しか?」
つまり、貴様が弱いからというわけだな」
「……そう。そうかも知れないけど、私は私にできることをするだけ。
私が悪い人を殺せば、それだけみんなの生存率があがるから」
「悪い人――というのはどうやって見分ける?」
「人殺しは悪い人だよ。……うん、私も含めてね」
「質問の答えになってないな。人殺しは悪人で、悪人は人殺しか?」
エヴァの問いに、なのはの顔にクエスチョンマークが浮かぶ。
「どういう意味?」
「必要条件と十分条件の話さ。数学は苦手か? ずいぶん単純に考えているようだが、
人を殺してしまった善人はいないのか、人を殺さない悪人はいないのかと訊いている。
考えたこともなかったか? 善人であっても、状況に迫られれば人を殺めるかも知れんし、
自らの手を汚さず人を死に追いやる悪人だっているかも知れん。
それをどうやって見極めるんだと訊いているんだ、高町なのは」
「必要条件と十分条件の話さ。数学は苦手か? ずいぶん単純に考えているようだが、
人を殺してしまった善人はいないのか、人を殺さない悪人はいないのかと訊いている。
考えたこともなかったか? 善人であっても、状況に迫られれば人を殺めるかも知れんし、
自らの手を汚さず人を死に追いやる悪人だっているかも知れん。
それをどうやって見極めるんだと訊いているんだ、高町なのは」
しばし、沈黙が漂う。
エヴァは左足を引き、やや半身に構えた。中距離魔法、近接戦闘、どちらにも対応できる構えだ。
約5メートルの距離を置いて、なのはは静かに佇んでいる。
エヴァは左足を引き、やや半身に構えた。中距離魔法、近接戦闘、どちらにも対応できる構えだ。
約5メートルの距離を置いて、なのはは静かに佇んでいる。
やがて、なのははぽつりと沈黙を破った。
「……私が殺すべきだと思った人が、悪い人だよ」
「傑作だな」
「それに、数学は得意な方」
「それも傑作だ」
「傑作だな」
「それに、数学は得意な方」
「それも傑作だ」
底は見えた。
ずいぶんとつまらない底だった。
堕落してしまったなのはに対して、エヴァは蔑みではなく、哀れみだけを覚えていた。
以前の無邪気な笑顔を知っているだけに、それが失われてしまった哀惜の念は強い。
ずいぶんとつまらない底だった。
堕落してしまったなのはに対して、エヴァは蔑みではなく、哀れみだけを覚えていた。
以前の無邪気な笑顔を知っているだけに、それが失われてしまった哀惜の念は強い。
「歪んだな、高町なのは。闇を纏わず、闇に呑まれたか。
堕ちるなら堕ちるで、まっすぐ堕ちればよかったものを」
「まっすぐ刺しても、ねじって刺しても、流れるのは同じ赤い血だよ」
「なかなか言う。その歪み方……。誰か大切な知り合いでも死んだか。
それとも――その手で殺したか?」
堕ちるなら堕ちるで、まっすぐ堕ちればよかったものを」
「まっすぐ刺しても、ねじって刺しても、流れるのは同じ赤い血だよ」
「なかなか言う。その歪み方……。誰か大切な知り合いでも死んだか。
それとも――その手で殺したか?」
びくり、となのはの肩が揺れる様子を見て、エヴァはつまらなさそうに吐き捨てた。
「図星か、つまらん。どこまでも典型的な転落模様だな。
大切な者の命を粗末にしたから、他の者の命も粗末にしなければいけないと?
そうでなければ許されないと感じているな?
知り合いを殺してしまえた自分が、知らない者を殺せないなんて許せないか?」
「そんなんじゃないよ。ただ私は、殺さなきゃいけない人がいる限り、それを自分の手でやりたいだけ。
誰にも人殺しになって欲しくないから、みんなのために。手を汚すのは、私だけでいい」
「美麗美句で己の所業を飾るな、胸糞が悪い。
理想もなく、誇りもなく、ただ無秩序に、自らの独善で悪と断じた者を容赦なく殺戮する――。
貴様がやっているのは、それだけに過ぎん」
大切な者の命を粗末にしたから、他の者の命も粗末にしなければいけないと?
そうでなければ許されないと感じているな?
知り合いを殺してしまえた自分が、知らない者を殺せないなんて許せないか?」
「そんなんじゃないよ。ただ私は、殺さなきゃいけない人がいる限り、それを自分の手でやりたいだけ。
誰にも人殺しになって欲しくないから、みんなのために。手を汚すのは、私だけでいい」
「美麗美句で己の所業を飾るな、胸糞が悪い。
理想もなく、誇りもなく、ただ無秩序に、自らの独善で悪と断じた者を容赦なく殺戮する――。
貴様がやっているのは、それだけに過ぎん」
嘆息と共に、エヴァはあからさまに構えを取った。
なのはもそれに応え、ミニ八卦炉を握りしめる。
なのはもそれに応え、ミニ八卦炉を握りしめる。
「やはり、貴様の存在は捨て置けんな。これ以上面倒なことになる前に、今ここで始末する」
「……そう。やっぱりこうなっちゃうんだね」
「……そう。やっぱりこうなっちゃうんだね」
手遅れだ、とエヴァは判断した。
そもそも、闇に耐えられる性質ではなかったのだろう。
おそらくきっと、ここに来るまでは、太陽のような少女だったのだ。
そもそも、闇に耐えられる性質ではなかったのだろう。
おそらくきっと、ここに来るまでは、太陽のような少女だったのだ。
しかも、あれだけ歪みながら、まだ壊れていない。それがなおさら悲劇だった。
もう、戻れない。
しかし、進めない。
その上、狂えない。
この哀れな少女は、ここで終わった方が幸せだ。
もう、戻れない。
しかし、進めない。
その上、狂えない。
この哀れな少女は、ここで終わった方が幸せだ。
殺すつもりはない。
ただ仮死状態で、悠久の氷棺の中で永遠に眠ってもらうだけだ。
いつか運が良ければ、遥か時の彼方で目覚めることもあるかも知れない。
ただ仮死状態で、悠久の氷棺の中で永遠に眠ってもらうだけだ。
いつか運が良ければ、遥か時の彼方で目覚めることもあるかも知れない。
緊張が高まり、ついに臨界を超える。
動いたのは、なのはが先だった。
動いたのは、なのはが先だった。
「にっくきターゲットを狙い――」
「遅い! 氷結(フリーゲランス)、武装解除(エクサルマティオー)!」
「遅い! 氷結(フリーゲランス)、武装解除(エクサルマティオー)!」
氷嵐が吹き荒れ、一瞬でなのはの服を凍らせ、砕き尽くす。
「――ひ、えっ !?」
ランドセルも吹き飛び、中身が散乱する。
クロウカードが、ヘルメスドライブが、はやての腕が、そしてミニ八卦炉が、音を立てて氷床を滑っていった。
クロウカードが、ヘルメスドライブが、はやての腕が、そしてミニ八卦炉が、音を立てて氷床を滑っていった。
「さて、高町なのは。貴様が求めるのは、許しか?」
視線を逸らすことすら許さず、歩を進めながら、エヴァは冷酷に告げた。
「それとも――裁きか?」
* * *
やられた。完璧にカウンターを取られた。
一瞬のパニックの後、なのはは冷静に現状を分析した。
全部の装備を持っていかれた。ミニ八卦炉は部屋の隅だし、素っ裸。
攻撃するタイミングの、一瞬の隙を突かれた。防御する間もなかった。
一瞬のパニックの後、なのはは冷静に現状を分析した。
全部の装備を持っていかれた。ミニ八卦炉は部屋の隅だし、素っ裸。
攻撃するタイミングの、一瞬の隙を突かれた。防御する間もなかった。
いつものようにバリアジャケットを着てたなら、こんなことにはならなかっただろう。
今、オートで作動するプロテクションはない。
衣服ごと装備を剥ぎ取り、無力化するための魔法。
なのはにとっては、思いもよらない攻撃手段だった。
今、オートで作動するプロテクションはない。
衣服ごと装備を剥ぎ取り、無力化するための魔法。
なのはにとっては、思いもよらない攻撃手段だった。
でも、まだだ。
なんにもなくたって、魔法が使えないわけじゃない。
なんにもなくたって、魔法が使えないわけじゃない。
「まだ、なんにも終わってない。なんにも達成してない!
だから許しも乞わないし、裁きもいらない! 私はまだ死ねない――!」
だから許しも乞わないし、裁きもいらない! 私はまだ死ねない――!」
ミニ八卦炉を拾いに行く素振りを見せたら、きっと相手の思う壺。
だからなのははそちらに構わず、エヴァを見据えて咄嗟に距離を取った。
だからなのははそちらに構わず、エヴァを見据えて咄嗟に距離を取った。
「リリカル・マジカル!
福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け!」
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!
氷の精霊17頭(セプテンデキム・スピリトゥス・グラキアーレス)、
集い来りて敵を切り裂け(コエウンテース・イニミクム・コンキダント)!」
福音たる輝き、この手に来たれ。導きのもと、鳴り響け!」
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!
氷の精霊17頭(セプテンデキム・スピリトゥス・グラキアーレス)、
集い来りて敵を切り裂け(コエウンテース・イニミクム・コンキダント)!」
なのはの詠唱と同時に、エヴァも詠唱を開始する。
デバイスのない今は、上位の魔法発動には詠唱が必要だ。
この一年、毎朝二時間の練習を欠かさなかったのだ。誰よりも努力を重ねた自負はある。
デバイスのない今は、上位の魔法発動には詠唱が必要だ。
この一年、毎朝二時間の練習を欠かさなかったのだ。誰よりも努力を重ねた自負はある。
「ふん、福音たる輝きか。誰が今の貴様を祝福するんだか」
「……!」
「……!」
余裕の表れか、憎まれ口を叩くエヴァをなのはは鋭く睨み付けた。
その視線を意にも介さず、エヴァは鼻で嘲笑う。
その視線を意にも介さず、エヴァは鼻で嘲笑う。
「もっとも、闇の福音ならば私のことだがな」
なのはの周囲に桜色のスフィアが、エヴァの周囲に薄紫色のスフィアがそれぞれ形成される。
どちらも唱えたのは、似たような系統の誘導型射撃魔法らしい。
しかし、スフィアの数が違いすぎる。
デバイスなしでの魔法制御にタスクのほとんどを割り振って、それでもこっちはたったの5個。
対して、エヴァのそれはなんと17個。
ミッドチルダの常識では、信じられない数だ。とてもじゃないが、このままでは対抗できない。
どちらも唱えたのは、似たような系統の誘導型射撃魔法らしい。
しかし、スフィアの数が違いすぎる。
デバイスなしでの魔法制御にタスクのほとんどを割り振って、それでもこっちはたったの5個。
対して、エヴァのそれはなんと17個。
ミッドチルダの常識では、信じられない数だ。とてもじゃないが、このままでは対抗できない。
なのはは魔力を振り絞り、さらにスフィアを生成する。
レイジングハートの補助なしで、どこまで出来るかが勝負だった。
見敵必殺の覚悟を決めてから、いずれ必要になるだろうと思っていたデバイスなしでの高等魔法制御。
いきなり実戦になるのは計算外だったが、覚悟はできている。
レイジングハートの補助なしで、どこまで出来るかが勝負だった。
見敵必殺の覚悟を決めてから、いずれ必要になるだろうと思っていたデバイスなしでの高等魔法制御。
いきなり実戦になるのは計算外だったが、覚悟はできている。
「魔法の射手(サギタ・マギカ)! 連弾・氷の17矢(セリエス・グラキアーリス)!」
「ディバインシューター! シュート!」
「ディバインシューター! シュート!」
結果、生成されたスフィアは8個。8発の魔法弾が、17発の魔法の矢を迎え撃つ。
その一方で、防御魔法も用意する。コントロールはオートではなく、手動。
エヴァの魔法の矢は、複雑な軌道でなのはに向かって突進してくる。
しかし、数に反比例して速度はたいして速くない。これなら迎撃できる。
その一方で、防御魔法も用意する。コントロールはオートではなく、手動。
エヴァの魔法の矢は、複雑な軌道でなのはに向かって突進してくる。
しかし、数に反比例して速度はたいして速くない。これなら迎撃できる。
なのはの卓越した思念制御の賜物か、一発につきそれぞれ二つの矢を貫通、消滅させることに成功した。
あちこちで小さな水蒸気が破裂する。貫通力ならこっちが上のようだ。
残った一矢。左側面から回り込んできたそれを、左手のラウンドシールドが受けとめる。
あちこちで小さな水蒸気が破裂する。貫通力ならこっちが上のようだ。
残った一矢。左側面から回り込んできたそれを、左手のラウンドシールドが受けとめる。
防いだ。そしてまだ、なのはの魔法弾は生きている。
制御の負担がきつい。歯を食いしばり、そのまま誘導してエヴァを直接狙おうとして、
制御の負担がきつい。歯を食いしばり、そのまま誘導してエヴァを直接狙おうとして、
「あうっ!」
目にも見えない速さで、横から蹴り飛ばされた。
衝撃に、息が止まる。
なにをされたのか、一瞬わからなかった。
壁まで飛ばされる威力に、なのはは咄嗟にプロテクションを展開させる。
床や壁を覆っていた霜が地吹雪を上げ、なのははそのまま壁に叩き付けられた。
衝撃に、息が止まる。
なにをされたのか、一瞬わからなかった。
壁まで飛ばされる威力に、なのはは咄嗟にプロテクションを展開させる。
床や壁を覆っていた霜が地吹雪を上げ、なのははそのまま壁に叩き付けられた。
「くっ……、けほっ!」
呻きながら、なのはは自分の油断を理解する。
さっきの魔法の矢の速度は、わざと抑えられていたんだ。
そっちに気を取られてるうちに、意識の外から、緩急の差のミスマッチで私を直接叩くために。
手ぶらだったから考えもしなかったけど、エヴァちゃんは近接戦闘もできる。
しかも、水蒸気を煙幕代わりに利用していた。
すごく、熟練した、万能戦闘型魔導師……!
そっちに気を取られてるうちに、意識の外から、緩急の差のミスマッチで私を直接叩くために。
手ぶらだったから考えもしなかったけど、エヴァちゃんは近接戦闘もできる。
しかも、水蒸気を煙幕代わりに利用していた。
すごく、熟練した、万能戦闘型魔導師……!
戦慄と共に、湧き上がる焦燥感。
ヴィータの相手で慣れているとはいえ、なのはは近接戦闘が得意ではない。
防御魔法で防ぎつつ誘導弾で撹乱、距離を取って砲撃魔法で決めるのが、なのはの戦闘スタイルである。
だが、ミニ八卦炉はエヴァを挟んで反対側の壁際にある。デバイスなしでは、高出力の砲撃魔法は撃てない。
ヴィータの相手で慣れているとはいえ、なのはは近接戦闘が得意ではない。
防御魔法で防ぎつつ誘導弾で撹乱、距離を取って砲撃魔法で決めるのが、なのはの戦闘スタイルである。
だが、ミニ八卦炉はエヴァを挟んで反対側の壁際にある。デバイスなしでは、高出力の砲撃魔法は撃てない。
しかも、エヴァは戦闘の組み立てが巧い。
読み合いでは、一枚も二枚も上をいかれるだろう。
凌ぎ続けるにも限界がある。逃げるのだって、許してもらえるかどうか。
読み合いでは、一枚も二枚も上をいかれるだろう。
凌ぎ続けるにも限界がある。逃げるのだって、許してもらえるかどうか。
でも――。
なのはは不屈の闘志でエヴァを睨み付けた。
でも、さっきの魔法弾はまだ生きてる――!
なのはは不屈の闘志でエヴァを睨み付けた。
でも、さっきの魔法弾はまだ生きてる――!
「――アクセル!」
中空にあった八つの魔法弾が加速し、光の軌跡を描いてエヴァ目指して突進する。
虚を付いたタイミング。速さも角度も申し分ない。
これで倒せるとは思わないけど、時間稼ぎにはなるはず。その間に体勢を立て直して……。
虚を付いたタイミング。速さも角度も申し分ない。
これで倒せるとは思わないけど、時間稼ぎにはなるはず。その間に体勢を立て直して……。
しかし、エヴァは迫り来る弾丸に目もくれず、右足で床を強く打ちながら叫んだ。
「こおる大地(クリュスタリザティオー・テルストリス)!」
床からエヴァを取り巻くように、無数の巨大な氷柱が天井まで伸びる。
伸びる。次々と伸びる。
魔法弾はすべてその氷柱に阻まれ、弾けて消えた。
そして柱は発生地点を延ばし、なのはのいる壁際まで迫る。
伸びる。次々と伸びる。
魔法弾はすべてその氷柱に阻まれ、弾けて消えた。
そして柱は発生地点を延ばし、なのはのいる壁際まで迫る。
「えっ、きゃっ!」
巨大な質量が壁を砕き、なのはを吹き飛ばした。
間髪いれず砕けた氷の破片が降り注ぎ、なのはは慌てて転がる。
逃れた先は、薄暗い隣室だった。
さっきまでの部屋と違い、さほど広くはない。窓はなく、天井付近に換気口だけが開いている。
ドアは一つで、それは今なのはが入ってきた壁の穴、それと同じ方についていた。
間髪いれず砕けた氷の破片が降り注ぎ、なのはは慌てて転がる。
逃れた先は、薄暗い隣室だった。
さっきまでの部屋と違い、さほど広くはない。窓はなく、天井付近に換気口だけが開いている。
ドアは一つで、それは今なのはが入ってきた壁の穴、それと同じ方についていた。
ますます拙い。
こんな部屋では、機動力まで殺がれてしまう。逃げ道もない。
なのはは一瞬で覚悟を決めた。
防御魔法で身を固めて、どんな攻撃も受けて立つ。耐えてみせる。
耐えて耐えて、起死回生のチャンスを待つんだ。
こんな部屋では、機動力まで殺がれてしまう。逃げ道もない。
なのはは一瞬で覚悟を決めた。
防御魔法で身を固めて、どんな攻撃も受けて立つ。耐えてみせる。
耐えて耐えて、起死回生のチャンスを待つんだ。
逆光。真白な粉塵に影を映しながら、エヴァがゆっくりと姿を現す。
相変わらず、余裕の立ち振る舞いだ。だからこそ、つけ込む隙は必ずある。
エヴァはすぐに追撃を放とうとはせず、抑揚のない声で話しかけた。
相変わらず、余裕の立ち振る舞いだ。だからこそ、つけ込む隙は必ずある。
エヴァはすぐに追撃を放とうとはせず、抑揚のない声で話しかけた。
「……貴様にだけは教えておいてやろう。私は殺し合いには乗っていない。
だが、仲良しごっこをするつもりもない」
だが、仲良しごっこをするつもりもない」
迫力など少しもない声なのに、なのはの肝がしんと冷える。
純粋に、魔力だけで威圧されているのがわかった。
単騎でこれほどの魔力を持つ相手を、なのはは知らない。
純粋に、魔力だけで威圧されているのがわかった。
単騎でこれほどの魔力を持つ相手を、なのはは知らない。
「ジェダを見つけ出し、そこまでの道筋を付けるのが私の当面の目的だ。
誰とも馴れ合わず、何者も恃まず、私の好きなようにやらせてもらう。
善良な連中に手を出す気はないが、邪魔な輩は実力で排除する」
誰とも馴れ合わず、何者も恃まず、私の好きなようにやらせてもらう。
善良な連中に手を出す気はないが、邪魔な輩は実力で排除する」
そう言って、エヴァは皮肉めいた笑みを向ける。
「つまり、殺し合いに乗った連中は、私にとっても敵だ」
「なら、私と同じ――」
「違うな」
「なら、私と同じ――」
「違うな」
なのはの言葉を遮り、エヴァの笑いは嗤いに変わる。
「私と貴様の決定的な違いがなにか、わかるか?」
歩を進めることもなく、壁の穴の位置に佇んだまま、エヴァは問う。
それでも、なのはは徐々に部屋の隅に追いつめられていた。
少しでも距離を取りたい。
プロテクションはすでに展開済みだが、魔力節約のため、ラウンドシールドは待機状態だ。
それでも、なのはは徐々に部屋の隅に追いつめられていた。
少しでも距離を取りたい。
プロテクションはすでに展開済みだが、魔力節約のため、ラウンドシールドは待機状態だ。
「状況に強いられたとはいえ、私は自ら選んだ」
そう言いながら、エヴァは右腕を高く掲げる。
その掌に魔力が収束し、薄紫色の輝きを放った。
その掌に魔力が収束し、薄紫色の輝きを放った。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック。
来たれ氷精、闇の精(ウェニアント・スピリトゥス・グラキアーレス・オブスクランテース)。
闇を従え、吹けよ常夜の氷雪(クム・オブスクラティオーニ・フレット・テンペスタース・ニウァーリス)」
来たれ氷精、闇の精(ウェニアント・スピリトゥス・グラキアーレス・オブスクランテース)。
闇を従え、吹けよ常夜の氷雪(クム・オブスクラティオーニ・フレット・テンペスタース・ニウァーリス)」
――来る。
あれはおそらく、ディバインバスター並の砲撃魔法だ。
なのはの身体に染み付いた戦いの感覚が、それを教えている。
この中距離で撃たれるそれは、脅威以外のなにものでもない。
あれはおそらく、ディバインバスター並の砲撃魔法だ。
なのはの身体に染み付いた戦いの感覚が、それを教えている。
この中距離で撃たれるそれは、脅威以外のなにものでもない。
「くっ!」
咄嗟に両手をかざしたなのはの正面に、桜色のドームと、二枚の魔法陣が浮かび上がる。
プロテクションとラウンドシールドの同時強化多重展開。
得意の防御魔法とはいえ、今のなのはにはギリギリだ。
プロテクションとラウンドシールドの同時強化多重展開。
得意の防御魔法とはいえ、今のなのはにはギリギリだ。
「だが、状況に強いられたとはいえ、貴様は結局流された」
シールドの角度を調整し、弾くのではなく、流すことに重点を置く。
バリアジャケットがなく、普通の服すら着ていない現状、余波でさえ致命になり得る。
絶対に、プロテクションを抜かれるわけにはいかない。
バリアジャケットがなく、普通の服すら着ていない現状、余波でさえ致命になり得る。
絶対に、プロテクションを抜かれるわけにはいかない。
「防御に自信がありそうだな。堪えてみせろ。
――闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!」
――闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)!」
* * *
手加減せざるを得なかったとはいえ、本当に耐え切ったなのはに、エヴァは素直に感心した。
なのはのいた部屋は完全に破壊され、壁も一面崩れてしまっている。
その先は、森だった。どうやら東の外壁に面した部屋だったらしい。
なのはのいた部屋は完全に破壊され、壁も一面崩れてしまっている。
その先は、森だった。どうやら東の外壁に面した部屋だったらしい。
なのはは今、『闇の吹雪』によってなぎ倒された樹木の真ん中に、荒い息でうずくまっている。
だが、外傷はほとんどないようだし、なにより目が死んでいない。
澱んだ、しかし力強い視線は闘志を湛えて、エヴァを射抜いていた。
だが、外傷はほとんどないようだし、なにより目が死んでいない。
澱んだ、しかし力強い視線は闘志を湛えて、エヴァを射抜いていた。
これで心を折るつもりだったエヴァとしては、不満の残る結果である。
氷棺に封じるだけでは足りないのだ。閉じ込められた者にとっては、悠久の時間でさえも一睡の夢に過ぎない。
いずれ目覚めた時、今のままの荒んだ精神状態では、結局なのはには破滅への道しか残らない。
どうしても今、あの歪んだ心を粉砕せねばならない。
氷棺に封じるだけでは足りないのだ。閉じ込められた者にとっては、悠久の時間でさえも一睡の夢に過ぎない。
いずれ目覚めた時、今のままの荒んだ精神状態では、結局なのはには破滅への道しか残らない。
どうしても今、あの歪んだ心を粉砕せねばならない。
ああ、いやだ。こんなことはとっとと終わらせたい。
こんな、女子供をいたぶるような真似は、趣味ではない。
そう思いながら、表情にはおくびも出さず、エヴァは月下へと足を踏み出した。
月は、ほとんど真上まで昇っている。
こんな、女子供をいたぶるような真似は、趣味ではない。
そう思いながら、表情にはおくびも出さず、エヴァは月下へと足を踏み出した。
月は、ほとんど真上まで昇っている。
「闇を纏い、闇に生きるものはな、例外なく、自らに一つのルールを課している。
自身が悪であると自覚するが故に、善悪に拘らない、自己満足のルールをな。
例えば、契約は遵守する。例えば、不意打ちはしない。
例えば、逃げる者は追わない。例えば――女子供は殺さない」
自身が悪であると自覚するが故に、善悪に拘らない、自己満足のルールをな。
例えば、契約は遵守する。例えば、不意打ちはしない。
例えば、逃げる者は追わない。例えば――女子供は殺さない」
声に反応して、なのはは半身を起こす。
信じられない意志力だ。
これが正しい方向へ向かっていれば、どれほどの人物になっただろう。
惜しい――と思うと同時に、なんともやり切れない。
信じられない意志力だ。
これが正しい方向へ向かっていれば、どれほどの人物になっただろう。
惜しい――と思うと同時に、なんともやり切れない。
「そうやって己を厳しく律し、闇の中で生きるための指針とするのだ。これを、悪の美学と呼ぶ。
しかし、闇に呑まれ、どこまでも堕ちていく者にはそれがない。今の貴様のようにな……」
しかし、闇に呑まれ、どこまでも堕ちていく者にはそれがない。今の貴様のようにな……」
ゆっくりと、なのはの傍まで歩み寄る。
外傷は見当たらなくとも、なのはの体力は限界だったらしい。
あるいは、魔力の限界か、胸にある青痣のせいか。
どうやら、立ち上がることができないようだ。
外傷は見当たらなくとも、なのはの体力は限界だったらしい。
あるいは、魔力の限界か、胸にある青痣のせいか。
どうやら、立ち上がることができないようだ。
「ましてや、人の命を奪いながら、さもそれを正しいことのように居直るなど、愚の骨頂も甚だしい」
「た、正しいことだなんて、思ってない!」
「みんなのために殺すんだと、貴様は言った」
「……!」
「た、正しいことだなんて、思ってない!」
「みんなのために殺すんだと、貴様は言った」
「……!」
唇を噛みながら、なのはは腕の力だけで、身体を引き摺るようにして後退る。
月光に照らされた裸体が芋虫のように地面を這いずる様には、一種凄惨な美しさがあった。
月光に照らされた裸体が芋虫のように地面を這いずる様には、一種凄惨な美しさがあった。
「醜いぞ、高町なのは。ああ、吐き気を催す醜悪さだ」
言いながら、エヴァは眉を細めてなのはの様子を観察する。
怯えた素振りでも見せれば可愛いものを、この少女はまだ諦めていない。
魔法障壁はまだ健在だし、左腕には体重をかけていない。
リンクと同じく、コイツも左利きだ。起死回生の一手を狙っているのか、あるいは盾を準備しているのか。
怯えた素振りでも見せれば可愛いものを、この少女はまだ諦めていない。
魔法障壁はまだ健在だし、左腕には体重をかけていない。
リンクと同じく、コイツも左利きだ。起死回生の一手を狙っているのか、あるいは盾を準備しているのか。
呆れ果てた強情さに、エヴァは小さく舌打ちする。
本当なら賞賛すべきところだが、今のなのはにとっては毒にしかならない。
仕方がない。幻想空間(ファンタズマゴリア)へ誘い、そこでじっくり教育してやるか。
あそこなら、制限を気にせずに全力で叩き潰せる。
ここまで強情なヤツだとわかっていれば、はじめからそうしていたものを……。
本当なら賞賛すべきところだが、今のなのはにとっては毒にしかならない。
仕方がない。幻想空間(ファンタズマゴリア)へ誘い、そこでじっくり教育してやるか。
あそこなら、制限を気にせずに全力で叩き潰せる。
ここまで強情なヤツだとわかっていれば、はじめからそうしていたものを……。
「私の目を見ろ、高町なのは」
目に魔力を込め、エヴァはなのはに呼びかける。
距離は約2メートル。
もとより目を逸らす気のないなのはは、言われるままにエヴァを見上げ、視線を合わせた。
幻術対策は慣れていないのか、まったく抵抗がない。
距離は約2メートル。
もとより目を逸らす気のないなのはは、言われるままにエヴァを見上げ、視線を合わせた。
幻術対策は慣れていないのか、まったく抵抗がない。
「……見るんだ」
視線が交わり、精神を引き寄せる。
精神を侵食し、意識を掌握する。
意識が同調し、そのまま呑み込んで固定する――。
精神を侵食し、意識を掌握する。
意識が同調し、そのまま呑み込んで固定する――。
――その、瞬間。
眩い煌きが、エヴァとなのはの間に割り込んだ。
「――なにっ !?」
幻術を破られ、エヴァは反射的に飛び退く。
あらゆる自在法を受け付けない宝具。
その刀身に反射した月光が、エヴァの視線を弾いていた。
あらゆる自在法を受け付けない宝具。
その刀身に反射した月光が、エヴァの視線を弾いていた。
金髪が流れ、次に大きな太刀が目に入る。
握るは、大時代的な鳶色の割烹着を纏った緑眼の少女。
突然の闖入者が、エヴァとなのはの間に立ちはだかっていた。
握るは、大時代的な鳶色の割烹着を纏った緑眼の少女。
突然の闖入者が、エヴァとなのはの間に立ちはだかっていた。
なのはが息を呑むような声をあげた。
「――アリサちゃん !?」
「間に合った……!」
「間に合った……!」
どう気配を断っていたのか、ここまで接近されて気付かなかったことに、エヴァは驚く。
少なくとも只者ではない。警戒し、さらに距離を取る。
ここにきての第三者の介入は、正直厄介だった。
少なくとも只者ではない。警戒し、さらに距離を取る。
ここにきての第三者の介入は、正直厄介だった。
アリサと呼ばれた少女の腰に差された玩具のようなステッキから、可憐な声が響く。
『アリサさん、死徒ですよ! すごいですね~、二十七祖クラスです!』
その声を無視し、大太刀の切っ先を突き付けたまま、少女はまっすぐエヴァと対峙する。
幻想空間へ行っている間は本体が無防備になるため、多対一の時には使えない。
予定が台無しにされた怒りを隠しもせず、エヴァは睥睨して問うた。
幻想空間へ行っている間は本体が無防備になるため、多対一の時には使えない。
予定が台無しにされた怒りを隠しもせず、エヴァは睥睨して問うた。
「貴様は? 高町なのはの知り合いか?」
少女は勝気そうな目で、きっぱりと言い放った。
「――友達よ!」