冥探偵ジェダ~解答編~ ◆tcG47Obeas
冥王の城に、魔蟲の羽音が響く。
穴を抜け室を抜け通路を抜けて、羽音を立てて魔界蟲が降りたった。
魔蜂の女王はこの世界を統べる冥王に傅いた。
「ふむ、帰ったか」
ジェダは振り返りQ-Beeを迎えると、報告を促した。
Q-Beeは忠実に報告を開始する。
穴を抜け室を抜け通路を抜けて、羽音を立てて魔界蟲が降りたった。
魔蜂の女王はこの世界を統べる冥王に傅いた。
「ふむ、帰ったか」
ジェダは振り返りQ-Beeを迎えると、報告を促した。
Q-Beeは忠実に報告を開始する。
首輪だけ。
報告の内容にジェダは眉を顰める。
それは中身を誰かが持ち去ったと考えるべきだろうか。
あるいは中身が自分で歩き去ったと考えるべきだろうか。
だがそれ以前の答えが姿を見せる。
報告の内容にジェダは眉を顰める。
それは中身を誰かが持ち去ったと考えるべきだろうか。
あるいは中身が自分で歩き去ったと考えるべきだろうか。
だがそれ以前の答えが姿を見せる。
「タブン、40バン、タチカワミミ。セイゾンカクニン。
62バン、フルデリカ。シタイカクニン」
62バン、フルデリカ。シタイカクニン」
太刀川ミミの生存。
最早確定事項だろう。
ジェダは確認を始める。
「多分、というのはP-Beeの首輪が無いためか?」
「クビワツイテナカッタ。カオ、タチカワミミダッタ」
ふむと唸り考える。
「よくやった。首輪に入るP-Beeを一匹用意しておけ。
それが終われば通常の仕事に戻れ、ただし放送の前になったら一度戻って来るのだ」
ジェダは一旦Q-Beeを帰らせて、思案する。
最早確定事項だろう。
ジェダは確認を始める。
「多分、というのはP-Beeの首輪が無いためか?」
「クビワツイテナカッタ。カオ、タチカワミミダッタ」
ふむと唸り考える。
「よくやった。首輪に入るP-Beeを一匹用意しておけ。
それが終われば通常の仕事に戻れ、ただし放送の前になったら一度戻って来るのだ」
ジェダは一旦Q-Beeを帰らせて、思案する。
とにかく太刀川ミミの為に新たな首輪を用意しなければならない。
それ自体はそう難しいことではない。
予備の首輪の用意は有るし、太刀川ミミに付けられているものは一般人用の通常の首輪だ。
通常の首輪なら数分もあれば用意できる。
そう、太刀川ミミ自身は通常の首輪で十分な参加者の筈なのだ。
にも関わらず、どうして未だ生きている?
それ自体はそう難しいことではない。
予備の首輪の用意は有るし、太刀川ミミに付けられているものは一般人用の通常の首輪だ。
通常の首輪なら数分もあれば用意できる。
そう、太刀川ミミ自身は通常の首輪で十分な参加者の筈なのだ。
にも関わらず、どうして未だ生きている?
(首輪が爆発すれば死ぬはずだ)
首輪の爆発は全ての参加者を確実に殺傷せしめるだけの威力を持っている。
参加者本来の能力であれば耐え切れる者さえも、決して逃れる事ができない。
それは参加者全ての能力が等しく、そして個別に制限されているからだ。
参加者本来の能力であれば耐え切れる者さえも、決して逃れる事ができない。
それは参加者全ての能力が等しく、そして個別に制限されているからだ。
参加者には二種類の制限が課されている。
それは会場全域を覆うフィールド状の物と、首輪から個別に発動している物だ。
それは会場全域を覆うフィールド状の物と、首輪から個別に発動している物だ。
まず前者の制限フィールドはジェダ以外の基本的な能力を制限する。
どれだけ強力な参加者でも、少なくともジェダと首輪に抗えないレベルまで能力を落とされているのだ。
この正体はジェダが敷き詰めた自身の魔力である。
即ちかつてインデックスが見抜いた通り、法則が違うあらゆる界の魔法を同時に運用する為のフィールドでもある。
この世界におけるありとあらゆる異能はジェダの掌の上にあるからこそ動けるのだ。
その程度を制限する事も、容易い。
どれだけ強力な参加者でも、少なくともジェダと首輪に抗えないレベルまで能力を落とされているのだ。
この正体はジェダが敷き詰めた自身の魔力である。
即ちかつてインデックスが見抜いた通り、法則が違うあらゆる界の魔法を同時に運用する為のフィールドでもある。
この世界におけるありとあらゆる異能はジェダの掌の上にあるからこそ動けるのだ。
その程度を制限する事も、容易い。
しかしこれにより制限できるのは比較的単純な能力だけである。
人外の身体能力、気、魔法、超能力、全てを等しく制限できる反面、
個別な特殊能力を制限しきる事が出来ないのだ。
人外の身体能力、気、魔法、超能力、全てを等しく制限できる反面、
個別な特殊能力を制限しきる事が出来ないのだ。
そこでもう一つ、首輪により課されている個別の制限が存在する。
首輪には所謂呪いの一種が刻まれているのである。
これは様々な道具等を使い参加者の前歴を完全に洗った上で設定した物で、
前者の制限フィールドによる基本能力制限の微調整も兼ねている。
微調整といってもフィールドの制限は大雑把な物であるため、ケースによっては大きな差を生む。
割と理不尽かつ出鱈目に多種多様な能力を持っていたパタリロに至っては纏めて通常人間程度に制限してあるのだ。
首輪が外れたところで会場の制限がある以上そこまで脅威にはならないだろうが、一応バランスを考慮したのである。
まかり間違っても色々有って面倒だったというわけではない。
首輪には所謂呪いの一種が刻まれているのである。
これは様々な道具等を使い参加者の前歴を完全に洗った上で設定した物で、
前者の制限フィールドによる基本能力制限の微調整も兼ねている。
微調整といってもフィールドの制限は大雑把な物であるため、ケースによっては大きな差を生む。
割と理不尽かつ出鱈目に多種多様な能力を持っていたパタリロに至っては纏めて通常人間程度に制限してあるのだ。
首輪が外れたところで会場の制限がある以上そこまで脅威にはならないだろうが、一応バランスを考慮したのである。
まかり間違っても色々有って面倒だったというわけではない。
加えて首輪の制限は、それよりも特殊な能力に対して掛けられた部分が多い。
吸血鬼が無数の蝙蝠へと分離する事は出来ても、中枢部分を固め押さえて離さないといった具合だ。
物理攻撃を無効化する霧化に至っては封印してある。
これにより首輪の爆破を無効化する事も、首輪から抜ける事もできない。
吸血鬼が無数の蝙蝠へと分離する事は出来ても、中枢部分を固め押さえて離さないといった具合だ。
物理攻撃を無効化する霧化に至っては封印してある。
これにより首輪の爆破を無効化する事も、首輪から抜ける事もできない。
また、別の話だが支給品で強化できる範囲でも首輪の爆発を防ぐ事はできない。
これは基本能力の強化では制限フィールドに妨げられ首輪の爆破に耐え切れない事と、
特殊効果の類も配慮した上で支給品に回しているからである。
これは基本能力の強化では制限フィールドに妨げられ首輪の爆破に耐え切れない事と、
特殊効果の類も配慮した上で支給品に回しているからである。
制限下で首輪が爆発すれば死ぬはずなのだ。
なのにどうして、彼女は生き延びた?
増して自身はただの人間であるはずの太刀川ミミがどうやって。
首輪が爆発すれば死ぬ事を前提にするならば、太刀川ミミでは説明がつかない。
なのにどうして、彼女は生き延びた?
増して自身はただの人間であるはずの太刀川ミミがどうやって。
首輪が爆発すれば死ぬ事を前提にするならば、太刀川ミミでは説明がつかない。
そもそも太刀川ミミの顔をした首輪が無い参加者は、本当に太刀川ミミなのだろうか?
そう、ジェダがその答えに辿りつく。
冥王の手が事実に届いてしまう。
幾条もの偽りを超えて真実を掴み取ってしまう。
冥王の知性はあまりにも怜悧だった。
冥王の手が事実に届いてしまう。
幾条もの偽りを超えて真実を掴み取ってしまう。
冥王の知性はあまりにも怜悧だった。
「生き延びたのはヴィクトリア=パワードか」
ジェダは真相に到達した。
確かQ-Beeが追加支給品として持って行った中には顔形を変えるような物が有ったはずだ。
それを使えばヴィクトリアが太刀川ミミに成りすますのは難しいことではないだろう。
ヴィクトリアは首輪を外し太刀川ミミに成りすまして生きている。
それを使えばヴィクトリアが太刀川ミミに成りすますのは難しいことではないだろう。
ヴィクトリアは首輪を外し太刀川ミミに成りすまして生きている。
「だが」
ジェダはそこで止まらなかった。
薄っすらと笑みを浮かべ、呟きを漏らす。
「自分で言うのもおこがましいが 私は聡明なのだ……あきれるほどに」
そう、ジェダはもう一段踏み込んだ。
薄っすらと笑みを浮かべ、呟きを漏らす。
「自分で言うのもおこがましいが 私は聡明なのだ……あきれるほどに」
そう、ジェダはもう一段踏み込んだ。
「君でも無理だろう? ヴィクトリア=パワード」
ヴィクトリアの持つ錬金術では首輪を外すに至らないだろう。
彼女には知識が有っても機材が不足していたはずだ。
機械的設備が無い場所で首輪解除を達成するには、恐らく魔法が必要になる。
ヴィクトリアが来た世界に錬金術は有ったが、魔法は存在していなかったはずだ。
もちろん支給品の中には有る程度の魔法を習得可能にする物もある。
だがそんな付け焼刃で首輪を外せたとは考えにくい。
何千何万人に一人という類稀なる適正を持ってでもいなければありえまい。
彼女には知識が有っても機材が不足していたはずだ。
機械的設備が無い場所で首輪解除を達成するには、恐らく魔法が必要になる。
ヴィクトリアが来た世界に錬金術は有ったが、魔法は存在していなかったはずだ。
もちろん支給品の中には有る程度の魔法を習得可能にする物もある。
だがそんな付け焼刃で首輪を外せたとは考えにくい。
何千何万人に一人という類稀なる適正を持ってでもいなければありえまい。
ならば誰が彼女の首輪を外した?
首輪を解除する方法を見つけたのは誰だ?
ヴィクトリアの死が誤報だとすれば、その場には誰が居た?
ジェダの知性はその者の名を告げた。
首輪を解除する方法を見つけたのは誰だ?
ヴィクトリアの死が誤報だとすれば、その場には誰が居た?
ジェダの知性はその者の名を告げた。
「君か。吸血鬼レミリア・スカーレット」
思えばレミリア・スカーレットの経緯は異常である。
ヴィクトリアすら殺害していなかったとすれば最早間違いない。
膨大な数の戦闘を積み重ねながら、殺害したのはあろう事かQ-Beeだけなのだ。
しかも彼女には前例がある。
夕方に起きたレベッカ宮本の吸血鬼化という些細なイレギュラーが。
ヴィクトリアすら殺害していなかったとすれば最早間違いない。
膨大な数の戦闘を積み重ねながら、殺害したのはあろう事かQ-Beeだけなのだ。
しかも彼女には前例がある。
夕方に起きたレベッカ宮本の吸血鬼化という些細なイレギュラーが。
レベッカ宮本の吸血鬼化。
すぐに修正されたため首輪から抜けたヴィクトリアとは雲泥の差が有るが、実を言えばあれもイレギュラーの一つだった。
生命の水などによる生態系の変化とは訳が違う。
幾ら生態系が変化しようとも、肉体が平常の生物の範疇であるならば首輪はバイタルサインを確認し続ける事ができる。
特殊な核鉄を心臓の代用にした場合も同様だ。
生命エネルギーで強引に維持している節は有るが、その肉体が生命活動を行っている事に違いは無い。
正確には首輪は、というよりもP-Beeが感知している。
着用させた時に有った、物理的にせよ魔術的にせよ生体反応を丸暗記し、それが途絶えれば死んだと判断する。
P-Beeの類稀なる触覚は密着している者の生体反応くらい余すことなく感じ取る事ができるのだ。
しかし吸血鬼、妖怪というものは肉体よりも精神に依存した生物なのである。
その肉体は精神により生かされているといっても過言ではない。
あまりにも命の形が違いすぎる。
すぐに修正されたため首輪から抜けたヴィクトリアとは雲泥の差が有るが、実を言えばあれもイレギュラーの一つだった。
生命の水などによる生態系の変化とは訳が違う。
幾ら生態系が変化しようとも、肉体が平常の生物の範疇であるならば首輪はバイタルサインを確認し続ける事ができる。
特殊な核鉄を心臓の代用にした場合も同様だ。
生命エネルギーで強引に維持している節は有るが、その肉体が生命活動を行っている事に違いは無い。
正確には首輪は、というよりもP-Beeが感知している。
着用させた時に有った、物理的にせよ魔術的にせよ生体反応を丸暗記し、それが途絶えれば死んだと判断する。
P-Beeの類稀なる触覚は密着している者の生体反応くらい余すことなく感じ取る事ができるのだ。
しかし吸血鬼、妖怪というものは肉体よりも精神に依存した生物なのである。
その肉体は精神により生かされているといっても過言ではない。
あまりにも命の形が違いすぎる。
本来そういう類の変化を起こすものは、全て会場から排除していたはずだった。
支給品にあるものでその類の変化を起こす事は出来ないし、参加者のそれも首輪の個別制限により封じていた。
例えば別の世界の吸血鬼であるエヴァンジェリンの場合、吸血による強化支配能力は制限してある。
スカーレット姉妹にあるもう一つの特性である、肉体が陽光に焼かれて生じる煙を吸った者が不死性を得る特性も制限してある。
それを吸った者は居なくとも、レミリアが日に焼かれた事は何度かあったのだ。
支給品にあるものでその類の変化を起こす事は出来ないし、参加者のそれも首輪の個別制限により封じていた。
例えば別の世界の吸血鬼であるエヴァンジェリンの場合、吸血による強化支配能力は制限してある。
スカーレット姉妹にあるもう一つの特性である、肉体が陽光に焼かれて生じる煙を吸った者が不死性を得る特性も制限してある。
それを吸った者は居なくとも、レミリアが日に焼かれた事は何度かあったのだ。
しかしスカーレット姉妹の吸血鬼化の特性は、過去一度たりとも効果を発揮した事が無かったのだ。
それどころか彼女達自身が望もうとも、その特性を発揮する事は出来なかった。
姉のレミリアはあまりの少食から。
妹のフランドールは生きた人間を木っ端微塵にせず吸血する加減が欠如していたから。
それどころか彼女達自身が望もうとも、その特性を発揮する事は出来なかった。
姉のレミリアはあまりの少食から。
妹のフランドールは生きた人間を木っ端微塵にせず吸血する加減が欠如していたから。
幾らジェダとて過去の記録にも当人の意識にも無い上に特異すぎる性質を封じきる事は出来なかった。
過去当人が望んでも出来なかった事であり、起きる可能性は低いと判断して大目に見る事にしたのだ。
その隙を突かれた。
消耗した空腹の時に失血死寸前の人間から血を吸い尽くす事で条件を満たしたのである。
首輪はあまりにも特異な変容を追跡する事が出来ず、かくしてレベッカ宮本は一時ジェダの探知から零れ出た。
過去当人が望んでも出来なかった事であり、起きる可能性は低いと判断して大目に見る事にしたのだ。
その隙を突かれた。
消耗した空腹の時に失血死寸前の人間から血を吸い尽くす事で条件を満たしたのである。
首輪はあまりにも特異な変容を追跡する事が出来ず、かくしてレベッカ宮本は一時ジェダの探知から零れ出た。
それが大きな問題にならなかったのは、確認が容易であったからだ。
機能を停止していたとはいえ、首輪が付いている事に変わりは無いのである。
ジェダは魂の漏れからそれに気づくと、すぐさまQ-Beeに命じて休眠状態のP-Bee達に確認を呼びかけさせた。
結果、レベッカ宮本の体内に通常とは違う新たな命が流れているのを感知する事が出来、彼女の監視は復活した。
機能を停止していたとはいえ、首輪が付いている事に変わりは無いのである。
ジェダは魂の漏れからそれに気づくと、すぐさまQ-Beeに命じて休眠状態のP-Bee達に確認を呼びかけさせた。
結果、レベッカ宮本の体内に通常とは違う新たな命が流れているのを感知する事が出来、彼女の監視は復活した。
その際、レベッカ宮本は未だ生き続けている参加者としてバトルロワイアルへの継続参加を認めると共に、
実行者であるレミリア・スカーレットに対しても特別な処置を与える事は無かった。
吸血鬼化による変化が起きても自動的に反応を追跡するよう設定した事も有るし、
事前に予測しえたにも関わらずジェダが油断した結果である事を理解していたからだ。
恐らくレミリア・スカーレットは人の血を求めただけだろうし、その行為自体はバトルロワイアルを健全に進行させる。
そう考えていたのだ。
実行者であるレミリア・スカーレットに対しても特別な処置を与える事は無かった。
吸血鬼化による変化が起きても自動的に反応を追跡するよう設定した事も有るし、
事前に予測しえたにも関わらずジェダが油断した結果である事を理解していたからだ。
恐らくレミリア・スカーレットは人の血を求めただけだろうし、その行為自体はバトルロワイアルを健全に進行させる。
そう考えていたのだ。
「闇に惑う幼子達よりは聡明な部類に入ると考えていたのだがね。実に残念だ」
しかしそうではない。
これだけの経歴が積み重なれば幾らなんでも確信に至る。
レミリアはジェダの儀式を瓦解させようとしていたのだ。
その為に吸血鬼化現象を試し、殺し合いに乗ったフリをしながら誰も殺さず、それどころかQ-Beeを倒した。
あまつさえ妹を殺した仇であるヴィクトリアまでも助けるとは予想外だった。
いや、もしかするとだからこそ助けたのかもしれない。
この島で一番助けるはずのない者だからこそ、裏をかくために。
これだけの経歴が積み重なれば幾らなんでも確信に至る。
レミリアはジェダの儀式を瓦解させようとしていたのだ。
その為に吸血鬼化現象を試し、殺し合いに乗ったフリをしながら誰も殺さず、それどころかQ-Beeを倒した。
あまつさえ妹を殺した仇であるヴィクトリアまでも助けるとは予想外だった。
いや、もしかするとだからこそ助けたのかもしれない。
この島で一番助けるはずのない者だからこそ、裏をかくために。
レミリアの怒りは真っ直ぐとジェダ一人に向いていたのだ。
ならばジェダはどうするのか。
ここまで明確に反抗したレミリアをどう処置するのか。
(まずは罰を与えるところだが、私は寛大だ。しばらくは泳がせてあげよう)
答えは何もしない。
ただ、レミリアへの監視を強めるだけ。
もしもレミリアが他の参加者に怪しい行動を行ったらそのデータを採らなければならない。
レミリアが一体どういう手段で首輪を外したのかを調べる為に。
ここまで明確に反抗したレミリアをどう処置するのか。
(まずは罰を与えるところだが、私は寛大だ。しばらくは泳がせてあげよう)
答えは何もしない。
ただ、レミリアへの監視を強めるだけ。
もしもレミリアが他の参加者に怪しい行動を行ったらそのデータを採らなければならない。
レミリアが一体どういう手段で首輪を外したのかを調べる為に。
基本、ジェダはQ-Beeを通じてP-Beeにより参加者を監視している。
これでも大抵の場合は問題無いのだ。
P-Bee達は覗き窓から見た情報、耳にした情報を報告している。
場合によってはキーワードに反応して報告を行うようにも命じてある。
P-Beeの知性は低いため、そういったキーワードシステムが有効だったのだ。
『ご褒美をちょうだい』という後付けキーワードも反応するように、追加は容易だ。
これでも大抵の場合は問題無いのだ。
P-Bee達は覗き窓から見た情報、耳にした情報を報告している。
場合によってはキーワードに反応して報告を行うようにも命じてある。
P-Beeの知性は低いため、そういったキーワードシステムが有効だったのだ。
『ご褒美をちょうだい』という後付けキーワードも反応するように、追加は容易だ。
例えば『首輪』というキーワードについても設定してある。
ただしこれを設定したのは第一放送の後である。
最初の内は身に付けられた首輪への戸惑いと恐怖から。首輪という単語が頻発すると予想できたからだ。
一方でそれ以降も会話に上るなら危険が有ると判断し、経過を見て監視ワードに設定した。
少し言い換えるだけで逃れられる事もネックだが、盗聴を警戒されなければ効果は有ると思われたのだ。
その結果、このキーワードは主にトマという参加者から多く検知された。
野上葵とトマとの会話。
既に死んでいるジュジュとの会話。
レベッカと会った時も、野上葵の首輪を取ろうとしている事が伝えられた。
何れもジェダの耳に入り、しかし気にする必要も無いと一笑に付した会話である。
ただしこれを設定したのは第一放送の後である。
最初の内は身に付けられた首輪への戸惑いと恐怖から。首輪という単語が頻発すると予想できたからだ。
一方でそれ以降も会話に上るなら危険が有ると判断し、経過を見て監視ワードに設定した。
少し言い換えるだけで逃れられる事もネックだが、盗聴を警戒されなければ効果は有ると思われたのだ。
その結果、このキーワードは主にトマという参加者から多く検知された。
野上葵とトマとの会話。
既に死んでいるジュジュとの会話。
レベッカと会った時も、野上葵の首輪を取ろうとしている事が伝えられた。
何れもジェダの耳に入り、しかし気にする必要も無いと一笑に付した会話である。
野上葵の能力による首輪解除はそもそも首輪による制限が掛かっている限り不可能だった。
トマの予想は半分だけ外れ、能力制限の仕掛けは首輪“にも”仕込まれていたのだ。
ジュジュとの会話も、あくまで現実逃避だろう。
野上葵の首輪については恐らく死んでいるものだと思っていたのだが、これは逆に信用できず、
Q-Beeの死のせいで報告が途絶えていた事もあり、後からQ-Beeを調査に向かわせる必要が生じてしまった。
トマの予想は半分だけ外れ、能力制限の仕掛けは首輪“にも”仕込まれていたのだ。
ジュジュとの会話も、あくまで現実逃避だろう。
野上葵の首輪については恐らく死んでいるものだと思っていたのだが、これは逆に信用できず、
Q-Beeの死のせいで報告が途絶えていた事もあり、後からQ-Beeを調査に向かわせる必要が生じてしまった。
トマという参加者が首輪を外そうと足掻いている。
それだけだ。
監視ワードに入る内容はどれも足踏みをしている段階、気にする必要さえも無い。
日が過ぎてQ-Beeを生き返らしてからは殆ど検知されてすらいない。
『首輪』という発言が殆ど無いのだ。
リンクという参加者からも検知されたが、外す方法が見当もつかないと零す程度。
Q-Bee死亡中の報告が失われた──P-Beeに報告を覚えておくような事は出来なかった──のは気になるが、
今のところ、トマもリンクも問題のある段階ではないように思えた。
それだけだ。
監視ワードに入る内容はどれも足踏みをしている段階、気にする必要さえも無い。
日が過ぎてQ-Beeを生き返らしてからは殆ど検知されてすらいない。
『首輪』という発言が殆ど無いのだ。
リンクという参加者からも検知されたが、外す方法が見当もつかないと零す程度。
Q-Bee死亡中の報告が失われた──P-Beeに報告を覚えておくような事は出来なかった──のは気になるが、
今のところ、トマもリンクも問題のある段階ではないように思えた。
それよりもレミリアだ。
今回レミリアを監視する為に設定した条件は、キーワードではなく対象人物を指定したものだ。
レミリアの発言から行動の全てをジェダに報告するよう設定したのである。
今回レミリアを監視する為に設定した条件は、キーワードではなく対象人物を指定したものだ。
レミリアの発言から行動の全てをジェダに報告するよう設定したのである。
(ヴィクトリア……いや、“太刀川ミミ”には新しい首輪を付けておくだけで良いだろう)
“太刀川ミミ”には設定がヴィクトリア用の首輪を付けなければならない。
しかし薄っすらと彫られている名前などは太刀川ミミの名を使うとしよう。
首輪を付けなければならないが、レミリアを油断させる必要も有る。
たまたま“太刀川ミミ”を見つけて首輪を付けた、その程度に思わせておくのだ。
放送の名前もヴィクトリアの方を呼んでやろう。
首輪を付けに行くのはその時が良いだろう。
そうやってジェダは巧緻な策謀を張り巡らせていく。
しかし薄っすらと彫られている名前などは太刀川ミミの名を使うとしよう。
首輪を付けなければならないが、レミリアを油断させる必要も有る。
たまたま“太刀川ミミ”を見つけて首輪を付けた、その程度に思わせておくのだ。
放送の名前もヴィクトリアの方を呼んでやろう。
首輪を付けに行くのはその時が良いだろう。
そうやってジェダは巧緻な策謀を張り巡らせていく。
(さあ、レミリア・スカーレット。その真実を私に委ねるのだ)
冥王城の奥深く、殺し合いの主人はほくそ笑む。
その推理の絶対を信じて。
その推理の絶対を信じて。
余談であるが。
今のところ、ジェダ・ドーマは気づいていない。
いつの間にか新たにもう一組のイレギュラーが生まれていることに。
蒼星石とチャチャゼロのチェンジリング。
それは本来起こるはずもない事だから。
今のところ、ジェダ・ドーマは気づいていない。
いつの間にか新たにもう一組のイレギュラーが生まれていることに。
蒼星石とチャチャゼロのチェンジリング。
それは本来起こるはずもない事だから。
もちろんそれは蒼星石の魔力変質が予想外だったからでもある。
エヴァのドール契約自体は、少なくとも新たに従者を作り出す事は制限されていた。
これは意志が吹き込まれる部分などが制限により機能停止していたという意味である。
それ以上に制限する必要は無いと思われていたし、制限すれば他の魔法の使用まで支障を来たしていた。
チャチャゼロを材料に他の人形の参加者の治療に使うというのは応用的で、完全に想定外の使い方だったのである。
何よりもその結果として魔力が変質する程の劇的な症状が出るとは予想だにしなかった。
それは魔術的に高度な要素が複雑に絡み合った結果、偶発的に起きた現象なのである。
だがそれよりもチャチャゼロに起きていた現象こそ劇的だった。
エヴァのドール契約自体は、少なくとも新たに従者を作り出す事は制限されていた。
これは意志が吹き込まれる部分などが制限により機能停止していたという意味である。
それ以上に制限する必要は無いと思われていたし、制限すれば他の魔法の使用まで支障を来たしていた。
チャチャゼロを材料に他の人形の参加者の治療に使うというのは応用的で、完全に想定外の使い方だったのである。
何よりもその結果として魔力が変質する程の劇的な症状が出るとは予想だにしなかった。
それは魔術的に高度な要素が複雑に絡み合った結果、偶発的に起きた現象なのである。
だがそれよりもチャチャゼロに起きていた現象こそ劇的だった。
実を言うとジェダは、一定以上の魂が含まれない事を条件に支給品を集めていた。
魂には重みという物が有る。
同じ種族ですら、Q-Beeは一人分に誤認されてもP-Beeのそれが誤差にすらならないように、
支給品“達”の魂は全て破壊されようとも参加者一人分にさえ満たないはずだったのだ。
実際、他の意志有る支給品が破壊された時の魂に誤差は出ていない。
にも関わらずチャチャゼロの魂には参加者一人分を満たす程の重みが有った。
魂には重みという物が有る。
同じ種族ですら、Q-Beeは一人分に誤認されてもP-Beeのそれが誤差にすらならないように、
支給品“達”の魂は全て破壊されようとも参加者一人分にさえ満たないはずだったのだ。
実際、他の意志有る支給品が破壊された時の魂に誤差は出ていない。
にも関わらずチャチャゼロの魂には参加者一人分を満たす程の重みが有った。
考えられる事は幾つかある。
エヴァが近くに居た事で、魔力が流れ込まずとも何らかの強化に繋がったのかもしれない。
死んだというより仮死、あるいは擬死状態とでもいうべき状態から神体に吸引され、
魂が無理矢理引き剥がされて呑み込まれた事も一因と言えるかもしれない。
だがもっと単純に考えるならば、こうだ。
これまで数百年エヴァと共に歩んで来て成長しなかった魂が、僅か一日で急激に育っていたのだ。
そんな事は普通に考えるならありえない。
“人型である事から参加者と同じく魂を練磨する儀式の影響を受けたとしても”そこまでの成長は想定外だ。
だが事実、チャチャゼロの魂はそれほどの重みを持っていた。
エヴァが近くに居た事で、魔力が流れ込まずとも何らかの強化に繋がったのかもしれない。
死んだというより仮死、あるいは擬死状態とでもいうべき状態から神体に吸引され、
魂が無理矢理引き剥がされて呑み込まれた事も一因と言えるかもしれない。
だがもっと単純に考えるならば、こうだ。
これまで数百年エヴァと共に歩んで来て成長しなかった魂が、僅か一日で急激に育っていたのだ。
そんな事は普通に考えるならありえない。
“人型である事から参加者と同じく魂を練磨する儀式の影響を受けたとしても”そこまでの成長は想定外だ。
だが事実、チャチャゼロの魂はそれほどの重みを持っていた。
だから気づけなかったのだ。
有り得ないと思われていた事が起きたから。
ジェダはチャチャゼロを甘く見ていたのだろう。
たかが人形がささやかな奇跡を起こしていたなんて思いもしなかったのだから。
有り得ないと思われていた事が起きたから。
ジェダはチャチャゼロを甘く見ていたのだろう。
たかが人形がささやかな奇跡を起こしていたなんて思いもしなかったのだから。
儀式はあるべき形へと効率的に進んでいた。
誰が思うよりも劇的に、速やかに。
誰が思うよりも劇的に、速やかに。
混迷は全ての真実を覆い隠していく……。
≪274:目撃者と追跡者 | 時系列順に読む | 276:蒼星石/Lapislazuri Stern≫ |
≪274:目撃者と追跡者 | 投下順に読む | 276:蒼星石/Lapislazuri Stern≫ |