蒼星石/Lapislazuri Stern ◆tcG47Obeas
まず古手梨花、そしてククリと金糸雀の死体を確認したというQ-Bee。
それだけでも蒼星石にとっては重大な意味を持っている。
(死体を確認したという事は、タバサ達はどうなったんだ!?)
金糸雀とククリの死体はタバサが引く棺桶に入れられていたはずなのだ。
タバサや小太郎は無事なのだろうか。
気にはなるが、どうすれば良いか判らなかった。
少なくともあと二時間足らずで耳に出来る放送を待てば、その生死だけは確認できる。
しかし今すぐ確認に行かなくて良いのか。
(いや、Q-Beeは不用意に参加者を傷つけはしないはずだ。
ジェダも、あの戦いは参加者の方から挑んだ物だという風に……ジェダの言葉を信じられるのか?)
動揺が胸の中を駆け巡り収まらない。
更に魔物達の会話は続く。
それだけでも蒼星石にとっては重大な意味を持っている。
(死体を確認したという事は、タバサ達はどうなったんだ!?)
金糸雀とククリの死体はタバサが引く棺桶に入れられていたはずなのだ。
タバサや小太郎は無事なのだろうか。
気にはなるが、どうすれば良いか判らなかった。
少なくともあと二時間足らずで耳に出来る放送を待てば、その生死だけは確認できる。
しかし今すぐ確認に行かなくて良いのか。
(いや、Q-Beeは不用意に参加者を傷つけはしないはずだ。
ジェダも、あの戦いは参加者の方から挑んだ物だという風に……ジェダの言葉を信じられるのか?)
動揺が胸の中を駆け巡り収まらない。
更に魔物達の会話は続く。
「アト、イキテテクビワツケテナイニンゲンモミツケタ」
「あ、生きてる人って本当にいたんだ」
リリスの問いにQ-Beeは告げる。
「ちなみに、そいつの名前は?」
「タチカワミミ」
「あ、生きてる人って本当にいたんだ」
リリスの問いにQ-Beeは告げる。
「ちなみに、そいつの名前は?」
「タチカワミミ」
(太刀川ミミが首輪を外して、生きている!?)
どうやらQ-Beeはそれを捜し死体を確認して回っていたようだ。
グラーフアイゼンが死んだと言っていたのに、生きていた。
その事自体は嬉しい事だと言える。
(アイゼンの言葉に間違いが有ったのか?)
確かに有りえない事ではない。
もしかするとアイゼン自身が首輪解除者を意図的に隠していたのかもしれない。
どうやって外して、どうして生きているのかは判らないが、僥倖だった。
どうやらQ-Beeはそれを捜し死体を確認して回っていたようだ。
グラーフアイゼンが死んだと言っていたのに、生きていた。
その事自体は嬉しい事だと言える。
(アイゼンの言葉に間違いが有ったのか?)
確かに有りえない事ではない。
もしかするとアイゼン自身が首輪解除者を意図的に隠していたのかもしれない。
どうやって外して、どうして生きているのかは判らないが、僥倖だった。
(だけど、ジェダに気づかれたのか……)
ジェダが何も手を打たないとは思えないし、それに抗う手段も無い。
蒼星石も、この島に居る全ての者達も、籠の中の鳥なのだから。
蒼星石が何をしようとしても、辿り着く間も無くジェダは処置を終えるだろう。
有り得るとすれば一度はジェダを出し抜いた太刀川ミミがもっと上手くやる事だけだ。
(祈るしかないのか。タバサ達の事も、太刀川ミミの事も)
苦渋を噛み締め、不安をさておき思考する。
ジェダが何も手を打たないとは思えないし、それに抗う手段も無い。
蒼星石も、この島に居る全ての者達も、籠の中の鳥なのだから。
蒼星石が何をしようとしても、辿り着く間も無くジェダは処置を終えるだろう。
有り得るとすれば一度はジェダを出し抜いた太刀川ミミがもっと上手くやる事だけだ。
(祈るしかないのか。タバサ達の事も、太刀川ミミの事も)
苦渋を噛み締め、不安をさておき思考する。
そもそもどうして確認していた死体がククリ、金糸雀、古手梨花なのだろうか。
偶然にも、蒼星石はその全ての死体を知っていた。
ククリの死体も金糸雀の死体も、目の前の古手梨花の死体も知っていた。
それらの死体に共通する点とは何なのか?
偶然にも、蒼星石はその全ての死体を知っていた。
ククリの死体も金糸雀の死体も、目の前の古手梨花の死体も知っていた。
それらの死体に共通する点とは何なのか?
ククリと金糸雀だけなら北東の街で死んだ事しか意味しない。
どうやら首輪を外した誰かもそこに居たらしい。
しかし古手梨花の死体を確認する必要が有ったのはどうしてだろう。
どうやら首輪を外した誰かもそこに居たらしい。
しかし古手梨花の死体を確認する必要が有ったのはどうしてだろう。
(箱に密封されたり、埋められていたからとか? ……いや、それだけじゃダメだ)
すぐに否定する。
もしそうだとすれば、一緒に棺桶に入れられていたイシドロの死体だって調べたはずだ。
だがイシドロの死体に興味は無かったようだし、そもそも夕方の放送時点で死亡したと認識されている。
そう、夕方の頃は。
(まさか…………時間が問題なのか?)
ククリと金糸雀の死体にもう一つ共通しているのは、殆ど同時に死んでいた事だ。
古手梨花は判らないが、彼女も似た時期に殺されたとすれば……。
すぐに否定する。
もしそうだとすれば、一緒に棺桶に入れられていたイシドロの死体だって調べたはずだ。
だがイシドロの死体に興味は無かったようだし、そもそも夕方の放送時点で死亡したと認識されている。
そう、夕方の頃は。
(まさか…………時間が問題なのか?)
ククリと金糸雀の死体にもう一つ共通しているのは、殆ど同時に死んでいた事だ。
古手梨花は判らないが、彼女も似た時期に殺されたとすれば……。
(考えろ、考えるんだ蒼星石。あの名探偵くんくんのように)
薔薇乙女達の間で熱狂的ブームを引き起こしている推理物動物人形劇の探偵を思い出す。
彼のように鋭い推理をするのだ。
北東エリアで死んだククリと金糸雀、時間帯は多分九時かその前後だろう。
その調査をQ-Beeが行っていた。
Q-Bee。
レミリアに殺害され、日の替わりと共に復活したQ-Beeが調査していた?
(もしかして関係が有るのか?
Q-Beeが倒された事。十二時に蘇り、雨が降らされた事。
Q-Beeが調べていた死者達。死者の中に混じっていた首輪から逃れた誰か。
Q-Beeが殺されたのと近い時間帯に殺されたのかもしれない死者達。
もしもこれが一本の線で繋がるとすれば……!!)
薔薇乙女達の間で熱狂的ブームを引き起こしている推理物動物人形劇の探偵を思い出す。
彼のように鋭い推理をするのだ。
北東エリアで死んだククリと金糸雀、時間帯は多分九時かその前後だろう。
その調査をQ-Beeが行っていた。
Q-Bee。
レミリアに殺害され、日の替わりと共に復活したQ-Beeが調査していた?
(もしかして関係が有るのか?
Q-Beeが倒された事。十二時に蘇り、雨が降らされた事。
Q-Beeが調べていた死者達。死者の中に混じっていた首輪から逃れた誰か。
Q-Beeが殺されたのと近い時間帯に殺されたのかもしれない死者達。
もしもこれが一本の線で繋がるとすれば……!!)
Q-Beeが殺されたから、首輪から逃れる者が出た?
(いや違う、そうじゃない!
そもそもククリと金糸雀が死んだのはQ-Beeより少し前だったんだ。
Q-Beeが殺されたから何か有ったなら、Q-Beeより後に死んだ人を調べるはずなんだ。
……どんな順番で死んだのか正確には把握できてないのか?
それとも、もしかして。
正確な把握もできなくなっていたのか?)
そもそもククリと金糸雀が死んだのはQ-Beeより少し前だったんだ。
Q-Beeが殺されたから何か有ったなら、Q-Beeより後に死んだ人を調べるはずなんだ。
……どんな順番で死んだのか正確には把握できてないのか?
それとも、もしかして。
正確な把握もできなくなっていたのか?)
──Q-Beeが殺された前後は生死の監視に若干の粗が生まれる。
若干粗い仮説だ。
しかしそう考えるのが妥当に思えてきた。
Q-Beeが死ねば誰が生きているか誰が死んでいるかのチェックが甘くなるのだ。
その隙を突いて、何者かが首輪を解除した。
しかしそう考えるのが妥当に思えてきた。
Q-Beeが死ねば誰が生きているか誰が死んでいるかのチェックが甘くなるのだ。
その隙を突いて、何者かが首輪を解除した。
(逆に言えば、Q-Beeが生きている間はすぐに感知されてしまうのか?)
厄介な難題だった。
悔しいが、レミリアとQ-Beeとの激闘は手の出せる領域ではなかった。
再びあれを倒す事など出来るのだろうか。
厄介な難題だった。
悔しいが、レミリアとQ-Beeとの激闘は手の出せる領域ではなかった。
再びあれを倒す事など出来るのだろうか。
しばらくしてリリスとQ-Beeは別れた。
蒼星石は思う。
せめてリリスだけでも倒すべきなのだろうか。
エヴァは言った。
蒼星石は思う。
せめてリリスだけでも倒すべきなのだろうか。
エヴァは言った。
『私は光を知らしめる影となる。おまえはそれを手伝え』
『別に罪を背負えとは言わん。私に付いてくる必要も無い。
悪を映えさせる者として正義に味方してもかまわん。
ただ私の在り方を手伝え。それすらしないというなら死ね』
『別に罪を背負えとは言わん。私に付いてくる必要も無い。
悪を映えさせる者として正義に味方してもかまわん。
ただ私の在り方を手伝え。それすらしないというなら死ね』
正義に味方をしようがどうしようが構わない。
ならばリリスは倒すべき敵なのだろう。
蒼星石の道は未だ定まらなかったが、リリスを打ち倒す事は正しい事に思われた。
倒しても殺そうというつもりにはとてもなれなかったが、それでも。
ただしそれができるならだが。
ならばリリスは倒すべき敵なのだろう。
蒼星石の道は未だ定まらなかったが、リリスを打ち倒す事は正しい事に思われた。
倒しても殺そうというつもりにはとてもなれなかったが、それでも。
ただしそれができるならだが。
(出来るのか? 僕に)
昼間に塔で戦った時の事を思い返す。
戦術の指揮を受けていたとはいえ、四人がかりで戦ってようやく撃退できた難敵だ。
あれに一人で太刀打ちする事などできるだろうか。
(僕の調子はどうなんだ)
ドール契約により四肢を取り戻し、腕や足は違和感さえ感じさせず自在に動く。
白兵戦であれば以前と同じように戦えるはずだ。
空を飛び白兵戦に持ち込むか、金糸雀のヴァイオリンを使えば戦いようがあるだろうか。
蒼星石はリリスを見上げる。
昼間に塔で戦った時の事を思い返す。
戦術の指揮を受けていたとはいえ、四人がかりで戦ってようやく撃退できた難敵だ。
あれに一人で太刀打ちする事などできるだろうか。
(僕の調子はどうなんだ)
ドール契約により四肢を取り戻し、腕や足は違和感さえ感じさせず自在に動く。
白兵戦であれば以前と同じように戦えるはずだ。
空を飛び白兵戦に持ち込むか、金糸雀のヴァイオリンを使えば戦いようがあるだろうか。
蒼星石はリリスを見上げる。
リリスは空を見回し、何かを見つけた様子で飛び立った。
リリスの視線の遥か先に居たのは。
リリスの視線の遥か先に居たのは。
「エヴァ……!!」
西の方角へと飛んでいくエヴァ。
自分の担当区域だと言いながら、エヴァが向かおうとはしなかった方角だ。
そちらに何か有ったのかもしれない。
何れにせよ最早選択の余地は無い。
蒼星石は助走を付け、自らもローゼンメイデンの飛行能力で飛翔しようとして。
自分の担当区域だと言いながら、エヴァが向かおうとはしなかった方角だ。
そちらに何か有ったのかもしれない。
何れにせよ最早選択の余地は無い。
蒼星石は助走を付け、自らもローゼンメイデンの飛行能力で飛翔しようとして。
雨上がりでぬかるみと化した地面に叩きつけられた。
「うぐっ。クッ、一体何が?」
泥でべちゃべちゃになりながらも立ち上がる。
飛ぼうとしたはずだ。
ローゼンメイデンの飛行能力はそこまで優れた物ではないが、出来るはずだし出来ていた。
なのにどうして。
「飛べなくなってるのか……?」
それが出来なくなっているのか。
泥でべちゃべちゃになりながらも立ち上がる。
飛ぼうとしたはずだ。
ローゼンメイデンの飛行能力はそこまで優れた物ではないが、出来るはずだし出来ていた。
なのにどうして。
「飛べなくなってるのか……?」
それが出来なくなっているのか。
蒼星石はハッとなり自らの胸に手を当てた。
その奥に感じ取れるはずのものを感じ取ろうとした。
胸の奥深く、ドール達の中枢にある。
その奥に感じ取れるはずのものを感じ取ろうとした。
胸の奥深く、ドール達の中枢にある。
ローザミスティカの鼓動を。
感じ、とれなかった。
蒼星石自身のそれはもちろんの事、取り込んだ金糸雀のローザミスティカも反応が無い。
確かにそこに在るのだ。
存在しているのに、反応を返してくれない。
まるで化石になってしまったみたいに、そこから溢れ続けるものが感じられない。
確かにそこに在るのだ。
存在しているのに、反応を返してくれない。
まるで化石になってしまったみたいに、そこから溢れ続けるものが感じられない。
「…………は……はは…………は………………」
乾いた笑いが零れた。
理解してしまった。
どうして自らの中にあるローザミスティカが反応を止めたのか。
自らの身に降りかかった現象が何であるのか。
理解してしまった。
どうして自らの中にあるローザミスティカが反応を止めたのか。
自らの身に降りかかった現象が何であるのか。
蒼星石はローゼンメイデンではなくなったのだ。
自らの体だ、意識を巡らせれば実感として理解できる。
蒼星石の体内を巡る力はエヴァのドール契約の作用が複雑に絡み合い変質していた。
逆に言えばローゼンメイデンの力が機能を停止したのだ。
蒼星石の体内を巡る力はエヴァのドール契約の作用が複雑に絡み合い変質していた。
逆に言えばローゼンメイデンの力が機能を停止したのだ。
だから、ローゼンメイデンとしての力が喪われた。
金糸雀のバイオリンを取り出して、演奏してみた。
ギィギィと耳障りな音が響くだけで何も起きなかった。
金糸雀のローザミスティカはもう、ヴァイオリンの弾き方も教えてくれない。
ギィギィと耳障りな音が響くだけで何も起きなかった。
金糸雀のローザミスティカはもう、ヴァイオリンの弾き方も教えてくれない。
空を飛ぶ力は失われ、夢に入る力も失われている事を感じとれた。
庭師の鋏で心の樹を正しく剪定する事も叶わない。
例えローザミスティカを集めても、最早何の想いも伝えてはくれないだろう。
究極の少女、アリスに至る事も絶対に有り得なくなった。
庭師の鋏で心の樹を正しく剪定する事も叶わない。
例えローザミスティカを集めても、最早何の想いも伝えてはくれないだろう。
究極の少女、アリスに至る事も絶対に有り得なくなった。
蒼星石の生まれた理由さえもが否定された。
「そういう事、か……」
打ち捨てられた庭の様に胸の中で絶望が繁茂していく。
とっくの昔に判っていた事だ。
殺し合いを許容した自分が何かを望むなんておこがましいと。
だけどそれでも想ってしまった。
希望を抱いてしまった。
まだ何かを信じていいのだと。
打ち捨てられた庭の様に胸の中で絶望が繁茂していく。
とっくの昔に判っていた事だ。
殺し合いを許容した自分が何かを望むなんておこがましいと。
だけどそれでも想ってしまった。
希望を抱いてしまった。
まだ何かを信じていいのだと。
「…………なにが」
例え徒歩で辿り着けたとしても、リリス相手には戦いにすらならないだろう。
空中から攻撃を続けられればそれだけで、今の蒼星石には何もできないのだから。
大体走って向かったとしても到着するのは全てが終わった頃だ。
西で起きる筈の戦いにおいて、蒼星石に出来る事は何も無い。
空中から攻撃を続けられればそれだけで、今の蒼星石には何もできないのだから。
大体走って向かったとしても到着するのは全てが終わった頃だ。
西で起きる筈の戦いにおいて、蒼星石に出来る事は何も無い。
「なにが、悪いんだ」
そもそも蒼星石は何のために何をする。
最早生まれた意味すら否定された。
敬愛するお父様の願いを叶える事はできない。
最早生まれた意味すら否定された。
敬愛するお父様の願いを叶える事はできない。
こんなにも無力な体で誰かを護る事も。
こんなにも罪に穢れた身で誰かを救う事も。
できるわけがない。
できるはずがない。
こんなにも罪に穢れた身で誰かを救う事も。
できるわけがない。
できるはずがない。
なのに。
「一筋の光を求め続けることが!」
蒼星石は立ち上がる。
存在理由は否定された。
胸腔の奥に眠るローザミスティカはただの預かり物と化した。
その身は泥と罪に塗れ、心には絶望の蔦が絡み付いている。
泥に塗れた顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
意地を張るように噛み締めた歯はカタカタと噛み合わない。
存在理由は否定された。
胸腔の奥に眠るローザミスティカはただの預かり物と化した。
その身は泥と罪に塗れ、心には絶望の蔦が絡み付いている。
泥に塗れた顔は涙でぐしゃぐしゃになっている。
意地を張るように噛み締めた歯はカタカタと噛み合わない。
胸が苦しい。
想いが辛い。
痛い。
痛い、痛い、痛い!
こころが、いたい。
最早許されなくとも、究極の少女アリスは父ローゼンの夢で、ローゼンの夢は蒼星石の夢でもあった。
とても大切な夢だった。
いや、言葉を尽くしても語り尽くす事などできないだろう。
ローゼンメイデンである事は、蒼星石にとっての根底だった。
全てだったとはいわない。
幾つもの絆が無意味な物だったとは思わない。
だけど蒼星石の全てはその基盤の上に構築されていた。
その基盤が崩れ去った。
だから何もかもが失われた。
蒼星石にとっての全てが崩れ去る。
意志も矜持も絆も思い出も、希望も。
何もかもが崩れ去る。
とても大切な夢だった。
いや、言葉を尽くしても語り尽くす事などできないだろう。
ローゼンメイデンである事は、蒼星石にとっての根底だった。
全てだったとはいわない。
幾つもの絆が無意味な物だったとは思わない。
だけど蒼星石の全てはその基盤の上に構築されていた。
その基盤が崩れ去った。
だから何もかもが失われた。
蒼星石にとっての全てが崩れ去る。
意志も矜持も絆も思い出も、希望も。
何もかもが崩れ去る。
それでも蒼星石は想うのだ。
(僕は救われたんだ)
死に瀕してなお勇者であったニケによって、心を救われた。
主人であるエヴァの手で消費されたチャチャゼロによって、体を救われた。
主人であるエヴァの手で消費されたチャチャゼロによって、体を救われた。
だったら、こんな所で足踏みをしている暇なんて有るものか。
歩き続けなければならない。
その想いが蒼星石の足を支えてくれる。
その想いが蒼星石の足を支えてくれる。
(どうする?)
自問する。
悔しいが西は、間に合わない。
それでも西に行くのか。
それとも他の選択をするのか。
(……西で起きている何かは、エヴァを信じよう)
何が有って向かったのかは判らないが、彼女ならそうそう仕損じる事は無いはずだ。
蒼星石は蒼星石に出来る事をしなければならない。
自問する。
悔しいが西は、間に合わない。
それでも西に行くのか。
それとも他の選択をするのか。
(……西で起きている何かは、エヴァを信じよう)
何が有って向かったのかは判らないが、彼女ならそうそう仕損じる事は無いはずだ。
蒼星石は蒼星石に出来る事をしなければならない。
そう考えるなら答えは一つしかないのだ。
元より蒼星石にはしなければならない事がある。
元より蒼星石にはしなければならない事がある。
(タバサ達に謝らなくちゃいけない)
それは蒼星石が犯した明確な過ちで、だけどまだ償える事だ。
タバサ達を捜し、再会し、謝ろう。
前に進むならその前にケジメを付けるのは当然の事なのだから。
タバサ達を捜し、再会し、謝ろう。
前に進むならその前にケジメを付けるのは当然の事なのだから。
(なら、どう向かう?)
問題は進路だろう。
蒼星石は北から来た。
だけど5時に発動するE-2の禁止エリアが蒼星石の帰り道を塞いでしまう。
急げば発動前に抜けられなくもないが、もし夜道に迷って途中で禁止エリアが発動すれば最悪だ。
森まで掛かるE-2エリアに迷い込まないよう進むには相当の余裕を見なければならない。
見通しの利かない森の中を進むのだから、1エリア余裕を見てC-4から森に入っても警戒しすぎという事はない。
あるいは、東から回るか。
G-4の禁止エリアこそ気になるが、こちらは道なりに行けばいいのだから概ね安全だ。
城に寄るのも良いかもしれない。
問題は進路だろう。
蒼星石は北から来た。
だけど5時に発動するE-2の禁止エリアが蒼星石の帰り道を塞いでしまう。
急げば発動前に抜けられなくもないが、もし夜道に迷って途中で禁止エリアが発動すれば最悪だ。
森まで掛かるE-2エリアに迷い込まないよう進むには相当の余裕を見なければならない。
見通しの利かない森の中を進むのだから、1エリア余裕を見てC-4から森に入っても警戒しすぎという事はない。
あるいは、東から回るか。
G-4の禁止エリアこそ気になるが、こちらは道なりに行けばいいのだから概ね安全だ。
城に寄るのも良いかもしれない。
どのみち朝までには到底戻れない。
タバサ達は街を出ているかもしれない。
出ているとすれば、何処へ?
タバサ達は街を出ているかもしれない。
出ているとすれば、何処へ?
(……東、かな)
こちらから使いにくいルートは逆側からも使いづらいのだ。
北周りはE-2の禁止エリアが邪魔になる。
やはり、東回りだ。
途中幾つか有る施設に寄って行くのも良いだろう。
こちらから使いにくいルートは逆側からも使いづらいのだ。
北周りはE-2の禁止エリアが邪魔になる。
やはり、東回りだ。
途中幾つか有る施設に寄って行くのも良いだろう。
蒼星石は東を見つめた。
一度だけエヴァが向かった西を振り返り、それから。
東へと向けて歩き始めた。
一度だけエヴァが向かった西を振り返り、それから。
東へと向けて歩き始めた。
(エヴァが自分を悪と引き立てろというのならしてやるさ。
エヴァが悔やむくらいに、引き立ててやる)
だからその為に、今はエヴァと逆を行く。
蒼星石のケジメを付けて、それから必要な何かを見つけるために。
そう。
エヴァが悔やむくらいに、引き立ててやる)
だからその為に、今はエヴァと逆を行く。
蒼星石のケジメを付けて、それから必要な何かを見つけるために。
そう。
(僕は君を諦めない)
エヴァを連れ戻せるだけの何かを見つけてみせる。
エヴァが自らを悪だ影だと言うのなら、その悪や影にすら手を差し伸べ引き戻してみせる。
エヴァが自らを悪だ影だと言うのなら、その悪や影にすら手を差し伸べ引き戻してみせる。
光の道とはそういうものだ。
どれだけ喪おうとも、どれだけ叶いっこ無いほどの奇麗事だろうとも挑み続ける。
現実を見ないだけだと蔑めばいい、憎めばいい。
こんな生き方で何かを掴めるはずも無い。
十中八九全ては徒労に終わるだろう。
だから正義は弱いのだ。
未来ばかり見る無想家は明日に辿り着けずのたれ死ぬ。
自分どころか周りを巻き添えにして死んでいく。
光は夜闇の前に儚くて、どこまでも愚かな蛮勇に過ぎない。
だけど蒼星石はそんな勇気に救われた。
どれだけ喪おうとも、どれだけ叶いっこ無いほどの奇麗事だろうとも挑み続ける。
現実を見ないだけだと蔑めばいい、憎めばいい。
こんな生き方で何かを掴めるはずも無い。
十中八九全ては徒労に終わるだろう。
だから正義は弱いのだ。
未来ばかり見る無想家は明日に辿り着けずのたれ死ぬ。
自分どころか周りを巻き添えにして死んでいく。
光は夜闇の前に儚くて、どこまでも愚かな蛮勇に過ぎない。
だけど蒼星石はそんな勇気に救われた。
行為だけを見れば最低だ。
ニケは蒼星石を救うアテも何も無く蒼星石を護って、散った。
それが無駄にならなかったのはエヴァが心動かされたからだ。
その成果ですらチャチャゼロという別の犠牲を必要とし、その上で蒼星石の力さえ失われた上での物だ。
何一つプラスになってはいない。
奇麗事でしかない光の道とはそういう物だ。
それでも蒼星石は奇麗事に救われた。
命を救えるのは闇の道を貫く悪の信念なのかもしれない。
でも心は奇麗事でしか救えない。
だったら奇麗事を選ぶのは当然の事だ。
何故なら蒼星石は。
ニケは蒼星石を救うアテも何も無く蒼星石を護って、散った。
それが無駄にならなかったのはエヴァが心動かされたからだ。
その成果ですらチャチャゼロという別の犠牲を必要とし、その上で蒼星石の力さえ失われた上での物だ。
何一つプラスになってはいない。
奇麗事でしかない光の道とはそういう物だ。
それでも蒼星石は奇麗事に救われた。
命を救えるのは闇の道を貫く悪の信念なのかもしれない。
でも心は奇麗事でしか救えない。
だったら奇麗事を選ぶのは当然の事だ。
何故なら蒼星石は。
「僕の役目は、心を護る事なんだから」
心の樹を護る庭師なのだから。
もうローゼンメイデンですらなくなったけれど、それでもそう在り続けようと思う。
ニケの遺志が、歩き続ける強さをくれるから。
だから胸を引き裂くような痛みを噛み締めて、蒼星石は歩き出す。
もうローゼンメイデンですらなくなったけれど、それでもそう在り続けようと思う。
ニケの遺志が、歩き続ける強さをくれるから。
だから胸を引き裂くような痛みを噛み締めて、蒼星石は歩き出す。
歩き、歩き、歩き、歩いて。
やがて目前に広がるのは立ち枯れの森。
蒼星石は何時ごろに誰がこれを為したのか、その後に何処へ行ったのか知る由も無い。
ただ、それを為した誰かに恐怖を抱きながら。
決意の一歩で、枯れ土を踏締めた。
やがて目前に広がるのは立ち枯れの森。
蒼星石は何時ごろに誰がこれを為したのか、その後に何処へ行ったのか知る由も無い。
ただ、それを為した誰かに恐怖を抱きながら。
決意の一歩で、枯れ土を踏締めた。
【E-5/荒地/2日目/早朝】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持、
ローゼンメイデンとしての機能失調、泥塗れ、精神的に激しい衝撃、それでも進む意志
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、戦輪×4@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品×2、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、素昆布@銀魂、
旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー、トンネル南側入り口の鍵
[思考]:諦めちゃいけないんだ
第一行動方針:タバサ達に謝りに行く。
第二行動方針:エヴァを引き戻すための何かを探す。
基本行動方針:人の心を護る。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
エヴァと情報交換しました。少なくとも島を覆う結界や地下に本拠地があるであろうことは聞いてます。
※ジェダ達に死亡したと思われています。首輪の中のP-Beeも眠っています。そのことに蒼星石は気付いていません。
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:金糸雀のローザミスティカ継承、チャチャゼロの部品と人形契約により四肢を維持、
ローゼンメイデンとしての機能失調、泥塗れ、精神的に激しい衝撃、それでも進む意志
[装備]:庭師の鋏@ローゼンメイデン、戦輪×4@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品×2、金糸雀のバイオリンと弓@ローゼンメイデン、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、素昆布@銀魂、
旅行用救急セット(消毒薬と針と糸)@デジモンアドベンチャー、トンネル南側入り口の鍵
[思考]:諦めちゃいけないんだ
第一行動方針:タバサ達に謝りに行く。
第二行動方針:エヴァを引き戻すための何かを探す。
基本行動方針:人の心を護る。
[備考]:現在蒼星石の四肢はエヴァとの人形契約により動いています。
蒼星石の自由に動き、エヴァにとっての負担もほぼ有りませんが、
昼間のエヴァの魔力の減衰や、死亡によって影響を受ける可能性は有ります。
エヴァと情報交換しました。少なくとも島を覆う結界や地下に本拠地があるであろうことは聞いてます。
※ジェダ達に死亡したと思われています。首輪の中のP-Beeも眠っています。そのことに蒼星石は気付いていません。
≪275:冥探偵ジェダ~解答編~ | 時系列順に読む | 277:守るもの、奪うもの≫ |
≪275:冥探偵ジェダ~解答編~ | 投下順に読む | 277:守るもの、奪うもの≫ |
≪274:目撃者と追跡者 | 蒼星石の登場SSを読む | 278:Sneak Attack!!(前編)≫ |
2010/04/09:冒頭のQ-Beeと太刀川ミミ関連を修正。