概要
『姫百合の塔』、別称『Chinese Audiodisc Acetate』はAudio Devices社(Audio Devices, Inc.)のインスタントアセテート盤に録音された、歌唱者不明の日本語の詩曲。ラベルには漢字(とひらがな)で『姫百合(の)塔』なる題名と、歌唱者のペンネーム・本名と見られる『澄水』もしくは『登水』の読み不明の文字がそれぞれペンで書かれている。また音声はくぐもった状態であり、歌唱者の性別すえ判別がままならない。(*1)
この曲が入っているアセテート盤は、アウトサイダーミュージックを多く扱っている女性DJのMei Cloverが発見し、題名・名前ともに漢字で構成されていることから『Chinese Audiodisc Acetate』の別名が冠せられた。ただし本人は中国人が歌ったものだと考えていたが、以下の三つの点から中国人が作ったにしては不自然であり、本来は日本人が録音したものである可能性が非常に高い。(*2)
- よく見るとひらがならしき文字(「の」に見える部分)が題名に書かれていること
- 題名の『姫百合の塔』(現・ひめゆりの塔)は沖縄に位置する慰霊碑の名前であること
- 日本語の歌詞に起こすと意味が伝わること
捜索の歴史
2022年1月31日、ディスクジョッキーのMei Cloverが自身のYouTubeチャンネルに本曲を投稿した。この時、概要欄にて1950年代以前に録音された中華系の歌手の曲であるという推測を立てているが、その出処についてはぼかされている。
本曲が収録されていたアセテートはAudio Devices社が提供していたインスタントディスクシリーズ「Audiodisc Recording Blank」の1つであった。また姫百合の塔の除幕は1946年4月7日と終戦直後の出来事であり、Audiodisc Recording Blankの製造も1940年代に始まっているため、彼女の年代推測は外れているわけではない。
歌詞(流血描写あり!)
歌詞は詩人・唐木泰道の同名の詩を抜粋したもので、約1分10秒に渡って叫ぶように読み上げられている。ひめゆり学徒隊の生徒が次々と弾の餌食となり、その最中で敗戦の影が刻一刻と近づく様を生々しく描いている。いずれにしろ、ひめゆりの塔が題名で確認できるため、1946年以降に作られた曲である。
歌詞は以下の通り。
鮮血は花を染め弾片飛ぶ
友は斃れ肌は裂けて心魂尽きたり
連戦利あらず祖国危うし
戦雲俄かに覆う沖縄
メディアギャラリー
- 元音源
余談
当時どのように日本人で流通していたかは不明だが、他にも日系アーティストが自作曲を録音したAudiodisc数点がネットに出回っている(例えば、唄上尓敏・山中みゆきなる二人の人物の曲を収録したものがeBayにて出回っている)。