+ | ネタバレ注意 |
妖精さん前世1
看病していた母が死んだ。
私にはもう、母が死んで、 私が死なない理由がない。
魔物と戦っても、戦わなくてもいつか私だって死ぬ。
なら、戦って死のう。 戦って死ぬなら、私だって死ぬにしても、 少しは気分だっていいだろう。
人類のために戦おうなんてかけらも思わない。
人間はみんな私をバカにするんだ。 だから、人類のために戦おうなんてかけらも 思わない。
私が変な言葉を使うって言う。
彼らに触れて心を読む。 みんな私のことを気持ち悪いって思ってる。 私のことを気持ち悪いって思ってる人のためには 戦わない。
私は私のために私が戦うんだ。
妖精さん前世2
私のくるぐるの力を分隊の連中に知られた。
あの男…喋らないように釘を差しておいたのに 喋ったんだ。だから分隊の連中に知られた。
このままじゃ危ないかもしれない。
保護という名目で各国のくるぐる使い達は どこかに各国のくるぐる使い達を連れ去られて いるらしい。
連れ去られたらどうなる?
なにかの実験台にされる? それとも、連れ去られたら、 奴隷のように扱われる? 連れ去られたら何をされるかわからない。
どこか別の部隊に配属してもらおう。
ここの部隊にいたままじゃ危険だ。危ない。 妖精さん前世3
メーレスザイレ人のあの男…。
嫌な男。気持ち悪い。 あのメーレスザイレ人の男に 突然押し倒された。 心の中を覗いて、一番嫌だったことを覗いたら、 過去にもそういうことをやっていた。 最後には、首を絞めて、殺して…。 そいつが一番嫌だったことを言ってやったら、 あの嫌な男は驚いて手を離した。
みんな、私ならどうにでもできると思っているんだ。
私は、誰のものにもならない。
私は、私のものだ。 妖精さん前世4
研究員だと名乗る人達に呼び出された。
…私のくるぐるが、気づかれたのだろう。
きっと気づかれてしまった。
やだ。怖い。
くるぐるに生まれただけで、どうしてこんな目に遭うの?
こんな力を持っていても、なにもいいことなんて なかった。どうしてこんな目に遭うの?
戦闘支援訓練を受けさせるとかなんとか言っていたけど、
絶対におかしい。 軍人ならともかく研究員が言うセリフじゃない。 絶対におかしい。 妖精さん前世番外編
部隊に視力がいい女がいる。
視力の良し悪しなんて暗雲の中では役に立たないが、 そういう意味ではなくて、暗雲の中でも多少遠くを見渡せる らしい。
どうして遠くが見えるのか、なかなか答えてくれなかったが、
しつこく聞いてみると、「暗雲と繋がれば少しだけ遠距離 のものも見える」だそうだ。
…意味がわからない。
他言するなと言われたから、この女にとっては 重要な事なんだろう。
この女、時々なにかうわ言をつぶやき続けたり、
何度も同じ言葉を繰り返したり、どこか精神的におかしい ようだが…なにかの病気なのか。
その女のしゃべるうわ言には、どうやら
他人の記憶の…誰にも喋っていないことも 含まれているようで…相当不気味だ。 |
+ | ネタバレ注意 |
KOK-5完成まで1
やはりkokシリーズの実用化にはまだかなりの
時間がかかりそうだ。
肉体の作成も、脳の小型化も、
課題が多すぎる。
能力の高いくるぐる使いだって多くはない。
せめてハウンズが撤退する前に KOK-5完成まで2
勇敢なハウンズや各国兵士の働きで
ネクロリンカ1号機を手に入れられたのはいいが、 技術の解析はかなり難航している。
技術のレベルが違いすぎて、解析には
限界がありそうだ。
ネクロリンカから取り出した技術。
この技術のお陰でkokシリーズの開発にも 着手はできたが、未だに先行きは不透明だ。
我らが開発する、メーレスザイレのKOK-1、KOK-2は、
完成しないかもしれない。
グリュックスヒューゲルのトットート・シェカラシカ博士
が担当する、KOK-3、KOK-4なら、あるいは……。 KOK-5完成まで3
やはり駄目か。
くるぐる使いの人格を保ったまま脳の小型化をするのは 現在の我々人間の技術では難しい。
人格のうち、くるぐるの能力に影響する部分を残して、
他の部分を新たに作成してやればどうにかならなくも ないが…。
そんな技術、無から有を取り出すようなものだ。
我々凡人…とはいっても秀才の集まりではあるはずだが …ともかく我々にはいかんともしがたい。 KOK-5完成まで4
脳を強引に小型化すると、残った生体パーツ
…元になった人間の脳に強烈な負荷がかかる。 普通の人間の脳で試してみたところ、今のところは、 1ヶ月程度で脳が耐え切れずに壊れてしまった。
徐々に記憶が曖昧になり、脳の活動が鈍化し、
最後には脳が死ぬ。 毎度のことだ。どうしてもこれを引き伸ばせない。
…だが、トットート博士はこの問題にもある程度の
改善方法を発見したらしい。
最大で4年もつようにできるそうだ。
4年…。凄まじことだ。 トットート博士にはただただ敬服する。 KOK-5完成まで5
トットート博士がKOK用の人格合成技術を
開発したらしい。
…彼の頭脳はやはり卓越している。
1000年に一度の天才、 そう呼ばれていることに私だって初めは笑ったが、 今ではもう笑えなくなった。
彼は開発に100年かかる技術だって1年かそこら
実用化してみせる。
私と彼との頭脳には、とてつもない隔たりがある。
KOK-5完成まで6
トットート博士が開発していた、
KOK-3、KOK-4共に、予定通りのスペックを 出すことができずに失敗したそうだ。 とはいっても、失敗から得たデータはかなり大きく、 このデータを元にKOKを改善すれば、次は要求スペック を満たせるとトットート博士は言っている。 私個人の意見も同じだ。 KOK-3の耐久時間は、計算したところ一年ほどだ。 KOK-4は、一年半。
次は、理想とする四年を実現できるだろう。
ちょうど新しいくるぐるも見つかった。
KOKへの適性も高い、良質な素材だ。 トットート博士なら、次こそは上手く やってくれるだろう。
もしKOK-5が完成すれば…
きっと量産することだってできる。 能力が高いくるぐるは少ないが、 それなりのくるぐるでも、それなりに 役に立つはずだ。 KOK-5完成まで7
KOK-5には、パートナーとして付き合いやすい
人格を生成するそうだ。
コンビを組む勇者に対して全幅の信頼を持ち、
絶望的な状況でも朗らかな人格…。
非常に不自然な、いかにも人工的な人格だが、
パートナーとしてはそのほうがいいらしい。
人が人を愛するのは難しいことだ。
作り物のほうが楽なのだろう。
一応、被験者から有用だと思われる記憶を
可能な範囲でKOK-5に移植するそうだが、 できるだけ必要な物だけを移すうえ、 記憶の移植の際には情報が大きく損傷する ことになる。 被験者には、元の記憶も、人格も残らないわけだ。 きっとそのほうが幸せだろう。 |