(投稿者:怨是)
「おはよう、ニルフレート」
「何です、ゼクスフォルト」
朝食の場にて、いきなり話し掛けられた。10月1日の今日は、黒旗に拉致された
アドレーゼの奪還作戦に関して、ハーネルシュタイン名誉上級大将と会議を行なう重要な日だ。アドレーゼの教育担当官であるニルフレート自らが出撃しない事について名誉上級大将は「教育担当官である貴殿が出て戦死してしまったら、それこそ無意味である」と仰せられた。その言葉に疑念を挟む余地は無いが、無為に過ごすのは己の矜持が許さなかった。ここ数日の間は事態の解決に少しでも貢献したくて、あらゆる無駄を省いてきた。食事の時間すら惜しい程だった。
……だというのに。目の前のこの男と来たら、そんな事は何処吹く風といった具合に、にやけた顔で此方を見ている。
「過去を変える唯一の方法がある。過去を知る全ての者が、過去を知らない全ての者に、別の過去を語る事だ。ハーネルシュタインがそれを実際にやってのけた様にな」
侮辱的な内容だ。一体、彼は名誉上級大将の何を知っているというのか。無視して食事を掻き込んでいると、ゼクスフォルトは尚も続けた。
「だがな、一度盛り上がった鉄板を幾ら金槌で叩いても完全に平らに戻せる訳が無い。歪んでるのはアンタのほうさ」
そう云い残して、彼は席を立った。
「戯れ言を。狂犬の呻り声など、心に響きませんね」
ニルフレートも食べ終えて席を立つ。近くに居る下級士官に空の食器を片付ける様に云うと、ニルフレートは駆け足で作戦司令室へと向かった。
が、しかし。
「これは……一体、何の真似です?」
ザフター・ニルフレートは困惑していた。作戦司令室へ向かう途中の廊下で、突如として武装した男達に取り囲まれたのだ。押し返される様にして、無人の小部屋へと連れ込まれる。
「とぼけてはいかんよ、ニルフレート中佐」
「貴方がたは何者ですか。公安部隊に捕縛される謂われは無い筈ですが」
「おっと、失敬。お察しの通り、我々は皇室親衛隊公安部隊。そして私はヴィクトール・グランスバッハ。階級は中佐だ。まぁ、いずれは歴史に埋もれる有象無象の名だ。忘れてくれて構わん」
ニルフレートはふと、思案した。日頃ニルフレートの身の回りに居る他の同志達はどうあれ、ニルフレート自身はその名前に聞き覚えがあった。“鋼の大蛇”と呼ばれ、敵味方問わず恐れられたあの
ライオス・シュミット元公安SS少佐の、かつての部下だ。どうやら口調まであの男に似せようとしている様だが、悪を正そうと躍起になったが為に遂には黒旗入りして悪逆に身を染めたライオスとは違い、ヴィクトールは粛正を恐れてコソコソと遣り繰りしていた単なる小者だろうというのが、ニルフレートの所見だった。
そんなヴィクトールは、
アルトメリア連邦の西部劇映画にでも出て来る保安官の如く拳銃を指先に引っかけてくるくると回し、此方へと向けてきた。
「さて。我々公安部隊は、連続放火事件が貴殿等皇帝派の自作自演である事を知っている」
「何を仰っているのか」
解せない。連続放火事件は間違いなく
プロミナ、そして
テオドリクスの仕業であり、彼女らはそのまま図書館を焼いて行方を眩ませた筈だ。プロミナはその後の消息が掴めていないが、テオドリクスは黒旗へと身を移し、新兵器の輸送に関わっていた事までは知っている。
「どうやら自分が今、どの様な状況に置かれているのか解っていないらしいな」
そう云うとヴィクトールは捜査令状を何枚かめくり、ニルフレートの目の前に広げて見せた。
「不倫による国民保護法違反、ならびに連続放火事件の自作自演による財産破壊および情報攪乱の罪で、貴殿を逮捕する」
「何ですって……?」
「解らんのか。此処に、アインクラット陸軍曹長夫人――フレデリカ・アインクラットとの、政治喫茶での会話を一言一句逃さず書き記したメモがある。知らぬとは云わせんよ。何処から読み上げてやろうか……」
「隊長、お耳を」
「何かね」
「……――」
隊員の一人がヴィクトールに耳打ちする。静寂に包まれたこの部屋に於いても尚、彼の声は聞き取れなかった。が、彼が徐々に下卑た笑みを浮かべ始めるのを見て、ニルフレートはその耳打ちの内容が碌でもないものであるという事にすぐさま気付いた。
「く、ふはは! それは名案だ! 是非ともそうしよう! ニルフレート中佐、これを貴殿の口で読み上げたまえ!」
「仰る意味が解りませんな」
「読めと云っているんだよ、ニルフレート中佐。貴殿が、貴殿の口で、貴殿があの日、フレデリカ・アインクラットに口走った一切合切を記した、このメモを! さぁ。それとも今すぐ此処で罪を認めるかね!」
ヴィクトールが拳銃を再び此方に向けると、周りの兵士が次々に銃を構えた。なるほど。反抗すればこの場で射殺してやろうという魂胆らしい。……馬鹿げている! 神は何を思って彼奴らに斯様な暴挙を赦したもうたか!
「……解りました。読みます」
怒りに打ち震えながらも、ニルフレートは読まねばならなかった。アインクラット夫人との、あの政治喫茶での会話を追想しながら、インクのかすれた文字に目を通す。
「――“そんな男よりも、私を選んで頂ければ。確かな将来を約束致しましょう。息子さん……ハンス君でしたか。彼も今より更に良い学校へ進学する事も出来ます。路地裏で野良猫と遊ぶ事も、近所の農家へ畑仕事を手伝いに行く事も、もう無くなるんです”」
後頭部が浮遊して溶ける様な、奇妙な錯覚に襲われた。先刻から脂汗がひっきりなしに背を伝い、書面を支える指は震えていた。それでも前へと進まねばならぬというのか。
「続きを」
「はい」
口を、開く。
「“何でしたら今の学費も私が負担致しましょう。陛下の御恩情により学費は昔に比べ随分と安くはなりましたが、それでもしがない陸軍曹長の手当てのみで遣り繰りするのは、心許ないとお見受けします”」
「アインクラット夫人は何と答えたかね?」
「私に、それを申し上げろと――?」
「勿体振るものではないよ。貴殿の、レンフェルク幹部という立場を考慮して軍法会議には掛けず、こうして個室での尋問に留めてやっているのだ。協力するつもりが無いと云うのなら、有無を云わさず有罪判決を下し、然るべき措置を執らせて貰うが、それでも良いのかね?」
「……」
――見え透いた嘘を。いずれにせよ、このポストから降ろし、暫くして
ヨハネス・フォン・ハーネルシュタイン名誉上級大将をも毒牙に掛けようという魂胆だ。その場限りの恩を着せられる事ほど、腹の立つ事はあるまい。
「あの時、彼女は……快諾してくれました」
「それは本当かね? 結果はそうかもしれんが」
「えぇ、最終的には」
「ではどの様にした結果、快諾するに至ったのかを教えて頂こうか」
「……」
どうすべきだろうか。何もかもを証言すれば、確実に不利になる。しかし、彼らの満足する内容でなければ、もっと詳しく供述する事を求められるか、或いは、最悪の場合は射殺されるかもしれない。
「さぁ早く述べ給え。時間が押している」
「……一度は“考えさせて欲しい”と。ですが、念入りな説得で彼女は考え直し、快諾に至りました」
「初めから、素直にそれを述べるべきだったな。全く、要らぬ手間を掛けさせる」
どうやら、充分だったらしい。だがこれでもう、ニルフレートは終わりだ。昇進はおろか、軍人としての真っ当な生活は最早、絶望的だろう。ならばせめて、誰が背後で手引きしているのかだけでも知らねば。
「一つ、質問をしても?」
「ああ、構わんよ」
「どこで、これらの情報を?」
恐る恐る、ニルフレートは尋ねた。ヴィクトールはその様子が余程滑稽に見えたのか、今にも大笑いしそうな様子だった。ニルフレート自身の耳が熱を帯びるのは、羞恥心か。
「軍曹夫人の協力があってね。面白いほどに手際よく聞き出せたよ。貴殿から受け取った手紙も、その全てを開示してくれた。まぁ、息子の進学や今の夫の仕事が掛かっているから、致し方なかったろうがねぇ、くは、ふはははは!」
「非道な真似を! 貴様等宰相派はいつもそうだ、汚い遣り口を強行する!」
「ニルフレート中佐? ……力任せに強姦する事と、言葉巧みに騙して寝取る事、それらの貴賤を果たして如何様に比べられるというのかね?」
前者が彼らの遣り口を自嘲した言葉で、後者はニルフレートを指しているらしい。
心外でならない。ニルフレートは無言ながらも憤慨の眼差しにて語った。あの愁いを帯びた面持ちを救ってやれる立場にニルフレートは居た。だからこそ罪を犯してまで手を差し伸べようと思ったのだ。先行きの見えぬ夫婦生活、G被害に伴う国家規模の貧困に喘ぐ進路……それらを解決する手筈を整えようとしていたその矢先、彼等は! 事も有ろうに彼等は、フレデリカをけしかけたのだ!
「同じだよ。我々は生まれながらにして悪魔だ。天使の羽衣の作り方と神々を欺く為の作法を、親から習っただけの、醜悪な悪魔でしかない」
「――」
同じなものか。寧ろ自分は神々の教えを忠実に守り、困窮する隣人に手を差し伸べたまでだ。何が自分を此処まで焦らせるのかが判然としないが、少なくとも貴様等よりも、遣ろうとしている事は高尚な行為の筈なのだ。
「――さて」
口を開こうとした所を、ヴィクトールの言葉に遮られた。
「不倫の件については最早、首を振る気にもならんだろう。次は連続放火事件の自作自演についてだが。この書類に見覚えは?」
隊員から手渡された書類を、ヴィクトールは手渡してきた。これらについては見覚えが無い。何処でこれを入手したのかは見当も付かないが、どうせまた非人道的な手段を用いたのだろう。何より、罪状を最初に云い渡された時は状況を呑み込むので精一杯だったが、冷静に考え直せば、彼が遣ろうとしているのは別件を皮切りに他の行為も糾弾せむとする、狡猾な手口ではないか。そう思うと、ニルフレートはますます憮然とした表情になった。
「……レンフェルクの書類には、佐官でも閲覧できないものもありますので」
「では、連続放火事件には何も関与していないと?」
「少なくとも私は」
「成る程。では此方の資料をご覧頂くとしよう」
そう云って、ヴィクトールは次の書類をデスクに置いた。今度は見覚えが無いと云えば嘘になる。ハーネルシュタイン名誉上級大将との密会を行なった折、ニルフレートが自らの意思で読み上げ、サインしたものだった。内容は、今後プロミナをレンフェルクの監視下に置き、黒旗から手を引かせるというものだった筈だ。具体的な手段については何も聞かされていない。
「このサインは誰のものかね?」
「……」
「貴殿のものだよなぁ。薬室に弾が入っている事を知りながら、引き金に指を掛けたのは他でもない。貴殿ではないか」
まさか。来週には昇進する筈のニルフレートを、名誉上級大将は見捨ててしまわれたというのか? ありとあらゆる憶測が胸中を飛び交った。眼前に餌を垂らし、使い捨てる間際に美味しい思いをさせてやろうという、せめてもの温情による昇進だったのだろうか。それとも既にレンフェルクは政敵に掌握され、瓦解しつつあるというのか。
「蜥蜴の尻尾切りとでも云いたげな面持ちだが……大丈夫だ。貴殿の上司共の首も間もなく飛ぶ。我々の手によって」
一瞬にして失われてしまった。与えられた仕事に異を唱えず、黙々とこなしていただけなのに。黒旗の台頭によって砕け散った帝都に、再び栄光の灯火を点そうとした……それだけなのに。真面目に遣って馬鹿を見る世の中があって堪るか!
「こんな結末、誰が認めるものか! 貴様等の所業は軍神に血の涙を流させる! いつか報いが来るぞ!」
「報いか。対価なら今日までに充分過ぎる程支払ったさ。これ以上、何を差し出せというのかね?」
「支払った?! 一体、何を!」
云ってみろ、狡賢い狐共め! 罪をでっち上げ、搾取し続けた貴様等が何を支払ったというのか! さぁ、云ってみろ!
「……――我々の矜持だよ、ニルフレート君」
ヴィクトールの吊り上がった口元から紡がれた言葉はしかし、憎々しげに震えていた。百年の憎悪を凝縮してもまだ、彼程の怒りには届かないだろう。ニルフレートは気圧されて口を噤む。彼の双眸から発せられた絶望感は、自分自身のそれよりも何倍も勝っていた。所詮ニルフレートの心というものは薄っぺらで、この男が抱く矜持には勝てないというのか。両腕を後ろに回され、手錠が嵌められる。
「あぁ、そうだ。訳も解らず退場するのは不本意だろう? 貴殿が何も知らなかった場合に備え、当方はしっかりと準備をしてきた。冥土の土産にご笑覧頂こう」
目の前で書類を突き付けられた。
「これは……」
――……。
ハーネルシュタイン名誉上級大将のサインがされた計画書だった。ニルフレートは一瞬、我が目を疑った。そこには確かに、プロミナを黒旗と結託したと見せ掛けて追い込み、そして黒旗の裏切り者というレッテルを貼り付けて、黒旗の重役達を始末するといった内容が記されていた。焼却される筈の計画書が何者かの手によって流出している。しかも、ニルフレートすら与り知らぬ筈の物が。
だが、しかし。このサインは紛れもなく名誉上級大将のものだ。見間違う筈が無かった。つまり彼ら……公安部隊の云っていた事が真実で、自分は彼らの云う通り、何も知らなかったのだ。何も疑わなかったが為に、何も知らずに遣ってきた。否、疑ってその結果として真相を知っていたとしても、恐らくは続けていただろう。自分は臆病者だ。告発して今ある地位を手放すよりも、“ばれなければ良い”等と嘯き、漫然と過ごして居たに違いなかった。
そこまで考え終えて、頭の中は真っ白になっていた。どれだけの時間が経過したのだろう。口をぽっかりと開けたまま呆然としていたせいで、唾液の乾いた感触が口内を支配していた。時計の針の動く音が、無感情に時を刻んでいる。
「時間だ。連れて行け」
「は」
アシュレイは、ニルフレートが神妙な面持ちで連行されて行くのを遠くから眺めていた。無様なニルフレート。今まで何があっても涼しい顔でやってきた彼が、あんなにみすぼらしいザマになって。アドレーゼも可哀想に。まさか自分の担当官が今頃こんな目に遭っているとは、つゆにも思っては居ないだろう。よしんば奪還作戦が成功しても、罪人に育てられたMAIDとして嘲笑の的になるに違いない。
「だが、此処まででやっと一区切りだな」
まだまだ先は長い。あの忌々しい健康優良ジジイが後釜を見付ける前に、芋蔓式に他の連中も逮捕させねばならない。今回の功労者であるヴィクトールが、アシュレイの方へと向き直った。人懐っこい微笑を貼り付けて此方へと歩いてくる彼に、アシュレイは軽く手を上げて挨拶した。
「終わったのか。ご苦労さん」
「あの朴念仁は今後、死ぬまで過去の名誉に縋り付きながら農夫として過ごして貰う。しかし、よくこんなに資料が揃ったな」
「“協力者”達のおかげさ」
アシュレイはあの手この手を使って、各方面から協力者を集めていた。かつて303作戦に従事し、反抗的だった為に国を追われ、浮浪者に身を窶している老人。友人から借金してまで莫大な金を用意し、
帝都栄光新聞社を乗っ取ったジャーナリスト。秘密警察の方針に疑問を抱く、とある中年の職員。……他にも、名の知れた奴ならバルドルというMALEも居る。皆、
ジークフリートが声を掛けた者達ばかりだ。アシュレイがジークを通じて、動かしたのだ。
「君には感謝せねばなるまい。君の仲間を葬っておきながら、本来ならば“どのツラを下げて”と罵られても可笑しくは無かろうに」
「あんたらと同じだ。俺もクソ野郎に仲間入りしたんだよ。誰かを守りながら、何かを壊す事は出来ない。漸く俺も、それに気付いた」
悲劇に慣れれば喜劇に為る。アシュレイは口元が吊り上がるのを、肩が震えるのを、横隔膜の上下を、その感情に身を任せる事にした。義憤に駆られて叫ぶなど、馬鹿げている。親しい者が悉く消え去ったなら、今更何に心を痛めるというのか。既にアシュレイは舞台から降ろされ、観客席に座り、この長ったらしい三文芝居を延々と見続けねばならないのだ。己のそんな命の何が惜しいというのか。
「いつかあんたは、俺も始末するんだろ? 俺は、MAIDの秘密を知っている」
「それはどうかな。私はこう見えて義理堅い。復讐心を堪えてまで協力してくれた君の恩を仇で返す程、私は腐ってはいないよ」
義理堅い者を自称する奴は、信用したくないものだ。得てしてそういった手合いは約束を守った風に見せ掛ける為に、様々な犠牲を生む。
「どうだか。恩を仇で返す輩なら、何度も見てきた。あんたも同じだ。臭うぜ」
「とある国で、犬から逃れる為に逃亡者がニシンの燻製を道にバラ撒いた話があってな」
「……俺が嗅いでいるのはそれだって云いたいのか」
全くの詭弁だ。この場合だと、彼がバラ撒いている可能性も否定してはならない。
「君の境遇には同情するし、道端のニシンを片付けるのも私の仕事ではある。が、麻痺した嗅覚までは戻せない」
「元の鼻に戻すのは俺自身の仕事ってか」
「容易ならざる事だが、その通りだ。私の、かつての上司であるシュミット中佐や、その友人フュールケがそうであった様に」
随分と懐かしい名前だ。アロイス・フュールケと云えば、かつてアシュレイが部隊長を務めていた指輪隊の一人だ。アシュレイが国外追放となってから久しくその名を耳にせず、そして本国へ連れ戻された時には既に姿を消していた。まるで、初めから居なかったかの様に。
「フュールケ……そうか、あんたは面識があるのか」
「多少は。直に話したのではないから、向こうもあまり覚えては居なかったかもしれん」
覚えては居なかった……云い方に引っかかりを感じる。ただ、それに対して焦りはしなかった。生きていようが死んでいようが、彼はもうこの場所には居ないのだ。一応、形だけでも尋ねてみるか。
「なぁ。あいつも、死んじまったのか?」
「私が手を下した訳ではないが、恐らくは」
なるほど、死体すら見ていないらしい。この分だと、墓も建てていないのだろう。
「……どいつもこいつも、碌でなしばっかりだ。ニシンは暫く喰えたもんじゃないな」
アシュレイは疲れ果てた様な笑いを浮かべ続けた。実際、疲れていたのかもしれない。ヴィクトールが力無げに首を振り、扉を開けて退室して行くのを、止めようとすら思わなかった。
最終更新:2013年03月20日 03:13