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朋也「軽音部? うんたん?」 4/6 火
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meteor089
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朋也「軽音部? うんたん?」
4/6 火
今日も遅刻しての登校。ともかく、自分の席までやってくる。
唯「あ、おはよ~、岡崎くん」
朋也「………」
すると、平沢を囲むようにして3人の女生徒が集まっていた。
その内の一人は、図々しくも俺の席に座っている。
そして、全員が来訪した俺に注目していた。
なんとも居心地が悪い…。
その内の一人は、図々しくも俺の席に座っている。
そして、全員が来訪した俺に注目していた。
なんとも居心地が悪い…。
唯「あ、ほらりっちゃん、どかないと岡崎くんが座れないよ」
女生徒「おっと、悪いね」
その女生徒と入れ替わりに着席する。
だというのに、まだ注視され続けていた。
息苦しくなって、俺は机に突っ伏した。
だというのに、まだ注視され続けていた。
息苦しくなって、俺は机に突っ伏した。
朋也(って、なんで俺が弱い立場なんだよ…)
朋也(くそ、なんか納得いかねぇぞ。睨み返してやろうか…)
唯「それでね…」
と、思ったが、すぐに平沢たちの声が聞こえてきた。
会話を再開したのだろう。
その気はなかったが、嫌でも耳に入ってくる。
会話を再開したのだろう。
その気はなかったが、嫌でも耳に入ってくる。
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:37:04.23:cUBlBpOS0
軽音部の新入部員がどうのとか、そんな話だった。
朋也(こいつら、軽音部の奴らなのか)
朋也(まぁ、なんでもいいけど…)
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
声「起立、礼」
生徒が号令をかける。
ありがとうございました、と一つ響いて授業が終わった。
ややあって、教師に質問をしにいく者や、談笑し始める者が現れ始めた。
ありがとうございました、と一つ響いて授業が終わった。
ややあって、教師に質問をしにいく者や、談笑し始める者が現れ始めた。
朋也(ふぁ…あと一時間で昼か)
次の授業は英語。英作文だ。
担当教師の名前を見てみると、堅物で知られる奴のものだった。
授業を聞いていなかったりすると、その場で説教を始めるのだ。
その最後に、みんなの授業時間を使ったことを謝罪させられる。
俺みたいな奴にとっては、まさに天敵と言っていい存在だった。
担当教師の名前を見てみると、堅物で知られる奴のものだった。
授業を聞いていなかったりすると、その場で説教を始めるのだ。
その最後に、みんなの授業時間を使ったことを謝罪させられる。
俺みたいな奴にとっては、まさに天敵と言っていい存在だった。
朋也(たるいな…サボるか)
唯「ねぇねぇ、岡崎くん」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:37:37.27:cUBlBpOS0
サボリの算段を立てていると、平沢に肩をつつかれた。
朋也「…なに」
唯「じゃんっ。これ、すごくない?」
平沢が俺に誇示してきたのは、シャーペンだった。
ノックする部分が、球体に目が入った謎の物体になっていた。
どこかで見たことがあるような気がするが…。
ノックする部分が、球体に目が入った謎の物体になっていた。
どこかで見たことがあるような気がするが…。
朋也「…別に」
唯「なんで!? これ、だんご大家族シャーペンだよ!? レア物だよ!?」
そうだ、思い出した。だんご大家族。
もうずいぶん前に流行ったアニメだか、歌だかのキャラクターだ。
もうずいぶん前に流行ったアニメだか、歌だかのキャラクターだ。
朋也「なんか、汚ねぇよ」
唯「うぅ、ひどいっ! 昔から大切に使ってるだけだよっ」
唯「っていうか、私の愛するだんご大家族にそんな暴言吐くなんて…」
唯「もういいよっ。ふんっ」
朋也(なんなんだよ、こいつは…)
なんとなく気力がそがれ、サボる気も失せてしまった。
朋也(はぁ…聞いてるフリだけでもするか…)
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:38:09.29:cUBlBpOS0
結局、俺はサボリを断念することにした。
こんな奴に影響を受けて気分を左右されるのは、少しシャクだったが…。
こんな奴に影響を受けて気分を左右されるのは、少しシャクだったが…。
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
授業が終わり、昼休みに入った。
唯「ねぇ、岡崎くん」
学食へ出向くため、席を立とうとした時、呼び止められた。
朋也「なんだよ」
唯「部活入ってないんだよね?」
朋也「昨日言わなかったか」
唯「だったね。じゃあさ、軽音部なんてどうかなっ? 入ってみない?」
朋也「はぁ? 俺、もう三年なんだけど」
朋也「入ってすぐ引退するんじゃ、意味ないだろ」
唯「う…あ…そうだったね…ごめん」
朋也「別に謝らなくてもいいけどさ…」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:38:43.54:cUBlBpOS0
唯「うん…」
そんなにも新入部員が欲しいのだろうか。
学年も見境なく勧誘してしまうほどに。
学年も見境なく勧誘してしまうほどに。
―――――――――――――――――――――
春原「よぅ、今から昼?」
廊下に出ると、ちょうど登校してきた春原と顔を合わせた。
朋也「まぁな」
春原「どうせ学食だろ? 一緒に食おうぜ」
春原「鞄置いてくるから、ちょっと待っててよ」
俺の返事を聞かず、そう言うなりすぐさま教室に足を踏み入れる。
が、そこで動きを止めて振り返った。
が、そこで動きを止めて振り返った。
春原「あのさ、おまえ、僕の席どこか知らない?」
こいつは先日サボったせいで、自分がどこの席かわからないのだ。
俺がいなければ、クラスさえわからなかっただろう。
俺がいなければ、クラスさえわからなかっただろう。
朋也「あそこだよ。ほら、あの、気軽に土足で踏み荒らされてる机」
朋也「みんな避けずに上を通って行ってるな」
朋也「お、座ってたむろしてるやつまでいる。あ、ツバ吐いた」
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:39:16.49:cUBlBpOS0
春原「そんな一昔前のコンビニ前みたいな席あるかっ! 適当なこと言うなっ」
春原「ったく…おまえに訊いた僕がアホだったよ…」
朋也「うん」
春原「いちいち肯定しなくていいです」
春原「で…担任、さわちゃんなんだよな?」
朋也「ああ、そうだよ」
春原「そっか。ま、さわちゃんなのはいいけど…今から職員室まで訊きにいくの、たるいなぁ…」
朋也「いや、座席表見ろよ。教卓の中に入ってるぞ」
春原「最初から言いましょうねっ!」
―――――――――――――――――――――
春原「でもさ…むぐ…担任がさわちゃんって、運いいよね、僕ら」
カレーを口に含ませたまま、もごもごと喋る。
朋也「かもな」
春原「僕、三年連続あの人だよ」
春原「おまえは二年からで、一年のときは幸村のジジィだったよな」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:39:48.97:cUBlBpOS0
朋也「ああ」
春原「僕らに甘いって点ではジジィでもよかったけど、やっぱさわちゃんでよかったよ」
春原「女教師のが目に優しいし、その上、なんだかんだいって、可愛いしね、あの人」
朋也「そうだな」
購入したうどん定食、そのメインである麺をすする。
朋也「でも、あの人よくわかんないとこあるからな」
春原「ああ、素を隠してるとことか?」
朋也「まぁ、それもあるけど、なんか俺クラスの係にされちまってたし」
春原「マジ? おまえが? ははっ、こりゃ荒れるぞ。学級崩壊するかもな」
朋也「ちなみにおまえもされてたぞ」
春原「マジで? なんの係?」
朋也「駆除係」
春原「なにそれ」
朋也「この学校って周りに自然が多いだろ?」
朋也「だからさ、時たま教室にゴキブリとか、ハチとかが襲撃してくるじゃん」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:40:21.04:cUBlBpOS0
朋也「それで、おまえはそいつらと戦うんだよ」
春原「へぇ、なるほど。そりゃ、おもしろそうだね」
真に受けてしまっていた。
春原「なら、有事に備えて、全盛期の動きを取り戻しとこうかな」
朋也「どうせたいしたことないだろ」
春原「ふん、あんまり僕を侮るなよ。壁走りとかできるんだぜ?」
ゴキブリのような男だった。
朋也「まぁ、おまえ一回スズメバチに刺されてリーチかかってるしな」
朋也「さわ子さんも、おまえを始末したくて選んだのかもな」
春原「そんな裏あるわけないだろっ! っていうか僕、スズメバチに刺された過去なんかねぇよっ」
春原「選ばれたのは、純粋に僕の戦闘力を見て、だろ?」
朋也「はいはい…」
―――――――――――――――――――――
………。
―――――――――――――――――――――
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:40:54.18:cUBlBpOS0
清掃が終わってからSHRまでの時間。
配布係は、この間に職員室まで配布物を取りに行くことになっていた。
配布係は、この間に職員室まで配布物を取りに行くことになっていた。
唯「うぅ~、初仕事、緊張するね」
相変わらずこいつはよく話しかけてくる。
授業間休憩の時も、しょっちゅう話を振ってきた。
人と会話するのが好きなんだろうか…。
俺のような無愛想な男に好き好んで絡んでくるくらいだから、そうなのかもしれない。
ただ単に、席が隣同士だから、良好な関係を築いておきたいだけ、という線もあるが。
授業間休憩の時も、しょっちゅう話を振ってきた。
人と会話するのが好きなんだろうか…。
俺のような無愛想な男に好き好んで絡んでくるくらいだから、そうなのかもしれない。
ただ単に、席が隣同士だから、良好な関係を築いておきたいだけ、という線もあるが。
唯「岡崎くんは、緊張しないの?」
朋也「しようがないだろ」
唯「へぇ、すごいねっ。いい心臓持ってるよっ」
よくわからないが、褒められてしまった。
もしかすると…
こいつはただ単に思ったことを言っているだけで、他意はないのかもしれない。
もしかすると…
こいつはただ単に思ったことを言っているだけで、他意はないのかもしれない。
―――――――――――――――――――――
各学年、クラス毎に設置されたボックスの中に配布物が入っている。
俺たちはD組のボックスを開けると、中にあったプリントを出し始めた。
俺たちはD組のボックスを開けると、中にあったプリントを出し始めた。
唯「よいしょっと…」
なかなかに量が多い。
生徒に勉学を奨励するような新聞の記事やら、偉人の格言など、そんな類のものも混じっている。
生徒に勉学を奨励するような新聞の記事やら、偉人の格言など、そんな類のものも混じっている。
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:41:37.28:cUBlBpOS0
進学校だからなのかどうか知らないが、こういう事になにかと熱心なのだ。
進学するつもりもない俺にとっては、余計なお世話でしかなかったが。
進学するつもりもない俺にとっては、余計なお世話でしかなかったが。
唯「っわ、ととっ」
プリントを抱え、よろめく。
見ていて少し危なっかしい。
バランス感覚に乏しいやつなんだろうか。
見ていて少し危なっかしい。
バランス感覚に乏しいやつなんだろうか。
朋也「おまえ、大丈夫なのか。少し俺が持つか?」
唯「ううん、大丈夫だよ。いこ?」
なんでもないふうに言って、職員室の出入り口に向かう。
俺もその背を追った。
その間も足元がおぼついていなかったが、かろうじてこけることはなかった。
何事もなく教室まで辿り着ければいいのだが…。
俺もその背を追った。
その間も足元がおぼついていなかったが、かろうじてこけることはなかった。
何事もなく教室まで辿り着ければいいのだが…。
―――――――――――――――――――――
唯「ふぃ~、あとちょっとだね…」
俺に振り向きながら言う。
その時…
その時…
唯「わっ」
男子生徒1「痛っ…」
ばさっ、と平沢の抱えていたプリントが舞い落ちて、床に散らばった。
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:42:15.48:cUBlBpOS0
俺の方を向いたのと、向かいから来た男が脇見したタイミングが重なってのことのようだった。
男子生徒1「…あ~、ごめん」
肩を軽く抑えている。
男子生徒2「うわ、おまえ最悪っ」
隣にいた男が意気揚々と囃し立てる。
男子生徒1「いや、おまえじゃん。俺の注意力をそらしたのが主な原因だから」
男子生徒2「はははっ、マジおまえ」
朋也「………」
なんとなく気に入らない奴らだった。
唯「私も、よく見てなかったから、ごめんなさ…」
唯「あ…」
その男たちは、平沢の言葉を聞くことなく、プリントを拾いもせずに立ち去ろうとしていた。
唯「あはは…ごめん、岡崎くん。先にいってて」
ひとり、散らばったプリントを集め始める平沢。
朋也「………」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:42:49.00:cUBlBpOS0
俺はその場に自分の持っていたプリントの束を置いた。
朋也「おい、待てって」
男たちの背に怒気を含んだ声を浴びせる。
男子生徒1「………は?」
男子生徒2「………」
どちらも怪訝な顔で振り向いた。
朋也「おまえらも拾え」
言いながら、近寄っていく。
男子生徒1「いや…は?」
男子生徒2「…なにこいつ」
朋也「むかつくんだよ、おまえらはっ」
俺は平沢にぶつかった方の胸倉をつかんだ。
男子生徒1「っつ…は?」
男子生徒2「は? なにおまえ…なにしてんの? やめろって」
もう片方が引き離そうとしてくる。
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:43:23.26:cUBlBpOS0
唯「私のことはいいよ、岡崎くんっ、落ち着こう! ね?」
平沢も俺の袖を引いて止めに入ってきた。
朋也「…ちっ」
掴んでいた手を離す。
男子生徒1「意味わかんね、バカだろ普通に」
男子生徒2「頭おかしいわ、もうだめだろあいつ」
罵りの言葉を吐きながら立ち去っていく。
俺はその後姿を睨み続けていた。
俺はその後姿を睨み続けていた。
唯「ごめんね…岡崎くんにまで嫌な思いさせちゃって…」
袖を持ったまま、俺を見上げてそう謝った。
初めて見た、こいつの悲しそうな顔。
いくら俺の応答が悪くても、まったく見せなかったその表情。
巻き込んでしまったことが、そんなに辛いのだろうか。
そんなの、俺が勝手に首を突っ込んだだけなのに。
………。
初めて見た、こいつの悲しそうな顔。
いくら俺の応答が悪くても、まったく見せなかったその表情。
巻き込んでしまったことが、そんなに辛いのだろうか。
そんなの、俺が勝手に首を突っ込んだだけなのに。
………。
朋也「…プリント拾って帰るぞ」
せめて今だけは助けになってやりたい。
そう思えた。
そう思えた。
唯「あ…うん」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:43:55.55:cUBlBpOS0
―――――――――――――――――――――
配布物も無事配り終え、SHRが終わった。
唯「岡崎くん」
直後、平沢に声をかけられる。
朋也「なんだよ」
唯「さっきはありがとね。私…ほんとはうれしかったよ」
唯「プリントも一緒に拾ってくれたしさ」
朋也「…そっかよ」
唯「あ、でも乱暴なのはだめだよ? 愛がないとね、愛が!」
唯「それじゃあねっ」
一方的にそれだけ言うと、うれしそうにぱたぱたと教室を出て行った。
朋也「………」
俺はなにをあんなに怒っていたんだろう。
俺だって、あいつらと大して変わらないだろうに。
無神経に振舞って、冷たく接して…
………。
それでも…平沢はずっと話しかけてくるんだよな…。
そして、最後には、俺に礼まで言っていた。
俺だって、あいつらと大して変わらないだろうに。
無神経に振舞って、冷たく接して…
………。
それでも…平沢はずっと話しかけてくるんだよな…。
そして、最後には、俺に礼まで言っていた。
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:44:27.72:cUBlBpOS0
朋也(なんなんだろうな、あいつは…)
春原「岡崎、帰ろうぜ」
ぼんやり考えていると、春原が俺の席までやってきた。
朋也「ああ、そうだな」
さわ子「あ、ちょっと待って、そこのふたりっ」
小走りで俺たちのもとに駆け寄ってくる。
春原「なに? さわちゃん」
さわ子「話があるの。ちょっとついてきてくれる?」
春原「え、なに? 僕、告られるの? さわちゃんに?」
さわ子「そんなわけないでしょっ」
さわ子「というか、さわちゃんって呼ぶのはやめなさいって、いつも言ってるでしょ」
春原「じゃ、なんて呼べばいいの? さわ子・オブ・ジョイトイ?」
さわ子「なんでインリンから取るのよ…」
春原「M字開脚見たいなぁ、って…」
ぽか
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:45:00.55:cUBlBpOS0
持っていたファイルで軽く頭を殴られる。
春原「ってぇ…」
さわ子「変なこと言わないの。私のことは、普通に山中先生と呼ぶように」
春原は頭をさすりながら、はいはい、と生返事をしていた。
さわ子「さ、とにかくついてきて」
―――――――――――――――――――――
さわ子「あんた達ねぇ…」
俺たちは人気のない空き教室に連れてこられていたのだが…
さわ子「遅刻、サボリ…それも初日から連続で…」
さわ子「ほんとにもう、大概にしなさいよっ」
その途端、素に戻って荒い言葉遣いになるさわ子さん。
変わり身の早い人だった。
変わり身の早い人だった。
春原「んなに怒んなくてもいいじゃん。なんとかなるって」
さわ子「ならないわよ、バカ」
春原「え、もしかして…ヤバいの?」
さわ子「まぁ、けっこうね」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:45:33.33:cUBlBpOS0
この人が言うのだから、本当にマズイのだろう。
教師の中で味方といえるのは、さわ子さんと幸村ぐらいのものなのだから。
教師の中で味方といえるのは、さわ子さんと幸村ぐらいのものなのだから。
さわ子「助かるかもしれない方法がひとつだけあるわよ」
春原「校長でも校舎裏に呼び出すの?」
さわ子「あんたは私の話が終わるまでちょっと死んどきなさい」
春原「ちょっとひどくないっすか、それ?」
朋也「早く仮死れ」
春原「ああ、やっぱあんたが一番鬼だよ…」
朋也「で…方法って、なんだよ」
さわ子「一番いいのは生活態度をまともにすることだけど、あんた達には無理でしょうからね…」
さわ子「他の事で心証をよくするしかないわ。気休めかもしれないけど」
朋也「ボランティアしろとかいわないだろうな」
さわ子「まぁそれに近いわね」
春原「えぇぇ? やだよ、献血とかするんでしょ? 痛いじゃん」
さわ子「だから、あんたは少し黙ってなさいって」
朋也「そうだぞ。それに、おまえの血なんか輸血されたら、助かるはずの患者も即死するだろ」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:46:05.33:cUBlBpOS0
朋也「仮に助かっても、脳に重大な後遺症が残るだろうし」
春原「しねぇよっ! 毒みたくいうなっ!」
さわ子「とにかく! あんた達には部活動の手伝いをしてもらうから」
朋也「はぁ?」
春原「はぁ?」
春原「はぁ?」
同時に素っ頓狂な声を上げる俺たち。
さわ子「今日から軽音部の新入部員集めに協力しなさい」
軽音部…というと、平沢が所属しているところか…。
さわ子「さぁ、今から行くわよ。ついてきなさい」
呆然とする俺たちを残し、教室を出ていく。
春原「おい…どうすんだよ」
朋也「どうするって…やんなきゃ、卒業がやばかったり、退学処分だったりが現実味を帯びてくるんじゃねぇの」
春原「じゃあ、やんのかよ、おまえ」
…なにも知らなければ、抵抗があっただろう。
だが、もう平沢のことを知ってしまっていた。
会ってまだ間もないが、悪い奴ではないように思う。
だから、協力してやれるなら、それでもよかった。
だが、もう平沢のことを知ってしまっていた。
会ってまだ間もないが、悪い奴ではないように思う。
だから、協力してやれるなら、それでもよかった。
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:46:37.90:cUBlBpOS0
春原「…ふーん、部活なんかしてる連中とは関わりたくもないって、そういう奴だと思ってたんだけど」
春原「それが最初に僕たちが意気投合したところだしねぇ」
さわ子「なにやってんの? 早く来なさい」
ドアから顔を覗かせ、手招きする。
春原「…ま、いいや」
呼びかけに応え、春原が教室を出ていく。
遅れて俺もその後を追った。
遅れて俺もその後を追った。
―――――――――――――――――――――
さわ子「みんなやってるぅ?」
女生徒「あ、さわちゃん…って、そっちのふたりは…」
唯「あれ…」
さわ子「新入部員獲得のための新兵器よ。ま、こき使ってやって」
さわ子「そんじゃねー、がんばってー」
ばたん
朋也「………」
春原「………」
春原「………」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:47:09.75:cUBlBpOS0
あれだけしか言わずにちゃんと伝わったのだろうか…。
軽音部の連中…見れば女生徒ばかりだった。
彼女たちも事情を飲み込めずにいるのか、ポカンとしている。
軽音部の連中…見れば女生徒ばかりだった。
彼女たちも事情を飲み込めずにいるのか、ポカンとしている。
女生徒「あんたら…同じクラスの岡崎と…そっちの金髪、名前なんだっけ」
春原「ちっ…春原だよ。覚えとけっ」
女生徒「なっ…なんだこいつ、態度悪いな…」
唯「岡崎くん、新兵器って…?」
朋也「ああ、いろいろあって俺たち、軽音部の新入部員集め手伝うことになったから」
唯「え!? ほんとに?」
春原「ありがたく思えよ、てめぇら」
女生徒「なっ…あんたなぁっ」
唯「まぁまぁ、りっちゃん。せっかく手伝ってくれるんだから感謝しようよ」
女生徒「うぐぐ…」
さっそく春原は不協和音の引き金となっていた。
朋也(しかし…部員はこいつらだけなのか…?)
朋也(だとすると、1、2…5人か…少ないな)
38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:47:42.27:cUBlBpOS0
俺の見立てが正しいなら、駆り出された理由は、この人手の足りなさからなのかもしれない。
唯「そうだ、自己紹介しよう! ね! まず私から!」
唯「ボーカルとギターの平沢唯です! よろしく! はい、つぎ澪ちゃん!」
女生徒「あわ、わ、わたし…?」
女生徒「………」
女生徒「…秋山澪です…」
唯「はい、澪ちゃんはベースやってます! 美人です! 恥ずかしがり屋です! つぎ、ムギちゃん!」
女生徒「琴吹紬です。担当はキーボードです。よろしくね」
唯「ムギちゃんはお嬢様です! 毛並みも上品です! でもふわふわしてます! そこがグッドです!」
唯「はい、つぎあずにゃん!」
女生徒「はあ…」
女生徒「えっと…二年の中野梓です」
唯「あずにゃんはみたとおり可愛いです! 担当はギターです! あずにゃんにゃん! あずにゃんにゃん!」
平沢が奇声に近い声を発し、中野という子に頬をすり寄せ始めた。
梓「ちょっと…唯先輩、やめてください…」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:48:14.52:cUBlBpOS0
唯「でひゃっひゃっ」
ひとしきりじゃれついた後、ようやく離れた。
唯「…うおほん。では最後に、われらが部長、りっちゃん!」
女生徒「あー、田井中律。部長な。終わり」
唯「りっちゃんはみたとおり、おデ…」
律「その先はいうなっ」
パシっ
唯「コッ! った~い…」
妙な連中だった。
それは、平沢が中心になっているからそう見えたのかもしれないが…。
それは、平沢が中心になっているからそう見えたのかもしれないが…。
唯「それじゃ、次は岡崎くんたちね」
朋也「岡崎朋也」
春原「…春原陽平」
朋也「こいつの担当は消化音だ。ヘタレだ」
春原「変な補足入れるなっ! つーか、消化音って、どんな役割だよっ!」
朋也「胃で食い物が消化されたらさ、ピ~、キュ~って鳴るだろ。あれだよ」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:48:46.55:cUBlBpOS0
春原「恥ずいわっ!」
唯「春原くん、消化音でドの音出してみてっ!」
春原「できねぇよっ!」
律「しょぼっ…」
春原「あんだとっ、てめぇデコっ」
律「はぃい? なんだってぇ?」
間を詰めて、今にも掴みかかっていけそうな距離で火花を散らし始めるふたり。
唯「ストップストップ!」
紬「りっちゃん、どうどう」
紬「りっちゃん、どうどう」
部員に両脇を固められ、その態勢のままなだめられる部長。
律「んむぅ~…むぅかぁつぅくぅ」
梓「あの…ちょっといいですか?」
場が落ち着いたところを見計らったように、控えめな声が上がる。
律「なんだよっ、梓」
梓「律先輩たちって同じクラスなんですよね?」
律「? そうだけど」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:49:24.30:cUBlBpOS0
梓「その…岡崎先輩と、春原先輩もそうだって言ってましたよね?」
律「ああ、いったけど」
梓「じゃあ、なんで今自己紹介なんですか?」
唯「それはね、最初の自己紹介の時に、ふたりともきてなかったからだよ」
梓「え、そうだったんですか…」
唯「春原くんにいたっては、今日初めて見たんだよね」
律「ああ、昼休みにいきなり派手な金髪が現れたからびっくりしたよな」
春原「いや、そっちの琴吹ってのも金…」
紬「私が…なに?」
その時、なんだかよくわからないが、すさまじい闘気のようなもを感じ取った。
春原「ひぃっ」
そしてすぐにわかった。それが春原に向けられたものであるということが。
春原「なんでもないです…」
そう、こいつには黙る以外の選択肢はなかったはずだ。
それぐらい有無を言わせないほどの圧力だった。
…何者だよ、あいつは。
それぐらい有無を言わせないほどの圧力だった。
…何者だよ、あいつは。
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 10:49:56.10:cUBlBpOS0
梓「昼…?」
律「ああ、前にこのふたりと同じクラスだった奴から聞いたんだけどさ、こいつら、不良なんだと」
律「それで、サボりとか、遅刻が多いんだってさ」
梓「ふ、不良ですか…」
俺と春原に恐る恐る目を向ける。
やがてその視線は春原の頭で止まっていた。
やがてその視線は春原の頭で止まっていた。
春原「ああ? なんだよ?」
梓「い、いえ…」
春原「ちっ、さっきからチラ見してきやがって…」
無理もない。今時金髪で、そんな奴がこんな進学校の生徒なのだから。
普通の奴からしてみれば、物珍しいはずだ。
普通の奴からしてみれば、物珍しいはずだ。
澪「………ぅぅ」
怯えたように後ずさっていく。
唯「澪ちゃん、怖がらなくて大丈夫!」
唯「岡崎くんはいい人だよっ。私が保証するよっ!」
…保障されてしまっていた。
まさか、あの廊下での出来事を根拠に言っているんだろうか…。
まさか、あの廊下での出来事を根拠に言っているんだろうか…。
47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:33:35.52:1qYNd8dxO
それ以外、この評価に繋がりそうなことなんて、思い浮かばないのだが…
でも、そうだとしたら、安易過ぎる…。
でも、そうだとしたら、安易過ぎる…。
梓「え?」
紬「あら…」
澪「………」
律「唯…おまえ、岡崎となんかあったのか?」
唯「ん? なにが?」
律「いや、なにって…そりゃ…その…男女の…いろいろとか…」
唯「へ? 男女のいろいろって?」
律「だから、惚れた腫れたのあれこれだよ。つまり、おまえが岡崎に気があるってことな」
唯「え、あ…そ、そういうのじゃないけど…」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:34:33.15:1qYNd8dxO
律「う~む…こいつ、顔立ちは整ってるけど…不良だぞ?」
唯「だから違うってぇ~…」
春原「………」
無言でそのやり取りを眺める春原。
こいつは今、なにを思っているんだろうか…。
こいつは今、なにを思っているんだろうか…。
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:37:25.52:1qYNd8dxO
春原「へぇ…そういうこと」
俺に向き直り、口を開いた。
朋也「…なにがだよ」
なにか、あらぬことを邪推されている気がする…。
春原「いや、ずいぶんなつかれてるなと思ってね」
朋也「言っておくけど、なにもないからな」
春原「ああ…そうだね」
その含み笑いが腹立たしかった。
朋也(勘違いしてんじゃねぇよ…)
―――――――――――――――――――――
唯「えー、おほん。それでは新入部員捕獲作戦ですが…こちら」
そこに並べられていたのは、犬、猫、馬、豚、ニワトリ…等、動物の着ぐるみ。
どれも微妙にリアリティがあって少し不気味だった。
どれも微妙にリアリティがあって少し不気味だった。
唯「この着ぐるみを着てやりたいと思います」
澪「えぇ…それ着なきゃだめか?」
唯「だめだよ。普通にやったんじゃインパクトに欠けるからねっ」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:39:35.32:1qYNd8dxO
律「ま、これ着てれば顔割れないし、恥ずかしくないからいいんじゃないか?」
澪「そうだけど…はぁ…あんまり気が進まないな…」
梓「私も…なんとなく嫌です…」
唯「やってればそのうち楽しくなるよ、たぶん」
澪「たぶんて…」
梓「はぁ…」
律「私ニワトリー」
唯「じゃ私豚ー」
紬「私、犬~」
部長を皮切りに、しぶっている部員も含め、皆選び始めた。
朋也「おまえ、どうする」
春原「あん? 適当でいいでしょ。余ったやつでいいよ」
朋也「そうか」
―――――――――――――――――――――
春原「………」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:41:05.20:1qYNd8dxO
全員の着替えが終わる。
…約一名、春原を除いて。
…約一名、春原を除いて。
唯「あれ? 一着たりなかったね」
律「どうするかなぁ、こいつは」
唯「う~ん…」
朋也「おまえ、全裸でいけ」
律「ぶっ」
澪「ぜ…ぜん…」
唯「それ、すごいインパクトだよっ」
春原「死ぬわっ! 社会的にっ!」
朋也「じゃあその上からロングコート一枚着込んでいいから」
春原「典型的な変質者だろっ! 実質大差ねぇよっ!」
律「わははは!」
梓「あの…春原先輩は染髪してますし、そのままでも十分インパクトあると思いますけど…」
唯「それもそうだねっ」
春原「なら、僕はこのままいくからなっ」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:42:33.49:1qYNd8dxO
紬「待って、こんなものがあったんだけど…」
その子が持ってきたのは、カエルの頭だった。
唯「ムギちゃん、それって…」
紬「うん、唯ちゃんが部室に置いてたカエルの置物」
紬「あれ、頭部が脱着可能で、中が空洞になってたの」
律「ふ~ん、じゃあ春原、あんたこれつけてけよ」
紬「はい、どうぞ」
春原「カエルかよ……まぁ、いいけどさ」
受け取り、装着する。
春原「あれ? これ、前が見えないんだけど」
紬「あ、そっか、目の部分、穴開けなきゃ…」
紬「唯ちゃん…」
唯「う~ん、しょうがないな…あけちゃおうか」
律「うし。じゃ、あんた、動くなよ」
春原「わ、馬鹿、脱いでからあけろよ!」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:43:53.45:1qYNd8dxO
律「ははは、冗談だよ。そうビビんなって」
いや…でも、もしかしてあいつなら…
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――
紬「あ、ちょっと動かないでね。外すと後味悪いから」
春原「な、なにを…」
紬「ショラァッ!」
ゴッ ゴッ
春原「ひぃっ」
春原「あれ…前が見える…」
二つの衝撃音と、春原の悲鳴の後、カエルの目の部分に穴が開いていた。
律「ひぇ~、相変わらずすごいな、ムギの“無極”」
唯「うん。“無極”からの左上段順突き、右中段掌底で穴を開けた…」
唯「普段ならあそこから“煉獄”につなげてるけど、今回は穴を開けるだけが目的…」
唯「命拾いしたね、春原くんは…」
―――――――――――――――――――――
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:45:46.67:1qYNd8dxO
―――――――――――――――――――――
ということに…
春原「おい、岡崎。なにぼけっとしてんだよ。もう出るみたいだぞ」
朋也「あ、ああ」
どうやらもう穴あけが終わっていたらしい。
アホな妄想もほどほどにしなければ…。
アホな妄想もほどほどにしなければ…。
朋也(にしても、男の部員がいないよな…一応訊いておくか)
朋也「なぁ、平沢」
唯「ん? なに?」
朋也「ここって女ばっかりだけど、男の部員は募集してないのか」
唯「ん~、それはねぇ…私は別にいいんだけど…」
ちらり、と横に立つ馬の着ぐるみに顔を向ける。
澪「な、わ、私だって別に…でも、女の子同士のほうがいろいろとやりやすいっていうかだな…」
澪「えっと…そ、そうだ、梓はどうなんだ? 来年はもう梓しか残らないんだし…」
澪「どっちがやりやすいとか、あるか?」
猫の着ぐるみに問いかける。
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:47:38.39:1qYNd8dxO
梓「私ですか? 私も別に…」
澪「で、でも放課後ティータイムで活動してきたわけだし…」
澪「やっぱり女の子のほうがいいかもな、うん」
律「こいつがこんな感じで恥ずかしがりだからさ、まぁ、できれば女で頼むわ」
言って、ニワトリの着ぐるみが片手を上げた。
朋也「ああ、わかった」
―――――――――――――――――――――
春原「ふぁ~、かったるぅ」
春原は地面に座り込み、ビラを数枚重ね、うちわのようにして扇いでいた。
朋也「おい、おまえもそれ配れよ」
俺と春原は、軽音部の連中とは別の場所で勧誘活動をしていた。
あいつらは正門へ続く大通り、そして俺たちは玄関で張っている。
あいつらは正門へ続く大通り、そして俺たちは玄関で張っている。
春原「こんなもん配ったって効果ねぇよ」
朋也「じゃ、どうすんだよ」
春原「気弱そうな奴を脅せばいいんだって」
春原「お、ちょうどいいところにカモ発見」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 11:50:38.05:1qYNd8dxO
春原「おい、おまえ」
高圧的な態度で進路を塞ぐようにして、通りかかった男子生徒のもとへにじり寄って行った。
あの時の話を聞いていなかったのか、条件を完全に無視していた。
あの時の話を聞いていなかったのか、条件を完全に無視していた。
男子生徒「は、はい…?」
春原「軽音部…入るよな?」
男子生徒「え、いや…僕ラグビー部にもう…」
春原「ああ? おまえみたいなのがラグビー?」
春原「ははっ、やめとけよ。死んじまうぜ? それに、あいつら馬鹿ばっかだから…」
男子生徒「誰が馬鹿だって?」
春原「ひぃっ」
春原の背後に現れたのは、同じ寮に住んでいるラグビー部の三年。
ラグビー部員「その声、春原だろ。なにウチの部から引き抜こうとしてんだよ」
春原「い、いや、ちがいま…」
ラグビー部員「カエルの被り物なんかしやがって…バレバレなんだよっ。こっちこい!」
春原「ひ…ひぃぃぃぃぃいい」
そのままずるずるとどこかへ引きずられていってしまう。
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:03:16.34:1qYNd8dxO
どこまでもお約束な男だった。
―――――――――――――――――――――
もういい時間になったので、とりあえず部室に戻ってくる。
澪「ぁ、わわ…」
唯「わぁっ! 春原くん、なんでそんなボコボコになっちゃたの?」
春原の装備していたカエルは、ところどころひびが入り、返り血さえ浴びていた。
春原「…大物を勧誘してただけだよ」
律「なにを勧誘したらそうなるんだっつーの…」
―――――――――――――――――――――
着ぐるみを脱ぎ、身軽になる。
今は全員でテーブルを囲み、ひと息入れていた。
そのテーブルなのだが、ひとつひとつ机を繋げて作られたものらしかった。
そこで急遽、俺と春原の分も継ぎ足してくれていたのだ。
今は全員でテーブルを囲み、ひと息入れていた。
そのテーブルなのだが、ひとつひとつ机を繋げて作られたものらしかった。
そこで急遽、俺と春原の分も継ぎ足してくれていたのだ。
律「で? そっちはどんな感じだった?」
朋也「ビラは何枚か渡せたけど、けっこう逃げられもしたな」
律「そっか、こっちとあんま変わんないな」
唯「なんで逃げられちゃうんだろ?」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:09:51.51:1qYNd8dxO
春原「着てるもんが不気味なんだろ」
律「あんたがいうな。血なんかつけて軽くホラー入ってたくせに」
春原「ふん…」
澪「直接勧誘活動していいのは今日までだから、あとはもう明後日にかけるしかないな」
唯「あさって? なんで?」
澪「春休み中に予定表もらっただろ? みてないのか?」
唯「う、うん。ごめん、みてない」
澪「はぁ…まったく…」
やれやれ、とため息をひとつ。
澪「ほら、この時期はさ、放課後、文化部に講堂で発表する時間が与えられるだろ」
澪「それで、軽音部は4/4木曜日の放課後からってことになってるんだよ」
澪「まぁ、規模の小さい創立者祭みたいなものだな。去年もやっただろ?」
唯「ああ、新勧ライブだね」
澪「そうそう」
紬「梓ちゃんはあの時のライブで入部を決めてくれたのよね」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:13:34.61:mBoopxQC0
けいおんとクラナドか。大支援。
クラナドの女キャラも出してくれると嬉しいぜ。
智代とか、生徒会にいないのか?
67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:14:25.22:1qYNd8dxO
梓「そうですね。最初はジャズ研と迷ってましたけど、あのライブが決め手になりました」
澪「やっぱり、重要だよな、新勧ライブは」
律「だな。そんじゃ、気合入れてがんばりますか、明後日は」
部長が言うと、皆こくりと頷いていた。
春原「なんか結論出たみたいだし、僕たち、もう帰るぞ」
春原「いこうぜ、岡崎」
朋也「ん…ああ」
春原に言われ、席を立つ。
紬「あ、まって」
春原「あん? なに、まだなんかあんの?」
紬「ケーキと紅茶あるんだけど、食べていかない?」
春原「マジで?」
紬「うん、ぜひどうぞ」
春原「へへ、けっこう気が利くじゃん」
72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:19:56.39:1qYNd8dxO
上機嫌で座り直す春原。
唯「わぁ、待ってましたっ」
律「って、ムギ、こいつらにもやんの?」
紬「うん、せっかく手伝ってくれたから…」
律「くぁ~、ええ子やで…感謝しろよ、てめぇら」
春原「ああ、ムギちゃんにはするよ」
律「ムギちゃんって…いきなり馴れ馴れしいな、あんた…」
紬「? 岡崎くんは、いらない?」
座ろうとしない俺を見て、その子…確か、琴吹…が問いかけてくる。
朋也「俺、甘いの苦手だからさ。帰るよ」
紬「だったら、おせんべいもあるけど」
朋也(せんべいか…)
それなら…ご相伴に預かっておいてもいいかもしれない。
春原「ただでもらえるんだぜ? 食っとけば?」
朋也「ああ…そうだな」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:25:02.58:1qYNd8dxO
紬「じゃ、みんな待っててね。今持ってくるから」
―――――――――――――――――――――
春原「お、ウマイ」
一口分にしたケーキの一片を口に放ると、すぐにそう感想を漏らしていた。
よっぽどうまかったんだろう。
よっぽどうまかったんだろう。
紬「ほんと? よかったぁ」
紬「岡崎くんはどう? おせんべい」
朋也「ああ、うまいよ」
せんべいの方も、醤油がよく染みていて、ぱりっとした歯ごたえもあり、いい味を出していた。
紬「あはっ、よかった。持ってきた甲斐があったな」
唯「ムギちゃんの持ってくるおやつって、いつもクオリティ高いよね」
律「だよな。これのために軽音部があるといっても過言じゃないな」
澪「おもいっきり過言だからな…」
春原「え、おまえらいつもこんなの食ってんの?」
唯「うん。でね、食器類も、そこの冷蔵庫も全部ムギちゃんちのなんだよ。すごいでしょ」
そう、この部室には食器棚と冷蔵庫が設置されていた。
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:30:05.33:1qYNd8dxO
学校の備品で、物置代わりにされているのかと思っていたが…私物だったようだ。
朋也「教師に何か言われたりしないのか」
部室での飲食を含め、ここまでやれば、普通はお咎めがあるように思うのだが…どうなんだろう。
律「ああ、それは大丈夫。顧問がさわちゃんだからな」
律「あんた、さわちゃんの素顔、知ってる?」
朋也「ああ、まぁ」
律「そか。なら想像つくだろ。あの人もここで飲み食いしてるんだよ」
朋也「そうなのか…」
朋也(つーか、あの人、軽音部の顧問だったのか…それで…)
なぜ軽音部の手伝いだったのか、ようやく合点がいった。
人手不足なだけではなかったのだ。そういうコネクションがあったからこそだった。
人手不足なだけではなかったのだ。そういうコネクションがあったからこそだった。
春原「なんかここ、住もうと思えば住めそうだよね」
朋也「おまえの部屋より人の住まい然としてるしな」
春原「どういう意味だよっ」
朋也「ほら、お前の部屋ってなんていうか、閉塞感あるじゃん。窓に格子とかついてるし」
春原「それ、まんま牢獄ですよねぇっ!」
79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:34:28.96:iMgd5qpBO
CLANNADが一番好きな俺得スレ
面白いわ、頑張れ
面白いわ、頑張れ
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/25(土) 12:35:23.12:1qYNd8dxO
律「わははは!」
―――――――――――――――――――――
春原の部屋、いつものように寝転がって雑誌を読む。
春原「あーあ、軽音部の手伝いって、いつまで続くんだろうね…」
朋也「さぁな。でも部員集めは今日までだったみたいだし…」
朋也「明後日なんかあるとかいってたから、それまでじゃねぇの」
春原「それもそうだね」
春原「でも、ケーキうまかったなぁ。あれが毎回出るなら、手伝うのも悪くないね」
俺はせんべいとお茶だったが、確かにうまかった。
朋也「だな」
春原「明日はなにが出てくるんだろうね。お嬢様とかいってたし、キャビアとかかな」
朋也「さすがにそれはねぇよ。金粉をまぶしたサキイカとかだろ」
春原「そっちのがありえねぇよっ」
春原「ま、なんにせよ、行けばわかるか、ふふん」
朋也(こいつは…嫌がってたんじゃないのかよ)