フラスコの中の小人 ◆MS8eAoJleg
南風はハマグリの味噌汁によく似ていて、それよりもきつい臭いがする。
こうやって、海へ漕ぎ出したのはいつぶりだっけ。少なくとも、死ぬよりも前だったかな。
こうやって、海へ漕ぎ出したのはいつぶりだっけ。少なくとも、死ぬよりも前だったかな。
岸で拾ったこじんまりしたボートは、着実に北へ進んでいる。
南岸と違って潮の流れは穏やかで、あたしでも針路をコントロールできる。
別に血生臭い悪夢から逃避しているわけじゃない。どうしても、確かめたいことがあっただけ。
いったい、会場の向こうには何がある、地図からはみ出すと何が起こる。
どうせ、逃がしちゃくれないだろうけど、世界の秘密のひとかけら位は掴み取れるはず。
南岸と違って潮の流れは穏やかで、あたしでも針路をコントロールできる。
別に血生臭い悪夢から逃避しているわけじゃない。どうしても、確かめたいことがあっただけ。
いったい、会場の向こうには何がある、地図からはみ出すと何が起こる。
どうせ、逃がしちゃくれないだろうけど、世界の秘密のひとかけら位は掴み取れるはず。
岸辺の岩礁がカシューナッツみたいに縮まっていく。
ここまでくれば、わざわざあたしを殺しにくるストーカーはいないだろう。
真夜中の海は冷たく無慈悲、船から落ちてしまえばごっそり体力を奪われる。
たとえ、戦闘狂だろうと、戦闘以外で無駄なリスクを冒すとは思えない。
ここまでくれば、わざわざあたしを殺しにくるストーカーはいないだろう。
真夜中の海は冷たく無慈悲、船から落ちてしまえばごっそり体力を奪われる。
たとえ、戦闘狂だろうと、戦闘以外で無駄なリスクを冒すとは思えない。
と、思うのは素人の浅知恵。ここのゲームマスターが安全地帯を見逃してくれる訳がない。
たとえば、赤外線スコープを使った狙撃。ボートを壊されたら一巻の終わり。
もっとストレートに飛行ユニットやクルーザーを支給されていたらたまったもんじゃない。
だから、他の連中が動き出す前にミッションを完遂しないと駄目。
たとえば、赤外線スコープを使った狙撃。ボートを壊されたら一巻の終わり。
もっとストレートに飛行ユニットやクルーザーを支給されていたらたまったもんじゃない。
だから、他の連中が動き出す前にミッションを完遂しないと駄目。
そう考えた時には、あたしは反射的にハンドガンに手を伸ばしていた。
何かが海から顔を出している。まさか、参加者に魚人間でもいるんじゃないでしょうね。
生唾を飲み込んで、相手の行動をうかがう。でも、こっちの勘違い。波を漂う板切れだった。
何かが海から顔を出している。まさか、参加者に魚人間でもいるんじゃないでしょうね。
生唾を飲み込んで、相手の行動をうかがう。でも、こっちの勘違い。波を漂う板切れだった。
そうよね、あの子が生きているわけがない。新藤千尋は死んだ、不慮の事故で、あたしのせいで、理不尽に。
死んだ人間は生き返らない。でも、優勝すれば誰かを蘇生できる。このルールの仕組みはすぐに呑み込めた。
あたし達はもう、死んでしまった存在。殺されても時間が経てば自動的に生き返ってしまう。
だけど、アイツらが死体を死なせ続ける方法を見つけていたとしたら、復活自体を封印できる。
で、蘇生の時にはそれを解除すれば良いってわけ。うまくやったもんだわ。
何が楽しくて、悪趣味な企画を立ち上げたのかは理解できないけど。
あたし達はもう、死んでしまった存在。殺されても時間が経てば自動的に生き返ってしまう。
だけど、アイツらが死体を死なせ続ける方法を見つけていたとしたら、復活自体を封印できる。
で、蘇生の時にはそれを解除すれば良いってわけ。うまくやったもんだわ。
何が楽しくて、悪趣味な企画を立ち上げたのかは理解できないけど。
そろそろね。あたしはオールを動かす手をゆっくりにする。
懐中電灯で深く黒い海を照らしながら、目を皿のようにして観察する。
境界線の目印はどこだろう。無用心に地図の外に飛び出たら、何が起こるか分かったもんじゃない。
懐中電灯で深く黒い海を照らしながら、目を皿のようにして観察する。
境界線の目印はどこだろう。無用心に地図の外に飛び出たら、何が起こるか分かったもんじゃない。
あたしは宇宙の謎を掘り当てた。4メートル先の地点から、歪んだ秩序に浸食されている。
まるでガラスの壁でもあるかのように、波がそこにぶつかっては押し戻されていた。
ただし、動きがあるのは線の内側だけだ。外側の水面は全く揺れていない、それどころか動いていない。
凍り付いているというよりも、固まっている。喩えれば、レストランによくある、ロウで作った食品サンプル。
なんか、背景描きこむ前に納期が来て、無理矢理マスターアップでもしたような気分になった。手抜きの極み。
まるでガラスの壁でもあるかのように、波がそこにぶつかっては押し戻されていた。
ただし、動きがあるのは線の内側だけだ。外側の水面は全く揺れていない、それどころか動いていない。
凍り付いているというよりも、固まっている。喩えれば、レストランによくある、ロウで作った食品サンプル。
なんか、背景描きこむ前に納期が来て、無理矢理マスターアップでもしたような気分になった。手抜きの極み。
向こう側をもっと詳しく調べなくちゃ。あたしはボートをできるだけ近くに寄せてみる。
そうしたら、もっと頭の痛くなるものを見つけてしまった。波しぶきが宙に浮いている。
釘でも打ち付けたかのように固定されている。境界線全体が見えない壁になってるみたいね。
そうしたら、もっと頭の痛くなるものを見つけてしまった。波しぶきが宙に浮いている。
釘でも打ち付けたかのように固定されている。境界線全体が見えない壁になってるみたいね。
試しにメモ帳を一枚丸めて、波に向かって投げつけてみた。クシャって音を立てて真下に落ちる。
素早く受け止めて調べてみたけど、紙に変化はなし。これなら、もうちょっと冒険しても平気かな。
素早く受け止めて調べてみたけど、紙に変化はなし。これなら、もうちょっと冒険しても平気かな。
まずは刃物で波を切りつけてみる。防音壁を殴りつけたような、鈍くて情けない音がした。無傷なのは想定の範囲内。
次に何もないところに突き立ててみた。予想外にも向こう側へ食い込んでいく。でも、空気が異常に重い。
感触はまるでサラダオイル、ハチミツ、下手するとどろどろに溶けたガラスみたいだった。
慎重に剣を引込める。今の段階ではここから抜けるのは無理。力ずくで道を開いても、たぶん途中で窒息死するわね。
次に何もないところに突き立ててみた。予想外にも向こう側へ食い込んでいく。でも、空気が異常に重い。
感触はまるでサラダオイル、ハチミツ、下手するとどろどろに溶けたガラスみたいだった。
慎重に剣を引込める。今の段階ではここから抜けるのは無理。力ずくで道を開いても、たぶん途中で窒息死するわね。
さっきから気になっているんだけど。向こう側から全然海の香りがしない。
匂いは昔を思い出させたり、一日のやる気を出させたりするけど、それがなくて無味無臭。
時間が一点で凝縮して、そのまま凍り付いてしまったみたいで、吐き気がするほど気味が悪い。
匂いは昔を思い出させたり、一日のやる気を出させたりするけど、それがなくて無味無臭。
時間が一点で凝縮して、そのまま凍り付いてしまったみたいで、吐き気がするほど気味が悪い。
で、向こう側をどうやって作ったのかは、あたしにはよく分からないわね。
すぐに思いつくのは立華かなでのAngelPlayerだけど、ちょっと規模が大きすぎる。
まあ、そこは本人に直接会って、話を聞くのが一番よさそうね。あの子が殺し合いに乗っていなければ。
すぐに思いつくのは立華かなでのAngelPlayerだけど、ちょっと規模が大きすぎる。
まあ、そこは本人に直接会って、話を聞くのが一番よさそうね。あの子が殺し合いに乗っていなければ。
とりあえず、これまでの考察をメモ帳にまとめておきましょうか。
どうせ盗聴されているから、筆談の準備はしておいた方が良いだろうし。
どうせ盗聴されているから、筆談の準備はしておいた方が良いだろうし。
どうしよ、変な考えが口内炎みたいに吹き出てきた。もしも、あたしの考えが全部間違っていたとしたら。
ここは死後の世界でもなんでもなくて、あいつがあたしたちを本当の意味で生き返らせていて、
死んでない人間と一緒に殺し合いをさせているとしたら。まあ、可能性は低いでしょうけどね。
その時は、一応アイツらには、命をくれてありがとう、とでも言っておきましょうか。
でも、それはあたしが生きている新藤千尋を殺したってことにもなる。
ここは死後の世界でもなんでもなくて、あいつがあたしたちを本当の意味で生き返らせていて、
死んでない人間と一緒に殺し合いをさせているとしたら。まあ、可能性は低いでしょうけどね。
その時は、一応アイツらには、命をくれてありがとう、とでも言っておきましょうか。
でも、それはあたしが生きている新藤千尋を殺したってことにもなる。
夜の海は寒くて参るわね。こんなに体が震えちゃってるじゃない。
羽織るものくらい基本支給品に用意しておきなさいよ。もう、それでも仲村ゆり、SSSのリーダーなの。
他のメンバーは流されやすい連中ばっかりなんだから、あたしがしっかりしないと。
羽織るものくらい基本支給品に用意しておきなさいよ。もう、それでも仲村ゆり、SSSのリーダーなの。
他のメンバーは流されやすい連中ばっかりなんだから、あたしがしっかりしないと。
人の死はどうやって償えばいい。
知り合いに謝罪するのか、故人の分まで生きるのか、それとも腹を切ってしまうか。
そんなことをしても、あの子は戻ってはこない。だから、あたしは千尋を蘇生させる。
ここがどんな世界でも、神サマ気取りのメガネをしばいて、力を奪って生き返らせる。
理不尽な現実に負けてたまるか。どこまでも足掻いて足掻いて、勝ち残ってやる。
知り合いに謝罪するのか、故人の分まで生きるのか、それとも腹を切ってしまうか。
そんなことをしても、あの子は戻ってはこない。だから、あたしは千尋を蘇生させる。
ここがどんな世界でも、神サマ気取りのメガネをしばいて、力を奪って生き返らせる。
理不尽な現実に負けてたまるか。どこまでも足掻いて足掻いて、勝ち残ってやる。
あたしはあたしをぎゅっと抱きしめた。
【一日目 A-7 会場の境界線 黎明】
【仲村ゆり@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:コルト・コンバットコマンダー(7/7)@現実、南海覇王@真・恋姫†無双 、ボート@現実
[道具]:基本支給品、千尋の手帳@ef - a tale of memories./melodies. 、ゆりの考察メモ
[思考]
基本:この殺し合いを開いた者への反抗。そして、この戦いで死んだ者の復活
1:死後の世界の知り合い、特に立華かなでとの接触
[状態]:健康
[装備]:コルト・コンバットコマンダー(7/7)@現実、南海覇王@真・恋姫†無双 、ボート@現実
[道具]:基本支給品、千尋の手帳@ef - a tale of memories./melodies. 、ゆりの考察メモ
[思考]
基本:この殺し合いを開いた者への反抗。そして、この戦いで死んだ者の復活
1:死後の世界の知り合い、特に立華かなでとの接触
※参戦時期は直枝が音無の仲間になった後です。
※舞台の外の様子を少しだけ確認しました。
※舞台の外の様子を少しだけ確認しました。
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008:女の子は世界に一人。だから彼女は神様だ。 | 仲村ゆり |