21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

girl meets boy:again

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girl meets boy:again ◆PuVQoZWfJc


ただ黙々と夜の中を一人彼女は歩いていた。奪った武器はデイパックにしまってある。実際は
なくても構わないのだが。ついさっき三人の人間を殺しただけ、彼女にしてみればたったそれだけの事だ。
それなのに何故か彼女は苛立ちを覚えていた。思い出すのも先程の三人だ。おかしな体の、男の方に過剰に
献身的だった少女、彼女を失って気が触れた男、そして最初に殺したわざわざ間に割って入って来た馬鹿な少女。

それぞれに誰かが誰かを庇おうとする。その姿は彼女、ルーシーには甚だ不快な茶番にしか思えなかった。
以前、遠い、遠い何時かに同じような事があったような気がするが自分のこれまでを振り返り、思い違い
だろうと忘れようとする。それでもあのアンジェリカという少女の断末魔の光景が、頭の奥にちらついて離れない。
老若男女問わず人間は殺したことがある。今更気になるような事もないはずなのに。

たとえ偽物の気持ちでも本気で男を守ろうとした少女、それが次に男の事を意識を向けさせた。最後の時には
明らかに自分ではない誰かに執心していた男、加害者の癖に弄んだ相手に情が移る。そして最後に無関係
なのに互いを諌めようとした少女、全てが全て不細工ないつかの鏡写し、デジャヴというにはあまりに
わざとらしい光景に見えた。

これがマリコの狙いの内なのだろうと思いながら、古びた建物にたどり着く。ホラー映画に使われるような
洋館が眼に入る。ルーシーは何の感慨もなく館の中に足を踏み入れると館の前に誰かが立ち往生している。
背は自分より低く子供であることはすぐに分かった。

(また子供か、まあいい、コウタの事と他に仲間がいないかを聞いたらさっさと済ませよう)
先程の事もあるので毛ほどには用心してその影の主である者に距離を持って声をかける。相手の方は
「うわあっ!」と大声を挙げると文字通り飛び上がってこちらを見る。なんとも緊張感のない奴だと思う。

あまり近づきすぎて自分の今の「臭い」や所々に散った返り血を見られたら話にならないのでこちらから
ライトの明かりを相手の頭に投げかける。逆光でこちらの様子はわかりにくいはずだ。
まだ声変わりが済んでいないようだが少年のようだった。わずかに殺意が増すのを実感するが堪えて
必要な事を問いただそうとするが、少年の方が先に話しかけて来てしまった。

まあいい、いつでも殺せる。そう思って話を聞いてしまう。思えばこの時に殺してしまうべきだった。
ルーシーは後で、そう後悔する。



「あの、あなたって、生きてる人ですか、それとももしかして、僕みたいに、一度死んだ人?」
言っていることがさっぱり分からず片方の眉が上がる、出任せを言って煙に撒こうという風には見えない。
むしろ心配事が自分だけの事かどうかが気がかりでしょうが無いといった様子だ。

「その言い方だとまるでおまえが死人から生き返ったみたいに聞こえる」
「えっと、なんて言ったらいいのかな。たぶんその通りなんだ、僕確かに死んだっていうか助かった
はずないって言うのが正しいんだけど、えっと、うーん」

こちらの反論を受けて少年はしどろもどろになりながら、しかしこちらの指摘を肯定しつつ言葉を探している。
もしかしたら思ったよりも重要なことをこの子供は知っているのかもしれない。そう思いそれまでの考えを改める。

「あ、そうだ、このルールブックに優勝した時の褒賞に死人の復活含むって書いてあるじゃん。たぶんコレが本当
だって言うために俺たちを生き返らせたんだと思うんだ。僕だけじゃない,,,,,,,,,他にも僕より先に死んだ奴や
その、び、病気で植物状態みたいになった奴もいて、何ていうか参加してる奴が多すぎるんだよ。龍宮島にはもう
人、僕みたいな年の子なんてほとんどいなくってさ。それもどんどん死んじゃって」

声の調子がどんどんとトーンダウンしていく。説明の為に自分の事を思い出している内に思い出したくもない事まで
思い出してしまったようだ。だが今の落ち着きを取り戻しきれていない所を見るに嘘は言っていない。頭が完全に
錯乱しているわけでもないのならの話だが。

「そうか、お前だけがそう言うならまだしもお前も生きてるはずがない人間を見ているのか」
そうか、ともう一度呟いてライトを消す。少年の息を飲む声が聞こえるが気にも留めずに次の質問をする。

「今さっき僕たちと言ったが、知り合いは何人くらいいるんだ、どんな特徴があって、どんな性格なんだ、いや
その前に、名前を聞いてなかったな。名前はなんて言うんだ、私は.....私の事は......周りの者はルーシーと呼ぶ」
随分と歯切れが悪くそう言うのにも若干躊躇し、名簿にもそう書いてあると小さく吐き捨てる。

言ってしまってからルーシーはしまったと思った。これからの事を円滑に進める為につい名乗ったが始めにマリコに
名前を呼ばれている。この子がそれを覚えていれば全ては無意味となる。内心で悪態を吐きながら仕方がないと
自分の見えざる手、ベクターを振り上げる。しかし首を刎ねる前に少年は答えた。安心しきった声を上げて。


「僕っ......!衛!小楯 衛って言うんだ。よろしくルーシーさん」
どうやら名前自体は覚えていなかったようだ。衛は続け様に先程の質問に次々と答えていく。

「えっと僕の、僕の友達に近藤剣司ってのがいるんだ、よく一緒にいてさ、どっか偉そうなんだけど影が薄くて
押しも弱くて好きな女の子に告白もちゃんとできなくってさ、まあ、もう告白できなくなっちゃったんだけど、
とにかくイイ奴なんだ!なんか普通っていうのが一番合ってるかな。それから春日井甲洋っていう奴、
こいつは凄い奴なんだ!イイ奴でそれでいて凄くて、強くて........それから..........それから..........」

衛の口から次から次へと知り合いの名前が出てきてルーシーは閉口した。嬉しそうに話したかと思えば
時折悲しげに声が小さくなったりと忙しなく喋り続ける。ライトの明かりを消したのに彼の表情はなぜか
有り有りと浮かんで見えて、終わりまで聞く頃には随分と時間が経っていた。

とりあえずこの話で分かったことは、衛の知り合いは間接的な者も含めてどうやら8人もいるらしいという事、
その中で一騎と総士という二人は親友同士という事、近藤というのは咲良という女が好きだと言うこと、
途中同じことを言ってるのではないかと疑いたくなる程に色恋沙汰が重複しているので止めようかとも思った。

そして、衛以外には翔子という者も死んでいるはずだと言う事、これは彼以外も知っている事だそうだから
問題ない。そこまで聞いてルーシーは考える。むっつりと機嫌の悪そうにしている彼女とは対照的に衛は知人の事を
語っている内に落ち着きを取り戻していた。そして彼女の妙な空気を受け変に誤解をする。

「あ、ごめん、僕だけ一人でずっと喋っちゃって。そうだ、ルーシーさんにはいないんですか、大切な人」
遅まきにこちらの不機嫌を感じ取り気を使ったのであろうが、その質問は彼女の思考を振り出しに戻すのには
充分だった。

「............いる、取り返しの付かないくらい私が傷つけてしまった人が、私と関わったばかりにこんな事になってしまった人が」
言いながら目を細めて空を見つめる。まだ許してもらえていない。もう許してもらえない。あの人に。

聞いた衛もその言葉に何かを感じて言い淀んでしまう。彼の方から表情を窺い知ることはできなかった。

「この後、どうするんだ」と彼女はそれだけを短く聞いた。
自分でも完全に予定と違っていた。自分に何か有利になること、必要なことを聞いたらさっさと殺してしまおうと
思っていたのに、コウタを思い出したからなのか、先程の3人を殺した事が何か影響与えたのか、それとも
この目前の少年が犬っぽいからだろうか、「今は」その気が失せてしまっていた。


「島の皆を探して、首輪を外して皆で逃げる。一緒に助けられる人は助けようと思う。ルーシーさんは大切な人を
探しにいくの」

衛の返答を聞いた後質問に頷く。暗闇の中で見えたかは分からないが気にせずまた質問を返す。
「首輪を外すアテはあるのか」と、衛はここに来て初めて自信あり気に鼻を鳴らした。

「僕、実は機会にはちょっと強いんだ。昔のラジオとかもすぐ直せたし」
その返答にルーシーは自分の気が変わった理由を殺す必要がないからだと結論を出した。
ラジオと爆弾を一緒くたに扱うのは緊張感か知識あるいはその両方が欠如しているからに相違ない。
放っておいても死ぬだろう。だから殺したい気持ちも沸かないのだと。

「工具があって首輪が調べられればたぶんすぐ外せると思うんだけど」
そうか、と全く付き合わずにこぼす。この少年は今まで見てきた人間のどれとも違って見える。それがルーシーに
疑問を抱かせる。ごく些細な興味から当たり前だと思っていることを聞く。この大会で優勝しようとは思わないのか、と

「それじゃあ皆を守った意味がなくっちゃうよ。僕は、また皆を守るんだ、それだけ。どこまでやれるかわかんないけど」
「お前はまた死ぬんだぞ、折角生き返ったのに、まだ生きていたいとは思わないのか」
その言葉に忘れたばかりの苛立ちが蘇って来るのを感じながら理解出来ないとばかりに言う。言葉に怒気を孕み始める。

「また死ぬのは怖いよ、でも友達が皆、自分を残して死ぬなんて、それも......考えられないくらい怖いんだ」
星も見えない夜を見上げて少年が呟く。ルーシーは既視感を覚えながらベクターの用意をする。
気付けば体が震えているがそれが怒りなのかそれとも別の何かなのかは分からなかった。衛はまたも
押し黙ったルーシーを見て、正確にはほとんど見えてなかったのだが、続けて冗談のように言う。

「なんだったら、ルーシーさんも守ってあげよっか?」
その一言に頭が真っ白になる。たった今告げられた言葉がよくわからない。
「たぶん、この戦いが終わったら、僕たちはまた死んじゃうんだと思う。だからここにいる間にできるだけ多くの人を
守ってあげられたらって思うんだ。ルーシーさんだって例外じゃないよ」

そう言われてルーシーの体が震える。肩から揺れ、腹、足と全身を震わせてやがて堪えきれなくなったのか
声が漏れる。どうやら笑っているようで、信じてもらえていないが少しは気が楽になったのだと思うと、衛は口を尖らせつつも
明るい調子で「そりゃ僕は腕っ節は全然だけど、そんなに笑わなくても」と言う。

「っふふ、悪かったよ。それじゃあ、早速見張りをしてもらおうか」
そう返すとルーシーは衛の横を通って漸く館に入る。「見張り?」衛の声に疑問符が浮かぶがすぐに
「少しシャワーを浴びてくる、ここにあればの話だが」と答える。動揺した少年に入って来たら殺すと告げて玄関を占めて
館の中を探索する。玄関内側のスイッチを入れると館のあちこちと玄関に明かりがつき、見渡せばトイレの標識が見えて
そこに入ると上の服を脱ぎ急いで洗い、裏返しにして着る。臭いが残っているので同じことを繰り返す。

夜が開ければあの少年も自分の姿に気付く。血を隠しても無駄な事だ。夜が開ければ終わりのはずだ。
あんな態度も翻り、自分を他の奴らと同じく自分を化物と見なすだろう。夜が開ければ終わりのはずだ。

なのに何故自分がこんなことをしているのか、自分でも分からない。さっさと殺してコウタを探さないといけないのに.........

そんな風に悩んでいると館の明かりが急に消えて、玄関から衛の悲鳴が聞こえてくる。我知らず急いで駆け戻るが
玄関は開いていない。敵は外で最悪罠の可能性もあったので物陰からベクターでドアを吹き飛ばすとまたも衛の
声が聞こえる。ドアと一緒に吹き飛ばしたかと思ったが、玄関脇で腰を抜かしていた。「何があった」と聞くと彼は
「怖かったから中に入ろうとしたらいきなり明かりが消えたのでまさか本当に殺されるのかと思った」と正直に告げた。

目の前の少年はつくづく足手まといだと思いながら彼女は安堵している自分にはまだ気づかない。
確かめたい気持ちとこのままでいたい気持ちから、しばらく様子を見ようと言い、彼とこの場に残ることにした。
不意に頭の奥がちりちりと痛み出していたが、彼女はそれも無視して衛と不器用な会話を続けていた。

「まだそんな時間経ってないですけど、ルーシーさん、よく無事でしたね」
「ああ、人を殺したことは.........ないからな」

アンジェリカが脳裏に浮かぶが軽く頭を振ってその事を打ち消す。妙な間に一瞬衛は違和感を覚えるがすぐにまた別の
話をし始めて、ルーシーはそれに短く相槌を打っていた。コウタを探しに行くはずだったにも関わらず。



【一日目 D-3 洋館 黎明】

【ルーシー@エルフェンリート】
[状態]:頭痛(微小) 
[装備]:FN P90(45/50)@現実 、ジェリコ941(16/16)@現実
[道具]:基本支給品×3、FN P90の予備弾倉×1@現実、ジェリコ941の予備弾倉×2
    未確認支給品0~7
[思考]
基本:人間を皆殺しにする
1:コウタ.............
2: こいつは............

【小楯衛@蒼穹のファフナー】
[状態]:不安(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ノートパソコン(コンセント付きバッテリー切れ)@現実
     USBメモリ@現実 
[思考]
基本:龍宮島の皆以外の人も守れなら守りたい
1:今はこの人に付いていてあげないといけない気がする。
2:皆に会いたい

備考:マスクドが発電所の電源を落としたのでいくつかの施設に電気が途絶えました。
   :小楯衛は本編で捻れた後という設定

029:天使~Angel~ 投下順に読む 031:フラスコの中の小人
028:フォークト=カンプフ検査法 時系列順に読む
000:胎動 小楯衛 040:宿縁
007:黄昏 ルーシー

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