Wild mummysメンバー紹介
•トートの巫女。脳筋少女
•2000年前から来た美少女。
テレサ•メロディ
•カルキノスの神装巫女。厨二病少女。
•マネージャー兼リーダー兼ギャンブル中毒
前回のあらすじ
ひょんな事から地元アイドルグループ「Wild mummys」に入る事になったアザリー。
だが、三週間後のライブで500人以上のファンを連れて来なければグループは解散となってしまう。
そして、三週間という時間はあっという間に過ぎ去るのであった…。
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「うーん、そのアイドル衣装、ちょっと派手すぎたか?アザリー。」
多くの客が集まるライブホールの裏側で、テレサちゃんが私の格好を見てうねる。
今日のライブは、特別な衣装を用意してもらった。白のビスチェ風のスカート付き衣装に水色のティアラ、包帯を羽衣のように巻いている。
そして、無理を言って作ってもらったお守りの宝石を入れたネックレスだ。
「いやいや!私今超かわいいと思う!このネックレスもデザインしてくれて本当にありがとね!!
テレサちゃんの衣装も可愛いよ!!」
勇ましいが、どこか可愛らしさが残っている白と茶色のドレス。
いつもの派手な服とは違い、清楚に見える。
ヒエロは動きやすい服が良いと、いつもと同じ白のセーラー服を着ている。
ブツブツ呟いて作戦を練っているようだ、邪魔はしないでおこう。
「邪魔するぜ〜。」
控室に、リーダーであるニキアス•グリフが入ってきた。
そして嫌味ったらしく喋り出した。
「今会場にいるのは300人前後だ。そんで目標は500人。ふん、こりゃ今日中に解散かもな!」
ヒエロはリーダーに向かってヤジをとばす。
「だから今、あんたの心をどうやって動かすか作戦を練ってるんでしょーが。」
「いや、解散する事に対して心変わりなんかしねーよ?金以外の事なんかどうでもいいし。」
「でも私、リーダーが影から私達の練習を見守ってくれてた事知ってますよ。」
「リーダー、衣装と会場、自腹で用意してくれたんだってな!感謝する!」
私達が反撃すると、
リーダーはバツが悪そうに頭を掻く。
「なんでバレてんだよ!まぁ、そんくらいは当然だろ。こっちはお前らのマネージャーなんだからよ。」
開演時間を告げるアナウンスが流れ始めた。
「そろそろ時間ですね。それじゃ」
みんなも深呼吸して動き出そうとすると
「おい、お前ら」
リーダーが呼び止める。
「どうかしました?」
振り返りリーダーの方を見ると、
ぎこちなく笑って握り拳を胸の前に掲げていた。
「頑張れよ」
珍しいな、と思った。
ヒエロは、握り拳を返して見せた。
「見てなさいよ!絶対心変わりするくらいのライブにするから!」
私とテレサちゃんもそれに続いて挨拶する。
「行ってきます!」
ついに、この時が来た。
ライブ開演の時間だ。既に多くの観客が私達のライブを楽しみに待っている。
辺りの照明が消え、会場は静かな雰囲気に包まれる。私達3人はこっそりスタンドの真ん中へ移動する。
…問題ない、私はこの三週間のレッスンと宣伝で自信がついたんだから。度胸、度胸さえあればどうとでもなるはずだ。
最初は、テレサちゃんのナレーションから始まる。
「みなさんこんにちは!本日はギリシャの地元グループ、Wild mummysのライブにお越しいただき〜」
挨拶を済ませ、ライブ中のルールや盛り上げ方について細やかに説明していく。
ナレーションが終わり、会場が再び静まり返る…。そして、私達をスポットライトに照らし、ポップで可愛らしい音楽が流れ始めた。
さぁ、最初の曲だ!「Love ♡Requiem!」
観客は地面を揺らすほどのコールを浴びせ、私達もそれに答える。ヒエロとテレサちゃんと息を合わせ、マイクに歌声を乗せる。
この曲は、私達の可愛さでドラゴンの魂をあの世に送る。という歌詞で、独特なリズムで聴く人を中毒にさせる。
いわゆる「電波曲」という分類に入るらしい。
曲の中盤に入ると、音楽が流れたまま、ヒエロがリズムを取り自己紹介をする。
「やっほー!!Wild mummysの天才アイドル!ヒエロ•プトレマイスでーーーす!!!」
会場からおバカコールが流れる。
「誰がおバカだこのバカ共!!!」
ヒエロはステップをしながら後ろに下がり、ローテーションしてテレサが前に出る。
「星座の輝きに導かれ!君達との運命の出会いを果たす!!よく聞け!我が名はテレサ•メロディ!!!!」
テレサ!!テレサ!!テレサ!!
ヒエロが身を乗り出して馬鹿にする。
「言ってる意味わかんねーーー!!!」
「なんだぁー!?君は!?」
私の番だ
「ど、どうも!!!このたびゅ!…この度新しくWild mummysに加入させていただきました!!アザリーですッ!!!」
わざと言い間違える。
これが新人にだけ許される技、「あざとさ」と言うものらしい。テレサちゃんが教えてくれた。
「ねぇアザリー!!あんた、あたしとテレサのどっちが好きなの!?」
「えぇ!?」
「聞くまでもない!!時空を超え、世界を超え、共に未知の冒険に身を投じよう!!そうだろう!!アザリー!!」
「そ、そんなの決められないよーッ!!!」
そういうと、私は即座に移動し、ギターを手に持つ。
スポットライトが激しく揺れ、ヒエロとテレサちゃんのロックパートが始まる。
可愛らしい曲から一変して荒々しいギターの音が響き、ギャップで観客の度肝をぬかす。
「だったらヒエロ!!この曲で決着をつけようじゃないか!!」
テレサがヒエロを指差して挑発する。
「望むところよ!!しかと聞いていきなさい!!あたしの…」
ヒエロがタイトルコールをしようとしたその時だった。
突如として、天井の瓦礫や柱が私達めがけて降りかかる。テレサちゃんが目にも止まらぬ速さで私を担ぎ、退避する。
それは私達のステージに直撃し、すさまじい轟音が鳴り響いた。
こんなものは台本にない。
私達みんなで作り上げた雰囲気は、どこかへ消え去り、300人近くの観客が悲鳴を上げパニックになる。
テレサちゃんが狼狽した様子で呟く。
「あんなドラゴン、見た事ないぞ…!」
空を見上げると、天井がひび割れ、ポッカリと穴が空いている。
黒い包帯に包まれた「それ」が、私達を見下ろしていた。