Wild mummys人物紹介
トートの巫女。気の強い脳筋少女
古代エジプトから来た少女
テレサ•メロディ
カルキノスの神装巫女。厨二病気味のカニ娘。
『Wild mummys』のマネージャー兼リーダー。何かと器用なギャンブラー。
前回のあらすじ
ライブ会場に突然現れたドラゴン。
アザリーはそれに見覚えがあった。
「2000年前のエジプト崩壊の直前に現れたドラゴン」にそっくりだったのだ。
嫌な予感を感じながら、アザリーは気絶するように眠った。
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その日、夢を見た。
親友であり、先代トートの巫女でもあるシファと一緒に過ごす夢だ。
古代エジプトはインターネットもコンビニもない。動物の世話をして農作物を耕す日々。
でもあの頃が、私にとって一番大切な日常だった。
死体に包帯を巻きながらシファは言う
「これは私個人の意見なんだけどね。永遠の命にそこまで興味がないんだ。
そりゃあ、死にたいって訳じゃないよ?
ただ普通に老いて普通に死ぬ。そんな人生を送りたいんだ。
アザリーは?どんな人生をすごしたい?」
私はー
「私は…みんなと一緒にすごしたいよ」
目を覚ますと、私は事務所のベッドで横になっていた。
時間は午後の5時頃だ。遠くからセミの鳴き声のような、不快な音が聞こえてくる。
なまりの様に重たい体を起こし、広間へ行く。Wild mummysのみんながテレビに群がっていた。リーダーであるニキアス•グリフが頭を抱える。
「なんだよこれ…どうなってやがんだ?」
画面を覗き込む。ニュース番組のようだ。
『ギリシャ全土に大量発生しているドラゴンについて、専門家はその危険性よりも巫女の弱体化を危惧しており…』
画面には、昨日討伐したドラゴンが映っていた。
「…これは?」
テレサちゃんは私に話すのを躊躇しているようだったが、ヒエロが答える。
「今の放送の通りよ。昨日討伐した虫野郎がこのギリシャに大量発生してんの。
今はどこを歩いてもこの虫の鳴き声が聞こえてくるわよ。」
「ギリシャ中の巫女が虫野郎の討伐に回ってるらしいぞ!!どうしちまったんだよこの国は!?」
あちこちから虫の鳴き声が聞こえてくる。
私の視界はぐにゃあと歪み、ヒザをつく。
この"音"のせいだ…。
私は冷静さを失い、空虚に問いかける。
「ドラゴン達はどこから来たの?な、なんでこの時代に現れたの…!?」
「知らん!」
ヒエロの体からトキのような形をした鳥が湧いて来た。トート様だ。
「わしが知っておるのは、このドラゴン達は厄災の前兆である。という事だけじゃ!
じゃが、2000年前に姿を消したドラゴンが、なぜ今姿を現し始めたか…?
ワシは、何かが引き金になったのではないかと睨んでおる!」
「何かって…」
ーピンポーン
突然、訪問者を告げる音が鳴った。
「…?」
ピンポーンピンポーンピンポーン…と音が鳴り続けている。連打しているようだ。
「誰だぁ?こんな時に…」
リーダーがドアを開けようとした瞬間、外側からドアごと木の根のような物で破壊された。
「ぐわああぁぁぁぁぁ!!!」
リーダーは吹き飛んだ。
「リーダー!?」
扉の外側から、ゆらゆらと少女が歩いて来た。その少女には見覚えがある。オリュンポスのメンバー、レイナ•ブラックローズだ。
彼女も「この音」のせいで、だいぶ弱っている様子だった。
ヒエロは裏口に逃げようと、私の腕を引っ張る。
「なにぼーっとしてんの!」
ブラックローズさんは親指を使い私に向けて種を飛ばす。テレサちゃんが種を弾き返すが、それは地面に落ちると巨大な樫の木となって私達に襲いかかる。
テレサちゃんが私を庇い、転げ回る。
「残念だよ…アザリー。
ボクの手で君を殺す事になるなんてね!」
彼女は、刀身が湾曲した剣を取り出した。
それはみるみる形を変え、大きなカマになる。
「あれは、ハルペーのレプリカか…!?」
「恨まないでね!これもお仕事だからさぁ!」
ブラックローズさんは、構えた武器を私に向けて振り下ろした。
ヒエロがカマに体当たりし軌道をずらす。そのまま掴み合いの状態になる。
「仕事って事は、クライアントはオリュンポスってわけ?」
互いに顔を近づけて威嚇する。
「教えてあげない♡アハハハハ!!!!!」
両者は同時に蹴りを入れ、離れる。
その瞬間、ブラックローズさんは小型のトラックにひかれた。鈍い音を立て、その体は海の方に突っ込んでいった。
中から、ボロボロになったリーダーが出てきた。
「やべぇ!!人をひいちまった!!
やべぇ!!」
巫女は車にひかれたぐらいでは死なないと思うが。
ヒエロが私達を誘導する。
「ナイスタイミング!!
アザリー!!すたこらさっさよ!!」
私達の乗せた車はエンジンをかけ、走り出した。