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第12話

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第12話

 目を覚ました尚徳は、体のどこも痛くないことを不思議に思った。が、そんなことよりも葉奏に問わねばならないことがあった。
 即ち…
「あなたは…ブラッディプリンセスなのですか?」
 と。
「そりゃおめぇ、あれだ。俺の娘のことだな」
 葉奏の声で葉奏の姿で、葉奏が答えた。しかしどこか違和感。いや、違和感どころではない。別人だ。断言できる。
「…あなたは…?」
 聞くまでもない。だいたいのことは推測できた。あくまで確認のための質問。
「俺?血啜りの龍リュカ、で分かるか?」
 予想通りの答えに、尚徳はひざまずく。
「伝説級の龍に、しかも魔王リュカ様にお会いできるとは…光栄です」
「おいおい…まぁ、何だ、良い心構えだ青年。俺が復活した暁には貴様を血族に加えてやろうか?」
 くくくっとリュカが笑う。
「ありがたき幸せです。ぜひとも私を血族に加えてください」
 人間を超える力を持つ吸血鬼。しかし現代に残っているのは、人間との混血を繰り返し弱体化した者ばかり。その上絶滅危惧種。どいつもこいつも取るに足らない存在。しかし、純血種は違う。血啜りの龍に血を啜られ吸血鬼となった者は、明らかに人間よりも強大で強大で強大で強大すぎる。
 もちろん、それでも龍には遥かに及ばないが。それでも、人間は純血の吸血鬼に遥かに及ばない。十分だった。少なくとも尚徳にとっては、十分すぎた。
「良いだろう。それまでは俺の娘に仕えろ。いや、血族となった後も俺の娘に仕えろ。 それから大切にしろ。俺よりも何よりも大切にしろ。分かったか?」
「はい。仰せの通りに」
「あんたの娘溺愛具合は相変わらずだじょ」
 最後の発言は、青い髪の女。虫みたいな薄い羽根が生えている。人間ではない。妖精族…はこれほど大きくない。ならば…この女も龍…か。
「うるせぇよ。それより早くそっちのロクデナシを蘇生させろ」
 リュカが指差した方向には、ミラクルの死体。ロクデナシというのはミラクルのことだろう。納得。しかしなぜリュカはミラクルがロクデナシである事実を知っているのか。謎。
 それよりも『蘇生させろ』とはどういう意味か。推測。
 …実は自分も死んでいてこの女に蘇生してもらったのだろうか。だとしたらこの女は何者か。おそらくは龍。ならば蘇生ができる龍…。心の中で呟く。
 記憶の引き出しを強引に開け、検索。一秒。二秒。三秒。…発見。おそらくは癒浄の龍クー・ピニオンクロゥ・ピーツ

 その頃のシィル&プライン。
「お腹空いたですぅ〜、ってゆーかぁーここってどこですかぁ?」
 迷子になっていた。これでもか、というくらいに迷子になっていた。
「疲れたですぅ〜、もう歩きたくないですぅ〜。って私歩いてないって事実に気づきましたぁ」
 独り言、ではない。プラインに話しかけているのだ。その証拠に、シィルが何か言う度に、プラインがクエーとかクエエェーとかクエッとか答えている。会話が成立しているのかどうかはこの際置いておこう。
 もはやシィルは完全にプラインにもたれかかっていた。そして何気に顔をあげると、『OK牧場ざ月河』と書かれた看板が見えた。そしてその狭い狭い自称牧場の中に、『やんばるくいな』と名札をぶらさげた馬刺しが居た。もとい馬が居た。
「こ、これは!日頃の行いがあまりにも良いから神様が私にプレゼントですぅ!やりましたですよプライン!美味しそうな馬刺しですよ!」
 クエーと鳴きながらプラインがやんばるくいなに近づく。
「さぁ、馬刺しさん!私が正義を行使するための糧となってください!逆らうと容赦しませんよ!」
 騎士剣を抜き。空にかかげる。そしていざ斬りかかろうとしたその時。
「…何やってんだ?」
 声をかけられた。振り向くと一人の男が立っていた。両手いっぱいの藁を抱えていた。たぶんやんばるくいなの餌なのだろう。やんばるくいなの方が、シィルの餌になりかけたとはまだ気づいていないだろう。
「これから馬刺しを作るんですぅ!邪魔しないでください!」
「そっか、馬刺しかぁ。美味そうだなぁ。俺にも分け…ってやんばるくいな食うんじゃねー!」
 男の反論。どうやらやんばるくいなの飼い主らしい。
「むむぅ。私が正義を行使すると困るんですね!?あなた悪人ですね!」
「どっちかって言えばまぁまじめな…って何言ってんだ俺」
「問答無用ですぅ!悪人には裁きを!天誅を!正義の制裁を!」
 シィルが騎士剣を構え、男をにらむ。
「ちょっと待て。俺は月河のマスターのディスレイファン。悪人じゃあない。知らない?ってか人の馬殺そうとした君の方が悪人だろ」
 男…ディスレイファンは藁を地面に落とし、両手をひらひらとさせる。敵意は無い、とでも言いたいのだろうか。
「月河…って姫が言ってた悪の秘密組織ですね!確かそこのボスの名前がディスレイファン!」
 事実がおおいに捻じ曲がっているようだ。
「え?悪の秘密組織って…?月河は冒険者ギルドなんだけど?」
「この際細かいことは気にしないですぅ!でもさすがに悪の秘密組織のボスと一対一は 危険ですぅ!一旦引くですよ!」
「…おい、人の話聞いてる?」
「プラインフライングボンバー!」
 シィルの声と共にプラインが駆ける。そして跳躍し、見事にディスレイファンを蹴り飛ばす。そしてそのまま走り去った。

「空が…青いなぁ」
 プラインに蹴り飛ばされたディスレイファンは、地面に転がっていた。
「女の子を本気で殺したいと思ったのは、生まれて初めてかもしれねーな」
 飛び起き、やんばるくいなに近づき、騎乗。
「殺してやるぜ、リボンの騎士」
 そう言ったディスレイファンの顔は、普段の穏やかな顔ではなかった。覇王の階位『流星矢』ディスレイファンのそれだった。

to be continued

コメント

  • ちょwディスさん本気になっちゃまずいって (^^; -- Kengo
  • 『流星矢の名に掛けて貴様だけは絶対に・・・』 -- ディス
  • いあ、キ、キレて無いですよ?wうちをキレさせたらたいしたもんですよ?w -- ディス
  • 何があっても、女の子には手を上げない主義デス。ディス、おちつけーw -- それん@ねこ
  • ディスがきれたwwwwシィル君逃げれwwww -- ハジャ@RO
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