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第23話

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第23話

 ソラが駆ける。狙いはリュカ。
 その速度に、焦燥。刹那にしてリュカの懐へと飛び込む。「くっ」下がって間合いを、取ろうとしたが、間に合わない。
「烈火」ソラの拳が、リュカの体に叩き込まれる。体中に、叩き込まれる。十四、十五発。リュカがよろめく。
「阿修羅」ソラがしゃがみこみ、勢いをつけて、サマーソルトキック。リュカが宙を舞う。リュカより先に地面へと着地したソラは、そのままもう一度サマーソルトキック。空中のリュカを、襲う。更に高く、高く、リュカの体が舞う。
「気弾」ソラの周りを、ふわふわ、ふわふわ、ゆらり、くるり、ふわり、ゆら、ゆらり、五つのエネルギーの弾丸が踊る。絶対死を奏でながら。
「な、め、ん、な、よ」空中で、リュカが両手に魔力を集中する。黒き邪悪な魔力の塊が、リュカの両手から、放たれる。
「闇夜で踊り尽くせ、デュアルダークナイトダンシング」
 放たれた黒き魔力は、闇の魔力は、獲物を求め、真っ直ぐに、ソラへと向かう。全てを喰らう闇夜の如し、二重に奏でる舞踏曲。
「滅」五つの気弾とリュカの魔力が衝突し、反発し、乱れ狂い、爆ぜる。
 リュカはその爆発に巻き込まれ、上手く着地できず、地面に叩きつけられた。
「ち、これはマジでやばいぜ…」
 痛みを抑え、立ち上がる。
「殺龍弾」超特大の気弾が、リュカの体より遥かに大きな気弾が、すぐそこまで迫っていた。
 どうしょうもない。そんな、感覚。殺龍弾の凝縮され圧縮され蓄積された超特大のエネルギーは、嘘偽りなく、龍を眠らせるだろう。まともに喰らったら、いかにリュカであろうとも、ただでは済まない。そして下手をすれば、ハカナは消滅する。
 そして。結果的にリュカは助かった。くぴぴの張った結界によって救われた。くぴぴが、リュカを、助けるなど、最初で最後の出来事かもしれない。それほどに、くぴぴも、怯えているのだろう。この覇王に。
「今ので、くぴぴの魔力、ほとんど無くなったじょ…」
 くぴぴは肩で息をし、地面に座り込む。本当に、辛そうだ。それもそのはず。今の攻撃は、並大抵の結界では防げない。本気でほとんどの魔力を結界に回したのだろう。
「…くぴぴ、俺はお前を勘違いしてたぜ。嫌味で意地悪で他人を好き好んで助けるなんてことは絶対しない、『冷徹なる蒼《コールドブルー》』だと思ってたぜ」
 さっきひどいことを言われた仕返しみたいなものだ。
 くぴぴは何も答えない。答えられない。言い返す気力もないのだろう。リュカはそれを狙っていたわけだが。
「おい、女、名前ぐらい名乗れ。俺はリュカ、魔王、血啜りの龍、この世の災厄、好きに呼べ」
 くくくっと、リュカが笑う。それは絶望した風ではなくて。それは諦めた風ではなくて。思い出したのだ。楽しさを。戦うことの楽しさを。誰も彼もリュカに敵わなかった。どいつもこいつもリュカを満足させられなかった。強すぎるが故の退屈。いつの間にか、忘れていたのだ、戦う、楽しさを。
「では魔王と呼びましょう。私はソラ。覇王のソラ。世界で初めて魔王を刈り取る人間です。魔王、死んでください。シャナン様に歯向かったあなたは死ぬべきです。徹底的に死ぬべきです。死んで死んで死んでもう一度殺してあげます」
「いいだろう。いいだろうぜ覇王。死んでやる。殺されてやる。だからもっと…俺を楽しませろ!」
 リュカが、駆ける。そのまま勢いにまかせて水面蹴り。ソラが飛び上がってかわす。「気弾」ふわりふわりくるりゆらり、エネルギーの塊が五つ、ソラの周りを舞う。
 飛び上がったソラへ。サマーソルトキックのお返しを。しかしそれも回避される。空中で、無防備状態になる。見逃すほどソラは優しくない。くいっと右手を動かし、気弾の一つが消え、リュカに炸裂する。光速で、爆ぜる。
 地面に倒れ、それでもそれでもリュカは笑う。笑う。楽しい。楽しい楽しい楽しい。
「楽しいぞ、楽しいぞ覇王。もっとだ、もっともっともっともっと俺を楽しませろ」
 飛び起き、魔力を集中する。と同時に気弾がリュカに炸裂する。光速で、爆ぜる。また倒れる。倒れたまま、高笑い。
「闇夜の嵐は静けさを伴い、何もかもを飲み込み、滅する。ダークナイトテンペスト」
 黒き魔力が、闇の魔力が、縦横無尽に、獣王無尽に、手当たりしだいに打ち砕く。
 飛び起き、ソラを探す。居ない。と。左から、ソラが現れる。速い。ダークナイトテンペストは喰らわなかったらしい。
「烈火二段」ソラが拳を叩き込む。以前よりも多く、打ち込む。その数、三十発。リュカは血を吐き、よろめき、ふらつき、それでも、笑っていた。

 リュカとソラの戦いを、ただ見ていた。見ていることしかできなかった。ミラクルに、あの二人の間に入れるだけの力は無い。
 あれだけの魔力がぶつかり合っている。それなのに、まだ正気を保っている自分に驚いた。
 冷静に、分析し、リュカが負けるだろうと結論した。それほど時間もかからず。
 それはまずい。あまりにもまずすぎる。リュカの死はそのままミラクルの死に直結している。なんとかしなくては。何か策を。何か策を考えなくては。
 さっきの、ソラとシャナンの会話から推測するに、ソラは相当にシャナンに依存している。依存症。依存している対象を消せば、何かしらの反応を示すはず。泣き喚くか、怒り狂うか、壊れるか、どうなるにしろ、そこに生じるのは隙だ。上手くその隙に付け込むことができれば。打開できるかもしれない。
 ならばミラクルのやるべきことは、やるべきことは、決まった。
 隙を見てまずシャナンを殺す。今の状態のシャナンなら、ミラクルでも殺せる。最強魔法、クワドロプルファイアで瞬殺する。

to be continued

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