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龍達の狂宴〜中編〜

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龍達の狂宴〜中編〜

「つーかてめぇスカート短すぎなんだよ。なんだそれ。中を見て欲しいのかよ。変態め」
「あんた髪の毛赤すぎ。目に悪いから坊主にしたら? 禿げ魔王リュカ、うふふふふ」
「ぺちゃぱいのちんちくりんが、俺の髪の毛に文句垂れるなんざ五千年は早いぜ」
「やーい禿げ魔王〜、禿げ魔王〜、ぷぷ」
 悪口合戦がおよそ二時間にわたって繰り広げられていた。どちらが実力行使に出てもおかしくない、そんな状況。くぴぴはと少し離れた位置で見学していた。近くに居たら危険だと思ったからだ。
「いい加減にしやがれ!」
 リュカがリオを殴り飛ばした。地面を転がるリオ。しかしすぐに立ち上がり、魔力を集中し、雷でできた剣を造形する。雷鳴の剣。
「お、やる気か。たっぷり睡眠とらせてやるぜ」
「今夜は眠りたくないの、だから代わりにリュカが寝ろ」
 リュカも魔力を集中し、黒き魔力でできた剣を造形する。宵闇の剣。
「真似するな」
「はん、魔銃で撃ち殺したら、つまんねーだろーが。ハンデだよハンデ」
 実力的には、リュカの方が遥かに上だ。しかし、この二人の攻防は、一時間に渡った。
 リオにはリュカが次に何をするか読めていたし。
 リュカにはリオが次に何をするか読めていたし。
 根本的に本質的に、同じ者同士の戦い。鏡の中の自分と戦っているような、そんな錯覚。
 魔銃を使えば、行動を読めていても、回避はできないだろう。それでもリュカは、あえて魔銃を使わなかった。
 しかし、実力の違いが、少しずつ、表に出始める。少しずつ、リュカが有利な状況へと変化していく。
「まったく、なんて戦いにくいんだよ。意味わかんねぇ」
「それは、リュカが実はたいしたこと無い、ってこと」
 二人共、気付いていなかった。鏡の向こう側で同じ魂を持っていて本来は愛し合っていても不思議ではない、そんな事実に。気付いているのは、くぴぴだけだろう。
 将来この二人は仲良くなる。そんな確信がくぴぴには有った。たぶん少なくても、後数千年かかるだろうけど。
 表に出始めた実力の違い…リオがリュカの動きに、反応できなかった。足がもつれ、地面に尻餅をつく。その好機を逃すほど、リュカは優しくもないし愚かでもない。宵闇の剣で一閃。
 そして、宵闇の剣は第三者の光の剣によってその攻撃を防がれた。
「エリー…何しにきやがった?」
 第三者、天照の龍エンジェラを、睨みつける。
「リュカ、いい加減にしておけ」
 それだけ言って、エンジェラは尻餅をついているリオに手を差し出す。その手を握ったリオを、ゆっくり引き起こす。
「ち、つまんねーの。勝手に二人でいちゃいちゃしてな」
 宵闇の剣を消し、リュカはその場を去った。振り返ることもなく、呼び止められることもなく、ただ自然に、その場を去った。

 魔王城に帰った瞬間。
「お父様ぁ! お帰りなさい!」
 二十年前に拾った人間の娘が、リュカに抱きついてきた。
 水色の髪の毛を腰まで伸ばした、人形の様に整った顔立ちをした娘だった。名をハカナという。名付け親はリュカではなく、母親役を買って出た破魔の龍レイア。名前の意味は、人間の人生は龍に比べると遥かに儚いから。だからハカナ。
「ただいま、俺の娘。変わりはないか?」
「まったくないです。どうしても何か言わなければいけないなら、今日は私の誕生日です、まさか忘れたりなんて、してませんよね?」
 忘れていた。
 誕生日と言っても、正確にハカナがいつ生まれたのかわからないので、リュカが拾った日を誕生日とした。
「覚えているに決まってるだろ? 愛する娘よ、俺が今まで一度だってお前の誕生日を忘れたことがあったか?」
「私が覚えているだけで十四回程」
「…そうだったけかな。まぁ、今回はちゃんと覚えていたさ。プレゼントも用意してあるんだ」
「嬉しいです」
 ハカナが微笑む。リュカはハカナをきつく抱きしめ、耳元でささやく。
「血族に加えてやる」
 そして、ハカナの白い首筋に、噛み付いた。血を啜った。どくどくどくどくどく。最高の味だ。至高の味だ。今までのどんな人間の血液より、素晴らしい。
 ハカナはぐったりとして、リュカにもたれかかる。このまま数時間後には、ハカナは血啜り一族、即ちヴァンパイアとなる。
「俺の娘、俺の血を啜れ、俺の血を啜って特別になれ、お前が、お前がいずれ、全ての龍を喰らい、龍の時代を終わらせろ」
 もはや龍など必要無い。リュカはそう考えていた。そして、滅ぶなら、滅ぼされるならば、自分の娘の手で。それはささやかな、願い。
「…お…父様…」
 もうろうとした意識の中で、ハカナはリュカの言葉を実行した。リュカの首筋に噛み付き、血を啜った。最強にして最狂にして最凶の龍の血を啜った。どろどろどろどろ。啜った。血の味が、血液の味が、広がり、ある種の、快感をもたらす。その快感の中で、ハカナは意識を失った。
 人間にして人間に非ず。ヴァンパイアにしてヴァンパイアに非ず。龍にして龍に非ず。この時この瞬間、この世でもっとも特別な存在が誕生した。
 龍を滅ぼす為に。龍の時代を終わらせる為に。
 数時間後、ハカナは、絶大なる魔力を抱いて、目覚めた。その枕元には、手紙とグローブが置いてあった。
『このグローブは混沌の魔手といって、俺が十年かけて作り上げた究極の破壊兵器だ。これもプレゼントだ』
 魔王が溺愛の娘へ送った史上最悪のプレゼント。ハカナの魔力にこの魔手があれば、龍でさえ、滅するだろう。この星でさえ、やろうと思えば壊せるだろう。それほどの、最悪。この世の、最悪。

コメント

  • ほほえましい展開かと思えば、何となくグロいわ・・ -- natori
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