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第7話

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第7話

「・・・で、結局何時に集合する? 俺的には七時あたりがありがたいんだが」
くぴごんの魔性からリオとティンカーベルを引き剥がすことができず、仕方なくディスはティンカーベルを除く三人へと話を切り出した。葉奏は少し顎に手をやって考え、結論を言う。
「あたしはそれでいいわ。歌ちゃとしょーは?」
「おいらはおっけー」「私もいいよ」二人から肯定の返事が帰ってくる。
「なら、七時にここ集合ってことにするか。そっちは三人でいいのかな?」
「ええ・・・尚君には残ってやってもらいたいこともあるしね」
「じゃあ、食料や荷物を載せる馬車を手配しておくよ。問題は『七魔団』の動向だな・・・ロランがどう動くかが不安だ」
ディスが腕を組んで考える。葉奏と歌妃も頭を抱えていた。ショーティだけは何故かくぴごんに気を取られていた。
「・・・また妙なことやってるな、お前ら」
くぴごんに抱きついた二人を見て言っているのであろう声。ディスの後ろに、いつの間にかトシヤが立っていた。
「あら、としさん」
葉奏が驚いたようにトシヤを見やる。
「どうしたの?」
「また預かってきたんだよ・・・丁度ここにいる三人にな」
懐から出す、三つの手紙。葉奏は顔を引きつらせて溜息をついた。
「ほれ、これがお前に」
葉奏が差し出された手紙を受け取り、宛名を見やる。『妖艶でビューティなマイラバー姫へ』再び大きく溜息をついた。
「・・・これ、見る価値あると思う?」
「それを俺に尋ねた場合、答えは一つしかないが?」
トシヤが疲れた顔で言う。
「ない」
「・・・でしょうね」
”ど”がつくほどキッパリといわれ、葉奏は手紙をそのまま引き裂いた。
破り、破り、また破り、紙片になるまで破ってからゴミ箱へと捨てる。
「ま、それが賢明な判断だろうな」
「ミラケルにはかわいそーだけどねえ」
にやにやと笑みを浮かべながらディスが呟く。
「いあ・・・前回の内容見れば・・・」
歌妃が顔を引きつらせながら苦笑した。
「んで、これがショーティ宛てだ。お前には初めてだろうから、一応読んどけ」
「はーい」
ショーティが手紙を受け取り、宛名を見る。
「『可愛い可愛いラブリーしょーちゃんへ』・・・きゃー、そんなホントのことを♪」
「ま、たわ言は放っておくとして」
トシヤがあっさり流した。
「葉奏、ティン起こせ。こいつの突っ込みないと面白くないからな」
くぴごんと共にどこかへ逝っているティンカーベルに、葉奏が近づく。そして耳元に手を当て、ぼそぼそと何かを言った。同時にティンカーベルが跳ね起きて、がたがたと震えながら葉奏を見る。
「そ・・・それだけは勘弁して! お願い!」
「じゃあ起きなさい♪」
葉奏がこれ以上ない極上の笑顔で命じた。
「でないと今日帰ってから・・・」
「お、起きた! もう完璧!」
ティンカーベルが恐怖の表情のままで、力なくテーブルに戻る。一体何を言ったのか、それは葉奏以外の誰にも見当すらつかない。
「・・・恐ろしい効果だね・・・」
ディスが苦笑しながら呟いた。

「それじゃ読むよー」
ショーティが手紙を取り出し、おもむろに開く。
「『ポニーテールの似合う可愛いしょーちゃんへ』」
「まずその時点でお世辞ってことに気づこうね♪」
情の欠片(かけら)もなく葉奏が告げる。ショーティがジト目で「うるさいー」と言って手紙へ再び目をやった。
「『ナイスガイ!』」
・・・。
「それだけしか書いてないんだけど・・・」
「なんで本文よりタイトルの方が長いんだよ!」
ティンカーベルがびしっ、と手紙に平手で突っ込んだ。
「あ、もう一文書いてある。すっごいちっさく」
ショーティが手紙の下の方をまじまじと見やる。
「『この手紙は、読後焼却のこと』」
「なんでそれだけで機密文書扱いになってるんだよっ!」
うがーっ、と今にも暴れそうな勢いでティンカーベルが叫ぶ。
「突っ込みうまいなぁ」
的外れな感想を、ディスがした。

「・・・んじゃ、最後にリオ宛だ」
トシヤが最後の一枚をリオに手渡す。いつの間にか現世への帰還を果たしたリオが、相変わらず不気味な微笑みを浮かべながら受け取った。
「『キュートな姿に心ドキュン♪リオちゃんへ』・・・ふふふ・・・」
「なんかかなり、手紙じゃなくリオさんを突っ込みたいんだけど・・・」
「その気持ちは痛いほど分かるよ・・・」
ウズウズしているティンカーベルに、トシヤが苦笑しながら呟いた。
「『最近寒くなってきました。外に出るのもマフラーをつけないと寒い日が続くようになりましたね。体調など壊していないかとても心配です。特に夜などは冷え込むので、なるべく暖かい格好で寝るようにしてください。私は王宮で元気にやってます。仕事は疲れますがやり甲斐もあります。いつも、皆が笑顔でいられる国を目指して日々邁進しているので、応援してください。ミラクルより』」
「ふっ・・・」
ティンカーベルが肩を震わせながら言葉を紡ぐ。
「普通だっ! 普通の手紙だっ!」
「そう書いてある・・・ふふふ・・・」
リオは相変わらず不気味な笑顔を作りながら、その手紙をテーブルの上へと置いた。白紙に一言、『ジュテーム』と書かれた紙を。
「って全部創作かいっ!!!!!!」
一際大きい音と共に、その小さな体がぱたん、と倒れる。ディスが近付いて苦しそうにうめくティンカーベルを見ながら、軽い溜息をついた。
「過呼吸(かこきゅう)だね。誰かビニール袋持ってきてー」
違う意味で、ティンカーベルはまた違う世界へと飛んで逝った。

「失礼致します。ミラクル様」
言葉と共に、ソレンセンがミラクルの執務室へと入る。
「先程トシヤ様より、この手紙を頂きました」
「ほー、ラブレターかい♪ トシヤ君やるなぁ〜」
「中には、『あなたの事が好きです。結婚を前提にお付き合いしてください。トシヤより』と書かれておりました」
「おぉ〜、それこそまさにラブレタ〜♪ で、返事は? 返事は?」
「しかし・・・」
す・・・とどこからか右手でハリセンを取り出す。
「宛名には『冷たく綺麗なマイパートナーソレンセンちゃんへ』とありました」
「・・・」
つぅー、と冷や汗が頬を流れる。
「そ、そうか。トシヤ君既にパートナー扱いかぁ♪」
「明らかにお前の仕業じゃぁぁっ!!!!」
すぱーん、と心地よい音と共に、ミラクルの頭へ衝撃と痛み。
「くぅっ・・・見事な一撃だ・・・」
「して、ミラクル様」
何事もなかったかのように、ソレンセンが姿勢を戻す。勿論、ハリセンはどこかへと消えていた。
「冒険者へと出したあの三通、どういった意味があっておやりに?」
「ん?」
頭をさすりながら、ミラクルがソレンセンを見る。
「リオちゃんとしょーちゃんへの二通は意味ないよ。姫のだけは、うちの知ってる真実を全部書いたけどね」
「真実?」
「『賢者の石』がうちに見せた、姫の身にかかる災厄(さいやく)と絶望。呪われし運命を全て書き記した。もし知らなければ、あの運命を逃れられないかもしれない・・・」
謎を含んだミラクルの言葉。その真実が闇の中へと消えたことは知らずに。

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