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あのおんなをすくいだせ

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彼女ヲ救出セ




『…というわけだからさ、気をつけてよ、君たちも』
「NEETなんかに心配されなくても、ルイはわかっている」
『君の心配なんかしないよ、私は』
「トウガンの心配だろう、それもルイはわかっている」

受話器の向こうでため息が聞こえた。

『君たちまで…あのひとを苦しめないで、…私にはできない』
「トウガン、そんなに酷いのか」
『………私じゃ駄目なんだ、わからない…どうすればいい…!』
「男が泣くな、鬱陶しい。ルイは切るぞ」

強制的に会話を終了させた。街と島を隔てる海は、今日は大荒れだ。
今まで毎日マキは街まで飛ぼうとしたけれど、今日は飛ばなかった。
三角の波が風にあおられて、轟々とうねり、狂っている。
ルイはケータイを仕舞い身震いをして、小屋に小走りで駆け込んだ。
もともとトウガンが修行の時に寝泊りする、ただそれだけのための小屋だ。
生活に最低限のモノしか、ここには無い。けれど今はそれで十分。
電気も火も、彼らポケモンにとってみれば、易く使える。
今ここには4人。ルイとコウ、それにグンジョウとマキ。
いつの間にか4人の担当はすんなり決まっていた。ルイは街との連絡係だ。

(「気をつけてよ」、ね)
気をつけても、無駄ではないのだろうか。眠るなというなら、ひどい話だ。
警戒、それを、あのラトが怠るだろうか。ミラだって、妙な気配には誰より敏感なのに。
それでも彼らは得体のしれない何者かに蝕まれ、眠りから醒めない。
(ルイにはきっと、できないだろうな…)
3人が眠りこけているところへそっと潜り込んで、目を閉じる。眠りはすぐに訪れた。


*



「………?」
辺りが一面、真っ白だ。
見渡しても白以外の色が見当たらない。
白は嫌いではないけれど、ちょっと白すぎて、まぶしい。
「誰かいないのか?」
「いるとも」
声は背後からかけられた。素早く振り返って身構えるが、相手は襲い掛かってくる気配は見せない。
真っ黒い衣装、白い長い髪、同じく長い真紅のマフラー、それに青い目の不審者だ。
「…なんだ、お前は」
「この世界の水先案内人、とでも言うかね…しかし遅かったな、眠れなかったのかい」
「別に、何しに来た」
「私は君の願いを叶えに来たのだよ」
心臓がどきりとした。ねがい…? でも、  の願いは……願いと呼べるようなものは。
「面倒くさい…お願いしなきゃだめ?」
「出来ればしてもらったほうが、楽でいいがね」
ぐらりと揺れる頭に、繰り返される声。
『――私じゃだめなんだ』
『あの人を助けたいのに』
『どうして――』
「  じゃだめだ、  じゃ助けられない、助けられるのは一人だけだ」
「ふむ?」
ゆっくり瞳を閉じた。まだ、『彼』の声は、言葉にはならないけれど、聞こえていた。
  だって、あの人を助けられるなら、助けたい。

『  はこんな土臭いところはいやだ…かえりたい』
『まあそう言うな、案外楽しいものかもしれんぞ』
『もし駄目だったら? もし  がまたかえりたくなったら?』
『責任持って送り届けてやろう、でも…わたしはお前と遊びたいな』
柄にも無くそんな言葉でほだされてしまい、以降ずっと付き添ってきたひとだ。
しあわせに、なるべきひとなのだ。
「  は……  は、あのひとを助けたい」
「構わんかね、それで」
囁き声は甘く優しい。
「例えそれが、悪魔との契約であったとしても」
「  は、助けたい。『ふゆ を しあわせにしたい』。」
その声は、誰のものか。
「良いだろう、君が望むなら、君はそれを手に入れる…」

足元が崩れるような感覚に襲われて、思わず目を開けたけれど、何も見えない。
暗闇が支配した世界。だけど、ちゃんと、感じる。見える。

空が赤い。



目元はなにかで覆われているようで、触るとごわごわした。
見えないけれど、ちゃんと見える。白くて細い指、風になびく黒い前髪。衣装は自分の趣味で黒くしてしまったようだけれど。

「『まほろは、探しに行く。そして、助ける』」
この声。仮初の身体でも、成さねばならないことがある。
どこか感覚の遠い身体を操って、『幻』は颯爽と街を歩き出した。






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