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Heavenly

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nightmareofmio

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Deadly




「おわぁ」
青は思わず息を呑んだ。大きな魚が目の前を逃げるように泳いでいったのだ。
きらきらと輝く鱗が美しくてそっと手を伸ばすと、ぬるんとした手触りが確かにあった。
悲鳴が聞こえたような気もしないでもない。
青は捕まれて暴れる大きな魚をやさしく、けれど確りと押さえつけて、じっとその鱗を見つめる。
魚は口を開いた。細かい牙が並んでいる唇を撫でると、がたがたと震えるのだ。
そこで青は気付いてしまった。これは嘘だと。
途端に醒めてしまって、魚に見えていた人間をぐしゃりと潰す。血の華が咲いた。
それはあちこちに飛び散って、美しく幻想的な世界を作り上げて行く。
「ふふ」
彼岸花がたくさん風に揺れる。真っ赤に儚い花は、全部青が咲かせたものだ。
青はその景色の中に腰を下ろして、暫くその花の揺れるのを見ていた。
この世界のなんと美しく、そして、穢れていることか。
花は清純そうにすました顔で咲いているけれど、その根っこは死体を啜っている。
そうしなければ花は生きていけなかった。この死んだ大地から栄養を得るにはそうするしかなかった。
大地を殺したのは知恵のついた人間だ。それが蘇るのにかかる歳月は半端なものではない。
それなのに花が美しく咲けないことを、人間は罵って、青をひどく虐めたのだ。
たくさんの彼岸花が揺れる。彼岸花にあわせてたくさんの凶器が揺れる。
世界が堕落する。暗闇へと呑まれて行く。彼岸花はみんな萎れて枯れてしまった。
「………」
「……みんな、どこへ行っちゃったの?」

『フィフス、どうしたんだい』
不意に懐かしい声が、耳元で響く。背後に、無機質なホログラフが立っている。
「…ファーストたちはどこにいるの?」
『ファーストたちは処分されたから、もう帰ってこないんだよ』
ホログラフは青をひょいと飛び越えて、目の前へ現れた。
透明な細身の身体を砂嵐に揺らせて、青ににっこりと笑いかけた。
「やだよ…そんなのやだ」
『それが現実なんだもの、フィフス。ファーストからフォースは、フィフスの代わりに処分された』
「ぼくのかわり…?」
『そう。初めから、誰か一人しか生き残らない計算だった。君が生き残った。それだけさ』
「ファースト…セカンドも、サードも、フォースも…みんな?」
目の前のホログラムはしだいに現実味を帯びて、形をくっきりとさせてくる。
透明な身体は色味を帯び、一個のモノになる。
「…ゼータ、ゼータもいなくなっちゃうの?」
『僕は居なくならないよ。僕は記録の媒体でしかない。同じポケモンでも、フィフスとは違う』
淡い空色の髪をかきあげ、ゼータは青の隣にしゃがみこむ。
青の頭を撫でて、慈しむように抱き締めた。
『泣かないで、フィフス。僕はずっと君の傍に居る』
「ゼータ、」
『忘れないでフィフス、僕は――』
ノイズが混じるようにゼータの声は掻き消え、陽光を浴びた怪物がそうなるように、ゼータの姿も消えていく。
「ゼータ!」
きみのそばに、いるよ。

閉ざされていた暗い世界が消え、もとの赤い世界が帰ってくる。
辺りにはたくさんの人間の死体が散らばって、まるで花畑のようだ。
青は死体には目もくれず、ただ赤い空を見つめていた。
「どこにいるの、ゼータ」
やがて通りがかった哀れな魚が屠られるまで、青はずっとそこで立ち尽くしていた。






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