DOLLY
かわいい灰被りのお姫様。
君は毒リンゴなんか齧らなくても、脚をもぎ取って捨てなくても。
炉端で泣いてさえいれば、いずれ私が迎えに行こう。
君は毒リンゴなんか齧らなくても、脚をもぎ取って捨てなくても。
炉端で泣いてさえいれば、いずれ私が迎えに行こう。
かわいい灰被りのお姫様。
君には私から素敵な、魔法の道具をプレゼントしてあげよう。
王子様を奪いにお行き、赦されていない世界まで。
君には私から素敵な、魔法の道具をプレゼントしてあげよう。
王子様を奪いにお行き、赦されていない世界まで。
かわいい灰被りのお姫様。
蜥蜴の御者が待っているよ、さあ早くお乗りなさい。
そして掌にお納め、君の王子様の心臓を。
蜥蜴の御者が待っているよ、さあ早くお乗りなさい。
そして掌にお納め、君の王子様の心臓を。
「マネキンといっしょだな」
死体は腐りもしなかった。望まなかったらそうなった。
美しい石膏の白い肌も、澄んだ空色の瞳も、ほんのり薄紅梅の唇も。
腐食されて崩れ落ちるにはあまりにも勿体無い造形美。
腐りもしない。生きていないだけ。ただそれだけのたんぱく質のマネキンだ。
ただそのままありのままに、時を止められただけの人間だった。
死体は腐りもしなかった。望まなかったらそうなった。
美しい石膏の白い肌も、澄んだ空色の瞳も、ほんのり薄紅梅の唇も。
腐食されて崩れ落ちるにはあまりにも勿体無い造形美。
腐りもしない。生きていないだけ。ただそれだけのたんぱく質のマネキンだ。
ただそのままありのままに、時を止められただけの人間だった。
この夢は思うが侭にあってくれる。その表層だけならば。
たとえばほんとうに望めば彼はもしかしたら生き返ってくるかもしれない。
それくらいこの夢は自由で、不自由に在った。
わかっている。夢は所詮現実にはなれない。
しかし現実も所詮夢にはなれない。その程度のものでしかないのだから。
たとえばほんとうに望めば彼はもしかしたら生き返ってくるかもしれない。
それくらいこの夢は自由で、不自由に在った。
わかっている。夢は所詮現実にはなれない。
しかし現実も所詮夢にはなれない。その程度のものでしかないのだから。
一人と、人形。ひとつとはんぶん。どこまでも二人になれない二人。
似つかわしすぎるエンディング。いっそ彼を己に鎔かしてしまおうか?
二になれなくとも一にはなれる。けれどそんな答えは好きじゃない。
呼べば目を覚ましそうなほどの現実感を持ってそこに在る、この微妙な距離が快いのだ。
そっと抱き上げれば空気ほどの重みもない。
似つかわしすぎるエンディング。いっそ彼を己に鎔かしてしまおうか?
二になれなくとも一にはなれる。けれどそんな答えは好きじゃない。
呼べば目を覚ましそうなほどの現実感を持ってそこに在る、この微妙な距離が快いのだ。
そっと抱き上げれば空気ほどの重みもない。
彼に会えた。彼を捕まえた。望みはすべて達成された。
しかしこの夢は醒めそうもない。どうやら未だ何か、残っているらしい。
それは。彼から顔を上げて、見つめた路地の先に立っていた。
しかしこの夢は醒めそうもない。どうやら未だ何か、残っているらしい。
それは。彼から顔を上げて、見つめた路地の先に立っていた。
「…あ」
「よう、遅かったじゃないか」
ひどくぎこちない動きで、その獣は近寄ってきた。
触れ合うまでにかかった時間が永遠にも感じられるほどの長さを持つ。
「ふゆさま、ふゆ、さま…!」
「様はいらない。いつもそうだったろう?」
おいで。迎え入れてあげよう。
もたれかかるようにして胸に圧し掛かってきたその重みは、ゲンとは比べ物にならなかった。
「やっと、やっとみつけた…やっと捕まえた…」
「おかえり、莉」
おや。わたしは何時の間にこの名を覚えたのかな。
莉の頭を撫でた。ちくちくした手触りはまさしく莉そのもの。
そうだ。彼の夢に付き合おう。彼は今までそうしてきたじゃないか。
「莉、わたしはすることがなくなった。お前のしたいこと、見たいもの、全部付き合ってやろう」
「…、いいの、ですか」
「ああ。今度は"わたしの番"だから」
「よう、遅かったじゃないか」
ひどくぎこちない動きで、その獣は近寄ってきた。
触れ合うまでにかかった時間が永遠にも感じられるほどの長さを持つ。
「ふゆさま、ふゆ、さま…!」
「様はいらない。いつもそうだったろう?」
おいで。迎え入れてあげよう。
もたれかかるようにして胸に圧し掛かってきたその重みは、ゲンとは比べ物にならなかった。
「やっと、やっとみつけた…やっと捕まえた…」
「おかえり、莉」
おや。わたしは何時の間にこの名を覚えたのかな。
莉の頭を撫でた。ちくちくした手触りはまさしく莉そのもの。
そうだ。彼の夢に付き合おう。彼は今までそうしてきたじゃないか。
「莉、わたしはすることがなくなった。お前のしたいこと、見たいもの、全部付き合ってやろう」
「…、いいの、ですか」
「ああ。今度は"わたしの番"だから」
1+1/2を1にする方法。
1+1/2-1/2では無粋すぎるから。
1×1/2+1/2=1。
それがわたしの答え。
1+1/2-1/2では無粋すぎるから。
1×1/2+1/2=1。
それがわたしの答え。
「わたしがお前のお人形になってあげる。」
シンデレラ。彼女は全てを与えられた運のいい女。
わたしは違う。彼女とは違う。
なぜならわたしのところへやってきたのは、善い魔女などではなかったのだから。
わたしは違う。彼女とは違う。
なぜならわたしのところへやってきたのは、善い魔女などではなかったのだから。