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被弾マスカレイド

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被弾マスカレイド


ざざっ、ざざっ。
ざざっ、ざざっ。
雑音が聞こえていた。何の音だろう。聞いたことのあるノイズ。
私は膝をついて立てないまま、ノイズに耳を浸すだけ。
『――――サマ、』
ノイズに混じって聞こえた機械音声に目を瞠る。
ああ。唐突にわかった。
無線の音だ。

『外デヤミラミガ壊サレテイマス。ソノ傍ニ、』

そこで音が終わった。
耳を喰いそうな無音の中に冥は置き去られた。
ぶちまけられた臓腑と突きたった細身の剣と
そこに膝を沈める青年と、私だけ。

目を、合わせてはいけない。

本能がそう言った。
だけど凍りついた首は動かない。
耳を喰いそうな無音の中。無音のまま動く青年の首。
金の目がゆっくりと

こちらを。




そこではっと目が覚めた。
目が覚めたら、見慣れた廃墟の天井が目に入った。
「…あ…。」
止まっていた息が動き出す。震える息と共に声が漏れた。
とく、とく、とどこか遠くから心音が寄ってきたように聞こえた。
身体に血が通う確かな感覚。リアルな感覚。ただの目覚めとは明らかに、違っていた。
「くろ…おきた…!?」
声を聞きつけた紅が、慌てて駆け寄ってきた。
「こ、う…無事でしたか。」
「うん、無事。くろ、無事?」
「ええ、無事ですよ。」
話の聞こえた風と鉄もやってきた。よかった、みんな無事だ。
めいめい巻かれた包帯が痛々しくはあるけれど。
「(具合はどうだ。)」
「おかげさまで。大分よくなりましたよ。」
「無理するんじゃないの、まだ具合悪そうな顔色だぞ。大事を取って今日はちゃんと寝てなさい。」
「…敵いませんね全く。はぁい、そうします。」
いつも通りの温かなやりとり。くすくすと笑みが零れた。そうしたら大分気持ちが和んだ。
軋む身体も蝕む冷や汗も、忘れてしまえる程に。
「…あ。」
冥はついいつもの調子で聞いた。
「彼女は何処へ行きました?」
静葉は何処へ行ったのか。本当にそれだけの意味だったのだけど。

ぴたり。
風と紅が強張り、気まずそうにお互い目を合わせる。
鉄だけが微動だにしない、穏やかで優しい微笑みのままで
耳元に優しく囁いた。
さながら子守唄を謡う母親のように。

「だいじょうぶ。あれはぜんぶ、わるいゆめ。」




…そして、
冥達の日常は"続いた"。
"再会"でも"復活"でもない。
だって、この日常を途切れさせる出来事なんて"起こっていない"。
紅は部屋に座り込む。時々ごみ出しを手伝いに行く。
風は真剣に絵を描きこむ。最近は意志疎通にも慣れてきた。
鉄は明るく笑う。
そして、
通らない飛行機を、心底幸せそうに待っていた。

焔も静葉も樹もルイもソラもいない日々。
い無い日々。
当たり前に続いていく日々。

なにも無かったんだ。
そう、みんなで塗り固めた。

異論など、あろうか。
冥にしてみれば願ってもない話で。
ルビー色の目に映る彼らから徐々に包帯が取れていく。
傷は必ず治り、何事もなかったような綺麗な皮膚が作られる。
冥はただ、
傷のずっと奥底に押し込んだ恐怖に怯えていた。



目を合わせてはいけない金色。
鈍くも光る薬莢の色。


彼をただ、恐れた。



マスカレイド

(撃ち砕くのだろう、いつかの私のように。)



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