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Snow Sorrow

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Snow Sorrow





恐竜はどうして滅んだのだろうか。
澱んだ空を見上げて考えた。月のない曇り空の夜。
絶滅の原因は諸説ある。けれどどれひとつとして、当時の世界に起こったことを説明できていなかった。
あの美しいいきものたちは、どうして消えてしまったのだろう。

そうして、わたしたちは、いつまでこのまま生きていられるのだろうか。



「なあ、頼む。もう、あんた以外に頼めない」
「そんなこと、できるわけないだろう」
二人を置いて去るつもりで、わたしは脚を踏み出した。
けれど思いがけない力でその脚を止められる。包帯を巻いた手がしっかり裾を掴んで。
「おねがいだ、俺たち、もう十分なんだ」
「……飛び降りでもなんでもすればいいだろうが」
翼と飴…つまりマキとグンジョウ。ゲンのパーティの二人。
こいつら、最後に一人で死ぬのが怖かったんだろう。
わたしだって一人でなんか死にたくない。でも、誰にも醜いところは見られたくない。
いつでも傍にいてほしいと思うし、最期の最期くらいには一言甘言を囁いてやってもいいさ。
だが絶対に醜く管だらけになって死にたくはない。呆けたくもない。
それで最も合理的なのは恐らく心中することなのだ。
今まさに、目の前の二人はそれを実践しようとしている。止める理由なんかどこにもない。
寧ろ「よかったな、じゃ、わたしはこれで」とお邪魔虫は去ろうとしたんだ。

「死ねなかったんだ。何度も何度も…空を堕ちて行くのって、すげぇ気持ち悪いんだよな。
 それでもどうしても死ねなかった! ただ意識が遠くなって…まだ生きてたのか、ってそれだけさ」
「そんなの、わたしがやっても一緒だろうが。もう何回かしてるうちに死ねるだろ、そんじゃな」
「見捨てる気かよ!」
いや、自殺志願者二人にそんなこと言われたくねーよ。
グンジョウはひどく疲れた顔をして、猛烈にわたしを非難するマキを見ていた。
「なあ、グンジョウ? できるだろ?」
「……そう、かもね。あんたを巻き込むことじゃないのはわかってるよ。でも俺たちもう疲れちゃったんだ」
ふぅ、と遠くへため息を吐く。過去の面影へ鎮魂歌。
わたしは黙ってしまって、何も言えなくなった。
殺してくれよと約束して、彼のもとから走り去った時のわたしと。
彼を切り裂いたわたしも、今のわたしも、すべて同じわたし。
痛いくらいに彼らの気持ちがわかってしまうのだ。それでも手を下すのは躊躇った。
それは正常なことなのか? 一度狂ってしまった以上わたしにはわからない。
「ほんのすこし、背中を押してくれさえすればいいんだ…それだけなんだ」
青い目は切なくわたしを見た。まるで、あの男みたい。ぞくりとする。
ああ、殺してやりたいな、と思った。グンジョウをじゃない。
あの男にそんなふうに懇願されたら…わたしはわたしなんて簡単に放棄する。
「頼む。一生の…ああ、ってかもう最期だわ。もう俺たち、ここを出たいんだ」
お願いします、俺たちを…」
二人は揃って頭を下げた。わたしは頭を掻いて目を瞑った。
正しいことも正しくないことも、知るものか。どうせそんなのエゴイズムに決まってる。

わたしは、ゆっくり、手を伸ばした。


下りていったとき、そこには綺麗な水溜りが広がっていたけれど、二人の姿はもうなかった。
巧くいったにせよいかなかったにせよ、きっともうこの世界で二人に会うことはないのだろう。
そっと水溜りに脚を踏み入れた。ぴちゃり。水音は水音でしかない。
しゃがみこむ。手を触れる。まだ生温い、水風船の内側で脈打っていた血液という、もの。
すこし、なめてみる。
それだけでどきどきした。
ああ、これがあの男のものだったら、わたしはきっと今ごろ射精くらいのことはしているだろう。
でも、違うのだから仕方ない。水溜りを撫で回しながら、そこに彼を幻視する。

「ああもう…行かなくちゃな。」

君は今頃どうしているのだろうか?
わたしはそこに自分の影を見たような気がして、血の跡を引きずりながら君を探した。



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