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WHITE OUT

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nightmareofmio

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WHITE OUT




言葉がでなかったのじゃあ、なかった。
言葉を選べなかった。
たくさんすぎて、どれがぴったりなのかを選ぶ前に、焼き切れてしまいそうなほどに胸が痛くて、
もう、何も考えている暇なんか、
僕は、結局。
あなたを守ることができなかっただけじゃない。
あなたに、守られてばっかりで。
報いることすらできなかった、んだ。
視界のはしに映った女の子が何か言った気がする。
違うんだ誰がだなんて明白じゃないかそんなこと誰も聞いていない!

僕。
僕が殺した。
あなたは、僕が殺したんだ。





「ゲン。」
あるとき冷たい死体を子供のように抱きかかえて、彼は寂しそうに笑った。
そっと死体の黒髪を撫でて、陶器のような肌に触れて。
「…ごめんね。わたしは、これしか思いつかなかったんだ。」
どうかしてると思って、笑いたければ笑えばいい。
そうするだけの権利が、死人になった男にはあったから。
「こうでもしなかったら、お前はきっと……そんなのは、耐えられない。
 片輪でいい。わたしは…ずっとお前といたい」
そうして、ごめんねと囁きながら、彼は死体を抱いたのだった。
「かみさまになんて渡さない。お前だけは…守ってみせる」




またあるときは、彼は時々後ろを振り返りながら走っていった。
「ゲン、はやくおいで」
嬉しそうに、あるいは微かに寂しそうな表情を滲ませて笑いながら。
後ろから追って行くのは、死体だった男。
まるでその光景は、雛鳥を守るためによたよたと不恰好に踊る母鳥のよう。
でも、母鳥が守りたかったのは雛じゃない。
自分を追ってくる狼だった。
何かから目を逸らさせるように、不恰好に誘う。


「過保護だと思うなら、そう思えばいいよ」
「わたしは、自分の夢を守りたかったただのエゴイストさ」
「私の夢は」
「お前が、しあわせでいてくれることなんだ」

笑う、あなたが見えた。
それはいつもの意地悪い笑顔でなくて、ほんとうに心からの、



「……僕は」
一筋だけ、涙が零れた。
それ以上なんて泣けやしない。悪いのは誰だったか、気付いてしまったから。
「…あなたを傷つけたのは、」
あなたを殺したのは他の誰でもない。刀の持ち主なんてどうでもいい。
崩れ落ちた地面で、何かを掴もうと指先に力を込める。
けれど応えはなかった。がり、と嫌な音がしただけ。
「僕はッ…!」
地面に拳を力任せに叩きつけても、何も帰らない。割れた爪から雫が飛んだだけ。
涙にならない嗚咽が、ひたすらに虚空へ伸びて行く。何をしてももう無駄なんだ。
ふわり、ふわりと光が溢れ出す。冬の夢が終わった。ひとつの夢が、また消滅していく。
その光に手を伸ばした。救いを、求めたかったのかもしれない。
けれど、蛍のように鮮やかな光は、
指をすり抜けるようにして、遠い空へ帰って行く。

「…そうだね」

幻は、笑った。
隣に居た静葉が思わず、気でも違ったかと感じるほど。
泣き笑いの中途半端な表情を浮かべて、幻は美しい光の群を見送った。

「ちがうものね…あなたが守りたかったのは、僕じゃないものね」
目を閉じる。ふ、とため息を吐いた。
「あなたが帰る場所は、そこ、だもの。」
赤い空を見上げる。幻はすぐに、首を横に振る。ここじゃ、ないのだもの。

そこに、冬が焦がれていた空はなかった。




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