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だぶるばふぇすてぃば!

最終更新:

mato4869

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だぶるばふぇすてぃば!



普通の人間なら割と想定できた事態。
だが栞には全くの想定外だった。

なんて考える間にも足場は崩れる。必死に駆け抜ける廃墟の塀は次々と炭化する。
やがて炭化に追いつかれた栞はバランスを崩した。目の前には追い詰めた鼠に笑う女の笑顔。
崩れたバランスも整えて着地しようとする、も。
素早く背後を取った男の鉄パイプが、強か打った。
「…っが!」
小さな体躯は易々打ち落とされた。無情に振り降ろされた二撃目を紙一重でかわす。
栞は敵二人を視界に捉えて距離を取った。これ以上挟み込まれてたまるものか。舌打ちした栞は二人を睨んだ。
(男女で組む輩なんて聞いてない!)
金髪流れるキュウコンの女と黒っぽく地味なバクフーンの男。頭でも抱えたい気分だった。
率先して襲ってくるのは女の方だ。それもかなりの攻撃力で。理由?不明。
身は守りたいが女を殺すのは正直ためらう。だから撤退したいのだが…その都度あの男が回り込んできて邪魔なのだ。
女だけなら逃げるのに、男だけなら殺すのに、あぁもう。男女ペアなんて死ねばいいのに!
そんなことを考えていたらまたローブの裾が焦げた。
「まだ生きてんの?いい加減目障りなんだけどぉ?」
甲高い声の女だ。むしろ耳障りだと言いたい。
女は威圧的な音で媚びるように言った。
「あーぁ、ゴキブリ追っかけるのも疲れちゃった。牢、それ殺っちゃってぇ。」
「…了解、澪。」
澪・牢と言うらしいその男女は互いにうなずく。
ぶち。
確実に栞の血管が切れた。鳥肌が立った。
なにその、なにその媚びた声。高い。五月蠅い。甘ったるい。
男の欲情対象である女という立ち位置を正確に自覚した上で最大限に最高出力で魅力という名の腐臭を計算づくで憚ることなく撒き散らすその精神性格容姿口調表情声色その他諸々とにもかくにも栞の神経を余すことなく逆撫でて。
「…!?」
澪は振り向き、十字架を振りかざす栞と目が合った。
その目の中では人生に一度あろうかという自分ルール改訂がすでに済んでいた。
こ い つ は 殺 っ て い い !
しかし十字架は当たらなかった。空ぶった。
それは澪が避けた訳でも栞が外した訳でもなく。
栞が澪から随分離れたところで十字架を振ったせいだった。

唐突に現われた男にかっさらわれて。

「ちょおーっと待ったーあ!」
勝手にかっさらった男は勝手に喋り出した。
「これ以上お姫様をいじめると言うなら!正義のスーパーヒーロー、薫くんが相手ですよ!」
完璧な角度と台詞と決め顔がきまった。
…澪も栞も、冷静が取り柄な牢ですら呆然とするしかなかった。あの一瞬で栞をかっさらえたんだから油断ならない相手ではあるはずなのだが。なのだが。
そんな空気を読もうとすらせず薫は栞をそっと降ろした。
「だいじょーぶですか?お姫様。僕が来たからにはもう大丈夫ですよ!」
ただでさえ切れていた栞の血管はもういっちょ切れた。
「…ふっざけるなこのド阿呆ッ!邪魔だ!邪魔したんだ!お前さえ邪魔しなければ今頃!」
「あうあうそんな熱烈感謝しなくたってだいじょーぶ。僕が助けてないと今頃お姫様危なかったですよね!」
「ちっがあああああう!!!聞け!!人の話を聞け!!」
怒鳴り声に耳を塞いでいた薫だったが、ふいにちょっとだけ真面目な顔をした。
「ふんふん、つまりお姫様の願い事は…あのブロンドないすばでぃをやっつけたい?」
「え?」
「正義のヒーローかおるんたるもの…お姫様の願いは僕の願い、ですよねっ!」
言うと同時に薫は地を蹴った。
思いっきり殴りかかった先には牢。慌てて牢もパイプで受ける。さしもの澪も泡を食った。
「牢!?ちょ、ちょっとアンタ何してんのよ!?」
「さぁお姫様、今ですよっ!」
薫は底抜けに明るく笑った。

「これで正々堂々2vs2。僕は根暗そうな眼鏡、お姫様はブロンドないすばでぃ担当ね!」

「…!?」
澪も牢も目を瞠った。牢が狙われるなんて二人にとって初めての事態。
慌てて澪が薫に向けて『かえんほうしゃ』を放った。しかし薫は軽々避けて、逆に牢をかすめてしまう。牢は本来戦闘向きではないのだ。
驚いて澪が固まる。火傷のダメージに牢がよろける。そこに薫の『ドレインパンチ』がくれば避けられるはずもなく。完璧だった二人の連携はがたがたになった。
「…成程、馬鹿には莫迦が効くということね。」
はっと澪が後ろを見やれば、すでに『でんじふゆう』を終えた栞が。
「…良い勉強になったわッ!」
渾身の『かみなりのキバ』をぎりぎり澪は受け止めた。
「嫌ぁああッ!!触るなこのゴキブリ!!」
栞の力をそのまま返して『しっぺがえし』。そして栞に触れた自分の身体に『ひのこ』を撒いた。消毒だ。
「信じらんないあり得ないあり得ないあり得ない!汚い!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
「……。」
『ひのこ』は栞の導火線にも火をつけたようだ。
「ご愁傷様、その頭蓋には生ゴミしか詰まってないようね。先に喧嘩を売ったのがどちらかも覚えてられないなんて。」
「はっ、売られた喧嘩に食ってかかるから低俗だってのよこの雌犬!ブスのくせに太陽の下歩いていいと思ってんの?わざわざ片づけてあげてるんだから感謝しなさいよ!」
「それはどうも大きなお世話をアリガトウ。だったらとっとと片づければいいんじゃないかしら。ほら。」
「ああああああ五月蠅い五月蠅い言われなくてもブチ殺す!!」
ばちばち弾ける火と電気を横目に見ながら、牢は必死に防戦していた。
隙を見つけては澪の元へ行こうとするのだが、その度に薫に回り込まれて阻まれる。
「だーめですよう、キミの担当はこのかおるんですよ。ねっ!」
ねっ、と一緒に『ギガインパクト』が鳩尾に決まった。身体も吹っ飛ぶ喀血も飛ぶ。そろそろ意識が飛んでもおかしくない。
「んー…どうしよ、もしかしてこの人弱いんですかね。」
むせながら突っ伏す牢。その腕を掴んで抑え、心底困ったように薫は言った。
「どうしよっかなぁ。弱い人いじめちゃあヒーローじゃないですー…でもお姫様と約束しちゃったですしぃ。」
「…なら、」
ごきっ。骨の折れる音。
「退け。」
自ら腕をへし折って、牢は薫の頭へ鉄パイプを叩きこむ。
がきんッ
鉄パイプは十字架とクロスした。二人の間には栞が。
「その口はお飾りなのかしらッ…こいつは自分担当とかほざかなかった?」
「おおっ、ナイスですお姫様!」
「お姫様と呼ぶな!私は栞だ!」
「しおりんですね!僕のことはかおるんと呼んでv」
「断る!」
牢はしばらく騒ぐ二人を見ていたが、ふいに視線だけ後ろに向けた。目だけでこくりとうなずくと素早く横にずれる。
牢が避けたそこには、びきびきと青筋たてた澪が炎を纏っていた。
「…汚いし、五月蠅いし、苛つくし、しぶといし、もう…。」
高々と掲げた両の手に燃え上がる、山をも焼きそうな質量の炎。
「最ッッッ悪!!!」
最大火力の『だいもんじ』を、二人へとぶちまけた。





「だから論理的に考えて物を言いなさいどう考えても貴方が邪魔したから引きさがる羽目になったのよ!」
「うんうん、僕だけなら勝てたけどしおりん倒させちゃいけないですからね。それでこそ正義のヒーロー!」
「さも私がお荷物だったように言うな!!」
「あ、神父さん包帯ちょーだいv」

「…よかった、栞さんにもお友達ができて…!」
「断じて違う!!」



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