あいしんく あんしん
「それじゃあ、もし何かあったら呼んでくださいね神父さん!」
「はい、かおるんさんも気を付けて下さいね」
「任せるですよ!」
「はい、かおるんさんも気を付けて下さいね」
「任せるですよ!」
翠はひらひらと手を振り、薫が駆けて行くのを見送った。しばらく彼の後姿を見届け、再び中に戻っていく。中で長椅子に座っている栞は明らかに不機嫌そうな顔をしてそっぽを向いていた。いつも被っているフードを下ろしているからか、彼女の顔はいつも以上によく見え、そしていつも以上に機嫌悪そうだ。だが翠は、楽しそうに微笑みながら彼女の隣に座る。
「良かったですね、お友達出来て」
「冗談じゃない、誰が」
「えー楽しそうだったじゃないですかー」
「冗談じゃない、誰が」
「えー楽しそうだったじゃないですかー」
くすくすと翠は笑い続ける。栞は彼の横顔をちらりと見た。いつまでも楽しげに笑うのがいい加減うっとうしくなって、片頬を力一杯つねってやる。
「うぃ……いたいんれしゅけろ」
「だから?」
「だまりましゅ」
「よろしい」
「だから?」
「だまりましゅ」
「よろしい」
離してやると、彼の頬は若干赤くなっていた。ぶぅと不貞腐れる翠は、しかしまた笑顔を作って栞の方を向く。
「だって楽しそうでしたよ、栞さん」
「…今度は両方が良いの?」
「…今度は両方が良いの?」
凄みをきかせて言ったつもりだったが、翠は全く聞いていないようだった。うふふと気持ち悪い笑顔を浮かべたまま。
「かおるんさんもいい人そうでしたし、なんせヒーローですよヒーロー!」
「……はた迷惑なヒーローだったわ」
「…でも、良かった」
「……はた迷惑なヒーローだったわ」
「…でも、良かった」
突然落ちつきを取り戻した翠の声に、は?と栞は更に眉をひそめる。そんな栞の金色の髪を、翠は手を伸ばし、そして優しく撫でた。栞が硬直し口を開いても言葉が出せないでいると、翠は酷く優しい声を紡ぐ。
「…私はあまり頻繁にここを出れませんから。でも、かおるんさんがいらっしゃるなら、栞さんが外出するときも安心ですね」
「…な、」
「炎龍やカルロの事も気になりますけど、同じくらい栞さんも大切な方ですから。…心配、してるんですよ?これでも」
「…な、」
「炎龍やカルロの事も気になりますけど、同じくらい栞さんも大切な方ですから。…心配、してるんですよ?これでも」
翠は、弱い。その癖、優しい。
どうせなら強ければ、せめて非情であれば良かったのにと、栞は幾度か思ったこともある。
そんな彼女は黙って、彼の笑顔を見つめていた。いつもならためらいなく払う彼の暖かい掌を、拒まずに。
そしてやがて深くため息をつくと、栞は彼との間を縮めた。彼の肩に自らの頭部を預け、瞳を閉じる。
どうせなら強ければ、せめて非情であれば良かったのにと、栞は幾度か思ったこともある。
そんな彼女は黙って、彼の笑顔を見つめていた。いつもならためらいなく払う彼の暖かい掌を、拒まずに。
そしてやがて深くため息をつくと、栞は彼との間を縮めた。彼の肩に自らの頭部を預け、瞳を閉じる。
「…私はちゃんと帰ってくる。仲間のことだけ心配しなさい、馬鹿神父」
翠は少しだけ大きく目を開き、それからまた嬉しそうに細めた。彼女の髪に触れていた手で肩をぽんぽんと叩いてやる。
よほど疲れていたのか、彼女はすぐに小さな寝息をたて始めた。そんな栞の体をぎゅっと引寄せて、翠もまた瞳を閉じる。
よほど疲れていたのか、彼女はすぐに小さな寝息をたて始めた。そんな栞の体をぎゅっと引寄せて、翠もまた瞳を閉じる。
片の小さき身体、然れど背負うは大きな意志。
片の大きな身体、然れど拾うは小さな愛。
翠はぽつりと、言葉を落とした。
片の大きな身体、然れど拾うは小さな愛。
翠はぽつりと、言葉を落とした。
「お休みなさい、栞さん」
笑みを浮かべる三日月と共に。
どうか一時、安らかに。
どうか一時、安らかに。