キリングドールの儀式
「冥?」
呼ばれたと気付くまで、3秒かかった。
呼ばれたと気付くまで、3秒かかった。
「どーした冥、ぼーっとしちゃって。冷めちゃうぞ?」
ふっと気がついた冥は、目の前で湯気をたてる目玉焼きと、心配そうに覗きこむ鉄の顔を交互に眺めた。私今何をしてただろう、うまく思い出せない。
それでも鉄と目玉焼きという視覚映像が、朝ご飯中だと冥に納得させた。
「具合でも悪いか?」
鉄の声がますます心配そうになる。慌てて冥はかぶりを振った。
「大丈夫ですよ。ちょっとねむたくて。」
「まぁっ冥ってば夜更かし!?夜遊び!?おとーさん許しませんよ!」
「違う違う違います、そんなんじゃありません。」
ぶんぶん首振る冥を鉄は笑って撫でた。冗談だったらしい。
「うそうそ、冥はかわいいなー。このおねぼうさんめ。」
なでなでわしわし。撫でる手は温かい。
耳をくすぐる鉄の声もいつもどおり温かくて、本当に眠たくなってしまいそうだ。
「冥、おねむ?」
隣に座っている紅がこちらを覗きこんだ。ちまりちまりと食べるので、冥と同じくらいしか食べ進んでいない。
丸い眼鏡と無邪気な瞳が、まっすぐに冥を映す。
「ああ、いえ、あの…ねむいようなねむくないような。」
「…だいじょうぶ?」
「ええ、大丈夫です。」
優しい子。そう言って冥は紅の額にキスを落とした。撫でられないから、その代わり。
紅は慣れているけれど、くすぐったそうに微笑んだ。
「(…ほら、食べるなら食べろ。本当に冷めるぞ。)」
その後ろから、とっくに食べ終わった風がぽこっと叩く。
音のない唇だけの声。冥は叩かれた音で振り向いて、もう一度同じ言葉を口ぱくしてもらった。
「そうですね…でも鉄の料理って冷めても美味しそう。」
「(馬鹿、料理ってのはあったかいとより美味しいんだ。頂いたものはより美味いうちに食え。)」
確かに。冥はこっそり肩をすくめた。無表情がちで言い方もきつめなのに、優しい事しか言わない人だ。
もう一度、頂きますと呟く。味も温度もわからない目玉焼きを、サイコキネシスで浮かせて食べた。
ふっと気がついた冥は、目の前で湯気をたてる目玉焼きと、心配そうに覗きこむ鉄の顔を交互に眺めた。私今何をしてただろう、うまく思い出せない。
それでも鉄と目玉焼きという視覚映像が、朝ご飯中だと冥に納得させた。
「具合でも悪いか?」
鉄の声がますます心配そうになる。慌てて冥はかぶりを振った。
「大丈夫ですよ。ちょっとねむたくて。」
「まぁっ冥ってば夜更かし!?夜遊び!?おとーさん許しませんよ!」
「違う違う違います、そんなんじゃありません。」
ぶんぶん首振る冥を鉄は笑って撫でた。冗談だったらしい。
「うそうそ、冥はかわいいなー。このおねぼうさんめ。」
なでなでわしわし。撫でる手は温かい。
耳をくすぐる鉄の声もいつもどおり温かくて、本当に眠たくなってしまいそうだ。
「冥、おねむ?」
隣に座っている紅がこちらを覗きこんだ。ちまりちまりと食べるので、冥と同じくらいしか食べ進んでいない。
丸い眼鏡と無邪気な瞳が、まっすぐに冥を映す。
「ああ、いえ、あの…ねむいようなねむくないような。」
「…だいじょうぶ?」
「ええ、大丈夫です。」
優しい子。そう言って冥は紅の額にキスを落とした。撫でられないから、その代わり。
紅は慣れているけれど、くすぐったそうに微笑んだ。
「(…ほら、食べるなら食べろ。本当に冷めるぞ。)」
その後ろから、とっくに食べ終わった風がぽこっと叩く。
音のない唇だけの声。冥は叩かれた音で振り向いて、もう一度同じ言葉を口ぱくしてもらった。
「そうですね…でも鉄の料理って冷めても美味しそう。」
「(馬鹿、料理ってのはあったかいとより美味しいんだ。頂いたものはより美味いうちに食え。)」
確かに。冥はこっそり肩をすくめた。無表情がちで言い方もきつめなのに、優しい事しか言わない人だ。
もう一度、頂きますと呟く。味も温度もわからない目玉焼きを、サイコキネシスで浮かせて食べた。
五感の欠如、対人恐怖、声と記憶の喪失。
私達にはみんな、何かしらが欠けていた。
そして欠けてしまった理由である何かが影にあった。
それは『本当の自分』であり『過去の自分』であり、あるいは『罪』と呼べるものかもしれない。
それでも。鉄、冥、紅、風。
私達はその名前で呼ばれ、呼び合って、変哲なく暮らしていた。欠けたところをお互い補いながら。
鉄として、冥として、紅として、風として、暮らしていた。
仮の名前だなんて忘れてしまうくらい。
これが夢だなんて忘れてしまうくらい。
明日もまた次の日も、穏やかな日々が過ぎていく、廃墟の家。
私達にはみんな、何かしらが欠けていた。
そして欠けてしまった理由である何かが影にあった。
それは『本当の自分』であり『過去の自分』であり、あるいは『罪』と呼べるものかもしれない。
それでも。鉄、冥、紅、風。
私達はその名前で呼ばれ、呼び合って、変哲なく暮らしていた。欠けたところをお互い補いながら。
鉄として、冥として、紅として、風として、暮らしていた。
仮の名前だなんて忘れてしまうくらい。
これが夢だなんて忘れてしまうくらい。
明日もまた次の日も、穏やかな日々が過ぎていく、廃墟の家。
鉄は、窓を眺めることをやめた。料理も4人分だけ作っている。
代わりに時折、左胸をそっと押さえているのを見かけるようになった。
昼下がり、窓から差し込む日差しが美しい横顔に影をさす。
それはとても美しかった。長くは続かない、そうはっきり予感させる儚げな美しさだった。
「…くろ。」
眺めていた冥は紅に呼びかけられた。いつもなら鉄を心配するはずなのに。
この日はどうしてか冥が心配された。冥は頭の高さを紅に合わせる。
「冥。」
「どうしました?私なら大丈夫ですよ?」
「…うん。」
くしゃ。その音に冥は驚く。
冥の両耳に手が添えられた。紅のちいさな手。
「大丈夫。」
そう言う紅は、笑っていた。
「あのね、きっと、大丈夫。みんな、みんな。」
だいじょうぶだよ。
そう言う紅の瞳は、決して自信に満ちていた訳じゃない。
不安も心配もたくさん混ざって、泣いたっておかしくないような色合いで。
それでも紅は繰り返した。
だいじょうぶ。きっとだいじょうぶ。
冥に、繰り返した。
代わりに時折、左胸をそっと押さえているのを見かけるようになった。
昼下がり、窓から差し込む日差しが美しい横顔に影をさす。
それはとても美しかった。長くは続かない、そうはっきり予感させる儚げな美しさだった。
「…くろ。」
眺めていた冥は紅に呼びかけられた。いつもなら鉄を心配するはずなのに。
この日はどうしてか冥が心配された。冥は頭の高さを紅に合わせる。
「冥。」
「どうしました?私なら大丈夫ですよ?」
「…うん。」
くしゃ。その音に冥は驚く。
冥の両耳に手が添えられた。紅のちいさな手。
「大丈夫。」
そう言う紅は、笑っていた。
「あのね、きっと、大丈夫。みんな、みんな。」
だいじょうぶだよ。
そう言う紅の瞳は、決して自信に満ちていた訳じゃない。
不安も心配もたくさん混ざって、泣いたっておかしくないような色合いで。
それでも紅は繰り返した。
だいじょうぶ。きっとだいじょうぶ。
冥に、繰り返した。
「…紅…。」
ただ、名前を呼んだだけなのに、その唇が震える。
覚束ない歯が、その震えを噛み殺した。
そんな言葉をかけないで。縋ってしまいそう。涙をこぼして、全部吐き出して、逃げだして、しまいそう。
だけど、だけど。
冥はゆっくりと、立ちあがった。紅から離れるように。
「くろ…。」
離れた頭を、追うように紅が手を伸ばす。
冥は、もう紅と目を合わせることはなかった。
「ありがとうございます、紅。」
目元は前髪でごまかして。
口元は、精いっぱいの微笑みを。
ただ、名前を呼んだだけなのに、その唇が震える。
覚束ない歯が、その震えを噛み殺した。
そんな言葉をかけないで。縋ってしまいそう。涙をこぼして、全部吐き出して、逃げだして、しまいそう。
だけど、だけど。
冥はゆっくりと、立ちあがった。紅から離れるように。
「くろ…。」
離れた頭を、追うように紅が手を伸ばす。
冥は、もう紅と目を合わせることはなかった。
「ありがとうございます、紅。」
目元は前髪でごまかして。
口元は、精いっぱいの微笑みを。
夜。
鉄と紅と風が寝静まった頃。冥は家からてくてくと、ひたすら歩いていた。
夜といってもほんのわずかに日が陰ったような程度。けれどいつもの夜よりは暗い気がした。そういえば、今日は月が見えないな。
でも、それはむしろふさわしい。それは本来の私が持つ景色。
"私"は、星も月も光も知らないのだから。
鉄と紅と風が寝静まった頃。冥は家からてくてくと、ひたすら歩いていた。
夜といってもほんのわずかに日が陰ったような程度。けれどいつもの夜よりは暗い気がした。そういえば、今日は月が見えないな。
でも、それはむしろふさわしい。それは本来の私が持つ景色。
"私"は、星も月も光も知らないのだから。
「面白いことを呟くね。さよならの儀式かい?」
一歩、進むごとに濃くなる暗さ。
それが尋常じゃない濃さになった頃、染みだすように彼は現われた。
「儀式は良い。まやかしと笑う者もいるがそれは違う。儀式とは行う者の精神を変質させるステップだ。例えどんなに意味なく見える行為でも、行う者が成功だと思えば成功している。」
闇から染みだした青白い顔は、青白い髪をなびかせて笑った。
「その頃にはもう、儀式前とは全く違った人格が出来上がっているのだからね。」
一歩、進むごとに濃くなる暗さ。
それが尋常じゃない濃さになった頃、染みだすように彼は現われた。
「儀式は良い。まやかしと笑う者もいるがそれは違う。儀式とは行う者の精神を変質させるステップだ。例えどんなに意味なく見える行為でも、行う者が成功だと思えば成功している。」
闇から染みだした青白い顔は、青白い髪をなびかせて笑った。
「その頃にはもう、儀式前とは全く違った人格が出来上がっているのだからね。」
妄言じみたその言葉は、実は冥の思うところを全て射抜いている。
その的確さに寒気を覚えながら、冥は彼をじっと見据えた。
彼は何も言わず、哂う。冥から言いだすのを待っている。優しく真綿で首を絞める微笑みだ。
口を開こうとして一瞬、紅の声が蘇った。『大丈夫。』
今ならその言葉にまだ縋りつける。まだあの家に帰ることができる。一瞬だけ迷ったが、冥は力なくかぶりをふった。
"大丈夫"なんて、全て、まやかし。
冥は、<ダークライ>へとはっきり言った。
その的確さに寒気を覚えながら、冥は彼をじっと見据えた。
彼は何も言わず、哂う。冥から言いだすのを待っている。優しく真綿で首を絞める微笑みだ。
口を開こうとして一瞬、紅の声が蘇った。『大丈夫。』
今ならその言葉にまだ縋りつける。まだあの家に帰ることができる。一瞬だけ迷ったが、冥は力なくかぶりをふった。
"大丈夫"なんて、全て、まやかし。
冥は、<ダークライ>へとはっきり言った。
「あの家を守るための、"私"を、ください。」
そう、これでいい。
桃は遠くから冥達を眺めていた。
現実的に考えて、冥がいなかったら静葉は焔に容易く殺されていた。敵に送られる塩は、少なければ少ないほどいい。
送られるはずの塩が、こちらに回れば理想的。
桃の目論みはどうやらうまくいったようだ。可愛らしい色のルージュが歪に釣り上がる。
「虫が良すぎるのよね、そもそも。」
何もせず得られる平穏?バッカみたい。
幸せも生存も勝者にしか与えられない。生きたければ周りを蹴落とせ。幸せになりたければ邪魔者を殺せ。
それが私達の時代の常識だ。
「今更草食ぶっても遅いのよ、"人殺し<ヨノワール>"。」
ひとりだけ日だまりで暮らすなんて、許さない。
桃は遠くから冥達を眺めていた。
現実的に考えて、冥がいなかったら静葉は焔に容易く殺されていた。敵に送られる塩は、少なければ少ないほどいい。
送られるはずの塩が、こちらに回れば理想的。
桃の目論みはどうやらうまくいったようだ。可愛らしい色のルージュが歪に釣り上がる。
「虫が良すぎるのよね、そもそも。」
何もせず得られる平穏?バッカみたい。
幸せも生存も勝者にしか与えられない。生きたければ周りを蹴落とせ。幸せになりたければ邪魔者を殺せ。
それが私達の時代の常識だ。
「今更草食ぶっても遅いのよ、"人殺し<ヨノワール>"。」
ひとりだけ日だまりで暮らすなんて、許さない。
そう、これでいい。
樹は遠くで血溜まりを眺めていた。
なんだか久しぶりに気分が軽い。身体も軽くて頭がすっきりしている。ひとさしひとさし、生肉へ剣を突き刺すたびにはっきり感じられた。
気付いたからだった。必要なものは全部揃っていたことに。ひとめで罪人とわかる自分と、それを処刑する人。
"自分"はもう完成だ。ぐじゅ、ぐじゅ、湿った音が樹を祝う。
処刑する人も、もうすぐ。
「マイヨール…。」
どこかうっとりとその名を呼んだ。それは今刺してることへの高揚か、それともこれから首切られることへの高揚か。
どちらにしてもまともじゃない。まともじゃないという実感に安心。
これでいい。あとは待ってるだけでいい。出来上がった"自分"の思うままに任せて。
「待ってる。来るまでずっと、ずっと。」
赤い地面で微笑む彼を、幾対もの瞳が見上げていた。
樹は遠くで血溜まりを眺めていた。
なんだか久しぶりに気分が軽い。身体も軽くて頭がすっきりしている。ひとさしひとさし、生肉へ剣を突き刺すたびにはっきり感じられた。
気付いたからだった。必要なものは全部揃っていたことに。ひとめで罪人とわかる自分と、それを処刑する人。
"自分"はもう完成だ。ぐじゅ、ぐじゅ、湿った音が樹を祝う。
処刑する人も、もうすぐ。
「マイヨール…。」
どこかうっとりとその名を呼んだ。それは今刺してることへの高揚か、それともこれから首切られることへの高揚か。
どちらにしてもまともじゃない。まともじゃないという実感に安心。
これでいい。あとは待ってるだけでいい。出来上がった"自分"の思うままに任せて。
「待ってる。来るまでずっと、ずっと。」
赤い地面で微笑む彼を、幾対もの瞳が見上げていた。
そう、これでいい。
地面に倒れ伏す冥の左胸へ、ダークライは優しく手を添えた。そして六度目の衝撃を彼に与える。心臓へ手をつっこんで掻き回すような衝撃を。
ほとばしる絶叫すら愛おしむ笑顔だった。
やがてダークライは胸から胎児を取り上げるように何かを掬う。それは赤紫色をした卵型のもの。冥の傍らには既に5個、並んでいた。
「これで君の命が6つ分。大量生産品だからあまり上質な素材じゃないが…まぁ、十分だろう?」
所詮"アクセサリー"に過ぎないのだから。
ダークライがそう呟くと、6つの卵がぼこぼこと泡立った。腕が生え、足が生え、目と歯がごぼごぼと表面を彷徨う。そうして6体、完成した。原型の"ヤミラミ"だ。
冥はその様を、光を欠いた目で眺めていた。
「さて、次の作業だ。」
ダークライは冥へそっと近づく。
黒い衣装の隙間から、骨のような手を現わした。右手と左手、その指先を冥の顔に近づける。
ほとばしる絶叫すら愛おしむ笑顔だった。
やがてダークライは胸から胎児を取り上げるように何かを掬う。それは赤紫色をした卵型のもの。冥の傍らには既に5個、並んでいた。
「これで君の命が6つ分。大量生産品だからあまり上質な素材じゃないが…まぁ、十分だろう?」
所詮"アクセサリー"に過ぎないのだから。
ダークライがそう呟くと、6つの卵がぼこぼこと泡立った。腕が生え、足が生え、目と歯がごぼごぼと表面を彷徨う。そうして6体、完成した。原型の"ヤミラミ"だ。
冥はその様を、光を欠いた目で眺めていた。
「さて、次の作業だ。」
ダークライは冥へそっと近づく。
黒い衣装の隙間から、骨のような手を現わした。右手と左手、その指先を冥の顔に近づける。
眼球を掴みとった。
さっきに比べれば大分大人しい悲鳴だったが、ぶちぶちと千切れる視神経の音が生々しい。
ダークライは微笑みを少しも崩さず、取り出した眼球を両手のひらで転がす。それもまたごぼごぼと泡立ち姿を変えた。一対の義手に。
「さぁ、できあがり。見えるだろう?君の記憶にある義手、そのままだ。」
夢として世界を見ていた冥は、目を失くしても視力は失わない。
血の涙を滴らせながらも、冥はちいさく微笑んだ。それを見てダークライは心底嬉しそうに微笑む。
「よかった。喜んでもらえたならなによりだ。」
君の儀式が成功しますよう。
最後にお祈りの言葉を吐いて、ダークライは闇へと溶け消えた。
ダークライは微笑みを少しも崩さず、取り出した眼球を両手のひらで転がす。それもまたごぼごぼと泡立ち姿を変えた。一対の義手に。
「さぁ、できあがり。見えるだろう?君の記憶にある義手、そのままだ。」
夢として世界を見ていた冥は、目を失くしても視力は失わない。
血の涙を滴らせながらも、冥はちいさく微笑んだ。それを見てダークライは心底嬉しそうに微笑む。
「よかった。喜んでもらえたならなによりだ。」
君の儀式が成功しますよう。
最後にお祈りの言葉を吐いて、ダークライは闇へと溶け消えた。
残された冥と、一対の義手と、6匹のヤミラミ。
冥はなんとか上体を起こした。『サイコキネシス』を使ってみる。義手は本当に神経で繋がってるように、なめらかに動いた。冷たくて懐かしい感触。
起き上がった冥に、ヤミラミ達が寄ってきた。ウィイと機械じみた鳴き声があがる。
彼らはばらばらに口を開いた。「命令を」「ご命令を」
「ご命令を、ルワーレ様。」
冥はなんとか上体を起こした。『サイコキネシス』を使ってみる。義手は本当に神経で繋がってるように、なめらかに動いた。冷たくて懐かしい感触。
起き上がった冥に、ヤミラミ達が寄ってきた。ウィイと機械じみた鳴き声があがる。
彼らはばらばらに口を開いた。「命令を」「ご命令を」
「ご命令を、ルワーレ様。」
儀式は完了。
私は自分の変質を、はっきりと感じ取った。
これは錆びついてしまった"ルワーレ"を呼び起こす儀式。捨てようとしていたそれを、呼び起こしたのは他でもない。
優しく穏やかで暖かな夢。それが永遠でも不滅でもない砂上の奇跡と気付いたならば。
夢を脅かす敵を始末しなければ。そう、選んだ結果だった。
私は自分の変質を、はっきりと感じ取った。
これは錆びついてしまった"ルワーレ"を呼び起こす儀式。捨てようとしていたそれを、呼び起こしたのは他でもない。
優しく穏やかで暖かな夢。それが永遠でも不滅でもない砂上の奇跡と気付いたならば。
夢を脅かす敵を始末しなければ。そう、選んだ結果だった。
選んだ、とすら呼べないのかもしれなかった。
所詮私はこのようにしか成れない。どんな皮を被ろうとも。
桃が、樹が、いつまでも忌まわしい名を呼んだように。
所詮私はこのようにしか成れない。どんな皮を被ろうとも。
桃が、樹が、いつまでも忌まわしい名を呼んだように。
私は"腕無し<ルワーレ>"で、"人殺し<ヨノワール>"。
「…まずは探しに行きましょう。見つけ次第報告し、可能なら殺しなさい。」
赤く泣き続ける両目をルワーレは閉じた。ぞっとするほど冷たく笑う。
「夢を壊す"ジュプトル"と、"ミズゴロウ"を。」
赤く泣き続ける両目をルワーレは閉じた。ぞっとするほど冷たく笑う。
「夢を壊す"ジュプトル"と、"ミズゴロウ"を。」
未来組Final変化まとめ
- 原型ヤミラミ6体と両腕の義手を得る。
- どちらも出し入れ可能。ヤミラミは影のように地中から、義手は空中から現われる。
- 義手によって制限解除。全てのヨノワール技が使用可能に。
- 冥の穏やかさはなくなり、ルワーレの冷酷さが復活。
- 廃墟から旅立ち、親衛隊所属。特殊能力は『ヤミラミを介して影の能力が使える』。
- ただし器として質がよくないので威力は本来の6分の1。姿もヤミラミのまま変わらない。
- 『日常の幸福』を捨てたので完全な不死体質。但し『脅威』と認識してしまった相手の攻撃では致命傷を受ける。現段階では樹のみ。
- 両眼を失くしたが視力は失ってない。全て見える。
- 殺害対象は『未来世界のルワーレを知る者』及び『夢を終わらせようとする者』。但し桃は同じ側なので今は殺さない。
- 親衛隊に所属はしたが同調はしてない。内心実は親衛隊も敵。(ソラさんの影が鉄さんに危害を加えたから)
- より行動しやすくするには所属した方がよい、と判断しただけ。
- 表記は『冥』でも『ルワーレ』でもおっけー。
【桃】
- これまでも親衛隊だったが、Finalではさらに積極的に動く。
- だくらい様の命令は概ねこなす。
- そろそろ本格的に静葉を狩りにいきます。樹も諦めてない。
- 特殊能力は『対象に悪夢を見せる』。(特性"ナイトメア"の継承)
- 冥がしょっちゅううなされていた夢は桃のせい。
【樹】
- 悩んで悩んで悩みすぎた結果理性がショート。ついに悩むことを放棄した。
- 人を殺すのが快感。正確には人を殺す時の気持ち悪さや嘔吐感が快感。
- その本能のまま手当たり次第に殺して回ります。
- 冥への依存、という形で精神も安定。安定と書いて狂いきったと読む。
- 口調は別に壊れてない。むしろ普通。普通にコミュニケーション取りながら殺す。