わがままマカロニ恋するタマゴ
はぁー…と吐いた溜息は和やかな空気に溶けて消えた。
親学・討学に比べて我が校、私立廃墟学院の生徒会はさほど忙しくない。だから昼休みを潰す程の業務はないし、何もなくても昼休みはみんな生徒会室に集まって昼食取るくらい仲がよかった。
そんな、平和な空気で冥が睨む宿敵は、はたから見れば平和そのものだった。
それはお弁当箱。元々丁寧に包まれていたそれを、鉄は一度ほどいてさらに丁寧に包みなおした。
「…いつも思うんですが、今から持ってってお昼間に合うんですか?」
「だいじょぶだいじょぶ、ダーリンは銃のお手入れしてからご飯食べるみたいだから丁度いい時間なの。はっ、もしかしてあれって俺のこと待って…!?いやんもうダーリンってばっ!」
「いえ…そうじゃなくて貴方が食べる時間あるのかと…。」
頬に手を当てて照れまくる鉄はもはや聞いてない。冥はもう一度、はぁーと溜息をついた。
「討学でだーりんと一緒に食べるんじゃないの?」
生徒会でもないのに何故か室内で食べている鏡。鏡はいつの間にか『おいうち』を覚えたようだ。
がっくりうなだれた冥は、嬉しそうに飛び出していく鉄を見送ることすらできない。
(本っ当にダーリンさん一筋なんだから…。)
むぐむぐ、口の中で弾けるプチトマトがいつもより酸っぱい。味わかるのって?別に味覚障害でもなんでもありません。
決して近くはない親衛学園まで毎日お弁当届けに行くなんておかしい。絶対変。何が嬉しくてそんな手間暇面倒を鉄が毎日しなければいけないんですか。顔も見たことないけれどきっと相手の男は当然のように受け取ってるんだろうなと考えるとますます腹立たしい女の敵改め男の敵死ねばいいのに。プチトマトは完膚無きまでに蹂躙された。
プチトマトだけでは飽き足らない。次のターゲットは冷食のマカロニグラタン。もぎゅもぎゅもぎゅとひたすら歯で刻むばっかりで全然美味しくなかった。そしてたいしてストレス発散にもなってない。段々冥もむなしくなってきた。
「冥ってそれどーやって箸持ってるの?」
「超能力。以上。」
鏡への八つ当たりもほとんど効果はなかった。むしろ余計に苛々してしまった気がする。
はぁ…と溜息をついてマカロニを口に運ぶ。お弁当と自分の口をふよふよ行き来する箸。もーたべたくない。鉄がいなきゃたべたくない。我儘のひとつも言いたくなったけど言ってもむなしい、ので我慢した。
出会った時から鉄はソラという人にぞっこんだった。そんなぞっこんな彼を見て恋したのは自分だ。極めてフェアな状況だ。
状況がフェアでも勝負がフェアじゃない。心の中でわがまま二つ目。
あんなに、あんなに徹底して鉄の心をかっさらわなくてもいいじゃないか…。
そうこうしているうちにグラタンを食べ終わった。よく見ると空の容器に何か書いてある。どうやら占いつきのグラタンだったようで
親学・討学に比べて我が校、私立廃墟学院の生徒会はさほど忙しくない。だから昼休みを潰す程の業務はないし、何もなくても昼休みはみんな生徒会室に集まって昼食取るくらい仲がよかった。
そんな、平和な空気で冥が睨む宿敵は、はたから見れば平和そのものだった。
それはお弁当箱。元々丁寧に包まれていたそれを、鉄は一度ほどいてさらに丁寧に包みなおした。
「…いつも思うんですが、今から持ってってお昼間に合うんですか?」
「だいじょぶだいじょぶ、ダーリンは銃のお手入れしてからご飯食べるみたいだから丁度いい時間なの。はっ、もしかしてあれって俺のこと待って…!?いやんもうダーリンってばっ!」
「いえ…そうじゃなくて貴方が食べる時間あるのかと…。」
頬に手を当てて照れまくる鉄はもはや聞いてない。冥はもう一度、はぁーと溜息をついた。
「討学でだーりんと一緒に食べるんじゃないの?」
生徒会でもないのに何故か室内で食べている鏡。鏡はいつの間にか『おいうち』を覚えたようだ。
がっくりうなだれた冥は、嬉しそうに飛び出していく鉄を見送ることすらできない。
(本っ当にダーリンさん一筋なんだから…。)
むぐむぐ、口の中で弾けるプチトマトがいつもより酸っぱい。味わかるのって?別に味覚障害でもなんでもありません。
決して近くはない親衛学園まで毎日お弁当届けに行くなんておかしい。絶対変。何が嬉しくてそんな手間暇面倒を鉄が毎日しなければいけないんですか。顔も見たことないけれどきっと相手の男は当然のように受け取ってるんだろうなと考えるとますます腹立たしい女の敵改め男の敵死ねばいいのに。プチトマトは完膚無きまでに蹂躙された。
プチトマトだけでは飽き足らない。次のターゲットは冷食のマカロニグラタン。もぎゅもぎゅもぎゅとひたすら歯で刻むばっかりで全然美味しくなかった。そしてたいしてストレス発散にもなってない。段々冥もむなしくなってきた。
「冥ってそれどーやって箸持ってるの?」
「超能力。以上。」
鏡への八つ当たりもほとんど効果はなかった。むしろ余計に苛々してしまった気がする。
はぁ…と溜息をついてマカロニを口に運ぶ。お弁当と自分の口をふよふよ行き来する箸。もーたべたくない。鉄がいなきゃたべたくない。我儘のひとつも言いたくなったけど言ってもむなしい、ので我慢した。
出会った時から鉄はソラという人にぞっこんだった。そんなぞっこんな彼を見て恋したのは自分だ。極めてフェアな状況だ。
状況がフェアでも勝負がフェアじゃない。心の中でわがまま二つ目。
あんなに、あんなに徹底して鉄の心をかっさらわなくてもいいじゃないか…。
そうこうしているうちにグラタンを食べ終わった。よく見ると空の容器に何か書いてある。どうやら占いつきのグラタンだったようで
『超ラッキー!恋愛運絶好調☆』
とか書いてあった。
とか書いてあった。
「どこがですかあああああああああああああああああ!!!!!」
がっしゃーん、くるくるくるこーん。
叫ぶと同時に弁当箱が飛んで行った。冥自身そんなつもりはなかったのだが、どうやら超能力でふっとばしてしまったらしい。予期せずぱぁになった弁当約半分。誰にもかからなかったのはよかったものの、床に散った弁当を前にうなだれるしかなかった。
落ちつけ、落ちつくんだ自分。風や紅の宥めはもはや耳に入ってない。
一人で思い詰めても鉄には届かないし意味はないしそもそもしょうがないんだ。だけど今も鉄は知らない誰かと仲睦まじくお弁当を食べてると思うと。思うと。
「ただい…あれ、冥!?どしたのおべんとおっことしちゃったの!?」
…現金なもので、その声だけはしっかり聞こえた。
はっと顔を上げると、帰ってきた鉄がわたわたと駆けよってくる。
「あああー、おべんとだめになっちゃったな…よしよし冥、泣かないの泣かないの。」
「…泣いてません。」
「ほんと?よしよし、偉い子偉い子。」
わしゃわしゃと撫でる鉄の手はあったかいけど、今は撫でてほしくない。冥が振りはらうようにもう一度顔を上げると、何か口の中に放り込まれた。
びっくりして思わず噛むと、ふんわり広がる卵焼きの味。砂糖多めの甘口だ。
「俺の弁当のあまりだけど、冥におすそわけ。だからもう泣かないで、一緒にお掃除しような。」
な?ともう一度言ってわしわし。わしわし。冥は為す術なくうつむいた。顔が上げられないむしろ鉄のせいで泣きそうだどうしてくれる。
卵焼きがあんまり美味しすぎて思わず全部許しそうになるけれど
耳を赤くしながらも冥は口元をへの字にした。やっぱだめ。こんなんで満足なんかしてあげない。
がっしゃーん、くるくるくるこーん。
叫ぶと同時に弁当箱が飛んで行った。冥自身そんなつもりはなかったのだが、どうやら超能力でふっとばしてしまったらしい。予期せずぱぁになった弁当約半分。誰にもかからなかったのはよかったものの、床に散った弁当を前にうなだれるしかなかった。
落ちつけ、落ちつくんだ自分。風や紅の宥めはもはや耳に入ってない。
一人で思い詰めても鉄には届かないし意味はないしそもそもしょうがないんだ。だけど今も鉄は知らない誰かと仲睦まじくお弁当を食べてると思うと。思うと。
「ただい…あれ、冥!?どしたのおべんとおっことしちゃったの!?」
…現金なもので、その声だけはしっかり聞こえた。
はっと顔を上げると、帰ってきた鉄がわたわたと駆けよってくる。
「あああー、おべんとだめになっちゃったな…よしよし冥、泣かないの泣かないの。」
「…泣いてません。」
「ほんと?よしよし、偉い子偉い子。」
わしゃわしゃと撫でる鉄の手はあったかいけど、今は撫でてほしくない。冥が振りはらうようにもう一度顔を上げると、何か口の中に放り込まれた。
びっくりして思わず噛むと、ふんわり広がる卵焼きの味。砂糖多めの甘口だ。
「俺の弁当のあまりだけど、冥におすそわけ。だからもう泣かないで、一緒にお掃除しような。」
な?ともう一度言ってわしわし。わしわし。冥は為す術なくうつむいた。顔が上げられないむしろ鉄のせいで泣きそうだどうしてくれる。
卵焼きがあんまり美味しすぎて思わず全部許しそうになるけれど
耳を赤くしながらも冥は口元をへの字にした。やっぱだめ。こんなんで満足なんかしてあげない。
わがままマカロニ恋するタマゴ
(いつか貴方ごとぜーんぶ、食ってやる。)
fin.