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マッドハッターの茶会

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マッドハッターの茶会



「陸っ!」
駆け寄ればすぐヤミラミに囲まれた。
静葉がたじろいでいる間に、陸に潰された肉塊が泡だった。ごぼごぼ音を立ててあっという間に、元の冥の形を取り戻す。
不気味に笑んだ冥はくつくつと笑った。倒れ伏す陸を踏みつければそれを合図に、ヤミラミ達は爪を静葉の首元に突きつける。
「私は不死身なんです。貴方達のような脆弱な存在ではもはや無い。どんなに滅多刺しにされても電気に貫かれても業火で焙られても死なない。痛みもない。」
いつかの台詞を再びなぞる。

「この身体の中に居る"私"は、もう誰にも奪われることが、無い。」

爪が一斉に刺さる、より速く静葉が動いた。一瞬で巻き上がる『ふぶき』でヤミラミが蹴散らされる。
一睨みで『みやぶ』って冥の懐へ飛び込むと、揃えた両腕を勢いよく振り降ろした。『アームハンマー』だ。冥は全く抵抗せず、薄笑いのまま地面にたたきつけられるだけ。ごきぃと嫌な音が響いた。
それでも冥の笑い声は止まらない。何もなかったように立ち上がる。それはヤミラミも同様で、すぐにまたとびかかってくるヤミラミを静葉はどろばくだんで弾いた。
これではキリがない。心中を読んだように、冥はにぃやり笑った。
「きりなんて在りませんと、言ってあげたでしょう?」
「…解らないよ冥。どうして貴方が襲ってくるの?不死身ってどういうこと?」
「解らない?解ることなどいくつあると言うんです。ここは不思議の国<ワンダーランド>。誰が何を望むかわからないし望みはどんなことでも叶う。そうういうトコロ。そうでしょう?」
歌うように言う彼は、本当に彼が名乗るように『ルワーレ』のようだった。
静葉が冥にルワーレをだぶらせた時、冥がひときわ大きく笑った気がした。
「不思議の国なのですから、私が不死身な理由など至極簡単。」
ふっと、冥の姿が消える。
次の言葉は背後からそっと。背中から貫かれた痛みと共に、静葉を『おどろか』せた。
「貴女に葬られた私は、『死にたくない』と、願ったのですよ。」

怯んだ静葉にわっとヤミラミが群がる。容赦ないシャドークローが静葉を切り裂いた。
「…ッ!」
どうにかもう一度『ふぶき』を放つが、もう何度も使えそうにない。爪に裂かれた手足には力が入らず、立ち上がるのもやっとだ。
だが倒れてはいられない。なんとか立ち上がって冥を見据えた。
「…ワンダーランドじゃないよ。ここは悪夢。願いが叶っても幸せには繋がらない!酷い酷い絶望しか、その先にはないの!」
「ほう、自分が殺した相手に物申せるとはなかなかいい神経してますね。」
「ッ…それは…!」
「ふふ、まぁいいでしょう。どうやら貴女は憐憫も禁じえない程無知なようだ。」


ふわりと、冥が手を上げる。
すると動きを止めたヤミラミ達が、奇妙な光に包まれた。

「―――そんなことはね、皆もう解っているんですよ。」


ある者は空のような青、ある者は海のような青、ある者は岩のような灰、ある者は血に錆びたような銀、
そしてある者は、炎のような、朱色の光を纏った。
「願いを叶えた末に、絶望を迎えた彼ら。」
静葉はその朱色から目を、離せない。
「浴びなさい、彼らの叫び声を。絶望を知っても尚諦めきれないその"願い"を。」
やがてヤミラミ達の手に、めいめいの光が渦巻き始める。
「そう。誰一人、夢の終わりなど望んではいないのだと。」


「私達は夢を―――<ダークライ>を護る為に貴女を殺すのです。」


ヤミラミが一斉に、飛びかかった。



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