蜃気楼の灯
襲い来る橙と海色のヤミラミ。橙は『かえんほうしゃ』を、海色は『ハイドロポンプ』を撃ちながら。
撃たれた攻撃は静葉と陸に直撃したけれど。
攻撃もヤミラミも、まとめて腕一振りで薙ぎ払った。
「…弱いね。」
「ああ。弱すぎや…。」
飛ばされたヤミラミはすかさず着地し、二人を挟むように迫ってきた。静葉と陸は背中を合わせて迎え撃つ。
手のひらに纏う『みずのはどう』。爪先に纏う『げんしのちから』。
彼は、あいつは、
「「こんなものじゃない。」」
撃たれた攻撃は静葉と陸に直撃したけれど。
攻撃もヤミラミも、まとめて腕一振りで薙ぎ払った。
「…弱いね。」
「ああ。弱すぎや…。」
飛ばされたヤミラミはすかさず着地し、二人を挟むように迫ってきた。静葉と陸は背中を合わせて迎え撃つ。
手のひらに纏う『みずのはどう』。爪先に纏う『げんしのちから』。
彼は、あいつは、
「「こんなものじゃない。」」
その死角から青のヤミラミが爪を構えた。音を立てて研がれる爪。『つるぎのまい』だ。
目視も難しい『しんそく』で二人へと襲いかかったが、
足元からずるりと生えた触手に、絡め取られて阻まれた。
「けたたっ、ソッチばっかリじゃツマんナいよォ?」
『とおせんぼう』で足止めしたアノニマスは、にぃやり笑う。
『ギガインパクト』を込めた拳を振り被って。
「キミはボクと、アーソボ?」
目視も難しい『しんそく』で二人へと襲いかかったが、
足元からずるりと生えた触手に、絡め取られて阻まれた。
「けたたっ、ソッチばっかリじゃツマんナいよォ?」
『とおせんぼう』で足止めしたアノニマスは、にぃやり笑う。
『ギガインパクト』を込めた拳を振り被って。
「キミはボクと、アーソボ?」
灰色のヤミラミは冥を護るように『てっぺき』を張り、それを盾として銀のヤミラミが銃弾を浴びせた。無数の『スピードスター』だ。
威力はそれ程ではないが、避けられない攻撃はじわじわと痛い。
「アァくそ、煩わシイッ!」
黒の数珠からぼうっと光が溢れ、黒が手を向けるとヤミラミ達へと放たれた。『うらみ』の光はそれぞれに纏わりつく。『スピードスター』を撃つ手ががくりと揺らいだ。
立て直す暇は与えない。次いで腕を振ると、『こごえるかぜ』があたりに吹き荒れる。
霜に覆われ動きの鈍ったヤミラミ達を確認すると、黒はちらりと視線を流した。
「…行ケ。貴様の手番ダ。」
「わかっているさっ。」
すっかり鈍重となったヤミラミの横を、einは風のように抜き去っていく。
青い葉を纏う西洋剣の『リーフブレード』。einは真っ正面から、振り降ろした。
威力はそれ程ではないが、避けられない攻撃はじわじわと痛い。
「アァくそ、煩わシイッ!」
黒の数珠からぼうっと光が溢れ、黒が手を向けるとヤミラミ達へと放たれた。『うらみ』の光はそれぞれに纏わりつく。『スピードスター』を撃つ手ががくりと揺らいだ。
立て直す暇は与えない。次いで腕を振ると、『こごえるかぜ』があたりに吹き荒れる。
霜に覆われ動きの鈍ったヤミラミ達を確認すると、黒はちらりと視線を流した。
「…行ケ。貴様の手番ダ。」
「わかっているさっ。」
すっかり鈍重となったヤミラミの横を、einは風のように抜き去っていく。
青い葉を纏う西洋剣の『リーフブレード』。einは真っ正面から、振り降ろした。
その光景を前にして。
冥は短く息を呑む。
緑色のポニーテール。金色の瞳。輝く剣。リーフブレード。
…『ジュプトル』。
冥は短く息を呑む。
緑色のポニーテール。金色の瞳。輝く剣。リーフブレード。
…『ジュプトル』。
ざくッッ。
『リーフブレード』は深々と冥の肩を裂いた。
冥が痛みを感じないことは暁から聞いている。だからeinはその後『れんぞくぎり』を浴びせかけ、冥の指揮系統を乱すつもりだった。
だが。
ぼたぼたと血の滴る傷を、冥は義手で苦しげに押さえる。
まるで痛みを、感じているかのように。
「…お前…?」
『リーフブレード』は深々と冥の肩を裂いた。
冥が痛みを感じないことは暁から聞いている。だからeinはその後『れんぞくぎり』を浴びせかけ、冥の指揮系統を乱すつもりだった。
だが。
ぼたぼたと血の滴る傷を、冥は義手で苦しげに押さえる。
まるで痛みを、感じているかのように。
「…お前…?」
「…誰が追撃を緩めていいと言いました。」
冥の背後に回った暁が拳を構える。躊躇いなくその背中へ『シャドーパンチ』。
避けようもない冥は血を吐いて吹っ飛んだ。それを無感情に見据えた暁は、すぅと目を細める。
「ein。攻撃を続けてください。足止め優先ではなく、仕留めるつもりで。」
「え、俺が…?それにあいつは死なないってお前…。」
「そのはずでしたが…。」
ゆらりと立ち上がる、冥。そして未だ血の止まらないその傷口を、暁は見据えた。
「どうやら、話は違うかもしれません。」
冥の背後に回った暁が拳を構える。躊躇いなくその背中へ『シャドーパンチ』。
避けようもない冥は血を吐いて吹っ飛んだ。それを無感情に見据えた暁は、すぅと目を細める。
「ein。攻撃を続けてください。足止め優先ではなく、仕留めるつもりで。」
「え、俺が…?それにあいつは死なないってお前…。」
「そのはずでしたが…。」
ゆらりと立ち上がる、冥。そして未だ血の止まらないその傷口を、暁は見据えた。
「どうやら、話は違うかもしれません。」
傷を押さえて立ち上がる冥の、口元にはもう笑みはない。余裕のない荒い息。
冥の目は閉じられているが、並々ならぬ殺気が誰に向けられているかすぐにわかった。einに、だ。
「…近寄る、な…。」
低く呟くと、周辺の瓦礫が紫に光る。そして浮かび上がった。『サイコキネシス』だ。
冥は傷口を押さえるのをやめた。ふわりと宙に浮き、両腕を高く掲げる。周囲一体の瓦礫や廃材が、その手元に集った。
「私は二度と貴方に屈しない。」
冷たい殺気がeinを、einとダブらせて見ている相手を、刺す。
「何も触れさせない。何も奪わせない。二度と、何も、」
ぎっと、歯を食いしばった。その腕を振り降ろす。
「壊させてなるものかッッ!!!」
冥の目は閉じられているが、並々ならぬ殺気が誰に向けられているかすぐにわかった。einに、だ。
「…近寄る、な…。」
低く呟くと、周辺の瓦礫が紫に光る。そして浮かび上がった。『サイコキネシス』だ。
冥は傷口を押さえるのをやめた。ふわりと宙に浮き、両腕を高く掲げる。周囲一体の瓦礫や廃材が、その手元に集った。
「私は二度と貴方に屈しない。」
冷たい殺気がeinを、einとダブらせて見ている相手を、刺す。
「何も触れさせない。何も奪わせない。二度と、何も、」
ぎっと、歯を食いしばった。その腕を振り降ろす。
「壊させてなるものかッッ!!!」
一斉にeinへ降り注いだ瓦礫は、水の壁に弾かれた。
割って入った静葉の、『まもる』によって。
追撃はしない。できれば止めたい。けれど酷い罪悪感が、静葉の喉を絞める。
「冥…。」
「…どこまでも邪魔するんですね、『時の巫女』。貴女だって同罪だ。私の敵だ。」
着地した冥は静葉を見据える。冥を中心にして放たれたのは『あくのはどう』。
「…ッが!」
吹き飛ぶ程ではない、が、ダメージは痛い。ぐらりとよろめきながら、静葉はeinと暁を守る構えを崩さなかった。冥は構わず、『あくのはどう』を連発する。
「貴女はどれだけ、どれだけ私を殺せば気が済むんだ!私にはもう生きて帰れる場所なんてない、此処に逃げるしか場所がないのに!悪夢を壊すですって?目を醒ますだけですって!?目を醒ました瞬間に、私は時代ごと死ぬと言うのに!!」
波動に乗せるように、冥は叫ぶ。血を吐くように、血を吐きながら、何度も何度も。閉じられた両の目からは、赤い涙が滴っている。
捨てた場所。捨てておきながら、護りたい場所。必死になればなるほど矛盾だらけだ。空回りだらけだ。十分にわかっている。誰を始末したって、願う結末にはならないことを。
護りたかった場所は既に、冥の胸中にしかないかもしれない。
『あくのはどう』は止むことなく静葉を、冥に近づくものを弾き続けた。触れるなと、言うかのように。胸に抱くものに、誰も触れさせないように。
「私は死にたくない!目覚めたくない!私は、私はあの家を失いたくない!!」
割って入った静葉の、『まもる』によって。
追撃はしない。できれば止めたい。けれど酷い罪悪感が、静葉の喉を絞める。
「冥…。」
「…どこまでも邪魔するんですね、『時の巫女』。貴女だって同罪だ。私の敵だ。」
着地した冥は静葉を見据える。冥を中心にして放たれたのは『あくのはどう』。
「…ッが!」
吹き飛ぶ程ではない、が、ダメージは痛い。ぐらりとよろめきながら、静葉はeinと暁を守る構えを崩さなかった。冥は構わず、『あくのはどう』を連発する。
「貴女はどれだけ、どれだけ私を殺せば気が済むんだ!私にはもう生きて帰れる場所なんてない、此処に逃げるしか場所がないのに!悪夢を壊すですって?目を醒ますだけですって!?目を醒ました瞬間に、私は時代ごと死ぬと言うのに!!」
波動に乗せるように、冥は叫ぶ。血を吐くように、血を吐きながら、何度も何度も。閉じられた両の目からは、赤い涙が滴っている。
捨てた場所。捨てておきながら、護りたい場所。必死になればなるほど矛盾だらけだ。空回りだらけだ。十分にわかっている。誰を始末したって、願う結末にはならないことを。
護りたかった場所は既に、冥の胸中にしかないかもしれない。
『あくのはどう』は止むことなく静葉を、冥に近づくものを弾き続けた。触れるなと、言うかのように。胸に抱くものに、誰も触れさせないように。
「私は死にたくない!目覚めたくない!私は、私はあの家を失いたくない!!」
ばちっ。冥に走る一筋の電流。
それは冥の身体に絡まって、無理矢理波動を止めた。暁が放った『かなしばり』、だ。
「…ein。」
「わかってる。」
ぐらりとよろけた静葉をそっと抱くと、einは地面に優しく降ろした。そして一歩、踏み込む。身動き取れない冥に向け、剣を光らせた。
「ein、さん…?」
「…静葉、と言ったか。無理させて悪かった。後は俺がやるよ。」
静葉が息を呑む。待って、と思わず小さく言った。聞きとったeinはかすかに静葉を振りむく。ちいさく微笑したが、目には暗い光が宿っていた。
「静葉と冥がいた世界と、俺達のいた世界は、違うけどきっと似てる。だから、わかるんだ。あいつはきっともう…此処で終わらせてやるしかない。」
それは憐れむような、自嘲するような、どこか諦めたような、微笑。
そしてがたがたと震える冥を、無表情で見据えた。
「…優しい夢に逃げたって、いつまでもは続かない。」
わかってるんだろ?感情を押し殺した声音で言いながら、einは剣を振り上げた。
それは冥の身体に絡まって、無理矢理波動を止めた。暁が放った『かなしばり』、だ。
「…ein。」
「わかってる。」
ぐらりとよろけた静葉をそっと抱くと、einは地面に優しく降ろした。そして一歩、踏み込む。身動き取れない冥に向け、剣を光らせた。
「ein、さん…?」
「…静葉、と言ったか。無理させて悪かった。後は俺がやるよ。」
静葉が息を呑む。待って、と思わず小さく言った。聞きとったeinはかすかに静葉を振りむく。ちいさく微笑したが、目には暗い光が宿っていた。
「静葉と冥がいた世界と、俺達のいた世界は、違うけどきっと似てる。だから、わかるんだ。あいつはきっともう…此処で終わらせてやるしかない。」
それは憐れむような、自嘲するような、どこか諦めたような、微笑。
そしてがたがたと震える冥を、無表情で見据えた。
「…優しい夢に逃げたって、いつまでもは続かない。」
わかってるんだろ?感情を押し殺した声音で言いながら、einは剣を振り上げた。
「俺達はあの時代と共に生きて、死ぬしかないんだ。」
振り降ろされるその直前に。
地面が、激しく縦揺れた。einを転倒させる程に。
『じしん』で宙に跳ねとばされた瓦礫が、冥を囲むように落ちる『いわおとし』。einは素早く後ろに下がった。轟音を上げて落ちた瓦礫と、立ちこめる砂煙。
その砂煙が晴れると。
一匹のハガネールが、冥とeinの間に立ちふさがっていた。
「………うそ。」
冥は、
ハガネールよりも、それに乗る人物に釘付けになる。
「こ…う?」
地面が、激しく縦揺れた。einを転倒させる程に。
『じしん』で宙に跳ねとばされた瓦礫が、冥を囲むように落ちる『いわおとし』。einは素早く後ろに下がった。轟音を上げて落ちた瓦礫と、立ちこめる砂煙。
その砂煙が晴れると。
一匹のハガネールが、冥とeinの間に立ちふさがっていた。
「………うそ。」
冥は、
ハガネールよりも、それに乗る人物に釘付けになる。
「こ…う?」
紅は、大急ぎで咬竜から降りた。着地は綺麗ではなく、よたよたしていて、案の定転んでしまったけれど。
それでも必死な顔で、冥へと駆けよる。
そんな冥の背後から、足音ひとつ。弱々しい音だったけれど、確かに、聞こえた。
それでも必死な顔で、冥へと駆けよる。
そんな冥の背後から、足音ひとつ。弱々しい音だったけれど、確かに、聞こえた。
「よかった…間に合った。」
優しい、優しい、声。
呼吸も心臓も止まった。嘘、でしょう?嘘だと確かめたくて振り向いたのに、そこには、そこには。
呼吸も心臓も止まった。嘘、でしょう?嘘だと確かめたくて振り向いたのに、そこには、そこには。
「………て、つ。」