Dancin' With My Devils
「それで? てがかりくらいはつかめたんですか?」
「うぉ!? あ…鏡か…脅かすなよ…。」
「うぉ!? あ…鏡か…脅かすなよ…。」
急に頭上から降ってきた声。驚いて見上げると、ふわふわと中を漂う逆さまの鏡と目が合った。星はため息をつく。
「何も見つからないから星はこんなところに居るんだろうが。そっちこそ、わざわざ脅かしたからには何かあったんだろうな?」
鏡はくすくす笑った。するりと大人の姿――鏡に変化して星の前に降りる。
「いーえ。八方塞がりですよ。どっちにしろ、当てもなく歩くだけじゃあどんなに時間があっても足りませんねぇ。」
「…打つ手なし…か。」
「…打つ手なし…か。」
メッシュの入った金髪を掻いて、星は顔を顰める。"冬"の手がかりはまるで得られず、あれから幻とも会えていない。当て推量であちこち探し回るのもそろそろ限界だ。
「そこでその…ひとつ、気になることがあるんですが…。」
「何だ。この際だ、もう星は何だって聴いてやるぞ。」
「"鏡"が終わる前に、"鏡"は"冬"と会った気がするのです。」
「何だ。この際だ、もう星は何だって聴いてやるぞ。」
「"鏡"が終わる前に、"鏡"は"冬"と会った気がするのです。」
全く自信のなさそうな口ぶりだった。気がするって何だ、と呆れた声で問う星に、鏡は首を傾げながら呟く。
「だって。あそこは今まで居たこの世界とは違ったんですもの…。ぞっとするくらい真っ白で、鏡以外には誰も居なくて…。そしたら"冬"がいつの間にか現れて…鏡は何かに食べられてしまったので、その後はわかりません。」
「意味がわからない。だいたいこの世界で白い場所なんか見たこともない。」
「そうですよねぇ…。でも、そこにまた行ければ、"冬"に会えると思うんです。」
「意味がわからない。だいたいこの世界で白い場所なんか見たこともない。」
「そうですよねぇ…。でも、そこにまた行ければ、"冬"に会えると思うんです。」
血で染め出したような赤いこの世界で、純白な場所があれば相当に目立つだろうが、誰もそんな話をしなければ、星ももちろん見たことはなかった。しかし、折角の手がかりだ。みすみす見逃すことはあるまい。
「行き方はわかってるのか?」
「さぁ。気が付いたらそこだったので何とも。…ところで。」
「さぁ。気が付いたらそこだったので何とも。…ところで。」
鏡の手刀が、星の胸に突き刺さる。
驚いて目を見開いた星に、鏡は無邪気な笑みを向けた。
驚いて目を見開いた星に、鏡は無邪気な笑みを向けた。
「この地獄のような世界では、死んだ者はどこへ行くのでしょうね?」
果てしなく墜ちていく感覚。それが感覚だけではなく、実際自分が墜ちているのだと気付いた星は総毛立った。慌てて"でんじふゆう"を使おうとするものの、自分の体の上下がわからない。
あのガキ――! 鏡の無邪気そうな笑顔がやけに目の前にちらつく。何だって星がこんな目に! 叫ぼうとした唇は、言葉にならない悲鳴だけを伝えていく。
やがて微かな衝撃とともに星の体は止まった。
あのガキ――! 鏡の無邪気そうな笑顔がやけに目の前にちらつく。何だって星がこんな目に! 叫ぼうとした唇は、言葉にならない悲鳴だけを伝えていく。
やがて微かな衝撃とともに星の体は止まった。
「うわぁぁぁぁあああああああ…あ…?」
「るせぇな、ちょっと静かにしてろ。」
「るせぇな、ちょっと静かにしてろ。」
星は、"冬"の逞しい両腕に抱えられていた。驚きのあまり唇をぱくぱくさせる星を降ろして、"冬"は地面に突き立てられたスコップを引き抜く。否、そこが本当に地面かはわからない。見渡す限りの白が、世界を支配していた。
「あ、やっぱり。」
ふわりと浮かんで、鏡が言う。"冬"は煩わしそうな顔をした。
「お前に会うのは二度目だな。何がやっぱりだ。さっさと帰りやがれ。」
「鏡! どういうことだ!! 何で"冬"がここに――というかここは何処だ!!」
「いやぁ、こんなに上手くいくとは思いませんでしたから…。ここは言うなれば臨死界でしょう。夢と現を隔つ場所。」
「鏡! どういうことだ!! 何で"冬"がここに――というかここは何処だ!!」
「いやぁ、こんなに上手くいくとは思いませんでしたから…。ここは言うなれば臨死界でしょう。夢と現を隔つ場所。」
"冬"は小さく頷く。
「悪夢が世界へ流れ出さないための、最終防衛線だ。正規の手順を経ずに目覚めようとした者がここへ来る。残念ながらここからは出られない。出たいなら他を当たれ。それじゃあな。」
「まっ、待て!! 違う!」
「まっ、待て!! 違う!」
立ち去ろうとする"冬"を呼び止め、星はその引き千切れたマントを引く。
「星はここから出たいわけじゃない! お前を探しに来たんだ!!」
「…私を?」
「そうですよぅ。鏡だってそこまでバカじゃないです。」
「…"幻"に言われた! お前を返してほしければ、探せと! なんとしても星といっしょに、あの男に会ってもらう!」
「…私を?」
「そうですよぅ。鏡だってそこまでバカじゃないです。」
「…"幻"に言われた! お前を返してほしければ、探せと! なんとしても星といっしょに、あの男に会ってもらう!」
"冬"の目が動揺した。まほろ、と小さく反芻して、頭を抱える。
「あの…馬鹿野郎が!」
狼狽する"冬"を真っ正面に見据えて、星は続けた。
「ここからお前を連れて出る。どうすれば出られるんだ。」
「…わたしは、それを知らない。お前たちは来たほうへ帰ればきっと戻れる。何人かそうして帰してやったが…。わたしはここを離れたことがないし、何処まで歩いてもあそこへは戻れなかった。」
「…わたしは、それを知らない。お前たちは来たほうへ帰ればきっと戻れる。何人かそうして帰してやったが…。わたしはここを離れたことがないし、何処まで歩いてもあそこへは戻れなかった。」
何かを諦めたように、"冬"はぽつりと言った。
「…死者は、蘇らない。」
「お前はまだ死んでない。ここに居る。お前の体も、向こうにある。いいか、星を信じろ。いっしょに来――、」
星の台詞を遮るように、"冬"は突然立ち上がる。彼方を見遣り、スコップを剣のように構えた。
「――来る。」
Dancin' With My Devils / MR.BIG