Duelo
撃ち放った『みずのはどう』と『どろばくだん』。
冬は微動だにしない。冬と静葉のその中間に、星が割って入っていた。
両手を前に翳し、水と泥の両方を空中で静止させている。
ぎらり。星の手が生み出した見えない壁が、鏡のように光る。
「…星、」
琥珀の瞳が、光った。
「『ミラーコート』だ!!」
せきとめられていた水と泥が二倍に膨れ、静葉へと牙を剥いた。
「ッッが!!」
まともに喰らった静葉は弾け飛ぶ。その間に星は青白い静電気を纏い、ふわりとその身を浮かせた。傍では鏡が最初からふわふわ浮いている。身を起こしながら静葉は素早くそれらを見てとった。
あの二人には効かないだろう。でも、咬竜なら。
両手を地面に翳して、橙の目をかっと光らせた。
「『じしん』ッ!!」
大地が唸った。静葉を中心として地面が波を生む。咬竜が土煙に呑み込まれた。
土煙が晴れた時、
にぃやり、笑みを浮かべて立っていたのは咬竜だった。
「…!」
「…そのぐらいで倒れるような、」
冬が静葉へ手を差し向けた。
「ヤワな連中じゃないさ、こいつらはなァッ!」
再び大地が唸る。今度は咬竜が起こした『じしん』。土波に足を取られた静葉が思わずよろけ倒れる。その間に咬竜の口へ集積した銀色の光。
『ジャイロボール』が放たれた。
…がぎッ。それは割って入った陸と紅の爪で、弾かれる。
「…静葉は、冥、忘れないでくれてるんだね。」
短いながら凶悪に爪を光らせながら、紅が呟く。
「ならやっぱり僕、こっちがいい。ごめんね…咬竜。」
「…俺も…やな。」
対して大仰で禍々しい爪をぎらつかせながら、陸が目を光らせる。
以前まで見せていた戦闘狂の光とは違う。
もっと何か、確固たるモノのある光だった。
「…なくさんために、戦う。」
陸の全身が、炎のように光り出す。
「それは…俺も、同じや。」
轟音をあげて大地が『ふんか』した。ばきばきと地面が割れて次々と炎が噴き上がっていく。冬達をあっという間に呑み込んだ。
かつて世界を滅ぼしかけた巨大な力。その振るい方に気づいた大陸神は、凛と、相手を見据える。
「そうですね。鏡達もおんなじです。」
ひらりと陸の頭上に鏡が浮いた。くすくすと笑う音が聞こえるが、逆光でその表情は読めない。
「鏡達は冬を探してた。鏡達は冬をまもります。冬がまもりたい人がいるのなら、鏡達はまもります。まもるための戦いです。」
鏡は空中から地上に向けて手を翳した。陸達へ向けて。
…遅ればせながら静葉は気づいた。何故逆光なのか。その強い日差しの存在に。
「これは、まもるための、戦争です。」
光の、炸裂。『ソーラービーム』の苛烈な光に全員が呑まれた。
「…ッ静葉!陸!」
たんっと地を蹴って鏡へ振り被る影。einだった。怒りにぎらついた目で鏡を見据え『かわらわり』を振りおろす。
受けた鏡の腕は嫌な音を立てて曲がる。けれど鏡はにやりと笑んだ。
einの背後で咬竜が、凍てついた牙を覗かせ笑む。
…しかし噛みつくつもりで大きく開いた口が、ぴたりと止まった。咬竜が苦悶の声をあげてもがきだす。その身体には紫色の炎がまとわりついていた。『おにび』の炎。
「この馬鹿…!」
暁がeinと背を合わせるように割り入った。
「敵に己を知らせて割り入る馬鹿がどこにいますかッ!」
「っう、いちいち煩いなぁ…!」
「貴方が未熟だからですよ!」
暁は一度目を閉じ念じると、かっと開いた。瞳が白目まで真っ黒い。
それをまともに見てしまった咬竜はびたりと動けなくなった。振り向きざまに見据えられた鏡も『くろいまなざし』で縫い止められる。
「…足止め完了。頼みましたよ。」
「やかましい、我に指図するナ。」
だんっと大きく飛んだ黒が宙に浮き、黒い風をその身に渦巻かせた。
「この程度、貴様の手を借りずとも十分ダ!!」
辺り一帯に『あやしいかぜ』が吹き荒れた。動けない咬竜と鏡は為すすべなく暴風に薙ぎ倒される。
どすん、と大きな音が響いた。咬竜が地に伏したのだ。序盤からかなりのダメージを負っている身だ。動けない身体を呪うように身じろぐが、時折くる火傷の痛みに表情が歪む。
…まずは一匹。
もう起き上がれないだろう咬竜に背を向け、暁は鏡へ手を翳す。
冬は微動だにしない。冬と静葉のその中間に、星が割って入っていた。
両手を前に翳し、水と泥の両方を空中で静止させている。
ぎらり。星の手が生み出した見えない壁が、鏡のように光る。
「…星、」
琥珀の瞳が、光った。
「『ミラーコート』だ!!」
せきとめられていた水と泥が二倍に膨れ、静葉へと牙を剥いた。
「ッッが!!」
まともに喰らった静葉は弾け飛ぶ。その間に星は青白い静電気を纏い、ふわりとその身を浮かせた。傍では鏡が最初からふわふわ浮いている。身を起こしながら静葉は素早くそれらを見てとった。
あの二人には効かないだろう。でも、咬竜なら。
両手を地面に翳して、橙の目をかっと光らせた。
「『じしん』ッ!!」
大地が唸った。静葉を中心として地面が波を生む。咬竜が土煙に呑み込まれた。
土煙が晴れた時、
にぃやり、笑みを浮かべて立っていたのは咬竜だった。
「…!」
「…そのぐらいで倒れるような、」
冬が静葉へ手を差し向けた。
「ヤワな連中じゃないさ、こいつらはなァッ!」
再び大地が唸る。今度は咬竜が起こした『じしん』。土波に足を取られた静葉が思わずよろけ倒れる。その間に咬竜の口へ集積した銀色の光。
『ジャイロボール』が放たれた。
…がぎッ。それは割って入った陸と紅の爪で、弾かれる。
「…静葉は、冥、忘れないでくれてるんだね。」
短いながら凶悪に爪を光らせながら、紅が呟く。
「ならやっぱり僕、こっちがいい。ごめんね…咬竜。」
「…俺も…やな。」
対して大仰で禍々しい爪をぎらつかせながら、陸が目を光らせる。
以前まで見せていた戦闘狂の光とは違う。
もっと何か、確固たるモノのある光だった。
「…なくさんために、戦う。」
陸の全身が、炎のように光り出す。
「それは…俺も、同じや。」
轟音をあげて大地が『ふんか』した。ばきばきと地面が割れて次々と炎が噴き上がっていく。冬達をあっという間に呑み込んだ。
かつて世界を滅ぼしかけた巨大な力。その振るい方に気づいた大陸神は、凛と、相手を見据える。
「そうですね。鏡達もおんなじです。」
ひらりと陸の頭上に鏡が浮いた。くすくすと笑う音が聞こえるが、逆光でその表情は読めない。
「鏡達は冬を探してた。鏡達は冬をまもります。冬がまもりたい人がいるのなら、鏡達はまもります。まもるための戦いです。」
鏡は空中から地上に向けて手を翳した。陸達へ向けて。
…遅ればせながら静葉は気づいた。何故逆光なのか。その強い日差しの存在に。
「これは、まもるための、戦争です。」
光の、炸裂。『ソーラービーム』の苛烈な光に全員が呑まれた。
「…ッ静葉!陸!」
たんっと地を蹴って鏡へ振り被る影。einだった。怒りにぎらついた目で鏡を見据え『かわらわり』を振りおろす。
受けた鏡の腕は嫌な音を立てて曲がる。けれど鏡はにやりと笑んだ。
einの背後で咬竜が、凍てついた牙を覗かせ笑む。
…しかし噛みつくつもりで大きく開いた口が、ぴたりと止まった。咬竜が苦悶の声をあげてもがきだす。その身体には紫色の炎がまとわりついていた。『おにび』の炎。
「この馬鹿…!」
暁がeinと背を合わせるように割り入った。
「敵に己を知らせて割り入る馬鹿がどこにいますかッ!」
「っう、いちいち煩いなぁ…!」
「貴方が未熟だからですよ!」
暁は一度目を閉じ念じると、かっと開いた。瞳が白目まで真っ黒い。
それをまともに見てしまった咬竜はびたりと動けなくなった。振り向きざまに見据えられた鏡も『くろいまなざし』で縫い止められる。
「…足止め完了。頼みましたよ。」
「やかましい、我に指図するナ。」
だんっと大きく飛んだ黒が宙に浮き、黒い風をその身に渦巻かせた。
「この程度、貴様の手を借りずとも十分ダ!!」
辺り一帯に『あやしいかぜ』が吹き荒れた。動けない咬竜と鏡は為すすべなく暴風に薙ぎ倒される。
どすん、と大きな音が響いた。咬竜が地に伏したのだ。序盤からかなりのダメージを負っている身だ。動けない身体を呪うように身じろぐが、時折くる火傷の痛みに表情が歪む。
…まずは一匹。
もう起き上がれないだろう咬竜に背を向け、暁は鏡へ手を翳す。
しかしそれが甘かった。
到底起き上がれないはずのその身を起こし、咬竜は、『こおりのキバ』を二人に見舞った。
到底起き上がれないはずのその身を起こし、咬竜は、『こおりのキバ』を二人に見舞った。
「…!!」
受け身も取れなかった二人が貫かれる。特にeinには、即死に近い一撃。
「ッがあああ…!!!」
「einッ!?」
「…ッこノ…!」
死にぞこないが、と舌うちした黒が咬竜へ走った。その手に『あくのはどう』を纏って。
だがそれはぴたりと止まった。
背後を取られたことが、気配でわかったから。
「…貴様…!?」
「…星は、星達は。倒れても、傷ついても。」
『あやしいかぜ』でほとんど傷つかなかった星が、そこにいた。
その手に集うのは、眩しいほどの火花。
受け身も取れなかった二人が貫かれる。特にeinには、即死に近い一撃。
「ッがあああ…!!!」
「einッ!?」
「…ッこノ…!」
死にぞこないが、と舌うちした黒が咬竜へ走った。その手に『あくのはどう』を纏って。
だがそれはぴたりと止まった。
背後を取られたことが、気配でわかったから。
「…貴様…!?」
「…星は、星達は。倒れても、傷ついても。」
『あやしいかぜ』でほとんど傷つかなかった星が、そこにいた。
その手に集うのは、眩しいほどの火花。
「冬を護り、連れて帰るんだ。」
…放たれた『でんじほう』が、その場を一掃した。