Sick Love Song
体重を乗せた"とっしん"をひらりと躱して、翼は飴の死角に回り込む。
力関係を考えれば、近距離戦は不利だ。思い切り振るう"ドラゴンテール"は飴を遠くへ弾く。
本来、こんなやり方は、翼は好まない。遠距離からじわじわといたぶるなど――そう思いながら構えた"りゅうのはどう"は、撃ち込むタイミングを僅かにずらしてしまう。
衝撃波は身を翻した飴の隣の地面を削っただけだ。
飴は目を見開いて、高らかに笑った。
力関係を考えれば、近距離戦は不利だ。思い切り振るう"ドラゴンテール"は飴を遠くへ弾く。
本来、こんなやり方は、翼は好まない。遠距離からじわじわといたぶるなど――そう思いながら構えた"りゅうのはどう"は、撃ち込むタイミングを僅かにずらしてしまう。
衝撃波は身を翻した飴の隣の地面を削っただけだ。
飴は目を見開いて、高らかに笑った。
「何を迷ってるんだよ? 俺を殺すんじゃないのか?」
「……ああ、殺すよ」
「そうか、じゃあ」
「……ああ、殺すよ」
「そうか、じゃあ」
飴の姿が掻き消えた。
竜の驚異的な感覚は迅速に飴の場所を突き止めたが、それでは遅すぎた。
凶器を手に、頭上から飴が飛び込む。鋭く尖った岩の断面が翼を切り裂いた。
凶器を手に、頭上から飴が飛び込む。鋭く尖った岩の断面が翼を切り裂いた。
「……ッ!!」
「翼。これは戦争なんだ。卑怯もクソもない、ただの殺しあいなんだよ」
「翼。これは戦争なんだ。卑怯もクソもない、ただの殺しあいなんだよ」
ぐらりとよろめく翼に、飴は再び距離を詰める。"ストーンエッジ"の一撃はよく効いただろう。
皮膜を防護壁のようにして本体への直撃は避けたようだが、代償に皮膜は無惨に裂けていた。
これで翼はもう素早く動けない。
皮膜を防護壁のようにして本体への直撃は避けたようだが、代償に皮膜は無惨に裂けていた。
これで翼はもう素早く動けない。
「だからさァ翼!! 躊躇うなよ!! 俺をブッ殺しに来いよォ!!!」
振りかぶった"アームハンマー"が翼に炸裂――痩躯は吹き飛ぶ、はずだった。
ところが翼は変わらずそこに居る。飴の拳は、透明な壁に受け止められていた。"まもる"だ。
前髪の下から微かに覗く翼の瞳は、妖しく燐光を帯びていた。はっとした飴に、天空から流星の散弾が降り注ぐ。
前髪の下から微かに覗く翼の瞳は、妖しく燐光を帯びていた。はっとした飴に、天空から流星の散弾が降り注ぐ。
「……言われなくてもわかってる」
燃える岩石の豪雨が止んだ。
瓦礫に飲み込まれた飴をちらと見て、強すぎるエネルギーに自らを焼いた翼はため息を吐く。
喉に絡む空気までが燃えるようで、少し咳込みながら。
喉に絡む空気までが燃えるようで、少し咳込みながら。
「わかってるよ、飴、遠慮なんかしやしねぇよ、全力で叩き殺してやる」
言い終わる前に瓦礫が弾け飛んだ。自在に操る包帯で身を守ったらしい。
多少のダメージにはなったようだが、飴はほとんど無傷だった。不敵に笑む。
多少のダメージにはなったようだが、飴はほとんど無傷だった。不敵に笑む。
「これで全力なんて言わないだろうな?」
「勿論だ相棒。でも、お前言い付けられた仕事は何だった?」
「……"冬"の確保」
「勿論だ相棒。でも、お前言い付けられた仕事は何だった?」
「……"冬"の確保」
飴の表情が変わった。
苦々しげに吐き捨てる。翼は、"ソラ"が飛び立った彼方をちらと見た。
苦々しげに吐き捨てる。翼は、"ソラ"が飛び立った彼方をちらと見た。
「俺の相手なんかしてる場合なのか?」
「お前がさっさと殺されてれば……」
「言うと思ったぜ。つまりお前にとっては、俺よりも命令のほうが優先なわけだな?
なら、とことん邪魔しまくってやる。それからゆっくりブッ殺してやるよ。お前の夢も希望もなにもかも亡くした上で」
「翼、お前…!!」
「お前がさっさと殺されてれば……」
「言うと思ったぜ。つまりお前にとっては、俺よりも命令のほうが優先なわけだな?
なら、とことん邪魔しまくってやる。それからゆっくりブッ殺してやるよ。お前の夢も希望もなにもかも亡くした上で」
「翼、お前…!!」
飛び掛かろうとした飴の足元に、ゆるりとした何かが絡み付く。"りゅうのいぶき"は飴の身体の自由を奪い、平伏させた。
藻掻く飴を置いて、"はねやすめ"で治した皮膜を広げて翼は飛び立つ。
藻掻く飴を置いて、"はねやすめ"で治した皮膜を広げて翼は飛び立つ。
「じゃあな、飴。また会おうぜ」
言い残して去った翼は、飴の青く染まった瞳が、ギラギラと異様に輝いたことなど知る由もなかった。
Sick Love Song / Mötley Crüe