くれないわるつ
重たい目蓋をゆっくりと開く。一番に飛び込んできたのは、赤い色。
目を凝らして、何とかそこに薄い色の雲を見つけ、ああこれは空なのかと理解する。
体のあちこちについた砂を払いながら立ち上がり、くるりと体を回転させて回りを見渡す。向こうの方は廃墟らしく、点々と崩れかけた建物が建っていた。
「…ここ…何処や…?」
自分達は確か、こんな所には来ていないはず。そもそも、こんな不気味なほどに赤色の空など見たこともない。確か自分達は、“あの人”の提案でシンオウ地方のとある街を訪れていたはずだ。自分とあの人と、もう一人の友人。
それが何で、こんなところに一人きり放置されている身になっているのだろうか。
それが何で、こんなところに一人きり放置されている身になっているのだろうか。
全く思い出すことが出来ない。
そんな事を思っていた、刹那。
「……ッ!…あ゛あ゛あああぁぁぁッ!!!?」
体の内側から外側に向かって、何かが貫いていこうとしているような激痛が襲ってきた。
腕から、足から、顔から、胸から。
がくがくと震えた足がよろめき、彼は顔から再び地面の上に落ちていった。だがその痛みよりも、体の右半身を襲う痛みの方がはるかに痛い。誰かに助けを求めようとも、口は上手く動かないし、痛みで頭は朦朧としている。
腕から、足から、顔から、胸から。
がくがくと震えた足がよろめき、彼は顔から再び地面の上に落ちていった。だがその痛みよりも、体の右半身を襲う痛みの方がはるかに痛い。誰かに助けを求めようとも、口は上手く動かないし、痛みで頭は朦朧としている。
何が起こっているのか分からないままに死を予感した頃に、襲ってきた時同じく、突如痛みがふっと和らいだ。これ幸いととっさに立ち上がり、向こうに見える廃墟へと向かって駆け出そうとした。
だが、体が思うように動かない。先ほどの様に、痛みが原因な訳でもなさそうだが。
だが、体が思うように動かない。先ほどの様に、痛みが原因な訳でもなさそうだが。
やけに重い右の肩に左手を起き、そしてやっと原因に気づいた。
「………え?」
目を疑う程に異形に変形した右腕。
肌の温もりでない、硬質な冷たさが手に伝わる。
おぼつかない足取りで廃墟の方に向かい、そこに水道を発見した。誰かが水を汲んでいたのだろうバケツ。側面には血がこびりついていたが、彼はそれには目もくれず、バケツの中の水を覗き込んだ。
映る、自分の顔。
肌の温もりでない、硬質な冷たさが手に伝わる。
おぼつかない足取りで廃墟の方に向かい、そこに水道を発見した。誰かが水を汲んでいたのだろうバケツ。側面には血がこびりついていたが、彼はそれには目もくれず、バケツの中の水を覗き込んだ。
映る、自分の顔。
「……な………え……?」
顔の右半分は、右腕と同じように硬い仮面の様な物で覆われていた。しかしそれは仮面ではなく、自分の顔が変形したもののようだった。触れてみると、冷たい中でもちゃんと鼓動はしている。
不意に自分の後ろで、小さな悲鳴が漏れたのを聞いた。ゆっくりとした動きで振り返ると、相手は怯えきった表情でこちらを見ている。相手が慌てて路地裏に逃げこもうとする直前に、既に彼は行動を起こしていた。
自分でも何故、こんなに早い判断が出来たのかは分からない。だが脳は、確かにそう判断したのだ。
不意に自分の後ろで、小さな悲鳴が漏れたのを聞いた。ゆっくりとした動きで振り返ると、相手は怯えきった表情でこちらを見ている。相手が慌てて路地裏に逃げこもうとする直前に、既に彼は行動を起こしていた。
自分でも何故、こんなに早い判断が出来たのかは分からない。だが脳は、確かにそう判断したのだ。
殺さないと、と。
逃げる相手の真後ろまで走り寄り、鋭い爪の生えた右腕を大きく振りかぶる。
*
「なぁお師匠さん。…強くなるには、どうしたらええんかなぁ」
「……そうですねぇ……まずは色んな経験をすることとか…大切だと思いますよ?」
「…なんで?」
「色んな人と出会う。色んな場所に行く。そして世の真理を知り、本当の強さを知る」
「………」
「力だけなら、貴方はもう既に十分強いですよ。……でも、本当の強さは、違うんです」
「………ただの鋼の硬さでない、ただの炎の雄々しさでない、
「……そうですねぇ……まずは色んな経験をすることとか…大切だと思いますよ?」
「…なんで?」
「色んな人と出会う。色んな場所に行く。そして世の真理を知り、本当の強さを知る」
「………」
「力だけなら、貴方はもう既に十分強いですよ。……でも、本当の強さは、違うんです」
「………ただの鋼の硬さでない、ただの炎の雄々しさでない、
本当の…守るための、強さを求めなさい。…“ ”」
*
まもるための、つよさ?
よくわからない、
よくわからない、
つよくなるために、まもるの?
まもるために、つよくなるの?
じゃぁ、たいせつなものをまもるためには、いっぱいいっぱいつよくならないと
いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいつよくならないと
まもるために、つよくなるの?
じゃぁ、たいせつなものをまもるためには、いっぱいいっぱいつよくならないと
いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいつよくならないと
「なぁ…キサラギ」
「俺、強いやろ」
「だから、戻ってきて大丈夫やで」
「………まだ?」
「まだ、たりない……?」
「ううん、俺、もうお前を守れるから………」
「俺、強いやろ」
「だから、戻ってきて大丈夫やで」
「………まだ?」
「まだ、たりない……?」
「ううん、俺、もうお前を守れるから………」
だってほら。
俺は敵からちゃあんと守れた。
俺じしんを。
大丈夫。
俺が守る。
だって、俺、強いから。
もっともっと、強くなれるから。
俺は敵からちゃあんと守れた。
俺じしんを。
大丈夫。
俺が守る。
だって、俺、強いから。
もっともっと、強くなれるから。