きりさきじゃっく
赤い空、乾いた空気、漂う血の臭い。
「…本当、趣味が悪い」
「…本当、趣味が悪い」
クレセリアは苦々しげに呟いた。誰に聞かせるわけでもないし、独り言が多い質でもないのだが。
「どうかなさいましたか?」
後ろから追いかけて来る声が、砂を蹴る音に混じって聞こえてきた。ちらりと後ろを振り向くと、まだ、追ってきている。碧の長髪の、神父。
後ろから追いかけて来る声が、砂を蹴る音に混じって聞こえてきた。ちらりと後ろを振り向くと、まだ、追ってきている。碧の長髪の、神父。
「私も疲れるのは苦手なんですよ、早く諦めなさい」
「奇遇ですね、私もです。でも諦めません」
廃墟の裏を何回も何回も駆け回っているが、一向に神父は追うことを止めなかった。一回の問答の後、クレセリアは心の中で舌打ちをする。知った顔がいたから手始めに、と思ったのが間違いか。
「奇遇ですね、私もです。でも諦めません」
廃墟の裏を何回も何回も駆け回っているが、一向に神父は追うことを止めなかった。一回の問答の後、クレセリアは心の中で舌打ちをする。知った顔がいたから手始めに、と思ったのが間違いか。
「…ふふ、そっちは」
神父の声が先程よりも小さく耳に届く。何と言ったのか考える前に、クレセリアは察した。
「…行き止まり、」
「えぇ、そうです」
崩れたコンクリの中から飛び出す剥き出しの鉄筋。どうにか上を歩けそうだが、足が無事でいられるはずはない。
大きく息をついた神父の聖書のページを捲る音。後ろをまた振り返ると、さほど遠くない位置で、神父が微笑んでいた。
「…行き止まり、」
「えぇ、そうです」
崩れたコンクリの中から飛び出す剥き出しの鉄筋。どうにか上を歩けそうだが、足が無事でいられるはずはない。
大きく息をついた神父の聖書のページを捲る音。後ろをまた振り返ると、さほど遠くない位置で、神父が微笑んでいた。
―――お久しぶりです
彼と同じ顔の天空神は、この前そう言って笑った。
とても綺麗な笑顔、だったのに。
彼と同じ顔の天空神は、この前そう言って笑った。
とても綺麗な笑顔、だったのに。
「哀れだね、クレセリア」
恐ろしく優しく耳に飛び込んだ声が、体を冷やす。神父の真後ろに一瞬横切った黒い影。影が世界に溶けた瞬間、神父の長い髪を風が揺らした。
赤が飛び散る。
白を切り裂く。
桃が散り行く。
赤が飛び散る。
白を切り裂く。
桃が散り行く。
「……え」
だが、<クレセリア>は立っていた。
飛び散った赤と、
裂かれた白と、
切れ切れの桃と共に。
飛び散った赤と、
裂かれた白と、
切れ切れの桃と共に。
確かに、かぜは正確に彼女を狙っていたのに。さしもの神父も驚きは隠せていない様だった。今まで全てを切り裂いてきたかぜ。でも彼女は、そこにいる。ふらりとも身体は揺らがず、目に弱さも見せず、“翠”を見据えていた。
「なんで…」
「…『本当の強さを求めなさい』と」
「…『本当の強さを求めなさい』と」
クレセリアの口が動く。頬から流れる赤色は、地面に落ちると、消えた。
クレセリアはなかば叱るように、彼に言い放つ。
クレセリアはなかば叱るように、彼に言い放つ。
「教えたのは貴方でしょうが!!」
*
神父は走っていた。まるで何かから逃げるように、脇目もふらず。神父の進む方向と反対側には、ただ崩れた廃虚があるのみ。その様子を、ダークライは上空から見下ろしていた。
「クレセリア、君は本当に間抜けだ。やはり、君をこのタイミングで招いたのは間違いだったかな?」
住人を招き始めた頃と比べて悪夢の世界は着々とその色を増している。壊れた者、壊された者、そして壊す者。
住人を招き始めた頃と比べて悪夢の世界は着々とその色を増している。壊れた者、壊された者、そして壊す者。
「もう少し早くても……おや」
どこかで、ひびが割れた音がした。同時に、声が届く。
――もう俺は――
――此処、何処なんだろう――
――此処、何処なんだろう――
ダークライは、 た。
「そうかクレセリア、そんなに君は、また皆を絶望に落としたいのか」
「では、どちらが悪だか、そろそろ審判して貰おうか?」
「では、どちらが悪だか、そろそろ審判して貰おうか?」
ダークライの 声が、世界に響く。
*
翠の足がもつれた。乾いた砂を全身に浴びた翠は、それを払うこともなく、立ち上がることも無かった。震えて、怯えて。
知らない顔と知らない声が頭の中を駆ける。みんなわらっている。わたしといっしょにわらってる。
知らない顔と知らない声が頭の中を駆ける。みんなわらっている。わたしといっしょにわらってる。
「…えんろん、かいえん…」
青い髪と赤い髪の可愛い弟子たち、
「カルロ……」
わたしの、しんゆう
青い髪と赤い髪の可愛い弟子たち、
「カルロ……」
わたしの、しんゆう
神父に、暗い影が差した。振り返った先には、
「……」
無言で巨大な爪を構えていた、<陸>の姿。