あるはれたひのこと
場に似合わない軽快な鼻唄が、何処からか聞こえた。ぼろぼろに崩れた廃墟の道をそんな愉快げに誰が歩くのか、と見てみれば、また奇妙な光景であった。
緑色の、腰まで届くような長い髪を揺らす神父。――よくよく見ればその後ろにローブを羽織った男もいるが、何故だかフィルターがかかったように、彼の姿だけ確認しづらかった。ぼやけて、霞んで、
まるで幽霊のよう。
まるで幽霊のよう。
「にしても、カルロも炎龍も何処いったんでしょうかねぇ…無事でいればいいんですが」
「……」
「……」
神父はきっと、後ろの男に話しかけたのだろう。だが当の本人は、声は聞こえているだろうに、返事を返さなかった。
それでも神父はそれに続けて話しかける。
それでも神父はそれに続けて話しかける。
自分のペースで話を進めていた神父に、海淵と呼ばれていた男がここでようやく“話しかけた”。
神父は後ろを振り返り、ん、と首を傾げる。海淵は口を開き、単調な口調で問い出す。
神父は後ろを振り返り、ん、と首を傾げる。海淵は口を開き、単調な口調で問い出す。
「…“カルロ”と“炎龍”というひとたちは、そんなに大切なひとなのか」
「えぇ、そりゃあもう」
「えぇ、そりゃあもう」
「だけどアンタは、その“炎龍”に殺されかけた」
「…」
「ここがあの女が言っていたように、夢の中だとしても、それは“炎龍”が望んだことだ」
「そう、ですね」
「…」
「…」
「…アンタはそれでも、たすけるのか」
「…」
「ここがあの女が言っていたように、夢の中だとしても、それは“炎龍”が望んだことだ」
「そう、ですね」
「…」
「…」
「…アンタはそれでも、たすけるのか」
それはまるで、空瑚のことを気遣ったような発言にも取れた。お前は救いたくても、相手は殺したいと思っている。
死ににいくようなものだ、と。
死ににいくようなものだ、と。
空瑚は何かを言い返そうと口を開いたが、またすぐに口を閉じた。しばらく考えた後、また口を開く。
不器用に微笑みながら、悲しみながら、彼は言った。
不器用に微笑みながら、悲しみながら、彼は言った。
「私だって、…こんな恰好してても、聖人でも、今は神ですらないんです。
正直死ぬのは怖いですし、死にたくはありません。…でも」
正直死ぬのは怖いですし、死にたくはありません。…でも」
彼は一度言葉を切り、まっすぐ海淵の目を見た。
「例え夢の中でも、例え名前や姿が変わっても、例え記憶がなくなっても、私は“空瑚”。私は貴方たちの師匠、貴方たちは私の弟子。
…だから、私には――」
…だから、私には――」
空瑚の言葉は、大地の揺れによって遮られた。地面が大きな音を立てて振動し、やがて地面には亀裂が入る。空瑚が海淵の手を取り、崩れ出す建物の群れから逃げようと回りを見渡した。
空瑚の目は、一点を見据えて止まる。
空瑚の目は、一点を見据えて止まる。
「…炎龍」
「…!!」
「見つ……けた」
「…!!」
「見つ……けた」
大陸神<グラードン>が、吼えた。