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あかいろえのぐせっと

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あかいろえのぐせっと


ただただ眠り続けたまま、何日も起きていない探検隊があるという。探険隊<クローチカ>の隊員たちの話を聞いたロコに、直ぐ様不安が過った。
探険隊の名は<ラズリーズ>。ロコにとって大切な、大切な人間が居る、探険隊。

*


背に大きなリュックを背負い、その探険隊の元を訪ねると、出てきてくれたのはラシルだった。彼がまだ眠りに落ちていなかったことに大きく安堵しながら、だがしかし、その光景に再び不安を覚える。
まさに“死んだように眠っている”探険隊<ラズリーズ>の面々であろう人たち。寝顔に呼吸に違いさえあれど、誰も彼も起きるような気配は微塵もなかった。

「…そっちの探険隊は、大丈夫な訳?」
「あ…うん、まだ」
「……そ、うちもまだ、この人達だけなんだけど」

ラシルは数歩歩き壁にもたれると、疲れたように息を吐いた。

「隊長に副隊長、それに主戦力サン達がこんな状態じゃあ、まとまるもんもまとまんない。みんなパニック状態だよ」
「…そう、なんだ」

思わず声が震えた。ラシルを追っていた瞳を再び眠り続ける彼らの方に向ける。そしてまた、見比べるようにラシルの方に向き直った。
疲れた瞳、落ちる肩、行き場を失った、指。
ロコはラシルの横に座ると、リュックを下ろす。そしておもむろに、リュックの中に手を突っ込んだ。

「…?ロコ、何やって…」
「…ラシル君、今日は…」
「今日は?」

「今日は、一緒に寝よう?」

言ってロコは、一枚の暖かそうな毛布をリュックから取り出す。ラシルの顔がみるみる赤くなっていったのが、流石のロコにも見てとれた。

「なっ…ななな何言ってんの!?それは俺をからかって言ってるわけ?そういう発言はTPOを踏まえて時と場合をかんが……いやそんな訳ないよねごめん」

よくよく考えてみなくても、ロコがいきなりそんな破廉恥な事を言い出すはずはまず無かった。ラシルは口の辺りに手を当て、更にがくりと落ち込む。顔を赤くしたり早口になったりと忙しそうだったラシルが落ち着いたのを見て、ロコは案ずる様に声をかけた。

「ラシル君、今、眠くない…のかな?」
「…ん、あぁ…多少眠たいけど……うん、不用意に寝るのもな、って思って」
「…そう、だよね」

怖いもん、ね。
言いかけた言葉を、ロコは飲み込んだ。ぎゅうと抱き締めた毛布はまだ、冷たい。

「…でもラシル君も、疲れてるよね…?」
「……」
「だったら、ちゃんと…寝ないと。私も眠くなってきたし、だから、」
「……あー、分かった分かった。寝れば良いんでしょそれで満足なんでしょ?」

ラシルは立ち上がると、ロコの手をしっかり掴む。ロコが何か言う前に、ラシルは空間の奥の方へずかずかと歩いていった。先程より少しだけ開けた、心ばかりの藁もある空間。ラシルは2つに分けられていた藁をひとつにかき集め、ぽんぽんと叩く。先にその上に寝転がると、それを見たロコは、ラシルの横にすりよるように体を藁に預けた。
一枚の毛布を半分こ。毛布から伝わるお互いの暖かさ。
安心してロコは、瞳を閉じた。それを確認したラシルも、やがて目蓋を下ろす。


さながら、<<眠りに落ちる>>という表現がぴったりだった、夜。





*


鉄臭い血の香りで目が覚めた。最悪の目覚め方だ。
ベッドから半身を起こして周りを見れば、目の前に広がる血の海。死体の山。
その中で一人、グレーのタートルネックを僅かに血で濡らした男が立っていた。男は女が目を覚ましたのを見ると、声をかける。

「…ベッド、汚れた?」
「別に」

大きく伸びをして、ベッドの上に投げておいたブーツに手を伸ばす。白いベッドの上でそれを履き、ベッドから降りた。転がる幾つもの死体を全て軽々と避けて、更に男の横もすり抜ける。

「中に入れさせないでよ、こんな汚いの」
「…ごめん」
「次やったら、焼く」

歩みを止めない女の後ろを付いていく。自分にはひきとめることも腕をつかむことも出来ないけれど、男は歩いた。
しばらく歩いた彼女はやがて、ころりと態度を変えて男の方を向いた。嗚呼、なんて楽しそうな、罪な程に美しい笑顔。

「牢、次はどこに行こうかしら」
「…澪が、行きたいところに」
牢が男の名前。
澪が女の名前。


「二人は、お互いの名前を初めから知っていた」
「いつも一緒にいるのが当たり前な二人が、名前を知らないわけがない」

ダークライはそう呟く。この二人の願いもちゃんと、叶えてやることができた。

「愛とは素敵な力だよ、人を狂わせる感情とは、元を辿ればたった一つだからね」

人を愛す、故に他人を憎む。
自己を愛す、故に人を嫌う。

最初から何も愛さなければ、人は壊れない。
時がただゆるりゆるりと、壊れない肉体を運んでくれる。


「それでも愛を求めるとは、本当に素敵なことだ」

言うとダークライは、また空間に溶けて消えた。
二人は変わらず歩いて行く。
“いつもと同じように”、歩いて行く。






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