終わりを告げる鐘が鳴る
何が起きたかわからない顔で崩れる岬。
何が起きたかわからない顔で見下ろす栞。
「…え?」
栞が狙ったのは喉だ。人の胴など、短い十字架で寸断できるはずないのに。
そう栞が戸惑ったのはきっと1秒にも満たなかっただろう。
岬の身体から這い出た爪に、貫かれるまで。
何が起きたかわからない顔で見下ろす栞。
「…え?」
栞が狙ったのは喉だ。人の胴など、短い十字架で寸断できるはずないのに。
そう栞が戸惑ったのはきっと1秒にも満たなかっただろう。
岬の身体から這い出た爪に、貫かれるまで。
ごーん、ごーん。熱風で掻き鳴らされる鐘の音。
ごぼ。呻きの代わりに血泡が零れた。
ぼたぼたと岬の肉が落ちる。手と腕とその主が露わになった。睨みつけようと思ったが、それは叶わない。
そして。
栞を追ってきた静葉は、それを見ていた。
ぼたぼたと岬の肉が落ちる。手と腕とその主が露わになった。睨みつけようと思ったが、それは叶わない。
そして。
栞を追ってきた静葉は、それを見ていた。
よく知る少女が、よく知る青年の手の中で、焼き殺される様を、見ていた。
「ほ…」
言葉は、続かない。
『わかりなさい。アレを殺さなければ、人が死ぬのよ。』
栞の最後の言葉が今一度胸に刺さった。刺さったけれど信じられなかった。
背中の翼はもっと生き物らしくなかったか?凶悪にごつごつ歪み、皮膜を血管で覆う姿は化け物としか思えず。
その血管は背中を中心にして、身体にも這い回っていた。腕、足、首、胴。
首から顔に、這った血管の群れの中で
濁った緑の瞳が、異質な光を放っていた。
信じたくなかった。
コレが焔だなんて。
言葉は、続かない。
『わかりなさい。アレを殺さなければ、人が死ぬのよ。』
栞の最後の言葉が今一度胸に刺さった。刺さったけれど信じられなかった。
背中の翼はもっと生き物らしくなかったか?凶悪にごつごつ歪み、皮膜を血管で覆う姿は化け物としか思えず。
その血管は背中を中心にして、身体にも這い回っていた。腕、足、首、胴。
首から顔に、這った血管の群れの中で
濁った緑の瞳が、異質な光を放っていた。
信じたくなかった。
コレが焔だなんて。
崩れ落ちる炭に混じって、からん、十字架が落ちてきた。
こちらへ一歩踏み出してくる。その過程で転がっていた薫をぐじゃりと踏む。
邪魔そうにぽんと蹴りあげて左手を振る。三枚に卸されてぼたぼたと落ちた。
そして何事もなかったように再びこちらへ。もう、静葉は呼吸すらできなかった。
焔。どうしたの。なにがあったの。
そんな言葉が頭で上滑っていった。焔と呼ぶことすら…心が拒否している。
ふいに静葉は気がついた。焔の目がこちらを向いていない。おそるおそる視線の先を確認して、全身総毛立った。
こちらへ一歩踏み出してくる。その過程で転がっていた薫をぐじゃりと踏む。
邪魔そうにぽんと蹴りあげて左手を振る。三枚に卸されてぼたぼたと落ちた。
そして何事もなかったように再びこちらへ。もう、静葉は呼吸すらできなかった。
焔。どうしたの。なにがあったの。
そんな言葉が頭で上滑っていった。焔と呼ぶことすら…心が拒否している。
ふいに静葉は気がついた。焔の目がこちらを向いていない。おそるおそる視線の先を確認して、全身総毛立った。
そこには呆然と動かない、茶緑の髪の青年がいたからだ。
「あ…!」
途端、大量の静止画が脳内にぶちまけられた。
塔に連れられてきた彼。共に塔を飛び出した彼。一緒に旅した彼。過去へ行く直前の彼。
たくさんのたくさんの色あせた写真が積み重なる。最後に数枚、鮮明な写真がコマ送りの動画を作った。
暗い暗い穴の中へと。揺れるポニーテール。ちらり流された金の目。
彼が
消 エ テ イ ク 。
途端、大量の静止画が脳内にぶちまけられた。
塔に連れられてきた彼。共に塔を飛び出した彼。一緒に旅した彼。過去へ行く直前の彼。
たくさんのたくさんの色あせた写真が積み重なる。最後に数枚、鮮明な写真がコマ送りの動画を作った。
暗い暗い穴の中へと。揺れるポニーテール。ちらり流された金の目。
彼が
消 エ テ イ ク 。
気がついたら静葉は、彼の腕にきつくしがみついていた。
「…!?」
驚いたのは樹の方だった。焔も動揺した様子を見せる。
静葉はきつく、きつくきつくその腕を離そうとしなかった。動画から目をそむけるように頭をぎゅっと押し付けていた。
もう二度と、
もう二度と離すものか。
「…!?」
驚いたのは樹の方だった。焔も動揺した様子を見せる。
静葉はきつく、きつくきつくその腕を離そうとしなかった。動画から目をそむけるように頭をぎゅっと押し付けていた。
もう二度と、
もう二度と離すものか。
もう二度と 失うものか!
…ちかっ。上空で何かが瞬く。
次の瞬間、二人は光の帯に呑み込まれて消えた。
次の瞬間、二人は光の帯に呑み込まれて消えた。
*
ばきんっ。
突然目の前でへしおれた物干し竿に、たまたま居合わせた冥は目を瞠った。
「…え?」
折れた竿を見下ろす。
突然目の前でへしおれた物干し竿に、たまたま居合わせた冥は目を瞠った。
「…え?」
折れた竿を見下ろす。
そこには樹が転がっていた。
…さすがに、絶句した。一緒に転がる女は気を失っている。
樹も気は失っていないものの明らかに呆然としていて。
冥は少しだけ我に返り、逃げるという選択肢を思いつく。でもそれより早く樹がこちらを向いてしまった。
元々開いていた瞳孔が
ますます大きく見開かれた。
樹も気は失っていないものの明らかに呆然としていて。
冥は少しだけ我に返り、逃げるという選択肢を思いつく。でもそれより早く樹がこちらを向いてしまった。
元々開いていた瞳孔が
ますます大きく見開かれた。
「…マイ…ヨール…。」
そのまま、樹も意識を手放した。
傍に転がっていたのは卵型のバッジ。そして、音もなく砂となった。
傍に転がっていたのは卵型のバッジ。そして、音もなく砂となった。