麗人の家
君は兼ねてよりそうなりたいと思っていたね。
何故知っているか、だって? それは君のほうがわかっているだろう。
私はこの街をずっとずっと見つめてきたんだよ。君が生まれる、はるか昔から。
何故知っているか、だって? それは君のほうがわかっているだろう。
私はこの街をずっとずっと見つめてきたんだよ。君が生まれる、はるか昔から。
さて本題に入るのだけれど、君が欲しいもの、というのが――。
そうだ、前者は比較的容易に手に入れられるだろう。私の力を持ってすれば。
しかし、後者は…君は覚悟は出来ているだろうね?
それが彼の自由を根こそぎ奪うことになっても、後悔も懺悔も、私は聞き飽きたのだから。
心の準備が出来たら、もう一度そう、強く強く願えばいい。
そうだ、前者は比較的容易に手に入れられるだろう。私の力を持ってすれば。
しかし、後者は…君は覚悟は出来ているだろうね?
それが彼の自由を根こそぎ奪うことになっても、後悔も懺悔も、私は聞き飽きたのだから。
心の準備が出来たら、もう一度そう、強く強く願えばいい。
君は、
もうそれを手に入れていることだろう。
*
真っ赤な空には不釣合いの、真っ白に洗い上げた布切れ。
ぱん、と水気を切って、柱の間に張った紐に引っ掛ける。
――お前らな、色の違う洗濯物は分けて洗えってあれほど説教したろうが!
反芻される言葉に苦笑して、額の汗を手の甲で拭う。
「わかってるよマイ・プレジデント、洗剤の量も間違えなかった」
洗濯機などという便利グッズは発見できなかったので、台所(らしき場所)で見つけた大きめの鍋を洗い桶の代わりにした。
この廃屋には、結構モノが揃っている。そうだ、洗剤はあった。
彼の家にあったものと同じ銘柄で助かった…専用スプーン擦り切り2杯を覚えていたから。
今の自分の仕事振りを見たら、彼はきっと褒めてくれるだろう。
きちんと部屋中、瓦礫を取り除いて埃を掃きだし、適当な布切れを洗ってシーツにした。
ここまでで所要時間、丸三日。随分とくたびれたが、まだ休むわけにもいかない。
ぱん、と水気を切って、柱の間に張った紐に引っ掛ける。
――お前らな、色の違う洗濯物は分けて洗えってあれほど説教したろうが!
反芻される言葉に苦笑して、額の汗を手の甲で拭う。
「わかってるよマイ・プレジデント、洗剤の量も間違えなかった」
洗濯機などという便利グッズは発見できなかったので、台所(らしき場所)で見つけた大きめの鍋を洗い桶の代わりにした。
この廃屋には、結構モノが揃っている。そうだ、洗剤はあった。
彼の家にあったものと同じ銘柄で助かった…専用スプーン擦り切り2杯を覚えていたから。
今の自分の仕事振りを見たら、彼はきっと褒めてくれるだろう。
きちんと部屋中、瓦礫を取り除いて埃を掃きだし、適当な布切れを洗ってシーツにした。
ここまでで所要時間、丸三日。随分とくたびれたが、まだ休むわけにもいかない。
次は壊滅状態の台所だ。これできっと今日を費やす。
蛇口は捻ればちゃんと水が出たが、あんな黴臭い場所で暮らしたくはない。
そうだ、もしこの家がちゃんと綺麗になったら…誰かを誘ってみようかな?
二人で片付ければ、一人でやるよりは早く終わるだろう。それに、ひとりぼっちでなくなる。
良いことだらけだ。そう思えば、片付けに向かう足取りも軽くなる。
蛇口は捻ればちゃんと水が出たが、あんな黴臭い場所で暮らしたくはない。
そうだ、もしこの家がちゃんと綺麗になったら…誰かを誘ってみようかな?
二人で片付ければ、一人でやるよりは早く終わるだろう。それに、ひとりぼっちでなくなる。
良いことだらけだ。そう思えば、片付けに向かう足取りも軽くなる。
そういえば。ガラスのない窓から身を乗り出して、赤い空を見上げた。
太陽なんてない空。そこに、何時もと同じ黒い影を見つける。
定刻通り。きい、ん、と空気を軋ませて、細身で小柄の軍用機が飛んで行った。
あれは誰か、知っている。搭乗者の顔が見えるわけもない。けれど確信、あれは。
「マイ・スウィートダーリンなのだ! なんちって…おお、恥ずかしッ! 俺詩人みたいっ」
幸せな気分、そのまんまで台所へ。口元に浮かぶ笑いを止めようも無く。
「俺今恋してる。すげぇ幸せ…わーもうドラマチックだなぁ俺様ってば」
そうだ。さっさと片づけを終わらせて、テキトーな人捕まえて一緒に住もうって言ってみよう。
もし巧く行ったら、俺様オノロケしちゃう! 楽しみだ!!
太陽なんてない空。そこに、何時もと同じ黒い影を見つける。
定刻通り。きい、ん、と空気を軋ませて、細身で小柄の軍用機が飛んで行った。
あれは誰か、知っている。搭乗者の顔が見えるわけもない。けれど確信、あれは。
「マイ・スウィートダーリンなのだ! なんちって…おお、恥ずかしッ! 俺詩人みたいっ」
幸せな気分、そのまんまで台所へ。口元に浮かぶ笑いを止めようも無く。
「俺今恋してる。すげぇ幸せ…わーもうドラマチックだなぁ俺様ってば」
そうだ。さっさと片づけを終わらせて、テキトーな人捕まえて一緒に住もうって言ってみよう。
もし巧く行ったら、俺様オノロケしちゃう! 楽しみだ!!
*
彼の望んだものは美しさ。
それは単に彼の外面に限った話ではなかったのでね、少々気合を入れてしまった。
何、苦しむばかりが悪夢ではない、悪夢といえど、夢は夢――、楽しむことも必要だろう?
それは単に彼の外面に限った話ではなかったのでね、少々気合を入れてしまった。
何、苦しむばかりが悪夢ではない、悪夢といえど、夢は夢――、楽しむことも必要だろう?
君は楽しんでいるかい? この、赤と黒に堕ちた世界で。