死神のバラッド (後編) ◆Ql27/Ynx16
一方、第二ラウンドは既に始まっていた。
『チッ! 蛇みたいにしつこい野郎だぜ!』
闇夜の鬼ごっこは死神の方が追われていた。
頭に疑問符を浮かべたリュークが玄野を撒こうとマンション目指して突っ込んだ。
壁を抜けようとしたのだろうが慌てていた為腹の部分で引っかかる。
頭に疑問符を浮かべたリュークが玄野を撒こうとマンション目指して突っ込んだ。
壁を抜けようとしたのだろうが慌てていた為腹の部分で引っかかる。
いわゆる頭隠して尻隠さず、外では残された下半身がバタバタもがく。
まるで罠にはまったコキブリだ。
まるで罠にはまったコキブリだ。
「ハアッハアッ! マヌケな星人めッ、とっととくたばれッ!!」
息を切らせて追いついた玄野がすぐさまリュークのケツ目掛けて引き金を引く。
一瞬後にボゴッとケツが膨らみ爆発した。
一瞬後にボゴッとケツが膨らみ爆発した。
『ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!!!!!』
リュークの悲鳴がマンション内部に響き渡る。
死神に痔があるのかは不明だが痛みが相当なものらしい。
しかしそれが幸いした、ショックでスポンと下半身が抜けリュークは無事マンションの中に逃れる事に成功した。
死神に痔があるのかは不明だが痛みが相当なものらしい。
しかしそれが幸いした、ショックでスポンと下半身が抜けリュークは無事マンションの中に逃れる事に成功した。
『ど、どこだ!? どこに隠れりゃいいんだ!?』
だがすぐに玄野はやってくる筈だ。
ショックを引き摺ったリュークはとにかく隠れようととある部屋へと飛び込んだ。
ショックを引き摺ったリュークはとにかく隠れようととある部屋へと飛び込んだ。
「ハア!! ハアッ!!」
一方の玄野も余裕は殆ど無い状態であった。
いくらタエちゃんの為とはいえ一時間以上走り続けて保つ訳がない。
足がもつれてしまい、壁に身体を預けながらマンションの内部を捜索する。
いくらタエちゃんの為とはいえ一時間以上走り続けて保つ訳がない。
足がもつれてしまい、壁に身体を預けながらマンションの内部を捜索する。
「奴は、何処だッ―――!」
数十の部屋に区切られ、隠れる場所は数え切れない。
しかも相手は壁を抜けられるのだ、普通に考えればこの状況は玄野が誘い込まれたとも言える。
もし壁を突き抜けて死神の鍵爪が襲い掛かってきたとしたらスーツの無い生身の身体は容易く切り刻まれてしまうだろう。
しかも相手は壁を抜けられるのだ、普通に考えればこの状況は玄野が誘い込まれたとも言える。
もし壁を突き抜けて死神の鍵爪が襲い掛かってきたとしたらスーツの無い生身の身体は容易く切り刻まれてしまうだろう。
すぐに血痕が見付かった。
星人が引っかかっていた部屋から階段を通じて点々と上の階へと続いている。
張り詰めた空気の中、玄野は慎重に歩を進めた。
星人が引っかかっていた部屋から階段を通じて点々と上の階へと続いている。
張り詰めた空気の中、玄野は慎重に歩を進めた。
「そこだッ!!」
階段の途中、血痕がまだ続く中でいきなり玄野が反応した。
銃口の先にあったのは何の変哲も無いただの壁。
しかしギョーンと特徴有る音が響いた数秒後、壁の破片と共に血飛沫が散った。
それはまさしく死神が待ち構えていた痕跡であった。
銃口の先にあったのは何の変哲も無いただの壁。
しかしギョーンと特徴有る音が響いた数秒後、壁の破片と共に血飛沫が散った。
それはまさしく死神が待ち構えていた痕跡であった。
『な、何で俺が潜んでいると判ったんだ? あの小僧本当に人間か?』
再び逃げる羽目になるリューク。
死神の不可視と不死に続き壁への潜伏までも見破られ衝撃は大きかった。
死神の不可視と不死に続き壁への潜伏までも見破られ衝撃は大きかった。
彼が知らないのも当然であるがXショットガンは元々星人内部の弱点を透過して探る機能が付いていた。
その応用で壁や障害物の背後を透過してモニターで確認する事ができる。
だからこそ玄野は躊躇い無くマンションに飛び込めたのであった。
その応用で壁や障害物の背後を透過してモニターで確認する事ができる。
だからこそ玄野は躊躇い無くマンションに飛び込めたのであった。
一旦後退し射撃可能になるのを見計らって先に進む。
連射の制限に対処する為玄野が選んだ方法だ。
その間逃げられるかもしれずもどかしいが、今はこうするしか無かった。
連射の制限に対処する為玄野が選んだ方法だ。
その間逃げられるかもしれずもどかしいが、今はこうするしか無かった。
(次で決めるッ! これ以上は正直ヤバイッ!)
一発は受ける覚悟で突っ込まれたら非常に危うい。
その時回避するにはもう体力が限界近い。
その時回避するにはもう体力が限界近い。
「ハア!! ハアッ!!」
数秒壁を背にして休息をとる。
Xショットガンを見ればドアが開きっぱなしの正面の一部屋、その奥に見えるクローゼットを透かして異形がはっきりと映っていた。
Xショットガンを見ればドアが開きっぱなしの正面の一部屋、その奥に見えるクローゼットを透かして異形がはっきりと映っていた。
(やれるッ!)
条件は最高だ、Xショットガンは射程が一キロと長く狙撃銃としても高性能だ。
狙いはただ一点、その頭部。
出力最大でそこを狙う。
狙いはただ一点、その頭部。
出力最大でそこを狙う。
(タエちゃん俺は必ず―――)
絶対に外せないワンショット、恋人を想いながら引き金を玄野は引いた。
ギョーン!!
そして信念の一発は確かに放たれた。
Xショットガンの機能をフルに生かした一撃だ、
狙いは寸分違わずクローゼットの扉を粉砕した。
Xショットガンの機能をフルに生かした一撃だ、
狙いは寸分違わずクローゼットの扉を粉砕した。
ビヨヨヨ~~~~~~~~~~~~~ン!!! ビヨンビヨ~~~~~~~ン!!!
「うおっ!!! うわあッッッッ!!!!!」
扉は爆ぜた、そして同時にXショットガンが透かして見せたその”異形”がバネ仕掛けのように飛び出してきた。
その勢いに喰い付かれると思った玄野は叫びながら飛びのいた。
その勢いに喰い付かれると思った玄野は叫びながら飛びのいた。
「ハッ!! ハッ!! な、なんだよ……こいつはッ! 何でこんなものが飛び出してくるんだッ!!」
恐怖にかられ、カチカチと撃てない銃の引き金を夢中で引き続けていた玄野はやがてその正体に気付く。
ビヨヨヨ~~~ンと飛び出してきたのはリュークに良く似た玄野よりデカい人形だ。
その背後には巨大なバネが伸びたり縮んだり繰り返している。
その背後には巨大なバネが伸びたり縮んだり繰り返している。
よく見れば人形の首から上が消えている。
自分が止めと思って撃ったのはこいつだったのかとようやく玄野は知る事ができた。
自分が止めと思って撃ったのはこいつだったのかとようやく玄野は知る事ができた。
玄野は知らなかったがそれは参加者の一人が持っていたひみつ道具の一つ「びっくり箱ステッキ」の効果。
そのステッキに触れたものはドアだろうが机の引き出しだろうが一度だけびっくり箱にしてしまうもの。
人を驚かす為の22世紀のおもちゃが今ここで一人の死神が身を隠す隙を作ったのであった。
そのステッキに触れたものはドアだろうが机の引き出しだろうが一度だけびっくり箱にしてしまうもの。
人を驚かす為の22世紀のおもちゃが今ここで一人の死神が身を隠す隙を作ったのであった。
「ちく、しょうッ―――!!」
星人は既にマンションの何処にも見当たらなかつた。
その事に気付いた玄野は追いかけようにも既に体力は限界だ。
できる事といえば八つ当たり気味に首の無い人形を殴りつける事ぐらいであった。
その事に気付いた玄野は追いかけようにも既に体力は限界だ。
できる事といえば八つ当たり気味に首の無い人形を殴りつける事ぐらいであった。
【C-4・市街地/1日目・黎明】
【玄野計@GANTZ】
【状態】健康、疲労大
【装備】Xショットガン@GANTZ
【持ち物】 支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:タエちゃんを救う為、参加者を殺害していく
1:ひとまず休憩する。
2:加藤と坂田については後で考える
【備考】
※カタストロフィ、タエを追って敵母船へ突入した直後から参戦しています
【玄野計@GANTZ】
【状態】健康、疲労大
【装備】Xショットガン@GANTZ
【持ち物】 支給品一式、不明支給品0~2
【思考】
基本:タエちゃんを救う為、参加者を殺害していく
1:ひとまず休憩する。
2:加藤と坂田については後で考える
【備考】
※カタストロフィ、タエを追って敵母船へ突入した直後から参戦しています
『ハーッ、死ぬかと思ったぜ……』
マンションを命からがら逃げ出してきたリュークは街灯すら無い脇道でようやく安堵した。
玄野が追ってこないか心配だったがどうやらうまく撒けたようだ。
バッグにあった妙ちきりんな支給品、説明を読んだ時は疑問だったが一応役に立ったらしい。
玄野が追ってこないか心配だったがどうやらうまく撒けたようだ。
バッグにあった妙ちきりんな支給品、説明を読んだ時は疑問だったが一応役に立ったらしい。
『それにしても全く一体何だってんだ、俺何か悪い事でもしたか?』
連れてこられた手段は不明、姿は見られているわ、死にかけるわ碌な事が続かない。
死神界が始まって以来こんな経験をしたのは俺が初めてじゃなかろうか。
死神界が始まって以来こんな経験をしたのは俺が初めてじゃなかろうか。
幸いなのは生命力が人間レベルまで落とされていなかった事か。
銃創は四箇所、肩と胸に臀部そして腕。
屈強な人物でも致命傷になりかねないが死神の肉体はタフネスである。
既に出血は止まり黒いかさぶた状の何かで傷口は覆われつつあった。
しかし普通であれは一瞬で塞がるのに比べその速度は遥かに遅い。
完全に治るには最低半日は必要だろう。
銃創は四箇所、肩と胸に臀部そして腕。
屈強な人物でも致命傷になりかねないが死神の肉体はタフネスである。
既に出血は止まり黒いかさぶた状の何かで傷口は覆われつつあった。
しかし普通であれは一瞬で塞がるのに比べその速度は遥かに遅い。
完全に治るには最低半日は必要だろう。
『身体に何かされてんのか? そんな方法死神の俺でも全然知らねっつーのに』
傷口を触って鋭い痛みに顔を顰める。
元々死神にも痛覚はあるがコイツは人間並みの感度じゃねえのかと愚痴の一つも吐きたくなる。
元々死神にも痛覚はあるがコイツは人間並みの感度じゃねえのかと愚痴の一つも吐きたくなる。
『ったく、アイツもひでーな。当たり所が悪けりゃ本当に死んじまう所だったじゃねーか』
そして玄野にも不満がある。
いくら死神でも問答無用で撃ってくるとはどういう了見なのか、昔の人間はもっと死神を恐れ畏まってのによとブツクサ呟く。
もし頭が爆ぜていたらどうなっていたのかとは考えたくなかった。
いくら死神でも問答無用で撃ってくるとはどういう了見なのか、昔の人間はもっと死神を恐れ畏まってのによとブツクサ呟く。
もし頭が爆ぜていたらどうなっていたのかとは考えたくなかった。
『……死ぬ? この俺が?』
自分の言った何げないその言葉、その意味気付いてリュークは我に返った。
死神は人間の寿命を貰い続けている限り死ぬ事は無い、それがリュークにとって常識であり普遍であった。
なのにそれはあっけなく覆された、銃撃の度襲い来る痛みはリュークに何度も死を意識させた。
むしろ常識に囚われていたせいで醜態を晒す結果となった。
死神は人間の寿命を貰い続けている限り死ぬ事は無い、それがリュークにとって常識であり普遍であった。
なのにそれはあっけなく覆された、銃撃の度襲い来る痛みはリュークに何度も死を意識させた。
むしろ常識に囚われていたせいで醜態を晒す結果となった。
『ククッ、スゲー痛え……』
最初から思い返すと自然と笑えてきた。
あんなに慌てたのも走ったのも生まれて初めて、こんな痛みですら初めてだ。
だんだんとその笑い声は大きくなりやがて腹の底からリュークは笑った。
あんなに慌てたのも走ったのも生まれて初めて、こんな痛みですら初めてだ。
だんだんとその笑い声は大きくなりやがて腹の底からリュークは笑った。
『ヒャーーーッハハハハハハハハハハハハハ!!! 痛えっ! そして面白えっ!!』
”退屈”
それが全ての始まりであった。
リュークが地上に降りた理由、デスノートを落とした動機であった。
リュークが地上に降りた理由、デスノートを落とした動機であった。
ライトに拾われてどう使われるのか見るのも面白かったが所詮はただの傍観者。
リスクも無いがその分スリルも何も無い。
己の生死を賭けた本気のゲームとどちらが興奮するのか比較すらおこがましい。
リスクも無いがその分スリルも何も無い。
己の生死を賭けた本気のゲームとどちらが興奮するのか比較すらおこがましい。
『こんな面白えゲーム知らなかったぜ! 人間ってホントに面白ーーーーっ!!!』
クックックックッ、と死神は笑いながらバッグを開けた。
プレイヤーとしての自覚が生まれたところで考えるべき事は今後の方針。
プレイヤーとしての自覚が生まれたところで考えるべき事は今後の方針。
『当然目指すのは優勝だよなー! ゲームってのはクリアしなきゃ面白くないもんなー!』
元より人間を殺すのが存在意義だ、躊躇いやタブーの意識など全く無い。
なら今後はこちらから仕掛けて楽しみたい。
このまま人間を驚かせるのも面白いがこのゲームでは寿命が縮む。
ライトも言っていたが生き延びる為にはいろいろ準備が必要だ。
なら今後はこちらから仕掛けて楽しみたい。
このまま人間を驚かせるのも面白いがこのゲームでは寿命が縮む。
ライトも言っていたが生き延びる為にはいろいろ準備が必要だ。
帽子を取り出し顔が隠れる程深く被る。
大柄なコートが死神の体躯を覆い特徴ある羽を隠す。
幸いな事に今は夜、よほど近づかれない限りはこれで人外と見られる事は避けられる。
大柄なコートが死神の体躯を覆い特徴ある羽を隠す。
幸いな事に今は夜、よほど近づかれない限りはこれで人外と見られる事は避けられる。
支給品に衣装など他の参加者にすれば外れ同然だっただろう。
リュークは知らなかったがそれはLの右腕たるワタリの愛用の品であった。
リュークは知らなかったがそれはLの右腕たるワタリの愛用の品であった。
『ライトとははぐれちまったか、何故かノートの在り処もわかんねーし別行動するっきゃねーな』
ライトがどう動くかも見たかったがこうなった以上仕方がない。
それ以前に今の二人は同じゲームのライバルなのだ。
次に会う時は何が起こるか分からない。
どっちが勝っても恨みっこなしだぜとクククと笑う。
それ以前に今の二人は同じゲームのライバルなのだ。
次に会う時は何が起こるか分からない。
どっちが勝っても恨みっこなしだぜとクククと笑う。
『さーってライト。俺とお前、優勝するのはどっちかな~』
そして死神は闇へと消えた。
【C-4・市街地/1日目・黎明】
【リューク@DEATH NOTE】
【状態】Xショットガンによる負傷(回復中)
【装備】 ワタリの変装セット@DEATH NOTE
【持ち物】 基本支給品一式、びっくり箱ステッキ@ドラえもん、ワタリの変装セット@DEATH NOTE、不明支給品0~1
【思考】
基本:殺し合いって……面白ッ!!
1:優勝を目指しライトと競争
2:玄野(名前を認識しているか不明)と再戦する事があったら今度は勝つ。
【リューク@DEATH NOTE】
【状態】Xショットガンによる負傷(回復中)
【装備】 ワタリの変装セット@DEATH NOTE
【持ち物】 基本支給品一式、びっくり箱ステッキ@ドラえもん、ワタリの変装セット@DEATH NOTE、不明支給品0~1
【思考】
基本:殺し合いって……面白ッ!!
1:優勝を目指しライトと競争
2:玄野(名前を認識しているか不明)と再戦する事があったら今度は勝つ。
【備考】
※生命力は人間以上かつ傷は回復しますが痛みは人間同様感じます。
※傷の回復にはある程度の時間がかかり、頭を失うなど重大な傷は生命に関わります。
※死神の目が使えるかどうかは次の方にお任せします。
※飛行能力、壁抜けは可能だがかなり体力を使うようです。
※生命力は人間以上かつ傷は回復しますが痛みは人間同様感じます。
※傷の回復にはある程度の時間がかかり、頭を失うなど重大な傷は生命に関わります。
※死神の目が使えるかどうかは次の方にお任せします。
※飛行能力、壁抜けは可能だがかなり体力を使うようです。
【びっくり箱ステッキ@ドラえもん】
これで叩くと、ドアでも机の引き出しでも、何でもびっくり箱になってしまう。
飛び出す人形のサイズは元の容量とは無関係に巨大なものが出てくる。
ただし一度開けると次からは元に戻る。
飛び出す人形のサイズは元の容量とは無関係に巨大なものが出てくる。
ただし一度開けると次からは元に戻る。
【ワタリの変装セット@DEATH NOTE】
ワタリが初登場時に着ていた大柄のコートをはじめとした衣装類。
着ている人間の正体を隠す為のもので帽子や手袋など小物も付属している。
着ている人間の正体を隠す為のもので帽子や手袋など小物も付属している。
時系列順で読む
投下順で読む
キャラを追って読む
| 死神のバラッド (前編) | リューク | |
| 玄人計 |