「アシュレー、本当に行くの?」
タウンメリアの入り口で、マリナはアシュレーたちを心配そうに見る。
「ああ、あの赤い月…いや、モンスターの異常発生を何とかしなくちゃならない。
どうもそれが出来そうなのは俺たちだけらしい。出来ることがあるのなら、俺はやりたいんだ」
「…2年前に、全部終わったと思ったのに。また、アシュレーが戦わなくちゃいけないなんて」
そんなマリナを、アシュレーは抱き寄せる。そして、マリナの耳元で囁くように、言った。
「大丈夫。すぐに帰ってくるよ。約束する。昔から、俺がマリナとした約束、破ったことないだろ?
それよりもマリナの方こそ気をつけて。トニー、俺がいない間、マリナの事、頼んだぞ」
「おう!まかせとけ!あんちゃん!」
「…本当に、気をつけてね。行ってらっしゃい、アシュレー」
そうして、2人は口づけを交わす。それが夫婦であることの証であるかのように。
リルカは胸が締め付けられるような息苦しさを感じていた。
この2年で、また強くなった2人の絆を見せつけられたような気がして。
「ん?どしたリルカ。なんか顔色悪いぞ?」
その変化に1番に気づいたのは、意外にも柊だった。
女心には鈍感な割りにそう言うのには鋭い。
「な、何でもないよ!?へいき、へっちゃらだようん!?」
「そ、そうか?なら良いが。調子が悪くなったらすぐ言えよ?」
思わず過剰に反応してしまったが、柊はそれ以上は追及してこなかった。
(び、びっくりした~)
心臓の鼓動を抑えようと何度か深呼吸する。
(…あれ?)
そして、気づく。
晶が、アシュレーたちと柊を見る視線に。
嫉妬と諦めが入り混じった、複雑な感情。自分の中にもあるそれと同じものを感じる視線。
(もしかして、アキラさんって…)
「おい、リルカ。行くぞ」
「へ!?あ、分かった!」
ブラッドに声をかけられてリルカは正気に返る。
「とりあえず、ダムツェンに行くんだよね!?まかせて、私がテレポートジェムで…」
「「「やめとけ」」」
晶以外の3人がハモった。
タウンメリアの入り口で、マリナはアシュレーたちを心配そうに見る。
「ああ、あの赤い月…いや、モンスターの異常発生を何とかしなくちゃならない。
どうもそれが出来そうなのは俺たちだけらしい。出来ることがあるのなら、俺はやりたいんだ」
「…2年前に、全部終わったと思ったのに。また、アシュレーが戦わなくちゃいけないなんて」
そんなマリナを、アシュレーは抱き寄せる。そして、マリナの耳元で囁くように、言った。
「大丈夫。すぐに帰ってくるよ。約束する。昔から、俺がマリナとした約束、破ったことないだろ?
それよりもマリナの方こそ気をつけて。トニー、俺がいない間、マリナの事、頼んだぞ」
「おう!まかせとけ!あんちゃん!」
「…本当に、気をつけてね。行ってらっしゃい、アシュレー」
そうして、2人は口づけを交わす。それが夫婦であることの証であるかのように。
リルカは胸が締め付けられるような息苦しさを感じていた。
この2年で、また強くなった2人の絆を見せつけられたような気がして。
「ん?どしたリルカ。なんか顔色悪いぞ?」
その変化に1番に気づいたのは、意外にも柊だった。
女心には鈍感な割りにそう言うのには鋭い。
「な、何でもないよ!?へいき、へっちゃらだようん!?」
「そ、そうか?なら良いが。調子が悪くなったらすぐ言えよ?」
思わず過剰に反応してしまったが、柊はそれ以上は追及してこなかった。
(び、びっくりした~)
心臓の鼓動を抑えようと何度か深呼吸する。
(…あれ?)
そして、気づく。
晶が、アシュレーたちと柊を見る視線に。
嫉妬と諦めが入り混じった、複雑な感情。自分の中にもあるそれと同じものを感じる視線。
(もしかして、アキラさんって…)
「おい、リルカ。行くぞ」
「へ!?あ、分かった!」
ブラッドに声をかけられてリルカは正気に返る。
「とりあえず、ダムツェンに行くんだよね!?まかせて、私がテレポートジェムで…」
「「「やめとけ」」」
晶以外の3人がハモった。
テレパスタワー。ファルガイア中の通信の要となっている施設。
それが、アシュレーの言う心当たりだった。
「お、いけそうだ」
その最上階、通信の原動力となる巨大な感応石が安置されている場所で、柊は0-phoneを確認する。
アンテナは3本。十分に通信が可能だ。
「まさかあいつにかけることになるなんてな…」
柊はアンゼロットへのアドレスを呼び出し、通話ボタンを押す。
本人直通の番号。ずいぶん前に無理やり登録させられたが、掛けるのは初めてだ。
「ああ、アンゼロットか?俺だ、柊だ」
「はい。アンゼロットで~す。現在プライベートネトゲタイムにつき後でかけなおしてください」
ブツッ、通信が途切れた。
慌てて柊が掛けなおす。
「んなこと言ってる場合かこのやろう!?」
「ほんの軽い冗談じゃないですか。最近ストレスがたまりすぎじゃないですか?」
「誰のせいだと思ってんだ!?」
「ああ、そうそう増援の件ですが、なかなか志願者が集まらなくて困っています。
呼出には応じてくれるのですが、みなさん転送装置を見ると尻込みしてしまって…」
「当たり前だ。ってかあれを転送装置と言い張るか」
「とりあえず、泣きそうな笑顔でエリスさんといい笑顔でグィードさんが志願してくれましたが、どっちがいいですか?」
「…どっちもやめとけ。エリスをあれに放り込むわけにはいかんし、あの変態神父はこっちがお断りだ。
それよか、聞きたいことがある」
「…分かりました。それで、何について聞きたいのですか?」
柊のまじめな声に、アンゼロットも守護者としての威厳に満ちた声で答える。
「ああ、実はな…」
それが、アシュレーの言う心当たりだった。
「お、いけそうだ」
その最上階、通信の原動力となる巨大な感応石が安置されている場所で、柊は0-phoneを確認する。
アンテナは3本。十分に通信が可能だ。
「まさかあいつにかけることになるなんてな…」
柊はアンゼロットへのアドレスを呼び出し、通話ボタンを押す。
本人直通の番号。ずいぶん前に無理やり登録させられたが、掛けるのは初めてだ。
「ああ、アンゼロットか?俺だ、柊だ」
「はい。アンゼロットで~す。現在プライベートネトゲタイムにつき後でかけなおしてください」
ブツッ、通信が途切れた。
慌てて柊が掛けなおす。
「んなこと言ってる場合かこのやろう!?」
「ほんの軽い冗談じゃないですか。最近ストレスがたまりすぎじゃないですか?」
「誰のせいだと思ってんだ!?」
「ああ、そうそう増援の件ですが、なかなか志願者が集まらなくて困っています。
呼出には応じてくれるのですが、みなさん転送装置を見ると尻込みしてしまって…」
「当たり前だ。ってかあれを転送装置と言い張るか」
「とりあえず、泣きそうな笑顔でエリスさんといい笑顔でグィードさんが志願してくれましたが、どっちがいいですか?」
「…どっちもやめとけ。エリスをあれに放り込むわけにはいかんし、あの変態神父はこっちがお断りだ。
それよか、聞きたいことがある」
「…分かりました。それで、何について聞きたいのですか?」
柊のまじめな声に、アンゼロットも守護者としての威厳に満ちた声で答える。
「ああ、実はな…」
「…お話は分りました。ではまず、その、ファルガイアに現れた魔王についてお話いたしましょう」
事情を聞き、アンゼロットは答える。柊は0-phoneのスピーカー音量を最大にし、全員に聞こえるようにした。
「その魔王は、おそらくはエリィ=コルドン。自己顕示欲を司る魔王です。
常に公正であることを是として善悪を問わず弱者の味方をすると言われています。
今迄にも何例か、任務においてエリィ=コルドンらしき人物に手助けを受けたウィザードの報告も受けています。
次に赤い月を常識として受け入れている件ですが、確かに柊さんの言うとおり“ザ・サマー”に酷似しているように思われます」
「そいつはどんな事件だったんだ?」
「かいつまんで言うと、エミュレイター『夢を食らうもの』がとある少女の願望通り、永遠に続く夏を当然であると常識を書き換えた事件です。
あの時は時間と共に常識の汚染が進み、最終的には私も含め、事件の当事者たるウィザードたちを除いた全員の常識が書き換えられるという事態に陥りました」
「願望?」
「はい。『夢を食らうもの』は人間やウィザードにとりつき、その人物の思う通りに世界を書き換えると言うエミュレイター。
もし無理に倒してしまえば、とりつかれた人間のプラーナは抜き取られ、夢を食らうものには逃げられてしまうのです」
「厄介な相手だな。取りつかれた奴を助ける方法とかは無いのか?」
「それは、その取りつかれたものが自らの夢と決別するほかに方法はありません。
そうして初めて取りつかれたものと夢を食らうものとのつながりが断たれ、夢を食らうもののみを倒すことができるようになります。
『夢を食らうもの』自体はすでに山瀬京介君、柊さんにわかるように言えば左から2番目のジャスティスレッドによって倒され、消滅が確認されています。
ですが、もしこたびの魔王が同様の事件を引き起こしていると言うのなら、恐らくは何処かに取りつかれた人間がコアとして存在するはずです」
「そうか。大体分かった。あんがとよ、アンゼロット」
事件の詳細を聞き、柊は礼を言う。
「おや、珍しい。柊さんが私に感謝するなど。これは、明日にも世界が滅亡する予兆でしょうか。
さっそく全ウィザードに召集を…」
「うるせえ!そこまで言うか!?世話になったら礼の一つも言うのは当然だろうがッ!?」
「ほんの軽い冗談ですよ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえんだよ!?」
事情を聞き、アンゼロットは答える。柊は0-phoneのスピーカー音量を最大にし、全員に聞こえるようにした。
「その魔王は、おそらくはエリィ=コルドン。自己顕示欲を司る魔王です。
常に公正であることを是として善悪を問わず弱者の味方をすると言われています。
今迄にも何例か、任務においてエリィ=コルドンらしき人物に手助けを受けたウィザードの報告も受けています。
次に赤い月を常識として受け入れている件ですが、確かに柊さんの言うとおり“ザ・サマー”に酷似しているように思われます」
「そいつはどんな事件だったんだ?」
「かいつまんで言うと、エミュレイター『夢を食らうもの』がとある少女の願望通り、永遠に続く夏を当然であると常識を書き換えた事件です。
あの時は時間と共に常識の汚染が進み、最終的には私も含め、事件の当事者たるウィザードたちを除いた全員の常識が書き換えられるという事態に陥りました」
「願望?」
「はい。『夢を食らうもの』は人間やウィザードにとりつき、その人物の思う通りに世界を書き換えると言うエミュレイター。
もし無理に倒してしまえば、とりつかれた人間のプラーナは抜き取られ、夢を食らうものには逃げられてしまうのです」
「厄介な相手だな。取りつかれた奴を助ける方法とかは無いのか?」
「それは、その取りつかれたものが自らの夢と決別するほかに方法はありません。
そうして初めて取りつかれたものと夢を食らうものとのつながりが断たれ、夢を食らうもののみを倒すことができるようになります。
『夢を食らうもの』自体はすでに山瀬京介君、柊さんにわかるように言えば左から2番目のジャスティスレッドによって倒され、消滅が確認されています。
ですが、もしこたびの魔王が同様の事件を引き起こしていると言うのなら、恐らくは何処かに取りつかれた人間がコアとして存在するはずです」
「そうか。大体分かった。あんがとよ、アンゼロット」
事件の詳細を聞き、柊は礼を言う。
「おや、珍しい。柊さんが私に感謝するなど。これは、明日にも世界が滅亡する予兆でしょうか。
さっそく全ウィザードに召集を…」
「うるせえ!そこまで言うか!?世話になったら礼の一つも言うのは当然だろうがッ!?」
「ほんの軽い冗談ですよ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえんだよ!?」
「とにかく。あんがとよ。じゃあ、これで切るぜ」
「待ってください。まだお話は終わっていません」
話を終え、電話を切ろうとする柊をアンゼロットが止める。
「実は、あの後、こちらでさらにファルガイアの調査を進め、分かったことがあります」
「ん?なんだ?」
「くす。今回の事件にくすくす。あるかは分りませんが、ファーくすくすくす。とファルガイアには時間軸にずれくすくす。
具体的にはファルくすくすアの時くすくすくすくす。ちから見ておよそ500年進んでいるそうで
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす…」
「お、おい。アンゼロット一体どうしたんだ!?なんか変だぞ!?」
突然笑いだしたアンゼロットに柊は問い返す。
だが、アンゼロットはそれには答えず狂ったように笑い続けている。そのときだった。
「ひ、柊くん、あれ!?」
晶が感応石の上を指さした。全員がそこに注目する。
そこにいたのは、黒いワンピースを来た、1人の少女だった。
感応石の上に腰かけ、微笑みながら足をぷらぷらさせている。
「こんな所に、女の子…!?まさか!?」
「あの子って、もしかして…」
「自らやって来るとはな…」
こんな時間、こんな場所に少女がいるはずがない。
同時に思い至った3人がその答えに達する。
普通なら、ありえない。だが、2人の異邦人の話からすればその少女とは…
「魔王かッ!」
超神速の反応でアシュレーが自らのARMに装填された弾丸を発射する。
瞬時に狙いをつけられたそれは、正確に少女の肩口へと向かい…
「待ってください。まだお話は終わっていません」
話を終え、電話を切ろうとする柊をアンゼロットが止める。
「実は、あの後、こちらでさらにファルガイアの調査を進め、分かったことがあります」
「ん?なんだ?」
「くす。今回の事件にくすくす。あるかは分りませんが、ファーくすくすくす。とファルガイアには時間軸にずれくすくす。
具体的にはファルくすくすアの時くすくすくすくす。ちから見ておよそ500年進んでいるそうで
くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす…」
「お、おい。アンゼロット一体どうしたんだ!?なんか変だぞ!?」
突然笑いだしたアンゼロットに柊は問い返す。
だが、アンゼロットはそれには答えず狂ったように笑い続けている。そのときだった。
「ひ、柊くん、あれ!?」
晶が感応石の上を指さした。全員がそこに注目する。
そこにいたのは、黒いワンピースを来た、1人の少女だった。
感応石の上に腰かけ、微笑みながら足をぷらぷらさせている。
「こんな所に、女の子…!?まさか!?」
「あの子って、もしかして…」
「自らやって来るとはな…」
こんな時間、こんな場所に少女がいるはずがない。
同時に思い至った3人がその答えに達する。
普通なら、ありえない。だが、2人の異邦人の話からすればその少女とは…
「魔王かッ!」
超神速の反応でアシュレーが自らのARMに装填された弾丸を発射する。
瞬時に狙いをつけられたそれは、正確に少女の肩口へと向かい…
少女の体をすり抜けた。
「なッ!?」
「…残念だけど、私は“まだ”魔王では無いわ」
それが当然であると言うように少女は感応石からふわりと飛び降りて、5人の前に立つ。
「はじめまして。私の名前は、ベアトリーチェ。今日はごあいさつに来たの」
貴族の淑女がするように、スカートのすそを持ち上げて、ベアトリーチェは5人に自らの名を言う。
「貴様があの赤い月の黒幕かッ!?」
アシュレーの問いをベアトリーチェは答えず、言う。
「でも、あなたたちがよりにもよってここへ来てくれたのは幸運だったわ」
「…どういうことだ…!?」
その言葉と同時に5人を眩暈と強烈な睡魔が襲う。
「だって、ここでなら、私の力を増幅できるもの。
行ってらっしゃい、私の、夢魔ベアトリーチェの悪夢へ」
その言葉と共に、5人の目の前が、漆黒に閉ざされた。
「…残念だけど、私は“まだ”魔王では無いわ」
それが当然であると言うように少女は感応石からふわりと飛び降りて、5人の前に立つ。
「はじめまして。私の名前は、ベアトリーチェ。今日はごあいさつに来たの」
貴族の淑女がするように、スカートのすそを持ち上げて、ベアトリーチェは5人に自らの名を言う。
「貴様があの赤い月の黒幕かッ!?」
アシュレーの問いをベアトリーチェは答えず、言う。
「でも、あなたたちがよりにもよってここへ来てくれたのは幸運だったわ」
「…どういうことだ…!?」
その言葉と同時に5人を眩暈と強烈な睡魔が襲う。
「だって、ここでなら、私の力を増幅できるもの。
行ってらっしゃい、私の、夢魔ベアトリーチェの悪夢へ」
その言葉と共に、5人の目の前が、漆黒に閉ざされた。