スレイハイム公国、クアトリー。
既に滅んだスレイハイムに残る唯一の街にしてギルドグラートへ向かうための駅の中継点として栄えている街である。
既に滅んだスレイハイムに残る唯一の街にしてギルドグラートへ向かうための駅の中継点として栄えている街である。
「…時間を考えると普通ですけど、なんだか変な気分ですね」
本来ならば既に深夜と言ってもいい時間のせいか、人通りは無い。
だが、あの赤い月を異常と感じている一行には常に空に輝く赤い月のせいで時間の感覚が今ひとつつかめていなかった。
夕方頃から赤い月の様子はまるで変わっていない。
「それで、ティム。プーカって奴は一体どんな奴なんだ?」
柊がティムに尋ねる。
「ええ。プーカと言うのは僕の友達で…ああ、ちょうど来たみたいです」
そう言うとティムは空を指さす。その指さした先に、1羽のコンドルが飛んでいるのが見えた。
コンドルはティムたちの周りを何度か回ると、ゆっくりと下に降りてくる。
充分に降りたところでネズミのぬいぐるみのような本来の姿へと戻った。
「グッドタイミングなのダ。ティム。ちょうど全員そろっているようなのダ。
ガーディアンが連れてきたと言う異邦人と…そっちの不幸そうな男は誰なのダ?」
「不幸そう言うな!」
「そんなこと言っちゃ駄目だよプーカ。そちらはヒイラギレンジさん。ファルガイアを救うために来てくれた人だよ。
そしてこちらがナナセアキラさん。ガーディアンの導きでファルガイアに訪れた人だ。2人とも凄く強い剣士だよ」
「なるほど。大体分かったのダ」
「それで、ロンバルディアさんの事なのだけれど…」
「ああ、あいつは昼前にはこちらにつくそうなのダ」
「昼前っつってもこの空じゃあさっぱり分からんな」
柊が空を見て呟く。そこでブラッドが提案した。
「何にせよ、しばらく時間はあると言うことか…どうだろう?この辺りで一旦宿を取らないか?
休息をとるには良いタイミングだと思うのだが」
ブラッドの提案に全員が頷いた。
本来ならば既に深夜と言ってもいい時間のせいか、人通りは無い。
だが、あの赤い月を異常と感じている一行には常に空に輝く赤い月のせいで時間の感覚が今ひとつつかめていなかった。
夕方頃から赤い月の様子はまるで変わっていない。
「それで、ティム。プーカって奴は一体どんな奴なんだ?」
柊がティムに尋ねる。
「ええ。プーカと言うのは僕の友達で…ああ、ちょうど来たみたいです」
そう言うとティムは空を指さす。その指さした先に、1羽のコンドルが飛んでいるのが見えた。
コンドルはティムたちの周りを何度か回ると、ゆっくりと下に降りてくる。
充分に降りたところでネズミのぬいぐるみのような本来の姿へと戻った。
「グッドタイミングなのダ。ティム。ちょうど全員そろっているようなのダ。
ガーディアンが連れてきたと言う異邦人と…そっちの不幸そうな男は誰なのダ?」
「不幸そう言うな!」
「そんなこと言っちゃ駄目だよプーカ。そちらはヒイラギレンジさん。ファルガイアを救うために来てくれた人だよ。
そしてこちらがナナセアキラさん。ガーディアンの導きでファルガイアに訪れた人だ。2人とも凄く強い剣士だよ」
「なるほど。大体分かったのダ」
「それで、ロンバルディアさんの事なのだけれど…」
「ああ、あいつは昼前にはこちらにつくそうなのダ」
「昼前っつってもこの空じゃあさっぱり分からんな」
柊が空を見て呟く。そこでブラッドが提案した。
「何にせよ、しばらく時間はあると言うことか…どうだろう?この辺りで一旦宿を取らないか?
休息をとるには良いタイミングだと思うのだが」
ブラッドの提案に全員が頷いた。
(…うう、トイレ…)
男女に別れ2つの部屋を取り、各々準備を終えて仮眠について3時間。リルカはふと目を覚ました。
しょぼしょぼとする目をこすりながら、外に出て、トイレへと向かう。
(ふぅー、すっきり…あれ?アキラさん?)
トイレを終え、部屋に戻ろうとしたところで、リルカはベランダから外を見るアキラを見つけた。
男女に別れ2つの部屋を取り、各々準備を終えて仮眠について3時間。リルカはふと目を覚ました。
しょぼしょぼとする目をこすりながら、外に出て、トイレへと向かう。
(ふぅー、すっきり…あれ?アキラさん?)
トイレを終え、部屋に戻ろうとしたところで、リルカはベランダから外を見るアキラを見つけた。
「あの…アキラさん?」
「へ!?…あ、リルカちゃん。どうしたの?」
「いえ、アキラさん、こんなところで何してるのかなって」
「…ああ、ほら、綺麗だなって思って、見てたの」
そう言うと晶は外を指さした。リルカもつられてそちらを見る。
「うわあ…すごおい…」
リルカも思わずため息を漏らした。
「へ!?…あ、リルカちゃん。どうしたの?」
「いえ、アキラさん、こんなところで何してるのかなって」
「…ああ、ほら、綺麗だなって思って、見てたの」
そう言うと晶は外を指さした。リルカもつられてそちらを見る。
「うわあ…すごおい…」
リルカも思わずため息を漏らした。
クアトリーの街の北に広がる、塩の原野。一面の純白が何処までも続くその場所を、赤い月の光が染め上げていた。
きらきらと赤い光を反射して輝く塩の粒と、赤い光を吸ってルビーのように輝く塩の柱。
「なんだか、夢みたい…」
「赤い月が作っているものだと思うとアレだけど、ね」
リルカの感想に晶が同意しながらも突っ込みを入れる。そして2人はお互いの顔を見合わせて、笑った。
きらきらと赤い光を反射して輝く塩の粒と、赤い光を吸ってルビーのように輝く塩の柱。
「なんだか、夢みたい…」
「赤い月が作っているものだと思うとアレだけど、ね」
リルカの感想に晶が同意しながらも突っ込みを入れる。そして2人はお互いの顔を見合わせて、笑った。
しばらく2人で無言で赤く染まった原野を眺める。
沈黙に耐えかねたのかリルカが口を開いた。
「…あの、アキラさんは」
「アキラでいいよ。その代わり、私もリルカって呼んでも良いかな?」
「…うん。いいよ」
「あんがと。それで、何?」
「うん…ねえ、アキラさ…アキラってさ、もしかして、レンジの事が好きなの?」
「…なんで、そう思うの?」
「う~ん。なんて言うか、勘、かな」
「…あはは。やっぱり恋する乙女って鋭いなあ」
「へ?恋する乙女って…もしかして私!?」
「うん。相手は多分…アシュレーさんかな?」
「なななななんで!?」
本人にも気づかれていないはずの恋心をあっさり看破され、リルカは混乱する。
「ふふふ、恋する乙女は鋭いのだよ♪」
晶が冗談めかして、言った。そして、2人に沈黙が訪れる。
黙ってしまったリルカの顔が真っ赤だったのは、月の光のせいだけでは無かった。
沈黙に耐えかねたのかリルカが口を開いた。
「…あの、アキラさんは」
「アキラでいいよ。その代わり、私もリルカって呼んでも良いかな?」
「…うん。いいよ」
「あんがと。それで、何?」
「うん…ねえ、アキラさ…アキラってさ、もしかして、レンジの事が好きなの?」
「…なんで、そう思うの?」
「う~ん。なんて言うか、勘、かな」
「…あはは。やっぱり恋する乙女って鋭いなあ」
「へ?恋する乙女って…もしかして私!?」
「うん。相手は多分…アシュレーさんかな?」
「なななななんで!?」
本人にも気づかれていないはずの恋心をあっさり看破され、リルカは混乱する。
「ふふふ、恋する乙女は鋭いのだよ♪」
晶が冗談めかして、言った。そして、2人に沈黙が訪れる。
黙ってしまったリルカの顔が真っ赤だったのは、月の光のせいだけでは無かった。
「…リルカはさ、柊くんのことどう思う?」
沈黙する世界の中で、晶が唐突にリルカに尋ねる。
「…どうって、う~ん。なんか間抜けだったり不幸そうだったりするけど、頼りになる、かな?」
「酷い言われようだね」
「そ、そんなのアキラが聞くから」
「でも、柊くんらしいや」
そう言って微笑む晶は、どこか寂しそうだった。
沈黙する世界の中で、晶が唐突にリルカに尋ねる。
「…どうって、う~ん。なんか間抜けだったり不幸そうだったりするけど、頼りになる、かな?」
「酷い言われようだね」
「そ、そんなのアキラが聞くから」
「でも、柊くんらしいや」
そう言って微笑む晶は、どこか寂しそうだった。
「…柊くんってさ、女の子の心とかにもんのすっっっっっっっっっっごく鈍感なのね」
「え?」
「でも、仲間とかすっごく大事にする人で、おまけに困ってる人がいたら見過ごせないお人好し。
だから、本人その気が無いのに仲間だから、困ってるからって普通に女の子に優しくしちゃうの。天然のジゴロだねありゃ」
「アキラも、なにげに酷いこと言ってない?」
「乙女の勘によればアンゼロットさんの言ってたエリスって子も多分そう。柊くん並みの扱いなんて、女の子には普通無理だもん」
「…」
「ま、私も人のこと言えないんだけどね」
そして晶は外を見ながら言う。
「え?」
「でも、仲間とかすっごく大事にする人で、おまけに困ってる人がいたら見過ごせないお人好し。
だから、本人その気が無いのに仲間だから、困ってるからって普通に女の子に優しくしちゃうの。天然のジゴロだねありゃ」
「アキラも、なにげに酷いこと言ってない?」
「乙女の勘によればアンゼロットさんの言ってたエリスって子も多分そう。柊くん並みの扱いなんて、女の子には普通無理だもん」
「…」
「ま、私も人のこと言えないんだけどね」
そして晶は外を見ながら言う。
「…柊くんにはね、幼馴染みが1人いるの」
幼馴染み。その言葉にリルカの心が少し痛む。アシュレーとマリナも、幼馴染み同士だったから。
「いっつも喧嘩ばっかりして、顔を合わせると言いあいしてるような、そんな子。
だけどね、その子がピンチになったら柊くんは誰よりも速く駆けつけるんだよ。
この前なんて、攫われた幼馴染み助けるために異世界まで行っちゃうんだもん」
「異世界?」
「そう、ファルガイアでも、ミッドガルドでもない異世界。そこに、柊くんはたった1人で乗り込んでいったの。
幼馴染を助ける。ただ、それだけの理由で」
その声に宿るのは、思い人に対する誇らしさと…その幼馴染への嫉妬。
幼馴染み。その言葉にリルカの心が少し痛む。アシュレーとマリナも、幼馴染み同士だったから。
「いっつも喧嘩ばっかりして、顔を合わせると言いあいしてるような、そんな子。
だけどね、その子がピンチになったら柊くんは誰よりも速く駆けつけるんだよ。
この前なんて、攫われた幼馴染み助けるために異世界まで行っちゃうんだもん」
「異世界?」
「そう、ファルガイアでも、ミッドガルドでもない異世界。そこに、柊くんはたった1人で乗り込んでいったの。
幼馴染を助ける。ただ、それだけの理由で」
その声に宿るのは、思い人に対する誇らしさと…その幼馴染への嫉妬。
「異世界で何があったのかまでは知らないけど、魔王も絡んで大変だったってのは聞いてるんだ。実際そうだったと思う。
だって、ついこの前まで私と大して変わらなかったはずの柊くん、ものすっごく強くなってんだもん。
だから柊くんが帰ってきてすぐに、アンゼロットさんから任務を言い渡されたときには焦ったなあ。
足手まといになるわけにはいかないって、アンゼロットさんに頼んで特訓用のダンジョンで必死にLv上げて…
それで任務の直前に会ったら何故か柊くんのLvが下がってたのは笑い話だけど」
「それって笑い話なの!?」
笑いながら話す晶に思わずリルカは突っ込む。その突っ込みに、晶は今度は苦笑して答えた。
「う~ん。柊くんだからねえ…でも、そうして挑んだ任務が、結局私と柊くんとの別れ。
私と柊くんの魔剣だけミッドガルドって言う異世界に飛ばされちゃってね…まだ、帰れないっぽい」
「え、じゃあレンジとはファルガイアで初めて再会したの?」
「そうだね。でも柊くんはファー・ジ・アースからで、私はミッドガルドから。この戦いが終わったら、またお別れかな?」
「そんな…なんとか、ならないの?レンジと一緒に帰るとか、レンジもミッドガルドに連れてくとか…」
出会ってすぐに別れが訪れる。それは、ARMSが発足するとほぼ同時にはじまり、解散とほぼ同時に終わったリルカの恋のようで…
リルカは、そのつらさを、目の前の少女に味あわせたくはなかった。
だって、ついこの前まで私と大して変わらなかったはずの柊くん、ものすっごく強くなってんだもん。
だから柊くんが帰ってきてすぐに、アンゼロットさんから任務を言い渡されたときには焦ったなあ。
足手まといになるわけにはいかないって、アンゼロットさんに頼んで特訓用のダンジョンで必死にLv上げて…
それで任務の直前に会ったら何故か柊くんのLvが下がってたのは笑い話だけど」
「それって笑い話なの!?」
笑いながら話す晶に思わずリルカは突っ込む。その突っ込みに、晶は今度は苦笑して答えた。
「う~ん。柊くんだからねえ…でも、そうして挑んだ任務が、結局私と柊くんとの別れ。
私と柊くんの魔剣だけミッドガルドって言う異世界に飛ばされちゃってね…まだ、帰れないっぽい」
「え、じゃあレンジとはファルガイアで初めて再会したの?」
「そうだね。でも柊くんはファー・ジ・アースからで、私はミッドガルドから。この戦いが終わったら、またお別れかな?」
「そんな…なんとか、ならないの?レンジと一緒に帰るとか、レンジもミッドガルドに連れてくとか…」
出会ってすぐに別れが訪れる。それは、ARMSが発足するとほぼ同時にはじまり、解散とほぼ同時に終わったリルカの恋のようで…
リルカは、そのつらさを、目の前の少女に味あわせたくはなかった。
「…私が柊くんと一緒に帰ったら、ミッドガルドが滅んじゃうから。それにさ、柊くん、私に言いにくいことがあるみたい。
…私とブラッドさんの話を聞いて時空ってくらいだから時を操れるとか言ってたから、その辺かな?
多分、今の私と柊くんは生きてる時代が違う。それもものすっごく遠い」
「…そんなのって」
「柊くんなら、頼めばついてきてくれると思う。何とかなるさって言ってね。だから、頼めないんだけどね。仕方ないよ」
「仕方ないって…好きなんでしょ!?」
リルカは思わず叫んだ。仕方ない。諦めるようなその言葉が自分の心の声そのもののように思えて。
…私とブラッドさんの話を聞いて時空ってくらいだから時を操れるとか言ってたから、その辺かな?
多分、今の私と柊くんは生きてる時代が違う。それもものすっごく遠い」
「…そんなのって」
「柊くんなら、頼めばついてきてくれると思う。何とかなるさって言ってね。だから、頼めないんだけどね。仕方ないよ」
「仕方ないって…好きなんでしょ!?」
リルカは思わず叫んだ。仕方ない。諦めるようなその言葉が自分の心の声そのもののように思えて。
「…好きだから、だよ」
今にも泣きそうな顔のリルカを、晶は優しい表情でなでる。
その姉を思わせる優しい表情に、リルカは困惑した。
「ど、どうゆうこと?」
「好きな人だから、誰かを好きな人が不幸にするのはいやなの。
ここで私がわがまま言ったら、柊くん、沢山の人を悲しませちゃう。
柊くんは気にするなって言ってくれるだろうけど、きっと私自身がそんな私を許せない。
…だから、柊くんには、このこと、ないしょね」
「え?あ、う、うん」
念を押すように言って晶はあくび混じりに1つ伸びをする。その目に涙が輝いてたのをリルカは見逃さなかった。
でも、言わない。それが晶の決意だと、知ったから。
今にも泣きそうな顔のリルカを、晶は優しい表情でなでる。
その姉を思わせる優しい表情に、リルカは困惑した。
「ど、どうゆうこと?」
「好きな人だから、誰かを好きな人が不幸にするのはいやなの。
ここで私がわがまま言ったら、柊くん、沢山の人を悲しませちゃう。
柊くんは気にするなって言ってくれるだろうけど、きっと私自身がそんな私を許せない。
…だから、柊くんには、このこと、ないしょね」
「え?あ、う、うん」
念を押すように言って晶はあくび混じりに1つ伸びをする。その目に涙が輝いてたのをリルカは見逃さなかった。
でも、言わない。それが晶の決意だと、知ったから。
「さ、寝よ。明日はいよいよファルガイアの命運を賭けた最後の戦いだよ。寝不足で負けたなんて、笑えないからね」
「…そうだね。みんなで行けば、へいき、へっちゃらだよねアキラ!」
「よし、その意気だ!…それと私の話、聞いてくれてありがとね」
「ううん。私も、アキラの話を聞けて良かったって思うから」
「そっか。お姉さんの甘酸っぱい恋話は、参考になったかなリルカくん?」
「はい、とっても。ありがとう、先生!」
冗談めかした言い合いに2人は同時にぷっと吹き出して笑いあった。
「…そうだね。みんなで行けば、へいき、へっちゃらだよねアキラ!」
「よし、その意気だ!…それと私の話、聞いてくれてありがとね」
「ううん。私も、アキラの話を聞けて良かったって思うから」
「そっか。お姉さんの甘酸っぱい恋話は、参考になったかなリルカくん?」
「はい、とっても。ありがとう、先生!」
冗談めかした言い合いに2人は同時にぷっと吹き出して笑いあった。