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従者たちのの舞踏遊戯

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作品情報

クロス元 ダブルクロス
作者 夜ねこ



従者たちのの舞踏遊戯 -帝都屋敷の騒がしき日々-


 柊蓮司。
 ある世界において、幸が薄いことで知られる一人の青年の名だ。
 そしてその不幸な青年は、卒業してもやっぱり不幸だった。

 ***

「……どこだよ、ここは」

 半眼になって彼がぼやくのも無理はなかった。
 仕事の報告を終え、0-Phone を片付けたその瞬間。
 ―――近くにあった謎の遺跡が発光。
 ぐるん、と世界が反転するような感覚が柊を襲い、気づいた時にはそこにいた。


 暗い。
 街灯はあるのに、もともと彼がいた世界よりも、夜が暗く感じる。
 明かりはどうも柊の感覚からして時代がかったレトロなもののように見える代物。
 どうにもこの場所は、元いた世界とは『どこか』違っているようだ。

 彼はがしがしと頭をかく。
 よくわからない世界に飛ばされるのは、柊にとってよくある話だ。
 だったら次にすべきは現状の把握。

 違うのは時間なのか世界なのか。世界が違うのだとしたらすぐに帰れる距離にあるのか否か。
 その判断をつけることが自分ではできないため、知っていそうな相手に確認をとる。
 月衣から0-Phone を取り出して、短縮のボタンを押した。




 ***

 彼がこの度落ちた先は、山の手のとある邸宅近く。
 ひょんなことからその屋敷の少女主人と知己を得た柊。
 彼女は行く場所がないのならば家にいらしてくださいな、と住み込みの下働きをすることを条件に、彼を邸宅に招き入れる。
 ……そんな彼を待っていたのは、世知辛い世の条理だった。

 ***

「おいアンタ、いい年してそんなこともできねぇのか。
 わかるだろフツー。この手の毛織物の手入れってのは、力入れすぎたらダメなんだよ。こーゆーのは、まずぬるま湯をくんでだな……」
「……悪かったな、そんな普通のことも知らなくて」

 自分が悪いのはわかっているものの、口のあまりよろしくない先輩女中の小言に、少しばかりグチをこぼす柊。
 しかし、その言葉に返ってきたのはやはり手厳しい先輩の言葉だった。

「あ? なんか言ったかこの新入り下男」
「下男言うなっ!?」

 ……実に柊らしい役職名だというのは、僕らの心にしまっておくことにしよう。

「だいたいなんで下男なんだよっ!? 普通この手の話はいきなり転がり込んだ相手を執事とかに抜擢するもんだろーがっ!?」

 メタなことを言わないでいただきたい。
 女中は目を細め、さらに厳しい目で彼を見た。

「執事ぃ? 馬鹿言ってんじゃないよ、この役立たず。
 ウチには最高峰の執事、石和じーさんがいるんだよ。そういうことはまともにガキの使いができるようになってから言いな」



 ***


 厳しくも騒がしい日常にもまれ、それでも柊はその屋敷での日々を過ごしていく。
 元いた世界との連絡もとれ、助けが送り込まれたはいいものの、柊を連れてファー・ジ・アースに戻るには月単位の時間がかかるとのこと。
 それまで彼はこの屋敷で恩を返すために一生懸命働くことになった。

 しかし、彼の行くところに平穏など訪れるはずもないのもまた条理。

 ***

「……間違いないんだね?」
『あぁ。どうにもあの件から難を逃れた者が燻ぶっているようだと、ある令嬢と少年、さらには老人からも連絡が入ってね。
 独自に調査させてもらった私の個人的な 見解(よげん)を述べさせてもらうのなら、その熱は『火種』となるだろう。
 例の件に関わっていた連中の一人が、極秘ルートを使ってそちらに向かったということだ』

 舌打ち。
 『疑惑』ではすまないほど豪華な 材料(じょうほう)の数々。電話の向こうでこれだけそろっていればフルコースができるね、と軽い口調の男の声。

 電話の向こうの相手の 予言(じょうほう)は何よりも信頼できるものなのだが、道化然としたその口調はいつも彼女の精神を不安定にさせる。
 相手の癖のようなものなのだと理解はしているつもりなのだが、イライラするものは仕方ない。彼女の性分だ。
 できうるかぎりその不機嫌をあらわにしないように礼を言って切るための口上を考えていると、電話口からするりと言葉が滑り込んできた。

『残念だが、<あの男>の行方は私にも掴みがたい。今もどこかでのん気に旅をしているだろう。
 力になれず申し訳ない。私も仲間たちも今すぐこの場を離れるわけには行かないものでね、主人とともにどこかに避難することを勧めるよ』

 それは、心からの思いやりの言葉だった。
 一度しか顔を合わせていない彼女たちの身を案じる、優しい言葉だ。

 ―――果たして、逃げろと言うは主人に迫る危機からか、はたまた時代の流れからか。

 浮かんだ詮無い考えを。は、と笑い捨てるようにため息をついて、彼女は電話口に向けて言葉を返した。

「残念ながら、ウチのご主人は<あの方>のお帰りをこの場所で待ち続ける、と仰っておられるもんで。
 いっくら逃げたかろうと、主人が逃げないのに女中だけ逃げるわけにゃいかんでしょうよ」

 その口元には、ふてぶてしい皮肉な笑みがある。
 電話口の相手が驚いたように息を呑んだのを感じ取り、彼女は内心快哉を叫んだ。



 ***


 巻き起こるのは、女主人を狙う若き熱の残り火との争い。
 背後にうごめくのは世界を飲み干さんと伸びる魔の手先。
 交錯するいくつもの願い。
 そして、明かされることのない思い。

 ***

 何人もの血に、手を染めた。
 そうしなければ生きてこられなかったから。
 すでに一番最初の人殺しの記憶はない。あまりに小さな頃すぎて、誰を殺したかも覚えてない。

 ただ生きるために。
 奪って、盗んで、殺して―――ありとあらゆる罪科に手を染めた。
 いつしか、生きる糧を得るために専門に殺す者になって、ある程度は裏の道に名を馳せたこともあった。

 そんな日々の終わりは唐突だった。
 組んでいた相手に金で売られ、仕事に失敗し、裏の道からすら投げ捨てられた。
 寒い寒い冬の日、動く気力もなく裏道に転がっていたあたしに、差し伸べられた手があった。


 今でも、その手は奇跡だったと胸を張って言える。
 差し出された手の意味がわからずに、手を出す相手の顔を見れば、それは見たこともないくらい綺麗なお嬢さんで。
 うわさに聞く『観音さま』ってのはこんな人なんじゃないかと、呆けた頭でそう思った。


『行く場所がないのならば家にいらしてくださいな』
 そんなことを、あたしよりも年が下に見えるお嬢さんは言ったんだ。
 ……つくづくと思い返してみれば、あのときのあたしは血だらけで、堅気の人間じゃまず考えられない格好をしていて、死んだような目をしていたと思うのだけど。

 だからその時決めた。
 お嬢さんの前から誰がいなくなろうと、あたしだけは側にいて、そのお嬢さんを守ろうと。
 たとえこの血塗られたこの手に染み込んだ力を使ってでも。どんなものからも守り抜こうと。
 この命は拾ってくれたお嬢さんのために使いぬこう、と。


 それが―――あたしがたった一つ命をかけて、守り抜くと定めた誓い。



 ***


「行くんだろ?」

 夜の帳の落ちた邸内で、若い男の声が響く。
 声を向けられた娘は、ひたりと足を止めた。

「……なんか用かい、下男」
「下男言うな。
 ……立ち聞きする気はなかったんだがな。ここのお嬢さん狙って、連中(せいふくさん)がくるんだろ?
 こっちで勝手に調べたが、あのお嬢さん変なもんに狙われてんのな」

 はぁ、とため息をついて、いつもの小紋に、馬乗り袴を合わせた女中は青年を見返った。

「何が言いたいんだ?
 あいつらにお嬢様を差し出して朝までぐっすりしてたいですってなら、今すぐそのとぼけた頭に風穴開けてやるよ」

 空気を張り詰めさせるほどの冷えた敵意。
 それを真正面から受けながらも、相手はどこ吹く風とばかりに飄々としていた。
 女中は一つ舌打ちし、厳しく目を細める。

「……わかんねぇな。
 お前一体なんなんだ。何がしたい。何のために屋敷にもぐりこんだ。
 何のために―――お嬢さん(あのひと)のそばにころがりこんだんだよ」

 答えなければぶち抜く、と言わずともわかるような敵意をはらむ殺意を向けられて、しかし彼は間が抜けた顔で目を丸くした。
 直後、破顔。
 その年に似合わぬやけに男らしい笑みが、女中には主人の前から姿を消したある男とかぶって見えた。

「なんなんだ、と言われてもアンタの知ってのとおりだよ。
 ただの流れ者で、あのお嬢さんに拾われた、運がいいだけの人間だ」
「その運がいいだけの奴が、どうして夜中に人が出てく気配なんかわかるんだよ」
「あー……ま、昔色々あったんだよ」

 さっきまでの余裕はどこへやら。年相応に困ったような顔になり、頭をかく。
 あまりの変わりように拍子抜けして、今度は女中の方が目を丸くしたほどだ。

 そこはどうでもいいとして、と青年が仕切りなおす。

「―――何のためと言われても完全偶然で、何者と言われても明かせないが、これからしたいことは一応決まっててな。
 これまで散々世話になった分、得意なことで返そうかと思ったんだよ」

 それはつまり、女中の手助けをするということで。
 しかし彼女は胡乱げに目を細める。

「……あたしにそれを信じろって? 後ろからばっさりいかれんのは御免だね」
「ま、それもそうか。
 んじゃ―――俺が少しでもアンタの不都合になることやったら後ろからどうぞぶち抜いてくれて結構だ」

 それでも警戒の目を緩めない彼女に、青年は笑って続けた。

「俺な、あのお嬢さんが人間として好きなんだ。
 お人よしで、芯が強くて、いつでも笑ってるようなあたり―――郷里(くに)の幼馴染に似てる感じがしてな。
 ……ま、あいつはお嬢さんと違ってがさつで料理も下手だけどよ。
 それはおいといても、世話になった人にはちゃんと恩返しするもんだ」

 アンタもそうなんだろ?といたずら小僧の顔で告げる彼の顔を見て、女中はため息をつくと腕を組んだ。

「……死にたくなったらいつでも裏切れ。間者としてためらいなく撃ち殺してやるよ」
「アンタ本当におっかねぇよなぁ……せいぜい流れ弾には気をつけるさ」

 そして、立ち止まっていた足音は再び動き出す。
 二つ分の足音は、それぞれの意思で―――夜半を過ぎて誰もが寝静まり、観客のない 月明かりの下(ステージ)へと向かう。


 ***

 ―――時は1939年、5月。
 欧州ではナチスドイツが台頭し、亜細亜においては日本が長い長い泥沼の大戦へと突入しつつあった頃。
 昨日より今日は昏く、
 今日より明日はなお暗い。

 宵闇を迎えんとする黄昏の世界。
 葉桜茂る、日差しに熱のこもり始めた帝都。

 昼は賑わいを見せ、夜は閑静なとある屋敷にて始まる演目は。
 白刃の振るい手と緋弾の双手の、一夜限りの夜想舞踏。



 ***

 白く猫の爪のような細い月が昇りだした宵。
 一つの邸宅を、軍服の男たちが囲んでいた。
 彼らの頭を占めるのは、今は亡い敬愛すべき上官をなそうとした革命を完遂すること。
 そのために『神の嫁』を手に入れ、再び『カグツチ』を起動させる。

 成功するはずがないその計画を実行せんとする妄念は、しかし強固に過ぎて崩すことなど実質不可能だ。
 ならば、彼らの野望をくじくためにできることがあるとすれば。

 正門から進入しようとした者たちが、足を止めた。
 その前には二人の人影があったのだ。
 小柄な方の人影が、目を閉じたままに玲瓏と告げる。

「―――残念ですが、夜分遅く主に知らせもなく押し入るお客様はお断りしております。
 ここが天花寺家の、別邸とはいえお屋敷と知った上での狼藉ですか?」

 その横にいた男が、ざり、と革靴で砂を噛んだ。

「女の家に夜遅く押しかけるってのは、俺の知る限り非常識なことのはずだったけどな。
 それとも、この時代のこっちじゃ違うのか?」

 ざわざわと、潮騒のような動揺が男たちの間に広がる。
 何が起きているのかわからない。
 自分たちの前に立ちふさがる者がいるなんて想定外。
 それが子どもと女というのも予想の埒外。

 しかし彼らはすぐに気持ちを固める。
 逆らうのならば革命の敵、この国の敵、そして自分たちの敵だ。

「この家の主にお目通り願おう。否と言うなら―――」

 揃って軍刀や銃を抜く彼らを見て、肩をすくめる男とため息をつく女。

 次の瞬間、青年はまるで魔法のように虚空から身長以上の長大な西洋剣を引き抜き。
 女中は帯紐に引っ掛けていた、その小さな手には似つかない鋼の凶器を二挺、手におさめた。

 彼女は右の手に握った銃の口を、ぐるりと居並ぶ狼藉者たちに見せ付けるようにしながら告げる。



「そっちこそ。ここを押し通るってんならさ、相手になるよケダモノども。
 天花寺千早(お嬢さん)にだけお仕えする女中、『緋桜』のヤエ! このあたしの屍を超えていきな―――っ!」

「同じくこの屋敷にしばらく前から厄介になってるただの召使い、柊蓮司だ。
 おっさんたち、簡単に 俺達(ここ)を抜けると思うなよ?」

 柊もまた、口上をのべ。
 直後。二人の従者は悪意の群れへと踊りこんだ。


 ***

 さぁさ皆さまお立会い。

 これより始まりますは、白刃の乱舞(しろいかぜ)と双弾の艶舞(やえざくら)、その競演にございます。

 交差し、ぶつかりあい、時に足並み揃えて事を成す。彼らが踊るは誰がためか。

 遠からん方は音に聞き、近くば寄って目にも見られい。

 今宵―――剣林弾雨の幕が開く。



 ナイトウィザード×ダブルクロス・リプレイ・トワイライト
 『従者たちのの舞踏遊戯 -帝都屋敷の騒がしき日々-』

 公開未定!


 ***


 同時上映


「にゃあぁぁぁっ!? ちょ、なんでわたくしがこんな謎の遺跡にもぐりこんで鉤十字さんたちに追っかけられなきゃならないのでありますかぁぁぁっ!?」
「MI6なんかに協力求めるから見返り求められるんだよっ! あぁもう、さっさと逃げなきゃ危なギャ―――っ!?」
「ノーチェもフィンも暴れないの。ほら、テグジュペリとの合流ポイントまであとちょっとだから頑張って」

 柊を助けにやってきたノーチェの災難を描く。
 ドイツの超少女、クリステル・フォン・エッシェンバッハ、イギリスの天才少年、フィン・ブースロイド、イタリア原産吸血小娘、ノーチェの珍道中!

 『夜の少女、黄昏の世へ行く』


 同じく公開未定!





  • 柊が落ちた先→トワイライト第3巻5話に出てくる天花寺家の別邸。
  • 先輩女中→ヤエさん。
  • 女主人→天花寺千早。大悟の妹さん。
  • 嘘予告のPC1→誰が何と言おうとヤエさん。プライスレス。
  • 電話先の相手→後に財団作るらしい、フランスの誇る強盗貴族・ギヨーム=ド=ノートルダム氏。ちなみに老人ってのは『例の事件』の元黒幕。

 Q.なんでヤエさんが二挺拳銃でショウターイム! なキャラになってやがりますか?
 A.俺のせいじゃねぇ。一番はじめにそんな妄言吐き出した奴に言え。

 Q.なんでオーヴァードなのに5話でチハたん守れなかったの? ねぇ、なんで?
 A.エキストラの概念を調べましょう。また、石和じーさんを人質に取られて抵抗できなかったとか、清鷹と戦って勝てなかったとか、理由なんてなんとでもなります。

 Q.同時上映短すぎね?
 A.これ以上は無理です。

 Q.戦前の日本に電話とかあったの? 一般個人が使えるもんなの? つーか国際電話とかできたの? それも同盟結んでないフランスと?
 A.日本には1890年、すでに東京・横浜間で電話サービスがありました。
   ものすっごいブルジョワジーの方の家限定で固定電話式、交換機経由でしたが。(某深夜番組からの知識)。
   一番初めの電話帳ってペラ紙一枚で済んだらしいよ。
   国際電話についてはほぼ100%無理なはず。だからまぁ、ギヨームが何かしらで日本に来てたんだと思われる。でもすぐ帰んなきゃいけなかったんだろうね。たぶん。
   ……つーか、投下30分くらい前に急に気づいたよ。
   電話がOKなのは確信してわざと出したけど、その電話上で『助けになれない』つってんじゃん。馬鹿か俺はorz。

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