オープニング・3<異変の朝 -紺碧の刻印->
UGNの援助を受け、彼は人間らしい生活が送れることに充実感を覚えていた。
真夏でも冷房がつけられる。暑い中でエフェクトを使うことなく涼しく過ごせることの幸せを、彼はかみ締めていた。
今日の出勤時間は朝の9時だが、料理長の兄は仕込みのために早めに起きなければならないはずだ。
料理はできるものの、生活力のまるでない兄を起こすのは彼の役目だった。
真夏でも冷房がつけられる。暑い中でエフェクトを使うことなく涼しく過ごせることの幸せを、彼はかみ締めていた。
今日の出勤時間は朝の9時だが、料理長の兄は仕込みのために早めに起きなければならないはずだ。
料理はできるものの、生活力のまるでない兄を起こすのは彼の役目だった。
上月司(こうづき・つかさ)。
UGNのセーフハウスであるマンションの一室に身を置く、『ゆにばーさる』の名物ウェイターでもある。
もちろんここに住んでいる以上一般人ということはなく、UGNのイリーガルエージェントで、高校生でありながら夏休みを利用してわざわざ出稼ぎに秋葉原まで来ている。
UGNのセーフハウスであるマンションの一室に身を置く、『ゆにばーさる』の名物ウェイターでもある。
もちろんここに住んでいる以上一般人ということはなく、UGNのイリーガルエージェントで、高校生でありながら夏休みを利用してわざわざ出稼ぎに秋葉原まで来ている。
UGNを通して与えられるウェイターという仕事自体にはいくらか不満があるものの、生活環境が非常にいいここを彼が離れるはずもない。
こういう日々の積み重ねこそが幸せを作っていくのだ、と年齢に似合わない達観をしている彼は、同じに場所に住む、いまや唯一の肉親を起こしに行く。
兄の部屋、ノックをとりあえず礼儀としてすると同時にドアを開ける。そこには司が起こすべき兄が―――いなかった。
起きているのかとも思ったが、部屋のベッドの横に据え置きされているデスクの上に一枚、なにか紙が置いてある。
昨日はなかったはずだな、と不審に思いつつ司はその紙に目を通す。
こういう日々の積み重ねこそが幸せを作っていくのだ、と年齢に似合わない達観をしている彼は、同じに場所に住む、いまや唯一の肉親を起こしに行く。
兄の部屋、ノックをとりあえず礼儀としてすると同時にドアを開ける。そこには司が起こすべき兄が―――いなかった。
起きているのかとも思ったが、部屋のベッドの横に据え置きされているデスクの上に一枚、なにか紙が置いてある。
昨日はなかったはずだな、と不審に思いつつ司はその紙に目を通す。
『司へ。
エルマを覚えているか?あれは―――(以下必要ないので中略)でな。
そんなわけでエルマの墓参りに行ってこようと思う。メキシコはいい。あの赤い大地は(以下えんえんとメキシコのいいところの話になるので中略)と思う。
気が付けば、エルマに対して49日もしてやっていなければ、コルトの礼も言っていない。
ノーブル・グレイとのあの死闘についてもエルマに話して聞かせてやらねばならん。あの(以下25行ほど自分のかっこよさのアピールになるので中略)だ。
そんなわけで、俺はメキシコに行くことにした。
この間黙って行ったらあんちゃん司にぶたれたのでとりあえず置手紙を置いていくことにした。では、また会おう。
エルマを覚えているか?あれは―――(以下必要ないので中略)でな。
そんなわけでエルマの墓参りに行ってこようと思う。メキシコはいい。あの赤い大地は(以下えんえんとメキシコのいいところの話になるので中略)と思う。
気が付けば、エルマに対して49日もしてやっていなければ、コルトの礼も言っていない。
ノーブル・グレイとのあの死闘についてもエルマに話して聞かせてやらねばならん。あの(以下25行ほど自分のかっこよさのアピールになるので中略)だ。
そんなわけで、俺はメキシコに行くことにした。
この間黙って行ったらあんちゃん司にぶたれたのでとりあえず置手紙を置いていくことにした。では、また会おう。
PS 手紙書いてるとPSって使いたくなるなぁ、司。
PSのPS ちょっと旅費が心もとなかったんで、貯金下ろしました。残りは27円だったかな?』
司の手がぶるぶる震える。
能力が暴発し、近くの空気中の水が氷結されてぱきぱきと音を立てる。
今すぐこの紙きれを破きたい衝動にかられつつ、彼はもう彼以外のいない部屋の中で絶叫する。
能力が暴発し、近くの空気中の水が氷結されてぱきぱきと音を立てる。
今すぐこの紙きれを破きたい衝動にかられつつ、彼はもう彼以外のいない部屋の中で絶叫する。
「あんの、クソ兄貴いいいいぃぃぃぃぃぃっ!?」
……いつか兄貴殺しかねないんじゃないのか、この少年は。
ともあれ。彼は階段を駆け下りて、一つ下のフロアにいる店長―――薬王寺結希にそれを知らせに来たのだった。
なぜか同僚の高崎隼人と見知らぬなんか不幸そうな男がいるが、そんなことよりもこちらの方が一大事である。
結希はその文面に目を通した後、こめかみを押さえてため息をついた。
なぜか同僚の高崎隼人と見知らぬなんか不幸そうな男がいるが、そんなことよりもこちらの方が一大事である。
結希はその文面に目を通した後、こめかみを押さえてため息をついた。
「永斗さん……お店どうするんですかぁっ!?あの人料理長なんですよっ!?」
司の兄こと上月永斗は、ゆにばーさるでは料理長としてキッチン部門の長をやっている。
……あんなんに『長』のつく役職を任せる店長も店長だが。
……あんなんに『長』のつく役職を任せる店長も店長だが。
「それで、どうするよ支部長。あんなんでもいなくなると困るだろ?
そりゃああいつなしじゃ作れない料理もいくつかあるけど、それに関しては諦めることができるだろ。
一番痛いのは、世間が夏休みに入ったこのかきいれ時にキッチンにつきっきりの人間がいなくなるってことじゃねぇのか?」
そりゃああいつなしじゃ作れない料理もいくつかあるけど、それに関しては諦めることができるだろ。
一番痛いのは、世間が夏休みに入ったこのかきいれ時にキッチンにつきっきりの人間がいなくなるってことじゃねぇのか?」
司も頭をぐしゃぐしゃかき回しつつ、それでも部屋に入った頃よりはやや落ち着いたように結希に聞いた。この辺りの切り替えの早さは司のバイタリティの賜物だろう。
この店、キッチンもフロアもできる人間というのが異様なまでに少ない。
主にキッチンにつきっきりになるのが永斗で、彼のその超人的な(実際オーヴァードだろっつーツッコミはこの際スルー)調理の処理技能がキッチン部門の生命線なのだ。
司や隼人もある程度はキッチンで働けるが、調理に圧倒的に手が足りない状況であることには変わりない。
その事実に気づかされた結希ははにゃ、と鳴きつつしばらく唸ると、仕方がありませんねと呟いた。
この店、キッチンもフロアもできる人間というのが異様なまでに少ない。
主にキッチンにつきっきりになるのが永斗で、彼のその超人的な(実際オーヴァードだろっつーツッコミはこの際スルー)調理の処理技能がキッチン部門の生命線なのだ。
司や隼人もある程度はキッチンで働けるが、調理に圧倒的に手が足りない状況であることには変わりない。
その事実に気づかされた結希ははにゃ、と鳴きつつしばらく唸ると、仕方がありませんねと呟いた。
「とりあえずは、夏休みだからヒマになったイリーガルを回すように霧谷さんに打診してみます。
あと永斗さんを見つけ次第半殺しにしてでも日本に連れ帰るように人員を動かしてほしい、っていうのも言ってみますね」
あと永斗さんを見つけ次第半殺しにしてでも日本に連れ帰るように人員を動かしてほしい、っていうのも言ってみますね」
怖いことを特に気にした様子もなく淡々と言う結希。司もあぁ、と頷いてより物騒な言葉を告げる。
「俺の分は残しといてくれるようによろしく言っておいてくれ」
あんちゃん逃げてー(棒読み)。
閑話休題。
司は話を戻して聞いた。
閑話休題。
司は話を戻して聞いた。
「それで、応援がくるまでどうするんだ?そりゃ、夏休みだし来れる奴は多いだろうけど、実際人足りないだろ?」
「えぇ。一人は確保できたんですけどねぇ」
「一人?ずいぶんタイミングいいな。なんて奴だ?」
「こちらにいる柊蓮司さんです」
「なにぃっ!?」
「えぇ。一人は確保できたんですけどねぇ」
「一人?ずいぶんタイミングいいな。なんて奴だ?」
「こちらにいる柊蓮司さんです」
「なにぃっ!?」
蚊帳の外だと思っていてことの経緯を見ていた青年―――柊というらしい―――は驚いたように声を上げた。
彼は結希にあわててたずねる。
彼は結希にあわててたずねる。
「ちょ、ちょっと待て支部長さんっ!?俺はそんな話一切聞いてねぇぞっ!?」
「それは司さんが入ってきちゃって話がとぎれちゃったからですよ。
霧谷さんとアンゼロットさんの話し合いで決まったのは、あなたがこちらに来ているターゲットを倒すまでは任務を続けることと、
UGNがそれまであなたの住処を提供すること、情報提供などの協力、そしてターゲット確保まで食・住の分の対価としてUGNの労働力として働くことなんです」
「あいつから受けた任務じゃねぇよ、たまたま降りかかってきた火の粉だっ!?」
「あれ?アンゼロットさん、エミュレイターを他世界に逃がしたのは世界の守護者としての失態だって言ってましたよ?
それに、『柊さんがそちらに行ってしまったこともある程度はわたくしたちの責任ですので、こちらの代表として柊蓮司を好きに使う許可を出します』って言ってました。
そしてそれを霧谷さんが快諾したんで、あなたは私の指揮下に置かれることになります。よろしくお願いしますね柊さん」
「待てっ!あいつのせいで異世界飛ばしになったってのかっ!?それも初耳だぞっ!?」
「その原因については、後で柊さんの携帯電話―――0-Phone でしたっけ?にメールで詳細を送るって言ってましたよ?
私に聞いてもわからないんで、文句は帰ってからアンゼロットさんにお願いしますね」
「それは司さんが入ってきちゃって話がとぎれちゃったからですよ。
霧谷さんとアンゼロットさんの話し合いで決まったのは、あなたがこちらに来ているターゲットを倒すまでは任務を続けることと、
UGNがそれまであなたの住処を提供すること、情報提供などの協力、そしてターゲット確保まで食・住の分の対価としてUGNの労働力として働くことなんです」
「あいつから受けた任務じゃねぇよ、たまたま降りかかってきた火の粉だっ!?」
「あれ?アンゼロットさん、エミュレイターを他世界に逃がしたのは世界の守護者としての失態だって言ってましたよ?
それに、『柊さんがそちらに行ってしまったこともある程度はわたくしたちの責任ですので、こちらの代表として柊蓮司を好きに使う許可を出します』って言ってました。
そしてそれを霧谷さんが快諾したんで、あなたは私の指揮下に置かれることになります。よろしくお願いしますね柊さん」
「待てっ!あいつのせいで異世界飛ばしになったってのかっ!?それも初耳だぞっ!?」
「その原因については、後で柊さんの携帯電話―――0-Phone でしたっけ?にメールで詳細を送るって言ってましたよ?
私に聞いてもわからないんで、文句は帰ってからアンゼロットさんにお願いしますね」
そう言われて何も言えなくなったのか、柊は黙った。
……結局彼女の指揮下に置かれることに対しては文句は封殺された形になったことには気づいていない。さすがはノイマンのピュアブリードといったところか。
それで、と店長用の営業スマイルになった結希は黙った柊にこれをチャンスと色々たずねる。
……結局彼女の指揮下に置かれることに対しては文句は封殺された形になったことには気づいていない。さすがはノイマンのピュアブリードといったところか。
それで、と店長用の営業スマイルになった結希は黙った柊にこれをチャンスと色々たずねる。
「お聞きの通り、今キッチン担当の重要な人員が雲隠れしやがってしまいまして。
柊さんはアンゼロットさんのお話を聞く限りは単独で任務をこなせるような方なわけですよね?体力はありますよね」
「まぁな。前倒れな能力しか持ってない完璧な前衛向きだし」
「それは何よりです。喫茶店なんかでお仕事をなさった経験はあります?」
「ちょっと前に住み込みで喫茶店で働かせてもらってたな。コーヒーの入れ方でずいぶんしごかれた」
「それはありがたいです。
ウチも紅茶の入れ方に関してはプロ級のこだわりを持つ方が指導されてるのでそれなりに自信があるんですけど、コーヒーに関しては門外漢なところがありまして」
「えぇと、支部長さん?」
「そんなわけで、キッチン兼ホールスタッフとして働いてもらえますよね?」
柊さんはアンゼロットさんのお話を聞く限りは単独で任務をこなせるような方なわけですよね?体力はありますよね」
「まぁな。前倒れな能力しか持ってない完璧な前衛向きだし」
「それは何よりです。喫茶店なんかでお仕事をなさった経験はあります?」
「ちょっと前に住み込みで喫茶店で働かせてもらってたな。コーヒーの入れ方でずいぶんしごかれた」
「それはありがたいです。
ウチも紅茶の入れ方に関してはプロ級のこだわりを持つ方が指導されてるのでそれなりに自信があるんですけど、コーヒーに関しては門外漢なところがありまして」
「えぇと、支部長さん?」
「そんなわけで、キッチン兼ホールスタッフとして働いてもらえますよね?」
それにしばらく逡巡したものの、柊はもう逃れられないと悟ったのか肩を落として一つため息をつく。
「……了解。住むとこに食いもんまで用意されてんだ、これで文句言ったらバチが当たるわな」
「いや普通だから。どんな状況で任務こなしてきてんだお前は」
「いや普通だから。どんな状況で任務こなしてきてんだお前は」
柊の言葉に同情の視線を向けつつ隼人。
とはいえそんなことは結希は知ったこっちゃない。今は素直に人手が増えたことを喜ぶべきだ、と考える。
とはいえそんなことは結希は知ったこっちゃない。今は素直に人手が増えたことを喜ぶべきだ、と考える。
「ともかく、今日の開店までもうあまり時間がないんです。司さんと隼人さんは、柊さんの制服合わせのお手伝いをしてあげてください。
いつもどおり店を開けなきゃいけないんで、それが終わったら柊さんは『ゆにばーさる』のオフィスまで来てください。できることをお聞きして、メニューを変更します。
わかりましたね?」
「お、おう」
「司さんと隼人さんも分かったら返事!」
「わかったよ、支部長」
「了解っと」
「聞いたら動くっ!」
いつもどおり店を開けなきゃいけないんで、それが終わったら柊さんは『ゆにばーさる』のオフィスまで来てください。できることをお聞きして、メニューを変更します。
わかりましたね?」
「お、おう」
「司さんと隼人さんも分かったら返事!」
「わかったよ、支部長」
「了解っと」
「聞いたら動くっ!」
了解ですーっ!と三者三様の声がして、逃げるように部屋から飛び出していく三人。
薬王寺結希。UGN日本支部の誇る天才の一人にして、最近は曲者どもの手綱をうまくとる敏腕支部長にもなっている少女。
―――死神支部長の汚名返上は、思いの外早そうである。
薬王寺結希。UGN日本支部の誇る天才の一人にして、最近は曲者どもの手綱をうまくとる敏腕支部長にもなっている少女。
―――死神支部長の汚名返上は、思いの外早そうである。
オープニング・4<朝は弱いのです -超越種の末裔->
喫茶『ゆにばーさる』開店20分前。
店内清掃を終え、今日のスタッフが皆制服に着替えて朝礼に集まる。
結希は「メイド長補佐」、「影の裏番」などという肩書きを持つとあるUGチルドレンお手製のみかん箱台に乗って朝礼をする。
店内清掃を終え、今日のスタッフが皆制服に着替えて朝礼に集まる。
結希は「メイド長補佐」、「影の裏番」などという肩書きを持つとあるUGチルドレンお手製のみかん箱台に乗って朝礼をする。
「えー……料理長の永斗さんが、逃げました。皆さん見つけたら2、3回リザレクトさせてもいいのでとりあえず私の前に引きずり出してください」
逃げました、の時点でざわめきだしたスタッフ達だが、その後の結希の発言で静まり返る店内。
今この場で一番キレてるのは彼女だと全員が認識した結果でもある。
ともかく、と結希は話を続ける。
今この場で一番キレてるのは彼女だと全員が認識した結果でもある。
ともかく、と結希は話を続ける。
「いないものは仕方ありません。ちょうど今日から来る新人さんもいますし、なんとかみんなで穴を埋めていきましょう。
紹介します。新人の柊蓮司さんです、みなさん仲良くしてあげてくださいね」
紹介します。新人の柊蓮司さんです、みなさん仲良くしてあげてくださいね」
柊に視線があつまる。彼はぺこりと一礼してそれに答えた。
彼の格好は今はゆにばーさるの男子店員と同じものだ。
シンプルな白シャツに自分で締めるタイプのボウタイ、胸ポケットには「れんじ」と書かれた紙製の名札と黒のパンツと長エプロン。
ちなみに女子制服は当然メイド喫茶なのでメイド服であることをここに記述しておく。
彼の格好は今はゆにばーさるの男子店員と同じものだ。
シンプルな白シャツに自分で締めるタイプのボウタイ、胸ポケットには「れんじ」と書かれた紙製の名札と黒のパンツと長エプロン。
ちなみに女子制服は当然メイド喫茶なのでメイド服であることをここに記述しておく。
「とりあえず、これからはかきいれ時です、霧谷さんにヒマそうなイリーガルをもともと手配していましたし、彼らが来るまでの辛抱です。
売り上げ次第でお給料にもちょっと色をつけたいと思いますので、みんなで一緒に頑張りましょう。
なんとか今日は前からの勤務表通り10人―――から永斗さんを引いた9人で回していこうと思います」
売り上げ次第でお給料にもちょっと色をつけたいと思いますので、みんなで一緒に頑張りましょう。
なんとか今日は前からの勤務表通り10人―――から永斗さんを引いた9人で回していこうと思います」
その結希の発言に、司が首を傾げた。
手を挙げて結希に発言を求める。
手を挙げて結希に発言を求める。
「なぁ、支部長」
「はい。なんでしょう司さん」
「勤務表どおりなら、兄貴の分引いても飛び入りの柊含めて10人になるんじゃねぇの?」
「はい。なんでしょう司さん」
「勤務表どおりなら、兄貴の分引いても飛び入りの柊含めて10人になるんじゃねぇの?」
彼の言葉にしばらく硬直していた結希は、いきなりはにゃ!?と鳴いた。
「そ、そういえばそうですっ!?
あれ?でも今ここにいるのって私と、十也さん、司さんに隼人さん、椿さん、智世さん、左京さん、桜さんと柊さんの9人しかいないですよ?」
「あいつは?確か今日は入ってただろ、あの銀髪ツインテールなどっかのカエルみたいなチビ」
あれ?でも今ここにいるのって私と、十也さん、司さんに隼人さん、椿さん、智世さん、左京さん、桜さんと柊さんの9人しかいないですよ?」
「あいつは?確か今日は入ってただろ、あの銀髪ツインテールなどっかのカエルみたいなチビ」
司が言ったその瞬間、店の裏口から何かが入る音がして、がたごとっ、と何かが暴れるような音がした後に、スタッフルームから転がるように、というか何かが転がり出た。
スタッフルームから出る際に何かにつまづいたのか、ごろごろごろごろー、と転がりながら黒と白のモノクロの塊が移動し、結希の立つ台の前で回転が止まった。
しばらく静まり返る店内。
その、空気をぶち壊した物体がぴくりと動く。
いたたたたー、という間の抜けた声を上げながら、物体―――メイド服を着た銀髪のツインテール娘―――は、結希に対して笑いながら言った。
スタッフルームから出る際に何かにつまづいたのか、ごろごろごろごろー、と転がりながら黒と白のモノクロの塊が移動し、結希の立つ台の前で回転が止まった。
しばらく静まり返る店内。
その、空気をぶち壊した物体がぴくりと動く。
いたたたたー、という間の抜けた声を上げながら、物体―――メイド服を着た銀髪のツインテール娘―――は、結希に対して笑いながら言った。
「遅れてしまって申し訳ないのであります。
でもでも、遅れるって連絡入れるために電話かけてるのに、結希ってば出てくれないのでありますからやっぱり一方的にわたくしだけが悪いって言うのはちょっと……」
でもでも、遅れるって連絡入れるために電話かけてるのに、結希ってば出てくれないのでありますからやっぱり一方的にわたくしだけが悪いって言うのはちょっと……」
その言い訳に慌てて結希が携帯を取り出す。すると、何度も彼女からの着信があったことが表示されていた。
あまりの事態が起きていたため、彼女も他には気が回らなかったようだ。
それに対して結希が謝るために彼女の名前を呼ぼうとしたその矢先だ。
あまりの事態が起きていたため、彼女も他には気が回らなかったようだ。
それに対して結希が謝るために彼女の名前を呼ぼうとしたその矢先だ。
「ノーチェっ!?」
彼女の名前が、まったく予期していなかった方向―――柊から呼ばれた。彼は少女を信じられないものを見るような目で見ていた。
はい?と首を傾げながら銀髪ツインテールの少女―――ノーチェは、柊の方を見た。
はい?と首を傾げながら銀髪ツインテールの少女―――ノーチェは、柊の方を見た。
続く。