余計な荷物を全部捨ててしまってなお、人生には残るものがある。
それは気持ちよく晴れた空や、 吹き寄せる風や大切な人のひと言といった、 ごくあたりまえのかんたんなことばかりだ。 そうした「かんたん」を頼りに生きていけば、 幸せは誰にでも手の届くところにあるはずだ。
少なくとも私たちは、何でもぶつけあえばいいなどという単純なやり方で、友情をあつかったことは一度もない
言葉の真偽など問題じゃないのだ。
それを口にだすということ、そう思っていたということ。
女を傷つけることができるのは女だけなのだと思うことがある
ふと「虐待された子どもは、自分の体の痛みと心を切り離すことができる」と本に書いてあったのを思い出した。自分で自分がだるいことが分からなかったり、肝臓がまだ本調子ではないのだから仕方ないのに、ちょっとそのだるさに罪悪感をおぼえたりしているのは、そういうのだろうか、なんて考えついて、急に心がしんとしてしまった。(p116)
そしてはっと気づいた。私は自分がいったん決めたことを変えるのが、かたくなまでに、できないたちだということを。それで、そのあまりのかたくなさにまわりは口出しのしよ>うもなかったということを。(p121)
ええと、僕が今指名を受けたのって、なぜ僕がノーと言ったか、理由を知りたい
ということだったと思うんですけど
理由はしごく簡単で、要するに、それは単に、だってここにいるみんなが
全員イエスイエス言ってたら、そんなの気持ち悪いじゃないかと思ったから(p47-48)
かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、
かたちのないものを選べ。それが僕のルールです。(p34)
説明なんかしたくなかったんだ
いちいち説明しなくても、わかってもらいたかったんだと思う。(p42)
流れというのが出てくるのを待つのは辛いもんだ。
しかし待たねばならんときには、待たねばならん。
そのあいだは死んだつもりでおればいいんだ(Ip99,本田さんのことば)
ねえ、ねじまき鳥さん、あなたが今言ったようなことは誰にもできないんじゃないかな。
『さあこれから新しい世界を作ろう』とか『さあこれから新しい自分を作ろう』
とかいうようなことはね。私はそう思うな。自分ではうまくやれた、別の自分になれた
と思っていても、そのうわべの下にはもとのあなたがちゃんといるし、何かあればそれが
『こんにちは』って顔を出すのよ。(中略)
あなたはよそで作られたものなのよ。そして自分を作り替えようとするあなたのつもりだって、 それもやはりどこかよそで作られたものなの。(ⅡP201, 笠原メイのことば)
自らの状態を知るというのは、それほど簡単なことではありません。
たとえば、人は自分の顔を自分の目で直接見ることはできません。
鏡に映して、その反映を見るしかないのです。
そして我々はその鏡を映し出す像が正しいと経験的に信じているだけなのです。(ⅡP243, 加納マルタのことば)
うまくやるためのコツみたいなのはちゃんとあるんだ。
そのコツを知らないから、世の中の大抵の人間は間違った決断をすることになる。(中略)
コツというのはね、まずあまり重要じゃないところから片づけていくことなんだよ。(中略)
何か大事なことを決めようと思ったときはね、まず最初はどうでもいいようなところから
始めた方がいい。誰が見てもわかる、誰が考えてもわかる本当に馬鹿みたいなところから
始めるんだ。そしてその馬鹿みたいなところにたっぷりと時間をかけるんだ。(ⅡP370 叔父の話)
つまりですね、言うなればこれから普通ではないことをなさるわけです。(中略)
で、そういうことをしますと、そのあとの日常の風景が、なんていうか、いつもとちっとばかし違って見えてくるかもしれない。私にもそういう経験はあります。
でも見かけにだまされないように。現実というのは常にひとつきりです。(Book1上 p26)
もし気がつかなかったのなら、それは一度もいじめにあっていないということよ。
だっていじめというのは、相手に自分がいじめられていると気づかせるのがそもそもの目的なんだもの。
いじめられている本人が気がつかないいじめなんて、そんなものありえない(Book1上 p174)
あなたの行動が純粋な気持ちから出たことはよくわかっています。(中略)
しかし混じりけのない純粋な気持ちというのは、それはそれで危険なものです。
生身の人間がそんなものを抱えて生きていくのは、並大抵のことではありません。
ですからあなたはその気持ちを、気球に碇をつけるみたいにしっかりと地面につなぎ止めておく必要があります。(Book1 下 p77)
説明しなくてはそれがわからんといううことは、どれだけ説明してもわからんということだ(Book2上 p235-236)
心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない(Book2 上 p319)
質問の本意をきかずに弁じたてるというのは「政治家か学者のくせだ」と好古はつねに言う。<中略>
軍人は敵を相手の仕事だから、敵についてその本心、気持、こちらに求めようとしていること、
などをあきらかにしてから答えるべきことを答える。(一:p158)
人間の頭に上下などない。要点をつかむという能力と、
不要不急のものはきりすてるという大胆さだけが問題だ
従って物事ができる、できぬというのは頭ではなく、性格だ(二:p230)
年をとるということは、葬儀の指示ができるということかもしれませんな(三:p32)
要するに、ボンヤリを見込まれて出てゆくわけですから、いくさのこまかいことはすべて児玉サンにまかせます。
しかし敗けいくさになったばあいは、自分が陣頭にすすみ出て、じかに指揮をとります。(四:p13)
敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃滅セントス
本日天気晴朗ナレドモ浪高シ(八:p36)
言いたいことを誰からも訊いてもらえない苦しみと、
言いたくないことを無理やり言わされる苦しみでは、
いったいどちらがつらいのだろうか。(p53 台風一過)
自然、自然、自然。ここにやってくるたくさんの産婦さんたちが口にする、自然という言葉を聞くたびに、
私はたくさんの言葉を空気とともにのみこむ。彼女たちが口にする自然、と言う言葉の軽さや弱さに、
どうしようもない違和感を抱きながら、私はその気持を言葉に表すことができない。乱暴に言うなら、
自然に産む覚悟をすることは、自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ。彼女たちが抱く、
自然という言葉のイメージ。オーガニックコットンのような、ふわふわでやわらかく、はかないもの。
<中略>
どんなに医療技術が発達したって、昔も今もお産が命がけであることは変わらないのだ。(p262)
本当に伝えたいことはいつだってほんの少しで
しかも、大声でなくても、言葉でなくても伝わるのだ、
と気付いたのは、つい最近のことだ。
もっと早く気付いて、それを夫婦関係にも活用できればよかったのだけど。(p264)
最終更新:2013年07月06日 23:42