企業がCSR活動を行うことによっての企業外部への影響については多くの研究がある。
岡本大輔先生は「
企業評価+企業倫理」の中で、現代企業にとってにとっての社会性は、収益性・成長性と同じレベルの企業目標として位置づけられるべきであると主張しており、アンケート調査により社会性は高業績にとっての十分条件とは言えないが、少なくとも必要条件ではあると実証している。同時に、社会性が5年後、10年後の経済性にもプラスの効果を発揮すると実証している。
高巌教授は「CSRー企業価値をどう高めるか」の中で、日本経済新聞社が実施している環境経営度調査における総合スコアをもとにCSR活動における積極性がコーポレートブランド価値にどのような影響を与えているか検証した。その結果、CSR活動に積極的に取り組んでいる企業のコーポレートブランド価値は相対的に高いとともに、さらに効果的にコーポレートブランド価値を増加させていることを実証した。また、CSR活動が
ステークホルダーの不安要素を取り除く効果があることも実証した。よって環境経営に代表されるCSR活動はコーポレートブランド価値の創造に貢献していると述べている。
櫻井通晴教授は「コーポレート・レピュテーション」の中で、ブラマーとパヴェリン[Brammer & Pavelin,2004]、レスニック[Resnick,2004]の研究を用いて、CSRとコーポレート・レピュテーションの関係、さらには企業価値との関連について研究している。コーポレート・レピュテーションとは「経営者および従業員による過去の行為の結果、および現在と将来の予測情報をもとに、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーから導かれる持続可能な競争優位」であり、結論を述べると、トリプル・ボトムラインとして知られる経済価値・社会価値・環境価値の増大を図るCSRは、経済価値・社会価値・組織価値を含む企業価値の増大を目的とするコーポレート・レピュテーションと極めて密接な関係があることを指摘している。
谷本寛治教授は「CSRと企業評価」の中で、CSRと財務的パフォーマンスとの関係を説明する理論は「スラック理論(Slack Resources Theory):余剰ファンドがあるからCSRを果たす余裕があるというもの」と「良い経営理論(Good Management Theory):捨ていくホルダーと良い関係を構築することで評価が高まる」の二つに区分できるとしている。そしてCSRを評価する市場が成熟すれば「良い経営理論」の妥当性が高まり、現在の論調ではこの流れが支持されていると指摘している。
最終更新:2009年10月28日 05:13