要約・・・やうやく終わったなんてベタなギャグは言いません。みんなの思い、ここに集る!

近年CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という言葉が注目を集めており、日本のほとんどの大企業が何らかのかたちでCSRを実施している。CSRがブームになった背景を辿ると、企業のリスク回避、これからの展望を広げていくという目的があったことに遡るのであるが、研究を進めていくうちに、CSRは企業そのものの価値を向上させるということがわかった。しかし、CSRがこれまでの社会的責任ブームとは違い、衰退するどころかむしろ年々注目が増していることから、企業の価値向上以外にも、組織や従業員へ何らかの影響があるのではないかと疑問に思った。
そこでCSRが企業内部に対して与える影響について調べるため、まずはCSR報告書を用いて、企業がCSRをどのように捉えているかを調査した。すると、CSR報告書から、企業の大半はCSRを「CSRは経営理念から形作られるもの」と捉えていることが分かった。このことから、本論文ではCSRを「経営理念を具体化したもの」と定義した。各企業が経営理念基づいたCSRを行うことで、経営理念を実現させる。捉え方で各企業に細かな違いはあれども、CSRは抽象的な経営理念を具体化したものといっても過言ではない。また、企業内外の人々は具体性を持ったCSRを認識することにより、抽象的なその企業の経営理念を間接的に認識することにつながる。このことから、CSRを行うことは経営理念を企業内外に浸透させるという側面も持つと考えられる。

(りえのとこが入ります。)

企業にとって人とは中心に位置する要素であり、欠かすことのできない重要な存在である。そこで企業という組織をさらにクローズアップし、従業員という個人に注目した。その中でも近年CSRが従業員のモチベーション向上につながるといったことが議論されており、企業において従業員のモチベーションを向上させることは人的資源管理の分野で非常に重要な位置を占めているため、従業員のモチベーションに焦点を当てることにした。
モチベーション(motivation)とは、組織メンバーに対する仕事への意欲を喚起する働きのことであり、一般的に言う「動機づけ」に他ならない。経営学でのモチベーション理論は、「職場において人々にやる気を起こさせ、職務の生産性を高めるにはどうしたら良いか」の研究として位置づけられる。我々はキャンベル(Campbell,J.P.et al.1970)による代表的なモチベーション理論の分類に従い、内容理論と過程理論によるアプローチで論を進めた。内容理論(content theory)とは、人間の欲求の内容に関する研究であり、人間の行動に影響を与える変数を明らかにするものである。過程理論(process theory)とは、欲求によって行動が喚起され、持続し、やがて終わる過程に関する研究であり、その過程を説明する変数を明らかにするものである。これらは相互補完的で、どちらも用いることによって、初めてモチベーションアップについての説明となる。
マズローの欲求段階説と従業員との欲求との関係について述べると、CSRを行うことで経営理念を従業員に認知させることができ、従業員はそれを認知することで所属欲求を満たすことができる。さらにCSRを行うことで、その直接的な対象から感謝され、評価されるだけでなく、社会全体からの評価も得ることができるため承認欲求も満たされる。それが自己実現欲求につながり、CSRは従業員の欲求を満たすことがわかる。
しかし、その欲求が行動に結びつかない限り、それはモチベーションアップとは言い難い。そこで代表的な過程理論、ブルームの期待理論を用いた。人間は行動選択をする際、その行動の結果が魅力的であればあるほど(誘意性)、その結果がもたらされる確率が高ければ高いほど(期待)、その行動に駆り立てられる可能性が高くなる。ここでは、誘意性を高める手段として、認知的動機づけを取り上げた。人間がその行動に魅力を感じるかという問題は、その個人が行動遂行の前に想起する認知に大きく関わっている。トップはCSRによって経営理念を従業員に認知させることで、経営理念というフィルター を通した「目標」を従業員に持たせ、目標を付与することによって、認知構造に刺激を与え、行動の誘意性を高めることができる。マグレガーの目標管理を用いると、目標管理によって、個人が自己実現欲求を満たすのを促すことができるのである。またドラッカーによれば、目標管理は個人に目標を提示するに過ぎず、その達成については個人に委ねられている。個人はその目標を達成するために、自発性・創造性を発揮し、自己実現欲求を満たすことができるのである。このようにCSRによって経営理念を認知させることで、従業員の目標づけとなり、従業員の認知構造に影響を与えることができる。これによって、求められる行動の誘意性を高めることができ、行動を喚起するのである。
上記から、CSRには従業員のモチベーションをアップさせる働きがあると言える。一つには、CSRは従業員の欲求を満たすことができ、従業員のより上位の欲求を喚起することで、自己実現を促すことができる。更には、CSRによって経営理念を認知させることで、それが欲求を実現する行動に大きな価値をもたらし、行動を喚起することができる。これらの働きが相まって従業員のモチベーションがアップすると説明できた。
最終更新:2009年11月12日 14:06
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