CSRと企業評価(谷本寛治)

企業の社会的評価

企業を評価する基準は、企業とステークホルダーの関係、市場社会の構造が変われば変わってくる。
これまで企業を評価する基準は財務データを中心に、設備投資、新製品比率、マーケットシェアなどが重視されていたが、

①グローバリゼーションの進展とともに、社会経済システムの持続可能な発展を求め、企業に社会的責任を求めるNGOの活動が社会的支持を受け活発になり、社会的に責任ある企業の在り方について議論されている。

②株式相互持合い構造の崩れ、内部労働市場の構造変化、NPO/NGOの台頭による日本国内での市場社会の変化によって、市場社会の在り方が問われている。

以上の理由によって、企業を評価する基準は、市場社会が企業に何を求めているかによって変化する。
企業は株主のものという理解にとどまらず、社会、ステークホルダーとの関係の中で存在する企業の在り方を捉えていく必要性が高まってきている。


CSRの広がり

この論文でのCSRの定義は「経営活動のプロセスに社会的公正性や倫理性、環境への配慮を組み、アカウンタビリティを果たしていくこと」とされている。
グローバルなCSRの動向を受けて、リコー、IBM、松下電器などCSRに積極的な企業では、環境報告書にとどまらず、サステナビリティ報告書をまとめており、作成に当たって国際的なガイドラインであるGRI(Grobal Reporting Initiative)を参考にしている。
いかなる企業がGRIを採用する確率に影響を与えるか、ロジスティック回帰分析を行った結果によると、売り上げ規模が大きく、海外売上比率および外国人持ち株比率が高いほどガイドラインを採用する確立が高く、また環境関連業種(製造、天然資源、エネルギー)の方がその他業種よりも積極的である収益については有意な相関関係は見られなかった。

CSRと収益性について、統計的優位性までは検出できないものの、CSRを果たしている企業のパフォーマンスの相対的良さは示されている。
CSRが市場で定着してくると、企業の評価は、経済性+環境・社会を含めたトータルなものとして捉えられる。

SRI

社会的責任投資(Social Responsible Investment)は、財務的評価+社会的・環境面の評価から投資銘柄を選定する手法である。
基本的にSRIは、CSRを果たしているパフォーマンスのいい企業を評価し、積極的に投資する。
また、近年SRIのクライテリアに社会・環境面のみならず、ガバナンスの体制や透明性といった項目も組み込み、企業価値を測ろうとする動きが広がり始めている。
最終更新:2009年06月30日 19:35
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